弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小田切秀の上告理由第一点および同成富信夫の上告理由第一点につい
て。
 指定生産資材割当規則に所謂割当証明書の交付は指定生産資材の引渡債務に対す
る譲受人の先践義務ではないとする原判示は相当と考えられるから、これと異なる
見解に出づる上告代理人小田切秀の上告理由第一点は理由がない。そして、上告人
は原審において、上告人に対する被上告人の本件割当証明書の交付が先践義務であ
ることを理由としてのみ被上告人主張の解除の効力を争い、上告代理人成富信夫の
上告理由第一点所論の事実を主張した形跡は記録上認められないのみならず、右主
張は上告人において本件木材引渡義務につき履行の提供をしても、被上告人におい
て検知の上その引渡を受けるに当り、右木材についての割当証明書を入手し得ない
事情にあつたことを前提とするものと認められるところ、右の事実は原審の何等確
定するところでない。従つて所論は結局原審の認定しない事実を前提とするものに
外ならないから採用の限りでない(なお論旨は原判決が憲法二九条に違反すると主
張するが右は畢竟前記の所論を主張するに帰着し違憲の主張には当らない)。
 上告代理人成富信夫の上告理由第二点について。
 所論は、統制経済を論じ本件木材は清水市で消費せらるべきもので沓掛で処分す
べきものでないというが、かような主張は原審の主張判断を経ない事項であるから
採用しえない(のみならず所論のように消費地が清水市であると特定したものとは
記録上認められない)。
 原判決は本件売買においては本件木材受渡場所が信越線a駅土場と定められてい
たことを確定した上、被上告人は残素材についての上告人の債務不履行により引渡
現地においてこれを処分して得べかりし利益を失つたことによる損害の賠償を求め
る旨の被上告人の主張に基き所論損害賠償の請求を容認しているものであることが
記録上明らかであるから原判決には当事者の主張しない事項につき判断した違法が
あるということはできない。其の他の論旨は上告人が原審において主張もせず従つ
て原審の認定しない事実を前提とするものであつて採用できない。
 同第三点について。
 所論は「特別事情予見」について云々するが原判決は上告人の債務不履行を理由
とする被上告人の本件木材売買契約解除を有効と認め右解除当時における右木材の
時価相当額を標準として、木材販売業者である被上告人に通常生ずべき損害額を算
定しているものであると認められる。所論はこれと異なる見解を前提として原判決
の違法を主張するものであるから排斥を免れない。
 上告代理人小田切秀のその他の上告理由は、原審における証拠の採否、事実認定
を争うか原審の認定しない事実に基き原判決の違法を主張するもので採用の限りで
ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

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