弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴人等代理人は主文同旨の判決を求め、
 被控訴人代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人等の負担とす
る。」との判決を求めた。
 被控訴人の主張は、以下に補充する外、原判決事実記載と同一であるから、ここ
にこれを引用する。
 被控訴人代理人は、
 「被控訴人は、控訴人Aとの間に、一部弁済により控訴人Aの本件債務残額が当
初の元金債務額以下になつた場合でも、本件家屋を債務残額と同額とみなしてこれ
を右残存債務の代物弁済として取得できる、旨の代物弁済予約を締結した。
 控訴人等主張の公序良俗違反の主張事実を否認する。本件家屋は、箕面市役所備
付の固定資産課税台帳に、昭和三四年度固定資産税価格四九一、〇〇〇円と記載さ
れている上、昭和三三年一一月一八日受付第五六三一号を以て住宅金融公庫のため
債権額金三二〇、〇〇〇円利息年五分五厘遅滞後の損害金金一〇〇円につき一日金
四銭の約定の先順位の抵当権設定登記がなされており、昭和三四年七月一日当時右
被担保債権は全く払われていなかつた。」
 と述べ、
 控訴人等代理人は、
 「被控訴人主張の事実中、被控訴人が昭和三三年一一月一九日控訴人Aに対し金
三五〇、〇〇〇円を弁済期一限同年一二月一八日の約定(ただし利息は年四割の割
合)で貸与したこと、被控訴人が弁済期限を昭和三四年三月末日まで延期したこ
と、控訴人Aが、同年一月三一日に元金一五〇、〇〇〇円、同年三月末日までに同
日までめ利息の各支払をしたが、その余の支払をしていないこと、控訴人A所有の
本件家屋について被控訴人主張の仮登記及び本登記がなされていることは認める。
 被控訴人主張の、本件家屋を債務残額と同額とみなしてこれを右残存債務の代物
弁済として取得できる旨の約定の成立、代物弁済予約完結の意思表示の存在、従つ
て被控訴人の本件家屋所有権取得を否認する。
 仮りに、被控訴人主張の、代物弁済予約及び予約完結の意思表示がなされたとし
ても、本件家屋の時価は金一、二〇〇、〇〇〇円相当であり、右代物弁済予約は、
被控訴人が控訴人Aの窮迫に乗じ締結されたものであるから、公序良俗に反し、無
効である。」
と述べ、
 証拠として、被控訴人は甲第一号証、第二号証の一、二、第三、第四号証を提出
し、
 控訴人等は甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 被控訴人が昭和三三年一一月一九日控訴人Aに対し金三五〇、〇〇〇円を弁済期
同年一二月一八日の約定で貸与したこと、右貸付日に控訴人A所有の本件家屋につ
いて代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされたこと、被
控訴人が弁済期限を昭和三四年三月末日まで延期したこと、控訴人Aが同年一月三
一日に元金一五〇、〇〇〇円、同年三月末日までに同日までの利息の各支払をした
が、その余の支払をしていないこと、同年一〇月八日本件家屋について前記仮登記
がなされたこと、以上の事実は当事者間に争がない。
 被控訴人は、「被控訴人は、控訴人Aとの間に、一部弁済により控訴人Aの本件
債務残額が当初の元金債務額以下になつた場合でも、本件家屋を債務残額と同額と
みなしてこれを右残存債務の代物弁済として取得できる、旨の代物弁済予約を締結
した。」と主張する。
 しかし、甲第二号証の一(通知書)のこの点に関する記載内容は、被控訴人の一
方的主張であつて、これのみでは被控訴人主張の約定の成立を認定し難く、この点
に関する契約証書である抵当権設定金員借用証書(甲第一号証)第六条には、「債
務者は債権者に対し本契約に依る抵当権の目的たる物件に対し代物弁済に依る所有
権移転請求権保全の仮登記を為すこと、若し債務不履行のときは代物弁済として其
の所有権を移転することを承諾する、且之に必要なる書類を予め債権者に交付し置
くことを特約したり、但し本契約の抵当権を実行すると代物弁済による権利消滅の
方法を採るとは一に債権者の自由なる選択に依るも異議のないこと。」と記載して
あるのみであつて、これによつて被控訴人主張の約定の成立を認定することはでき
ない。他に右事実を認めるに足る証拠はない。
 <要旨>ところで、貸金債権の担保のために、不動産に抵当権を設定するととも
に、債権者の選択により、その債権の弁済に代えてその不動産の所有権を債
権者に移転する、いわゆる代物弁済一方の予約を締結したが、一部弁済により債権
残額が当初の貸金元金額以下になつた場合、本件の如く、この場合に関する特別の
約定の成立の認められないとき、債権者は、当初の貸金元金額と債権残額との差額
を債務者に返還するという債務負担付で、残存債権の代物弁済として不動産の所有
権を取得できる趣旨の代物弁済予約完結権を有する、と解するのを相当とする。
 よつて、被控訴人が上記認定の趣旨の予約完結権を行使したか否かについて判断
する。
 被控訴人は、「被控訴人は、控訴人Aに対し、昭和三四年七月一日到達の内容証
明郵便をもつて予約完結の意思表示をした。」と主張する。
 成立に争ない甲第二号証の一、二によれば、被控訴人より控訴人A宛の昭和三四
年七月一日到達の内容証明郵便物たる通知書には、「通知人は昭和三三年一一月一
九日貴殿に対し金三十五万円也を弁済期日を昭和三三年一二月一八日利息年一割八
分と定め元金と同時に利息を一括支払を為すこと期限後は違約損害金として金百円
につき日歩九銭八厘の定めにて貸付けたる処、貴殿は元金中へ金十五万円也を支払
いたるのみにして残元金二十万円及び之に対する昭和三四年四月一日以降同三四年
六月末日迄日歩九銭八厘の割合なる損害金一万七千八百三十六円也以上合計金二十
一万七千八百三十六円也は今に支払なし、然る処当初の契約によれば、貴殿は右債
権を保全する為貴殿所有にかかる本件家屋に対し第二順位の抵当権設定登記及び債
務不履行のときは残債務の代物弁済としてその所有権を通知人に移転する旨約諾な
されたるにより、通知人は右債権二十一万七千八百三十六円也の弁済に代え右不動
産を以て代物弁済ありたるものとし通知人之が所有権を取得したので此段御通知申
上候。」と記載されていることが認められる。右記載によれば、右通知書による意
思表示は、被控訴人主張の代物弁済に関する約定の成立を前提として、その約定に
基く完結の意思表示としてなされており、当初の元金額と債権残額との差額を返還
する債務を負担しない意思を明かに示している。
 右通知書による意思表示のように、当初の元金額と債権残額との差額を返還する
債務を負担しない意思を示した完結の意思表示は、上記認定の趣旨の予約完結権行
使の効果を発生する完結の意思表示と認めることはできない。(これを認めると、
被控訴人にその意思に反して当初の元金額と債務残額との差額を返還する債務を負
担させることになる。)
 よつて、右通知書による意思表示により本件家屋の所有権を取得したことを前提
とする、被控訴人の本訴請求は、その余の判断をなすまでもなく、失当であるか
ら、これを棄却すべく、これと同旨でない原判決を取消し、民事訴訟法第八九条第
九五条を適用し、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 石井末一 裁判官 小西勝 裁判官 井野口勤)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛