弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年に処する。
     原審の訴訟費用中証人Aに支給した六分の一証人B、同C、同D、同E
に支給した各九分の一及び証人Fを除いたその余の証人に支給した各十一分の一を
被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人関原勇、同柴田睦夫両名共同作成名義の控訴趣意書記
載のとおりであるから、これをここに引用しこれに対して次のとおり判断する。
 論旨第一点について。
 原判決がその理由において、判示第三の後段の事実として、「(前略)被告人は
G等多数と共に同会場(大韓民国H団I支部結成式会場)内に故なく侵入し以つて
元J連側多数の威力を示した為右威圧に押されて会場内のL団員は結成式の開始に
至らない前に場外に退去するを余儀なくせられ以つて大衆の威力を用いて前記H団
I支部の業務を妨害し」との旨を認定判示し、これに対して、刑法第二百三十四条
を適用していることは所論のとおりである。しかして、所論は、右は、原判決が刑
法第二百三十四条の解釈適用を誤つたものである旨を主張するので、審究するに、
刑法第二百三十四条にいわゆる業務とは、継続して従事する仕事をいうものと解さ
れるが、ここに継続するというがためには、継続して行う意思の下になされるもの
であることを要すると解されるのであるから、仕事の性質上、継続して行うことの
できないようなものは、右法条にいわゆ<要旨>る業務の観念に属しないものという
べく、従つて、ある団体の結成式というような行事は、その性質上、一回
一時的なものであつて、何ら継続的な要素を含まないものであるから、これをもつ
てその団体の業務であるとすることはできないものといわなければならない。しか
るに、原判決においては、前示のように、被告人が大韓民国H団I支部の結成式の
挙行を妨害したとの事実を認定し、その所為が同支部の業務を妨害したことに該当
する旨を判示した上、これに対して刑法第二百三十四条を適用しているのである
が、右のような結成式の挙行という行事が、同支部の業務にあたらないことは、前
示説明のとおりであるから、たとえ被告人において威力を用いてこれを妨害したと
しても、その行為は、刑法第二百三十四条所定の威力業務妨害罪を構成しないもの
といわなければならない。してみれば、原判決は、ひつきょう刑法第二百三十四条
の解釈を誤つた結果、罪とならない事実に対し、不法に同法条を適用したものとい
うべく、この法令適用の誤が、判決に影響を及ぼすべきことは極めて明らかである
から、原判決は、この点において到底破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて、爾余の各論旨に対する判断をすべて省略し、刑事訴訟法第三百九十七条
第一項こ則り、原判決を破棄した上、同法第四百条但書を適用して、更こ次のとお
り自ら判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、昭和二十四年九月団体等規正令により解散の指定を受けた元J連盟員
であつたものであるが、J連盟K支部が置かれてあつた千葉県海上郡a町bを中心
として、元J連盟と大韓民国L団とは、互に相反目し、両者の間こ、しばしば、あ
つれきを生していたところ、同県山武郡c町の元J連に属していた朝鮮人間に、漸
くL団の勢力がしん透し始め同町居住のN、O、Pらはこれこ入団し、右L団のM
支部を結成しようとする動きを示したので、元J連員であつた被告人及び元J連K
支部委員長であつたGらは、かかる一部朝鮮人らの動きをもつて、平地に波らんを
まき起こすものであるとし、又、右Nらが、素行上兎角の批評のある人物でもあつ
たため、これに反対し、右同人らにその中止方を申し入れたが、結局右結成式は、
主として前記bのL団員多数の参加応援をえて、昭和二十五年五月三十日、同町Q
劇場において挙行されることとなつたので、被告人及び前示Gらは、この上は、元
J連員多数の力によつてこれを阻止するより外はないと考え、同町居住の者のみな
らず、千葉県下各地に居住する元J連員に対し、同町への来集を求め、これに応じ
て来集した元J連員は、被告人らを加えてその数百数十名に達していたところ、
 第一、 昭和二十五年五月三十日正午過ごろ、同県K支部等よりの応援参加をえ
て、前掲O、Nら合計約三十名のL団員が、前示c町de番地所在のQ劇場(管理
人R)を借り受け、同所において、L団M支部結成式を挙行するに当り、右L団側
が、会場附近に続々来集したJ連側による妨害を恐れ、会場入口受付を設けて、こ
れを場内に入れさせないように努めたのに対し、多数をたのんで、右結成式を妨害
阻止しようとする目的をもつて、右Gら多数の元J連員と共に、L団側の制止をき
かず、右劇場入口より同会場内に押し入つて、故なく前示Oらの看守する同劇場に
侵入し、
 第二、 同日、L団側は、前記会場において結成式終了後、N、O、Pらが、T
外当日の参加者約三十名を招き同町f番地S旅館において、同旅館の二階全部を借
り受け、前記支部の披露兼懇談会を開催中、これを知つた元J連員ら約百名位が、
同旅館前に来集して気勢をあげ、前記G外三名の者が、その代表者としてL団側と
双方の主義主張につき討論すべく、前記Tにこれを申し込んでその承諾をえ、同日
午後四時ごろ、右二階に上り、同人と激論を交わしていた際、被告人は、U外多数
と共に、右Gらに加勢するため、L団側の承諾をえないで右二階に上りこんで、故
なく前掲Nらの看守する同旅館二階に侵入し、
 第三、 同年六月三日、前掲D、N、O、Pらが、再び前示L団員多数の参加応
援をえて、千葉県山武郡g町h番地V公会堂(管理人W)を借り受け、同所におい
て、大韓民国H団I支部の結成式を挙行することになつたので、被告人は、前記G
らと前記のような元J連員の来集を求め、これに応じて集まつた元J連員約百四、
五十名と共に、既に会場内に入つていたL団員に対し、入場方を要求したが、拒絶
されたので激こうし、同日正午ごろ、右結成式が開始されようとするにあたり、
X、Yら多数の元J連員らと共に、L団員の制止を排除し、右公会堂正面入口より
同会場内に入りこみ、故なく右Dらの看守する同公会堂に侵入し、 第四、 右元
J連側は、同日午後二時ごろに至るまで引き続き同会場を多数で占拠しているう
ち、同公会堂に不慮の突発事に備えて警官隊が来着し、横芝警察署長Z及び同公会
堂管理人Wから、こもごも退去を求められ、又その際出動した同町消防団副団長A
1から、双方の解散を提唱されたこともあつて、結局これを諒承し、同会場から退
場したところ間もなく、これと入れ替えにL団側が同公会堂横入口より入場して、
結成式を始めたため、場外、に出た元J連側は、警察官に対し、その措置の不当を
鳴らし、我々をも入場させろと口々に要求したが、警官隊は同公会堂の周囲を警護
して、前記借用者の意見に反するとしてこれを阻止する態度に出たので、これに激
こうし、警官の制止もきかず、無理にも会場内に入りこもうとして、多数で同公会
堂横入口及び窓辺に押し寄せ、その際、同日午後二時三十分ごろ、被告人は、巡査
Cの頭部を手拳で殴打するの暴行を加えて、同巡査の職務の執行を妨害し、間もな
く、被告人は、Gら多数と共に、前記公会堂横入口又は窓口より同会場内に乱入し
て、故なく前示Dらの看守する同公会堂に侵入し、
 たものである。
 (証拠説明省略)
 (法令の適用)
 法律に照らすと、被告人の判示所為中第一ないし第四の各建造物侵入の点は、い
ずれも刑法第百三十条、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に、第四の公務執行
妨害の点は、刑法第九十五条第一項に各該当するところ、いずれも、所定刑中懲役
刑を選択し、以上は、同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本
文、第十条に則り犯情の最も重いと認める公務執行妨害罪につき定めた刑に法定の
加重をした刑期範囲内において、被告人を懲役一年に処し、原審の訴訟費用につい
ては刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い、主文第四項掲記のとおり被告人に
これを負担させることとする。
 なお、本件公訴事実中「被告人が、判示第三のとおり、故なくDらの看守するV
公会堂に侵入して、同公会堂を占拠し、判示H団I支部の結成式を不能ならしめ、
以て、団体の威力を用いて、D等の前記H団I支部結成の為の業務を妨害したもの
である。」との点については、さきに弁護人の論旨第一点に対する判断において説
示したとおりの理由により、罪とならないものであるけれども、右は、判示第三の
建造物侵入の罪と刑法第五十四条第一項前段の関係があるものとして起訴されたも
のと認められるので、主文において特に無罪の言渡をしない。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 浅沼武)

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