弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1原告らの各請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告ら
(1)被告が原告らに対する公正取引委員会平成▲年(判)第▲号私的独占
の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反事件につき平成20年7月2
4日付けでした審決を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2被告
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,被告が,原告株式会社P1(以下「原告P1」という,原告。)
P2株式会社(以下「原告P2」という,原告P3株式会社(以下「原。)
告P3」という)及び原告P4合同会社に吸収合併される前のP5株式会。
社(以下「原告P5」という(以下,これら4社を合わせて「原告ら」。)
又は「原告ら4社」という)並びにP6株式会社(以下「P6」という)。。
の5社(以下,原告ら4社とP6を合わせて「5社」という)が,いわゆ。
る着うた提供事業(着うた提供事業とは,音楽用コンパクトディスク(以下
「CD」という)発売用等に製作された原盤を使用して,原盤に録音され。
た歌声等の楽曲(音源)の一部を携帯電話の着信音(着うた)として設定で
きるように配信する事業である)に関し,5社の共同出資により運営され。
る会社(P7株式会社。以下「P7」という)に着うた配信業務を業務委。
託する一方,共同して,他の着うた提供業者に対してはその事業のために必
要な楽曲の原盤権(著作権法(昭和45年法律第48号)96条ないし97
条の3に規定する権利に含まれる)の利用許諾を拒絶している行為(以下。
「本件違反行為」ともいう)が不公正な取引方法(昭和57年6月18日。
公正取引委員会告示第15号。以下「本件告示」という)1項1号に該当。
し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成17年法律第3
5号)附則2条の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改
(「」正前の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律以下独占禁止法
という)19条の規定に違反するものであるとして,平成17年3月24。
日,5社に対し勧告(平成▲年(勧)第▲号。以下「本件勧告」という)。
を行ったが,本件勧告を原告ら4社が応諾しなかったため(P6は本件勧告
を応諾したため,平成17年4月26日,本件勧告と同趣旨の審決(平成▲
年(勧)第▲号)を受けた,審判手続が開始され,当該審判手続を経た。)
後,平成20年5月23日付け審決案が出されたが,原告らが異議を申し立
てたため,平成20年7月24日,被告は,5社の行為が本件告示1項1号
に該当し,独占禁止法19条の規定に違反するものであると認定して,同法
54条1項に基づき排除措置を命ずる審決をしたところ(平成▲年(判)第
▲号。以下「本件審決」という,原告ら4社が本件審決の取消しを求め。)
て提訴した事案である。
2本件審決の主文,本件審決及びその引用に係る審決案が認定した事実の要
旨,判断の要旨及び法令の適用の要旨は,以下のとおりである(被審人は,
本件における原告である。。)
(一)本件審決の主文
被審人4社は,共同して,原盤に録音された演奏者の歌声等の一部を1
携帯電話の着信音として設定できるよう配信する業務(P7に委託する
方法により行うものを除く)を行い又は行おうとする事業者に対し,。
原盤に録音された演奏者の歌声等の一部を送信可能化する権利等(以下
「原盤権」という)の利用許諾を行わないようにしている行為(ただ。
し,被審人P1にあっては,株式会社P8,株式会社P9,株式会社P
10,株式会社P11,株式会社P12,株式会社P13,等の原盤権
を有する自社の子会社らをして,当該利用許諾を行わないようにさせて
いる行為)を取りやめなければならない。
2被審人4社は,それぞれ,次の事項を被審人4社のうち自社を除く3
社並びにP6及びP7に対し通知するとともに,自社の従業員及び第1
項記載の業務を行い又は行おうとする事業者に周知しなければならな
い。これらの通知及び周知の方法については,あらかじめ,公正取引委
員会の承認を受けなければならない。
(1)第1項に基づいて採った措置
(2)今後,第1項の行為と同様の行為を行わず,被審人4社がそれぞ
れ自主的に,原盤権の利用許諾の可否(ただし,被審人P1にあって
は,第1項記載の自社の子会社らをして当該利用許諾を行わせるか否
か)を決定する旨
3被審人4社は,今後,それぞれ自主的に,原盤権の利用許諾の可否(
ただし,被審人P1にあっては,第1項記載の自社の子会社らをして当
該利用許諾を行わせるか否か)を決定しなければならない。
4今後,被審人4社は,第1項の行為と同様の行為を行うことがないよ
う,それぞれ,各社における原盤権の利用許諾に関する業務の担当者に
対し,独占禁止法の遵守に関しての行動指針に基づく同法に関する研修
及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなけ
ればならない。この措置の内容については,あらかじめ,公正取引委員
会の承認を受けなければならない。
5被審人4社は,第1項,第2項及び前項に基づいて採った措置を速や
かに公正取引委員会に報告しなければならない。
(二)認定した事実の要旨(認定に供された証拠を末尾に掲げる)。
1着うた提供事業について
,,(1)着うた提供事業とはCD発売用等に製作された原盤を使用して
()原盤に録音された演奏者の歌声等の一部を携帯電話の着信音着うた
として設定できるように配信する事業である。着うた提供事業は,平
成14年12月にP14株式会社(以下「P14」という)の携帯。
電話サービスのユーザー向けに初めて開始され,以降,P15株式会
社現P16株式会社及び株式会社P17(以下P17という)()「」。
の携帯電話サービスのユーザー向けにも広がった(査第14号証な。
いし第17号証,第25号証)
(2)着うた提供事業に使用される原盤はレコード会社等が製作すると
ころ,原盤の製作者は,著作権法上,著作隣接権者として保護され,
原盤権を有している(以下,原盤の製作者等原盤権を有する者を「原
盤権者」という。したがって,着うた提供事業において,ある楽。)
曲を着うたとして提供するには,着うたとして提供する楽曲の作詞家
や作曲家などの著作権者に対して著作物の利用許諾料を支払うほか,
。,原盤権者に対して原盤権の利用許諾料を支払う必要があるそのため
原盤権者自身が着うた提供事業を行う場合には,社団法人P18(以
下「P18」という)等を通じて当該楽曲の著作権者に著作物の利。
用許諾料のみを支払えば足りるのに対し,原盤権者以外の者が着うた
提供事業を行うには,着うたとして提供する楽曲の著作物の利用許諾
料を著作権者に支払うほか,原盤権者又は原盤権者から原盤権の管理
を受託している者(以下,これらの者を合わせて「原盤権者等」とい
う)から当該楽曲の原盤権についての利用許諾を得て自ら着うたを。
配信するか,利用許諾に代えて,原盤権者等との間で当該楽曲につき
着うた配信業務の委託契約を締結し,原盤権者等から委託を受けた受
託者として着うたを配信するか,の方法により事業を行うことになる
(以下,原盤権の利用を許諾することを「利用許諾」といい,利用許
諾に係る契約を「利用許諾契約」という。また,着うた配信業務を委
託することを「業務委託」といい,業務委託に係る契約を「業務委託
契約」という。(査第18号証ないし第20号証,第23号証,第。)
52号証ないし第55号証,第76号証,第131号証,第163号
証ないし第165号証)
なお,着うた提供事業の開始に先立ち,携帯電話を利用したサービ
スとして,MIDIと称される規格(電子楽器とコンピュータを接続
するための規格。の略)に従って製musicalinstrumentdigitalinterface
作され記録された楽曲の電子音を携帯電話の着信音としてユーザーに
(「」。),配信する事業以下着メロ提供事業というが行われていたが
この着メロ提供事業は,CDに録音された演奏者の歌声等の一部を配
信するものではなく,楽曲のメロディを電子音にしたものを配信する
ものであるから,同事業を行うにはP18等を通じて著作権者に著作
物の利用許諾料を支払えば足り,そのため,比較的容易に事業を営む
ことが可能であった(査第20号証,第37号証,第54号証,第。
55号証,第80号証,第87号証)
(3)着うた提供事業は,携帯電話におけるインターネットを利用した
,,,事業であり携帯電話の画面はパソコンなどに比べて極端に小さく
サイトの全体を直ちに見渡しづらいこと,利用者は,カテゴリー別に
区分けされたメニューリストから着うたカテゴリー・サイト(アクセ
ス数の多い順に並べられた着うた提供業者の一覧サイト)に移り,さ
らに着うたカテゴリー・サイトから着うた提供業者のサイトにたどり
着くのが通常であること,着うたは娯楽商品としての性格上,ユーザ
ーがその検索にコストや時間をかけようとせず,ユーザーの多くは,
中学生・高校生から20歳代前半までの者であるので,着うたをダウ
ンロードする予算に限界があること,などの事情から,着うたのユー
ザーのアクセスは,着うたカテゴリー・サイトの上方に位置付けられ
ている着うた提供業者のサイトに集中し,着うたカテゴリー・サイト
の下方に位置付けられ,携帯電話の画面のスクロールを行わなければ
表示されないような着うた提供業者のサイトにはほとんど集まらず,
このような下方の位置しか確保できないことは,着うた提供業者間の
競争において致命的となるといった特殊性がある(査第17号証,。
第21号証,第37号証ないし第51号証,第229号証,第231
号証,審B第6号証)
2被審人P1について
(1)被審人P1とその関連会社の状況
被審人P1(平成15年4月1日に同一商号の別会社(以下「P1
9」という)から新設分割された。同年3月31日以前はP19を。
指す。以下同じ)は,遅くとも平成14年3月31日以降,いずれ。
も音楽映像ソフト等の企画・製作・販売を主な事業内容とし,楽曲の
原盤権を保有する株式会社P20(平成15年3月31日以前の商号
),,,,は株式会社P21株式会社P8株式会社P9株式会社P10
株式会社P11(平成15年4月1日,株式会社P9より新設分割に
よって設立された,株式会社P12及び株式会社P13の発行済。)
株式の総数を保有することにより上記各社の経営管理を行っている。
また,これら以外にも,楽曲の原盤権を保有する被審人P1の子会社
(その総株主の議決権の過半数を被審人P1が保有する会社)の経営
管理も行っている(以下,被審人P1が株式を保有することにより経
営管理を行う会社を総称して「P1グループ会社」といい,そのうち
原盤権を保有する被審人P1の子会社を総称して「レーベルカンパニ
ー」という(査第11号証,第12号証,第58号証,第22。)。
2号証)
(2)被審人P1の事業
被審人P1は,P1グループ会社と資本的にも人的にも密接な関係
,,を有し株式の保有により傘下会社の経営・管理を行う会社であって
株式会社P20,株式会社P8及び株式会社P10などのレーベルカ
ンパニーは,利用許諾の可否について,被審人P1の判断に従わなけ
ればならない関係にある。
そして,被審人P1は,自身で着うた提供事業を行うサイトを開
設していないものの,レーベルカンパニーの株式を保有していること
から,レーベルカンパニーによる利用許諾の可否につき,被審人P1
が意思決定し,レーベルカンパニーは,この意思決定に基づき,後述
する被審人4社及びP6が主な出資者となっているP7に業務委託を
する方法により着うた提供事業を行っている(査第38号証,第。
50号証,第57号証,第197号証,第222号証,第225号
証ないし第227号証,第251号証)
なお,各レーベルカンパニーとP7との業務委託契約は,各レー
ベルカンパニーに代わって,以前は株式会社P20が締結し,平成1
7年4月1日以降は株式会社P20の事業を承継した株式会社P22
が締結している(査第57号証,第222号証,審A第6号証,P。
23参考人)
3被審人P2について
(1)被審人P2の設立経緯等
レコード会社であったP24株式会社は,平成12年3月15日,
インターネット上で音楽配信等のネットビジネスを行う会社として,
51パーセントの出資をして,P25株式会社(以下「P25」とい
う)を設立した(なお,P24株式会社は,その後,平成15年3。
月にP25の株式を100パーセント取得した。P24株式会社。)
は,平成16年10月1日,その商号をP26株式会社に変更すると
ともに,同日付けで新設分割を行い,P24株式会社と同一商号のP
27株式会社(以下「P27」という)を設立し,自社が行ってい。
,。,,たレコード製作事業をP27に承継させたこれによりP25は
P27と親会社(P26株式会社)を同一にすることとなった。P2
7は,平成17年4月1日,その商号をP28株式会社(以下「P2
8」という)に変更した。。
,,,平成19年4月1日P25は同じくP26株式会社の子会社で
音楽・映像パッケージの企画・製造・販売等を主な事業内容とするP
29株式会社(被審人P2)に吸収合併され,インターネット上での
音楽配信等のネットワークビジネスは,同社が承継することとなり,
これに伴い,本件審判における被審人P2の地位も同社が承継した。
そして,同日,同社は,商号を現在の「P2株式会社」に変更した(
,,。)。以下被審人P2とは上記吸収合併前はP25を指すこととする
(査第4号証ないし第9号証,第60号証,第76号証)
(2)被審人P2の事業
被審人P2は,肩書地に本店を置き,P7を通じて又は自社が運営
するサイトである「P30」において,着うた提供事業を営む者であ
。,,,るただし被審人P2自身は楽曲の原盤権を保有していないため
上記着うた提供事業を行うために,楽曲の原盤権を保有するP28(
平成17年3月31日以前はP27,平成16年9月30日以前はP
24株式会社)やそのグループ会社と利用許諾契約を締結し,着うた
を配信していた。また,被審人P2は,上記のほか,P28がグルー
プ会社以外の他社から利用許諾を受けた楽曲や被審人P2が直接グル
ープ会社以外の他社と利用許諾契約を締結した楽曲についても,自社
サイトやP7を通じて着うたとして配信していた。
なお,被審人P2は,着うた提供事業に先立ち,平成12年末ころ
から自ら開設したサイトにおいて,自社及び自社グループのアーティ
ストの楽曲のみを利用した着メロ提供事業も行っていた(査第60。
号証,第77号証,第217号証,第218号証,審B第1号証,P
31参考人)
4被審人P3について
被審人P3は,肩書地に本店を置くレコード会社であり,自社が開設
した「P32」という名称のサイトやP7を通じて着うた提供事業を営
む者である。なお,被審人P3は,着うた提供事業に先立ち,平成13
年1月末ころから,自社に所属するアーティストの楽曲に限らず,着メ
ロ提供事業を開始していた(査第4号証,第64号証)。
5被審人P5について
被審人P5は,肩書地に本店を置くレコード会社であり,自社で開設
したサイトは有しないものの,P7を通じて着うた提供事業を営む者で
ある(査第2号証,第62号証)。
6P6について
,,P6は東京都港区α×番17号に本店を置くレコード会社であって
自社で運営するサイトは有しないものの,P7を通じて着うた提供事業
を営む者である。なお,着うたとして配信される楽曲で,P6が原盤権
を有していないものについては,同社は,楽曲の原盤権を有する会社と
それぞれ利用許諾契約を締結した上で着うた提供事業を行っている(。
,,,,)査第13号証第65号証第85号証第220号証第221号証
7P7の設立等について
(1)P7設立以前の携帯電話向けサービスの状況
CDの販売額が平成10年を頭打ちにして下落する一方,遅くとも
平成13年5月ころには,着メロ提供事業は,インターネットの普及
や着メロ提供業者はP18等を通じて著作権者に著作物の利用許諾料
を支払えば足りることなどから,広く普及していたが,着メロ提供事
業においては,レコード会社が多大な苦労と費用をかけて製作した楽
曲が着メロとしてどれほど利用されようとも,原盤権者たるレコード
会社は何ら直接的な利益を得られなかったことから,レコード会社の
中には,着メロの価格競争が激化して楽曲が安売りされていること等
について不満を抱く者も多かった(査第8号証,第23号証,第7。
4号証,第76号証,第78号証,第80号証,第97号証,第10
1号証,第207号証,P23参考人)
(2)被審人P2のP19及び被審人P3に対する提案及び検討経過
,,()前記の状況の下被審人P2はレーベルすなわちレコード会社
主導の着メロ提供事業を共同して営むため,P19及び被審人P3に
対し,平成13年3月1日ころ,被審人P2,P19及び被審人P3
の3社(以下「被審人3社」という)が出資して,共同事業会社を。
。(,,,設立することを提案した査第11号証第12号証第72号証
第74号証,第75号証,第77号証,第91号証)
被審人3社は,平成13年5月8日ころ,それまでの検討結果を踏
まえ,被審人3社連名の共同事業会社設立の検討資料(携帯端末市「
場における共同事業会社設立案Ver.6」と題する資料)を作成し,更
に具体的な事業計画等について検討を行った(以下,このとき配布さ
れた検討資料を「H13/5/8プレゼンテーション資料」という。H13/。)
5/8プレゼンテーション資料には「サードパーティの音楽コンテン,
ツ事業への参入が加速「∼事業化を目指し競争激化∼→<サード」,
パーティに参入されると>●業界を混乱させ,秩序を乱される,コン
テンツが生み出す利益の還流がない・・・→<キャリア主導のビジネ
スモデルになると>●業界を混乱させ,秩序を乱される」などの記載
や「<着メロ関連>⇒オフィシャル着メロの構築に向けた新ルール,
を三社間で協議し推進する①パッケージ発売前でのリリース許諾は自
社サイト,事務所サイトを除き他社サイトには許諾しない・・・」な
どの記載があった(査第8号証,第93号証)。
(3)被審人3社によるP7の設立
被審人3社は,平成13年5月14日ころにも,H13/5/8プレゼン
テーション資料とほぼ同一の内容の資料を作成し,検討を行った後,
同年7月3日,資本金9000万円を3社均等で出資し,①携帯電話
向けポータルサービスの企画・運営,②着信メロディサービスの企画
・運営,③携帯電話向け試聴サービスの企画・運営,④その他の携帯
電話向けサービスの企画・運営,などを主な事業概要として,P7を
設立した(査第71号証,第73号証,第81号証,第94号証,。
第95号証)
(4)被審人P5及びP6(以下,被審人P5及びP6を合わせて「2
社」という)のP7への参加経緯。
P6は,P7設立前の平成13年5月18日ころ,当時,被審人P
3の経営企画室次長(現,経営企画部長)であったP33(以下「被
審人P3のP33」という)から,被審人3社が共同して着メロ提。
供事業を開始することについて説明を受けた。このときP6に示され
たプレゼンテーション資料には「……レコード会社共同による着信,
メロディーサービスを企画……」していること「……3社の合計シ,
ェア率は,4割に達します。他業界では実現不可能な,レコード会社
にしかできないサービスを追求し,ご提供致します」などと記載され
。(,,,)ていた査第78号証第80号証審D第1号証P33参考人
被審人P5は,平成13年6月1日の少し前ころ,被審人P3のP
33から,被審人3社で携帯電話向けの音楽ポータルサイトを運営す
る共同事業会社を立ち上げる予定であることの情報を得た後,同年7
月ころ,被審人3社の担当者から,被審人3社の共同事業会社設立の
考え方について「レコード会社の為のモバイル端末向け共同サイト,
『P34(仮」と題するプレゼンテーション資料によって説明を)』
受けた。同プレゼンテーション資料には「◆背景◆」として「サ,,
ードパーティの音楽コンテンツ事業への参入が加速∼事業化を目指し
競争激化∼」と記された後「→<サードパーティに参入されると>,
コンテンツが生み出す利益の還流がない」などと記載されていた(。
査第79号証,第98号証,第103号証)
2社は,上記のとおり,被審人3社から共同事業会社設立の説明を
受け,社内で検討した結果,被審人3社が設立する予定の共同事業会
社に出資することを決し,平成13年8月,P7に対し,それぞれ1
500万円ずつを出資し,その後,平成14年3月までに1500万
円ずつの追加出資を行い,その結果,P7の資本金は,被審人3社及
び2社の5社による3000万円ずつの均等出資により構成されるこ
とになった(査第72号証,第79号証,第80号証,第101号。
証,第102号証,第104号証)
(5)P7の運営
ア役員及び従業員
被審人3社の役員又は従業員は平成13年7月3日ころから,2
社の従業員は同年8月17日ころから,P7の代表取締役社長,取
締役,監査役及び執行役員などに就いてP7の運営に当たるととも
に,5社それぞれにおける役職も兼務した(査第8号証,第23。
号証,第71号証,第76号証,第81号証,第88号証,第23
6号証)
イ意思決定機関
(ア)代表取締役
P7設立時の代表取締役には,被審人P2の取締役であったP
35(以下「被審人P2のP35」という)が就任し,その後。
は5社の輪番制で就任することとなった。平成17年2月14日
現在,被審人P2のP35の後任として,被審人P1のP36が
代表取締役を務めていた(査第8号証,第71号証,第88号。
証)
(イ)取締役会
取締役会は,P7として重要な決定事項を最終判断する機関で
あり,5社の役員又は従業員を兼務するP7の代表取締役,取締
役及び監査役の出席により,原則として月に1回開催される(。
査第8号証,第79号証ないし第81号証,第89号証)
(ウ)運営会議
運営会議は,P7の運営に関する事項の検討等を行い,実質的
な運営方針を決定する場である。運営会議は,原則として,週に
1度,毎週木曜日に開催される(なお,運営会議は「運営委員,
会」という名称で開催されていた時期があるが,会議における検
討事項や出席者等は異ならない。運営会議には,5社の役員。)
又は従業員を兼務するP7の代表取締役,取締役又は執行役員等
が出席しており,後記8(1)及び(3)に記載の運営会議には,いず
れも5社各社から最低1名が出席していた(査第8号証,第5。
3号証,第79号証ないし第81号証,第89号証)
(エ)集中ミーティング
集中ミーティングは,定期的に開催される運営会議において議
論を尽くせなかった事項や緊急な検討課題について,別途集中し
,。て議論する場でありその必要に応じて開催されるものであった
集中ミーティングには,運営会議と同様の構成員が出席する(。
査第8号証,第80号証,第172号証)
(オ)編集会議
編集会議は,P7で配信する楽曲などの音楽コンテンツを提供
しているレコード会社の実務担当者が集まり,各レコード会社が
新曲を発表するときやサイトで特集を組むときなどに自社の楽曲
をサイトの一番上に置いてほしいなどという要望事項を上程した
り,P7から各レコード会社に対する伝達事項(事務手数料の料
率の変更など)などの周知を行ったりするための会議であり,隔
週水曜日に開催されている。なお,P7では,編集会議に欠席し
たレコード会社には,後日,作成した編集会議の議事録などをメ
ールで送付することにより,会議の内容をP7に参加するレコー
ド会社全社に周知していた(査第8号証,第79号証ないし第。
81号証,第89号証)
(6)着メロ提供事業の開始
P7は,レコード会社としての特徴を活かして他の着メロ提供業
者との差別化を図ることを基本コンセプトとし,5社以外のP13
5協会に加盟しているレコード会社に対して,P7の利益はP7に
参加したレコード会社に還流できることを宣伝して楽曲の提供を求
め,多数の楽曲を集めた上,平成13年10月から,着メロ提供事
業を行うサイトを「P37」の名称で開設し,同事業を開始した。
(査第8号証,第78号証,第100号証)
8P7における着うた提供事業について
(1)着うた提供事業の開始
アP19は,当初,単独で着うた提供事業を始めようとして,P
17に対し同事業の説明を行ったが,P17から採算性の観点か
ら難色を示されたため,着うた提供事業を開始するには,複数の
レコード会社に参加してもらう必要があると考え,平成14年5
,,。月9日P7の運営委員会において着うた提供事業を提案した
イ平成14年5月9日開催の運営委員会には,P7の当時の代表
取締役であった被審人P2のP35,いずれもP7の当時の取締
役であったP19のP23,被審人P3のP33及びP38,P
6のP39及びP40,被審人P5のP41並びに被審人P2の
P42,等が出席した。着うた提供事業の開始に至るまでに開催
,,,された各運営委員会には上記の出席者がおおむね出席しまた
P7の各運営委員会には,5社各社から最低1名の出身役員(一
,。)。般に5社の役員又は従業員を兼務していたが出席していた
ウ平成14年5月9日開催の運営委員会においてP19から出席
者に配布されたプレゼンテーション資料(以下「H14/5/9プレゼ
ンテーション資料」という)には「携帯電話向け音楽ビジネ。,
スで最も普及しているのが着信メロディビジネス」であること,
着信メロディビジネスは「どのプロパーも容易に参入可能なビジ
ネスのため,競争は激化」していること「原盤を所持するメー,
カーとしての優位性を保つには『原盤を使用したコンテンツ』の
市場を開拓することが必須」であることなどが掲げられ,着うた
提供事業(当時は「新しいジャンル『着信楽曲」の名称で検討』
されていた)については,レコード会社におけるメリットとし。
て「レコード会社にしか出来ないビジネス」であること「価,,
格競争の起こらない安定したビジネス」であることなどが掲げら
れていた。上記運営委員会では,P19の上記提案に反対する意
見はなく,P7として着うた提供事業を前向きに検討していくこ
ととなった(査第18号証,第23号証,第53号証,第54。
号証,第76号証,第87号証,第106号証ないし第110号
,,,,)証第112号証第114号証第118号証第120号証
エP19は,平成14年7月25日開催の運営委員会において,
運営委員会のメンバーに対し,再度,着うた提供事業(当時は「
原盤着メロ提供事業」と呼称して検討されていた)について説。
明した。その際,配布された資料には,H14/5/9プレゼンテーシ
ョン資料と同様,着うた提供事業のレコード会社におけるメリッ
,「」,トとしてレコード会社にしか出来ないサービスであること
「価格競争の起こらない安定したビジネス」であることなどが明
記されていた。また,P19は,運営委員会において「レコー,
ド会社にしかできないサービスである。現状の着メロと違って価
格競争がおきないと考えられる」などの説明を行っていた(。。
査第109号証,第111号証ないし第113号証)
オ平成14年8月8日ころ開催したワーキングチームによるミー
ティング及び運営委員会では,着うた提供についての料金設定等
が話し合われた。料金設定を決定するポイントとして「1)市,
場ニーズに合致した価格設定⇒100円で市場を形成できるのか
2)参加メーカーの意向⇒音楽配信に類似するため,価格決定
権はメーカーにある」こと,などが検討された上,今後の進め方
としては,P7に既に音楽コンテンツなどを提供している5社以
外のレコード会社(以下「参加メーカー」という。なお,本件証
拠の中には「参加会社」と表示されている箇所もある)に対す。
るアナウンスを至急設定する必要があることなどが確認された。
(査第115号証ないし第117号証)
カ平成14年8月29日開催の運営委員会では,着うた提供事業
について,P7と各レコード会社との契約は業務委託契約とする
,,こと平成14年9月末までにビジネスモデルを決定するために
参加メーカーとの検討会を週次で行うこと,P7に未だ音楽コン
テンツを提供していないレコード会社(以下「非参加メーカー」
という)に対しては「対抗勢力などを排除する上でも,でき。,
るだけ早い時期に説明をする必要がある」こと,などの意見が出
。,,されたまた参加メーカーに対する説明資料の内容も検討され
参加メーカーに配布予定の説明資料案には,原盤着メロ提供事業
(着うた提供事業)のレコード会社におけるメリットして「レ,
コード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起こらない」,
安定したビジネス」などの文言が記載されていた上,同事業への
「」,「,参入戦術として複数のレコード会社が集結するP37が
レコード会社にしか出来ない原盤着メロのポータルサイトを展開
することで,早期にマーケットシェアを高め,参入障壁を築き,
競合他社が参入する余地を排除することを目指します」などの。
文言が記載されていた(査第53号証,第54号証,第120。
号証ないし第123号証)
キP7として着うた提供事業を行うことを決定し,参加メーカー
等に配布する資料を検討した運営会議等に出席していたのは,い
ずれも5社において部長職などの要職に就いている者であった。
(査第23号証,第76号証,第79号証ないし第81号証,第
87号証,第110号証)
クP7は,参加メーカーに対し,平成14年9月2日,着うた提
供事業開始について,第1回説明会を開催した。その際に参加メ
ーカーあてにP7が作成した「全く新たな音楽コンテンツ事業原
盤着メロ(仮称)事業開発提案」と題する資料(以下「H14/9/2
配布資料」という)には,本物の音を着信音にするサービスの。
レコード会社におけるメリットとしては「・レコード会社にし,
か出来ないビジネス・価格競争の起こらない安定したビジネス
」。,「」,……などの文言が記載されていたまた参入戦術として
「複数のレコード会社が集結するP37が,レコード会社にしか
出来ない原盤着メロのポータルサイトを展開することで,早期に
マーケットシェアを高め,参入障壁を築き,競合他社が参入する
」。余地を排除することを目指しますなどの文言も記載されていた
(査第18号証,第53号証,第54号証,第87号証,第11
0号証,第120号証ないし第131号証)
ケ平成14年9月11日及び同月18日,参加メーカーに対する
第2回説明会及び第3回説明会が開催され,配信価格の決定権は
各レコード会社にあること,各レコード会社はP7と業務委託契
約を締結すること,配信価格は100円を目安とすること,P7
への業務委託手数料として配信価格の45パーセントを徴収し,
「レーベル売上」を55パーセントとすること,スタート時楽曲
,,数として目標を500曲と設定しP7の出資会社である5社は
目標楽曲数を70曲として,可能な限りのキラーコンテンツ(人
気楽曲)を用意すること,などが説明された(査第18号証,。
第53号証,第54号証,第130号証ないし第136号証,第
138号証ないし第140号証)
コP7は,非参加メーカーに対しても,H14/9/2配布資料とほぼ
同一の内容の「全く新たな音楽コンテンツ事業着信ミュージッ,
ク(仮称)事業開発提案」と題する平成14年10月作成の説明
資料を郵送にて配布した。同資料には,レコード会社におけるメ
,「」リットとして着うたがレコード会社にしか出来ないビジネス
であり,かつ「価格競争の起こらない安定したビジネス」であ,
ること,新市場形成戦略・参入時期として「……早期参入によ,
る市場寡占化がポイントと」なること,音楽総合ポータルサイト
へのステップ・参入戦術として「複数のレコード会社が集結す,
るP37が,レコード会社にしか出来ない着信ミュージックのポ
,,ータルサイトを展開することで早期にマーケットシェアを高め
,」,参入障壁を築き競合他社に対する優位性の確保を目指します
などの文言が記載されていた(査第53号証,第54号証,第。
147号証,第152号証,第153号証)
サP7は,着うた提供事業を始めるにあたり,5社それぞれと,
同一内容の業務委託契約を締結した。同業務委託契約書には,5
社各社は,P7に対し,着うた提供事業で配信することになる音
源をP7が管理するサーバーへ蓄積及び保管管理すること,同音
源は5社各社が定める販売価格で利用者へ配信すること,などの
業務について,非独占的に委託するものであることが明記されて
いた(査第82号証ないし第85号証)。
シP7は,平成14年12月3日,5社及び他のレコード会社か
,「」ら522曲の楽曲の提供を受けP7が運営するサイトP43
において,着うた提供事業を開始した(ただし,P14による配
信事業は,同月5日に開始された(査第14号証,第53号。)。
証,第219号証,第223号証,第252号証)
P7に対する業務委託手数料は,着うた配信料金に対する比率
として,着うた提供事業開始当初は45パーセントであったが,
着うたのダウンロード数が予想以上に好調であったことから,平
成15年4月から35パーセントに改定され,平成16年10月
以降,25パーセントまで下げられた(査第22号証,第86。
号証,第87号証)
(2)着うた提供業者数
平成14年12月に着うた提供事業が開始された後,着うた提供
業者数は順次増加し,平成16年10月末現在,市場全体では約1
30社に達している。この約130社のうち,P7を通じて着うた
を提供している業者の数は,平成14年12月以降は,5社に加え
て徐々に増加し,平成16年10月末現在,27社になっている。
(査第26号証,第27号証,第28号証,第30号証ないし第
36号証,第129号証ないし第131号証)
(3)アフィリエート戦略
一般的に,アフィリエートとは,サイトに他の企業サイトへのリ
ンクをはり,当該サイトの閲覧者がそのリンクを経由して当該他の
企業サイトを閲覧し,当該他の企業サイトで会員登録や商品購入な
どの取引が成立すると,当該他の企業からリンク元のサイトの主催
者に報酬が支払われるという広告手法のことをいう。
アアフィリエート戦略の背景
平成14年12月に開始されたP7の着うた提供事業は,順調
に業績を伸ばしていたため,平成15年3月ころ以降になると,
P7以外の事業者も,着うた提供事業を開始し又はその開始を検
討するようになり,5社に対して利用許諾の申入れ(特に携帯電
話のユーザーに人気のヒット曲など)をする事業者が増えてきて
いた。
また,P7に対して楽曲の提供を要望する事業者もあった。P
7は,5社及び他のレコード会社から業務委託を受けているにす
ぎないため,着うた提供事業開始に必要な利用許諾等の可否を判
断することはできなかったが,他の事業者の中には,P7から直
接楽曲の利用許諾を得られないとしても,他の事業者のサイトの
ユーザーが楽曲をダウンロードする際に,当該サイトからP7の
サイトに誘導し,P7のサイトから当該楽曲をダウンロードする
方式,いわゆるアフィリエート方式でも構わないとして,P7に
対しその方式を要望する者もあった。P7に対して直接このよう
な要望をしてきた事業者としては,5社又はそのグループ会社に
よるCD等の製作及び販売に深いかかわりのあるラジオ局やテレ
ビ局,P44株式会社などの検索サイトを運営している会社,ア
ーティストが所属するプロダクション,等があった(査第25。
号証,第162号証,第172号証)
,,イ平成15年8月21日ころ開催された運営会議ではそのころ
被審人P3が,株式会社P45(以下「P45」という)から。
楽曲提供の申入れを受けており,P45がP7のサイトでのアフ
ィリエートも視野に入れて着うた提供事業の開始を検討していた
こともあって,アフィリエートの要請に対するP7としての対応
を検討することになった。同会議では,P7においてアフィリエ
ートを実現するためには「①システム対応,②手数料率選定,,
③品揃え(番組連動など,④レコード製作現場への影響,など)
を考慮する必要がある」ことなどが議論され「外部からも持。,
ち込み案件に対応したスタンダード戦略を用意すべき「参加」,
会社へのアナウンスも必要「アフィリエートは,3キャリア」,
揃ってからの方が良いのでは,いたずらに競合サイトを生むこと
を避けたい,などの意見が出され,9月上旬に集中ミーティン」
グを実施し引き続き議論することとなった。なお,上記の運営会
議並びに上記以降にアフィリエート戦略を検討した運営委員会及
び集中ミーティングには,P7の取締役らが出席し,いずれの運
営委員会及び集中ミーティングにも,5社各社からの出身役員が
最低1名出席していた(査第25号証,第162号証,第16。
6号証,第172号証,第175号証ないし第181号証,第1
89号証)
ウ平成15年10月2日ころに行われたP7の運営会議では「,
アフィリエート戦略案2003.9.29経営企画P136」と
題する資料(以下「アフィリエート戦略案H15/9/29」という)。
,。に基づきP7におけるアフィリエート戦略について検討された
アフィリエート戦略案H15/9/29には「■戦略的なポジショニン,
グ」と題し,アフィリエートの位置付けとして「着うた,着ム,
ービーは,権利者固有のコンテンツであり,着メロと異なりサイ
ト運営者が独自の判断でコンテンツを開発することができない。
従って,音楽関連サイトを運営する企業が,着うたサービスを実
現するためには,権利者の事前許諾と着うたファイルの提供が必
要となる。権利者にとっては,着うたファイルを複数作成し,複
数のサイトに提供することは,業務負荷を高めることになり,必
ずしも望むところではない。そこで,P7社が運営するP43な
どにアフィリエートプログラムを組み込むことで,サイト運営者
。」および権利者双方のニーズに対するソリューションを提供する
との文言が記載されていた。また,アフィリエート戦略の目的と
しては「①自社サイトへの集客拡大②競合サイトの発生防止,
③立体的な音楽プロモーションの実現④マーケティングデー
タの収集」が掲げられていた。さらに,アフィリエートの提携先
選定の条件としては「①我々の既存事業と深く関わっているこ,
と……②レコード会社が望まないサービスをしていないこと…
…③競合性の高いサイトを運営していないこと⇒着メロなど
④我々のビジネスモデルを崩さないこと……」などが掲げられて
いた。そして,同運営会議において「提携先条件は,断るため,
の条件であり,アフィリエート戦略は取るべき戦略ではあるが,
積極的に展開すべきでないこと,いらぬ競合を発生させない施策
として位置づけること」等の意見が出され,上記アフィリエート
の提携先選定の4つの条件はネガティブ条件として位置付けるこ
と,手数料率は1パーセントを基本とし提携先ごとに決定するこ
と,などが決定された(査第163号証ないし第166号証,。
第170号証ないし第173号証)
エ平成15年10月9日ころに開催されたP7の運営会議におい
ても,アフィリエート戦略案H15/9/29を改訂した「アフィリエー
ト戦略案」と題する同年10月9日付けの資料(以下「アフィリ
エート戦略案H15/10/9」という)が配布され,アフィリエート。
戦略について引き続き検討された。アフィリエート戦略案H15/9/
29においては「競合サイトの発生防止」は「アフィリエート,,
戦略」の目的として2番目に掲げられていたが,その改訂版であ
,「」るアフィリエート戦略案H15/10/9では競合サイトの発生防止
を1番目の目的として掲げ,提携先選定に関するネガティブ条件
,「,についても競合サイトの発生防止を第一義とする戦略であり
提携先は厳選,限定することとなる。従って,交渉戦術上でのネ
ガティブ条件を事前設定する」などの文言が記載されていた。。
その後「音楽関連サイトの着うた参入を防止する」とのアフィ,
リエート戦略の目的の下,P7の役員である5社の担当者は「ア
フィリエート戦略案」とアフィリエートのプログラムシステム開
発を決裁した(査第18号証,第175号証ないし第177号。
証)
オ平成15年11月25日ころ,アフィリエート戦略について検
討する集中ミーティングが開催された。当時,アフィリエート案
件として進行中のものが,携帯電話向けFM局からの協賛提案の
件とP45の件の2件あり,その他,P7に持ち込まれている案
,。,件としてP44株式会社ほか数社からのものがあったそして
同集中ミーティングにおいて「①端末メーカーサイトP46,
などの競合社がすでに展開していることへの対抗策として実施検
討に入る「②P47キャリアサービスであり,キャリア要」,
請に応えるために実施する「③参加会社各社サイトからの」,
送客促進。各社独自展開のサポートとして位置付け,実施検討に
入る「④事務所参加会社からの要請があれば検討する。実」,
施する際でも,あくまでも参加会社経由での取引とする「⑤」,
P45先方からの連絡待ちとし,積極的にはアプローチしな
い「⑥強力メディア社その都度,レコードメーカーへの影」,
響度などを考慮し,対応を検討する」ことなどが決定された(。
査第18号証,第172号証,第178号証)
カ平成16年1月ころまでに5社に配布されたものと認められる
「P7社/新規『攻撃的防御による宣伝施策』実施企画」と題す
る資料においても「競合サイトによる『一本釣り』が散見され,
る中,当社による配信が他社配信にまして,権利者からみて魅力
,」,的であるよう認識されるため下記の対応が考えられるとして
「,「」競合サイトからのアフィリエートASP対応等防御的誘引
政策の実施により,競合サイトのコンテンツを『空」にするこ』
とが記載されていた(上記「当社」とはP7を指す(査第1。)。
67号証ないし第169号証)
キ平成16年4月6日ころ開催された集中ミーティングでは「,
P7社の優位性を維持しつつ,オープン政策を取る上で,アフィ
リエート戦略は重要な施策」であること「楽曲を他のサーバに,
」,「,出さないことを守るためのシステムが必要であること望む
望まないに関わらず周囲からの攻勢が顕在化してきており,拒否
することものらりくらりとかわすことも難しい状況に至ってい
る」こと「防衛的なアフィリエート戦略が至急必要」であるこ,
と,などが討議され,アフィリエート戦略の目的が「競合サイト
の発生防止」であることを再確認した(査第171号証,第1。
72号証,第180号証,第181号証)
ク被審人P1は,平成16年2月,株式会社P48に対しP49
というアーティストの楽曲について1か月と期間を限定して,ま
た,同年7月末には,P50の携帯でのサイトを運営しているP
50サイトに対し期間限定で,P7のアフィリエート方式を認め
た(査第170号証)。
被審人P5は,平成16年3月ころから,プロダクション等数
社が出資するP51が運営する「P52」と呼ばれるサイトにお
いてP7のサイトのリンクをはり,P53というアーティストの
楽曲についてのアフィリエート方式によるダウンロードを認めて
いる(楽曲1曲に付き小売価格(100円)の5パーセントを支
払うことになっている(査第18号証,第219号証)。)。
P137とP14が共同して行う「P47」というサービスの
一環として,FM放送を聴きながら放送中の楽曲の着うたを購入
できるよう,P7のサイトの放送中の楽曲の着うた購入画面にリ
ンクする方式でのアフィリエートシステムが平成16年12月か
ら利用されている(査第171号証,第172号証,第174。
号証)
9着うた提供事業における市場の状況等
(1)着うたで提供される人気楽曲の原盤権の保有状況
平成16年10月末現在,5社又はそのグループ会社は,着うた
の主たるユーザー層に人気のある楽曲の原盤権の多くを,単独で又
はプロダクション等と共同で保有していた。具体的には,P138
が発表する「シングルランキング2004付」の上位100位の
楽曲中,5社がP7を通じて着うたとして提供しかつ原盤権を保有
又は管理(以下「保有等」という。なお,保有には,自社のほかグ
ループ会社が保有していることも含み,また,単独で保有している
ことだけではなく,プロダクション等と共同で保有していることを
含めて用いる)している楽曲の割合をみると,上位1位から10。
位までの楽曲では50パーセント,上位1位から20位までの楽曲
では60パーセント,上位1位から50位までの楽曲では48パー
セント,上位1位から100位までの楽曲では47パーセントとな
っている(査第45号証ないし第49号証,第56号証ないし第。
69号証,第229号証,第231号証)
(2)着うた提供事業における5社の売上げ・ダウンロード数の割合
5社のP7を通じた着うたの配信に係る売上高は,平成16年1
0月1日から同月31日の期間において,国内における着うたの配
信に係る売上高(約24億3500万円)の約46パーセント(約
11億2300万円)を占めた。また,5社がP7を通じて配信し
た着うたをユーザーがダウンロードした回数は,平成16年10月
1日から同月31日までの期間において,着うたにより配信される
楽曲の総ダウンロード回数(約2015万5000回)の約44パ
()。(,ーセント約881万3000回を占めている査第26号証
第70号証,第215号証)
10利用許諾の状況について
(1)5社の他の着うた提供業者に対する利用許諾の割合
5社が原盤権を保有等の上で着うたとして提供している楽曲に占
める他の着うた提供業者に対する利用許諾実績の割合(平成16年
10月末時点,曲数ベース)についてみると,被審人P1,被審人
P3及び被審人P5にあっては皆無であり(ただし,被審人P3に
,「」,ついては別紙楽曲提供の申入れに対する5社の対応のとおり
利用許諾契約の締結自体は1件認められる,被審人P2にあっ。)
ては0.04パーセント,P6にあっては0.51パーセントであっ
て,ほとんど利用許諾をしていない(査第232号証)。
他の事業者からの5社に対する利用許諾申入れに対する5社のそ
れぞれの対応は,別紙「楽曲提供の申入れに対する5社の対応」に
記載のとおりである。
(2)5社に対する利用許諾の申入れを断念した例
株式会社P54,株式会社P55,P45,P56株式会社,株
式会社P57は,5社が他の着うた提供業者に対しては利用許諾を
行わないという評判を聞き,交渉を申し入れても利用許諾を受ける
ことができないであろうとの判断の下,5社に対して利用許諾の申
入れを行うことを断念した(査第20号証,第189号証,第1。
90号証,第210号証,第212号証,第214号証)
(3)参加メーカーの他の着うた提供業者に対する利用許諾の状況
参加メーカーのうち,株式会社P58,株式会社P59,P60
株式会社及び株式会社P61は,他の着うた提供業者から申入れが
あっても,P7以外に楽曲を提供しないなどの理由により利用許諾
を拒絶したり,検討すると回答したまま保留するなど,楽曲の提供
を行っていない(査第20号証,第27号証,第51号証,第5。
5号証,第129号証,第188号証,第212号証)
一方,参加メーカーの中でも,株式会社P62のように,新人ア
ーティストなどのプロモーションといった限定的な目的で利用許諾
契約を締結したり,株式会社P63のように,同様にプロモーショ
ン用に特定の楽曲を提供している者もある(査第130号証,第。
131号証)
さらに,P64株式会社のように,他の着うた提供業者に対し積
極的に利用許諾を行っている者もある(査第28号証)。
11P7の業績等
P7は,事業を開始した平成13年度当初は赤字であったが,売上
げの上昇とともに,平成14年度には赤字を解消し,5社に対して1
社あたり600万円の配当をし,平成15年度には,税引後の利益が
3億3000万円余りあって,5社に対しては1社あたり3000万
円の配当をし,1億8000万円余りを内部留保するほど業績を伸ば
した(査第86号証)。
P7は,平成16年7月1日,第三者割当増資により,P60株式
会社,株式会社P65,株式会社P59,株式会社P66,株式会社
P67,株式会社P68から,各250万円の出資を受け,さらに,
,,,その後500万円の増資をし平成18年12月4日現在の時点で
資本金は1億7000万円となっている(査第72号証,第81号。
証,第251号証)
(三)判断の要旨及び法令の適用の要旨
1(1)利用許諾の拒絶の共同性
本件においては,5社が利用許諾を拒絶した各行為について,5社
間における明示の意思の連絡を直接証するものは存しないものの,①
5社が共同して設立し運営するP7に対し着うた配信業務を委託す
る一方で,他の着うた提供業者あるいは着うた提供事業を開始しよう
とする者からの楽曲の提供の申入れに対して5社が利用許諾をしたこ
とはほとんど皆無であった事実,②その申入れに対する5社の対応
状況,③P7において着うた提供事業を始めた際の背景や動機,④
P7においてアフィリエート戦略を検討していた状況,等の間接事実
を総合して判断すれば,5社において,相互に,他の4社も利用許諾
を拒絶することを認識しこれを認容した上で,他の着うた提供業者か
らの利用許諾の申入れに対して拒絶していたものと認められ,5社間
において利用許諾を共同して拒絶することについて意思の連絡があっ
たものと認められる。
(2)排除措置の必要性
5社は以上のとおり共同して利用許諾を拒絶していたところ,現在
に至るまで,被審人4社は,その共同取引拒絶行為を取りやめたこと
を対外的に明らかにするような行動を採ったものと認めることはでき
ず,また,利用許諾が行われるようになった状況を認めるべき事情も
ないから,被審人4社による共同取引拒絶行為はなお継続していると
認めるべきである。
2法令の適用
以上によれば,被審人4社は,正当な理由がないのに,共同して(た
だし,平成17年4月26日ころ以前においては,5社で共同して,)
他の着うた提供業者に対する利用許諾を拒絶しているものである。これ
は,不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)第1
項第1号に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである。
よって,被審人4社に対して,主文(上記(一))のとおり審決するこ
とが相当である。
3本件の争点
本件の争点は,本件審決の取消事由の存否であり,具体的には,①5社
が共同して原盤権の利用許諾を拒絶していたか否か(争点1,②排除措)
置の必要性があるか否か(争点2,である。)
4争点に関する当事者の主張
(1)争点1(5社が共同して原盤権の利用許諾を拒絶していたか否か)
ア原告P2及び同P3
(ア)本件審決には,以下のとおり,着うた提供業者に対する原盤権の
利用許諾の拒絶に関する判断に誤りがある。
(a)原告P2及び同P3を含めたレコード会社を始めとする原盤権
者が,自らの利益を追求するために,原盤権の行使態様を自ら単独
の判断で決し,その結果として,他の着うた提供業者に対して原盤
権の利用許諾を拒絶することは,もとより著作隣接権という知的財
(),産権に基づく行為であって著作権法89条2項及び96条参照
事業者において正当な業務活動として許容される範囲の活動である
ことは明らかであるところ,本件審決は,この点を看過している。
また,そのような原盤権の利用許諾の拒絶という行為は,価格カル
テルにおける対価引上げ行為,つまりは,対価を一定金額引き上げ
るという明示の協定又は黙示の協定(協定当事者が対価を一定金額
引き上げることを認容するだけの意思の連絡)が必要な場合とも異
なる。すなわち,元々,5社を含めて原盤権者は,楽曲に係る流通
を自らコントロールしたいと考えるのは当然であり,現に,著作隣
接権に基づいて,そのようなコントロールを実現する権利も有して
いる。また,原盤権の利用許諾の拒絶という行為は,5社のいずれ
かに対して利用許諾を要請する者が認められて初めて問題となり,
当該要請者が当該被要請者に対して提示する経済条件も当該案件に
よって多岐にわたるという意味で,消極的かつ受動的な不作為的行
為にすぎず,かつ,それらが5社のイニシアチブによって同時期な
いし極めて近接した時期において斉一的に行われる性質のものでも
。,,ないそのため価格カルテルにおける対価引上げ行為とは異なり
5社が他の着うた提供業者に対する原盤権の利用許諾をさほど行っ
ていないという結果としての事実をもって,本件違反行為として問
題とされる「意思の連絡」を推認することには,著しい論理の飛躍
がある。
(b)原告P3は,音楽出版社とは異なり,その製造業者としての立
場にあるレコード会社の本質からして,着うた提供事業に限らず,
音楽関連事業全般において,通常,自社販売を旨としているから,
原告P3としては,特段の事情がない限り,着うた提供事業者に対
して原盤権の利用許諾を行う方針はなく,現にP7に対しても原盤
権の利用許諾は行っていないのであり,本件審決は,このような事
実を捨象している。
(c)原告P2及び同P3が原盤権の利用許諾を含めた着うたに関す
る楽曲提供の申入れを受諾するか否かは,本来的には原告P2及び
同P3の経営判断に委ねられるところ,原告P2及び同P3による
原盤権の利用許諾の拒絶の事例は,いずれも,原告P2及び同P3
が,それぞれの単独による合理的な経営判断の下で,その時点にお
いて,他の着うた提供業者による楽曲提供の申入れを受諾するに至
らなかった事例にすぎないものであり,現に5社の原盤権の利用許
諾の拒絶の理由はそれぞれ異なっているが,本件審決は,このよう
な事実を捨象している。
(d)5社における原盤権の利用許諾の方針については「意思の連,
絡」がないとされるレコード会社22社(平成16年10月末現在
においてP7を通じて着うたを提供していた27社のうち5社を除
くレコード会社)の中にも,5社と同様の方針を採用し,また,5
社と同様の理由によって原盤権の利用許諾の拒絶を行っているもの
が現に存在しているが(特に株式会社P59,株式会社P68及び
株式会社P58などの大手レコード会社,本件審決は,このよう)
な事実を捨象している。
,(e)本件勧告の応諾後にP6が行った原盤権の利用許諾については
その利用許諾先としては,1億5000万円ないし4000万円と
いう莫大なイニシャル・ペイメントを何度にもわたって負担し得る
,「」大手の着うた提供業者2社のみに限られていること意思の連絡
がないとされるレコード会社22社について,その保有等に係る原
盤権に関しての他の着うた提供業者に対する利用許諾の割合(平成
16年10月末時点,曲数ベース)が判明している18社のうち,
8社の利用許諾割合が5社と同様に0%ないし1%未満であり,残
り10社の利用許諾割合は,その保有等に係る原盤権等の数が著し
く低いなど,5社のそれと比較に供し得るものではないこと,そも
そも,5社に係る利用許諾割合については,他のレコード会社22
社と異なり,5社における1社平均での当該割合の分母数が約20
00曲と極めて多数に上るため,計算結果としての利用許諾割合の
数字が相対的に小さく見える上,人気楽曲それ自体の数が全体の楽
曲数に照らしてごく一部にとどまり,人気楽曲のライフサイクルが
短期化傾向を示していることからして,ある一定の時点において他
の着うた提供業者が欲しがるような人気楽曲の数は極めて少ないも
のであり,その帰結として,必然的に利用許諾割合の分子数も極め
て小さくなる傾向があること,からすれば,5社における利用許諾
割合が小さいことを問題とすること自体,失当であるにもかかわら
ず,本件審決は,これらの事実を捨象している。
(f)原告P2は,平成18年後半ころにおいて,他の着うた提供業
者25社に対しても楽曲を提供していたところ,当該25社の合計
売上高のうち,その9割近くが2社によって上げられているもので
あり,原告P2にとって,わざわざ楽曲の提供を行ったことに見合
う利益を得られているものは多く見積もっても3社ないし5社程度
にすぎない。また,原告P3が行った43社への業務委託のうち,
3社は相応の売上げを挙げているが,その他の8社はコスト割れに
,,ならない程度の売上でありそれら合計11社以外の業務委託先は
その売上の状況が数千円から数十万円程度にすぎないのであって,
本件審決は,これらの事実を捨象している。
(g)他の着うた提供業者は,原盤権等の利用許諾に関して強い利害
関係を有している者であるため,その供述は,利害関係人の供述と
して,物的証拠の支えなくしては容易に信用し得ないものである。
(h)着うた関連市場に内在する制限的要素(着うたカテゴリー・サ
イトの上方,特にそのトップに位置付けられている着うた提供業者
のサイトにほとんどのアクセスが集中する)からすれば,多くの。
携帯電話サイトにおいて露出することが,その収益はもちろんのこ
と,そのコスト(各種経理処理,音質ないし違法デジタル・コピー
及びマーケティング情報に関する管理費用や二次使用料,各関係者
との意見調整など)に見合うだけの楽曲プロモーション効果にも必
ずしも結びつかないから,原告P2及び同P3においては,原盤権
の利用許諾に伴うデメリットを上回るだけのメリットを容易には見
出し難いものであるが,本件審決は,この点の原告P2及び同P3
の主張についての反駁がない。
(イ)本件審決には,以下のとおり,着うた提供事業を開始するまでの
背景等に関する認定判断に誤りがある。
(a)原告P1は,当初,単独で着うた提供事業を始めようとして,
携帯電話会社の1つであるP17に対して同事業の説明を行ったと
ころ,P17が,採算性の観点から原告P1単独での着うた提供事
業開始について難色を示したために,複数のレコード会社と協力し
て,着うた提供事業を始めざるを得なかったものである。着うたの
ユーザーにおいては,まず興味のあるアーティストないし楽曲が先
にあり,その上でこれらに関する情報を探索するというプロセスを
辿るのが通常であるところ,その興味のあるアーティストないし楽
曲がどのレコード会社に属しているのかという点に関する認識は余
,「」,りにも希薄であるため着うたという新たな市場を開拓すべく
多くのユーザーを集めるためには,複数のレコード会社から多くの
楽曲を提供してもらう必要があったから,5社を中心とする原盤権
者としてのレコード会社が,自らが原盤権を有することで競争優位
性を発揮できる「着うた」の市場を新たに開拓するに際して,他の
,,レコード会社に対してP7への楽曲の提供を呼びかけたにすぎず
このような行為は,まさに通常の業務活動として,その他の事業者
においても幾度にもわたって現に行われているものであり,正当な
業務活動として当然に許容されるものである。
(b)本件審決が原盤権の利用許諾の拒絶の共同性の根拠とした「レ
コード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起こらない安」,
定したビジネス」及び「参入障壁を築き,競業他社が参入する余地
を排除する」という3つの文言は,プレゼンテーション資料上の文
言として誇張・強調を含んだ表現である上,P7の利益を追求する
に際して,営利企業として当然考慮の対象となる内容にすぎず,何
ら法的に非難されるいわれはない。また,着うたに関するプレゼン
テーション資料の中でも,それぞれ別の頁において,その他多数の
文言とともに記載されているものであり,これらが議論の対象とな
ったり,幾度にもわたって検討を繰り返されたりした事実は存在し
ない。
(c)原告P2は,その親会社より原盤権の利用許諾を受けている立
場にあるところ,当該原盤に係るアーティストのイメージ・コント
ロールなどの関係からして,親会社の役職員が原盤権の利用許諾の
決定権限を有しており,原告P2の役職員のみでは,事実上そのよ
うな決定を行うことはできない。また,親会社の役職員がP7の運
営委員会に参加したことはなく,これら以外の場で,原盤権の利用
許諾の拒絶に関して,原告P2以外の4社の役職員と事前に連絡な
いし接触を行ったこともない。さらに,原告P2から出向の形でP
7の運営委員会に参加していたP31を始めとする原告P2の役職
員が親会社の役職員に対して他の着うた提供業者に対する原盤権の
利用許諾の拒絶を指示ないし要請した事実も存在しないし,そもそ
も,これらの者において,そのような権限も有していないのであっ
て,本件審決は,このような事実を無視している。
原告P3は,業務運営上,各部署に対して一定の権限分配を行っ
ており,原盤権の利用許諾の決定権限を有しているのは各制作部署
であるが,各制作部署に所属する役職員がP7の運営会議に参加し
たことはなく,これら以外の場で,原盤権の利用許諾の拒絶に関し
て,原告P3以外の4社の役職員と事前に連絡ないし接触を持った
こともない。
(ウ)本件審決には,以下のとおり,5社で結束する動機等に関する判
断に誤りがある。
(a)本件審決は,事業者において正当な業務活動として当然に許容
されるもの(原盤権者として業務委託は認めるが利用許諾は拒絶す
ること,原盤権者として競争優位性を発揮できる「着うた」の市場
を新たに開拓するに際して,他のレコード会社に対してP7への楽
曲の提供を呼びかけること,等)とそうでないものを全く混同した
まま,これらの事情をもって,本件違反行為の認定の根拠としてい
る点で,失当である。
(b)着うたのユーザーのアクセスは,着うたカテゴリー・サイトの
上方に位置付けられている着うた提供業者のサイトに集中し,着う
たカテゴリー・サイトの下方に位置付けられ,携帯電話の画面のス
クロールを行わなければ表示されないような着うた提供業者のサイ
トには着うたのユーザーのアクセスがほとんど集まらないという着
うた関連市場に内在する制限的要素からすれば,そもそも,着うた
関連市場においては,価格による競争が著しく制限されている上,
そのような内在する制限的要素を無効化すべく,携帯電話サイト以
外の媒体で露出を行うことは,コスト面で不可能であり,他の着う
た提供業者が着うたを現行の趨勢価格である1曲100円より安く
提供することは困難であって,本件審決は,このような事実を捨象
している。
(c)原盤権の利用許諾料に関して,被許諾者と原盤権者との間で別
途定めた固定額の基本使用料又は被許諾者の合計売上高に一定率を
掛けた金額のいずれか高い方という規定の仕方がされれば,原盤権
者はその利用許諾料の総額(特に最低総額)を相当程度制御するこ
とが可能となるが,その反射的な結果として,被許諾者の着うた配
信価格が自ら(原盤権者)の着うた提供価格に有意な影響をもたら
しえないものとなるように相当程度制御できることにもなるのであ
るから,着うた配信価格の設定という観点において,原盤権の利用
許諾契約と業務委託契約との間には実質的な差異は何ら認められな
いし,被許諾者ないし業務受託者たる着うた提供業者が消費者に対
して着うたのデータを送信する点や消費者に対する着うたのデータ
送信以外の行為ができない点などにおいても,原盤権の利用許諾契
約と業務委託契約との間で何らの実質的な差異も認められないか
ら,5社で結束する動機に欠ける。
(d)ブランド内競争(ある1つの楽曲に関する着うたの提供におけ
る提供業者間の価格競争)に関しては,1つの楽曲に関する原盤権
を5社間で共有している事実はないから,5社間で本件違反行為に
及ばなくても,原告らは,単独で原盤権を適切に行使すること(そ
の行使態様としては,排他的提供,利用許諾又は業務委託のいずれ
かを問わない)によって,これを制御することが可能であるし,。
ブランド間競争(ブランド内競争以外の価格競争)に関しても,着
うたという商品の差別化の強さ(特定のアーティストに傾注する傾
向がある,楽曲に係る着うたに関する値付け幅の限界(100。)
円ないし200円,及び5社以外にも着うたを提供するレコード)
会社が存在しその売上高は着うた関連市場全体の半額を超えている
こと,などの諸事情を前提とすれば,原告らにおいて5社による本
件違反行為を行う動機に欠ける。
(エ)本件審決には,以下のとおり,アフィリエート戦略に関する判断
に誤りがある。
(a)本件審決は「アフィリエート戦略の第1の目的は「着うた,」,
提供事業におけるP7の優位性をより確実なものにしたいとの意図
を認めることができる」などと指摘するが,このような指摘は,P
7が株式会社として自らの利益を追求することが事業者において正
当な業務活動として許容される範囲の活動であることを全く看過し
たものにすぎない。特に「P7の運営会議等において,約半年間,
にわたり繰り返しアフィリエートについて検討され,統一的な方針
が決定された」ことなどは,P7が,取引先などからアフィリエー
トの実現を求められている中で,自己の事業を運営する上において
当然に必要な行為であるし「楽曲を他のサーバーに出さないこと,
を守るためのシステムが必要」であるとの意見についても,P7が
着うた関連市場における自らの利益を追求する一環で述べた意見と
して,何ら法的非難に値するものではない。
(b)本件審決は「アフィリエート戦略がレコード会社等の原盤権,
を保有等する者の利益を守る立場からも検討されたものである,」
「5社がそれぞれ個別に他の着うた提供業者から受けた楽曲提供の
,,申入れに対する対応は各社の経営判断事項であるにもかかわらず
これを5社の要職を担う者が集まる運営会議で検討したこと自体,
P7の立場で検討したにすぎないとの主張と矛盾するというべきで
ある」などと指摘するが,このような指摘は,P7が,自らの利益
を追求するにあたり,その取引先であるレコード会社の利益に配慮
することが事業者において正当な業務活動として許容される範囲の
活動であることを全く看過したものにすぎない。また,特に後者の
指摘については,5社のいくつかがそれぞれ個別に他の着うた提供
業者から楽曲提供の申入れを受けたという参考情報が,P7の戦略
を検討する運営会議における議論の場で出されているが,そのよう
な申入れ自体に対する5社それぞれの対応をP7の運営会議が検討
したなどという事実は,いかなる証拠によっても根拠付けられるも
のではない。
(c)本件審決は「競合するサイトが発生することを防止するとい,
う目的は,着うた提供事業を営んでいるP7の利益に直結するもの
であると同時に,競合サイトの発生防止により,P7に人気楽曲が
集中することになれば,P7に楽曲を提供している5社の利益にも
つながるものであって,P7の利益と5社の利益は共通するもので
ある」などと指摘するが,そもそも,レコード会社を始めとする原
盤権者が,自らの利益を追求するために,原盤権の行使態様(原盤
権の利用許諾の拒絶を含む)を自ら単独の判断で決することは,。
事業者において正当な業務活動として許容される範囲の活動である
ところ,5社それぞれにとっては,仮にP7よりも有力な競合サイ
トが生じたのであれば,当該競合サイトにおいて着うたを配信すれ
ば足りるのであり,その点で,P7の利益と5社それぞれの利益は
必ずしも共通ではない。また,仮に「P7に人気楽曲が集中するこ
とになれば,P7に楽曲を提供している5社の利益にもつながる」
ことを認めたとしても,そのような事情は,本件違反行為として問
題とされている「意思の連絡」がないとされるレコード会社22社
においても同様であり,レコード会社それぞれの単独の判断によっ
,,てそのような利益を享受することには何ら問題がないのであって
それを超えた事情を裏付ける証拠は全く存在しない。
(d)仮に5社が他の着うた提供業者に対する原盤権の利用許諾を含
めた楽曲提供という選択肢を有していないのであれば,P7におい
て「競合サイトの発生」を懸念する必要すらないはずであるから,
「競合サイトの発生防止」というアフィリエート戦略案の目的は,
5社が上記選択肢を有していることを前提にした上で初めて意味を
有するものであり,アフィリエート戦略案における「競合サイトの
発生防止」という文言の存在は,本件違反行為として問題とされて
いる「意思の連絡」を推認するものではなく,むしろ,これを排斥
するものに他ならない。また「競合サイトの発生防止」が,本件,
違反行為の目的であったのであれば,原盤権の利用許諾のみを共同
で拒絶するのでは全く不足で,5社は業務委託をも共同で拒絶しな
ければならないことになるが,本件審決によっても,着うた配信に
係る業務委託まで共同拒絶がなされていたことは認定されておら
ず,その点は本件における審判の対象にすらなっていない。
(e)アフィリエート戦略案を検討するに際しても,P7の執行役員
は,あくまでもレコード会社とP7の立場を峻別しつつ議論を行っ
ていたことは明らかであり,レコード会社とP7の立場が同一であ
るとする本件審決は何ら証拠に基づくものではない。
(f)原告P2は,その親会社より原盤権の利用許諾を受けている立
場にあるところ,当該原盤に係るアーティストのイメージ・コント
ロールなどの関係からして,親会社の役職員が原盤権の利用許諾の
決定権限を有しており,原告P2の役職員のみでは事実上原盤権の
利用許諾の決定を行うことはできない。そして,親会社の役職員が
P7の運営会議に参加したことはなく,運営委員会以外の場で,原
盤権の利用許諾の拒絶に関して原告P2以外の4社の役職員と事前
に連絡ないし接触を持ったこともない。
(g)原告P3は,前記((イ)の(c))のとおり,業務運営上,各部署
に対して一定の権限分配を行っており,原盤権の利用許諾の決定権
限を有しているのは各制作部署であるが,各制作部署に所属する役
職員がP7におけるアフィリエート戦略案に関する検討の場に参加
したことはなく,これら以外の場で原盤権の利用許諾の拒絶に関し
て原告P3以外の4社の役職員と事前に連絡ないし接触を持ったこ
ともない。
イ原告P1
本件審決は「単に行為の結果が外形上一致した事実があるだけ」で,
あるにもかかわらず,無理矢理共同取引拒絶に係る「意思の連絡」を認
定したものであって,下記のとおり,原盤権の理解やレコード業界の一
般的理解を欠き,さらには,P1グループ会社の従前からの確固とした
「自社配信主義」の方針を無視したものである。
(ア)本件審決の法令解釈・適用の誤り
本件審決が採用する本件告示1項における「共同して」の判断基準
は,本件が原盤権という著作権法による権利の行使の場面であって独
占禁止法の適用はできる限り差し控えなければならないという独占禁
止法21条の趣旨から,また,着うたの配信という市場においては原
盤権の利用許諾の申出を拒絶することが極めて一般的であるという市
場の特殊性を考慮すれば,本件において「意思の連絡」があるという
ためには,少なくとも,①原盤権の利用許諾の拒絶に関連する5社
間の事前の連絡交渉が存在すること,②原盤権の利用許諾の申し込
みに対する拒絶行為の一致が不自然なものであること,③他の事業
者の行動とは無関係に独自の判断によって原盤権の利用許諾の申し入
れに対する拒絶を行ったものではないこと,の3つの要件を全て満た
す必要があるというべきであるが,本件審決は,このような判断基準
によっていない。
(イ)実質的証拠の欠缺
(a)業務委託による音源提供までも拒絶しているとする実質的証拠
はないこと
本件は,原盤権の利用許諾の拒絶を共同して行っていたか否かが
争点となっている事案であるから,意思の連絡の有無を検討する前
提として,着うた配信事業における業務委託と利用許諾との区別を
明確に行わなければならないところ,本件審決は,本件の審判時に
審査官も被審人らも問題としていない業務委託方式による音源提供
の拒絶をも(むしろ,実際には,5社が広く第三者に対して業務委
託方式による音源の提供を行っているにもかかわらず,証拠も存)
在しないにもかかわらず認定し,業務委託方式による音源提供をも
拒絶していることを前提に意思の連絡を認定しているが,この認定
は,実質的証拠を欠くものである。
(b)P7の運営会議等での協議が5社の協議の場であるとする実質
的証拠はないこと
①P7における運営会議等は,あくまでもP7の運営に関する事
項を協議・決定する場であり,5社のための協議をするとか5社
の意識あわせをするとかという場ではない。現に,P7の取締役
や執行役員は,例えば,着うたの料率決定に関しては,P7の早
期事業安定化のために,普通レコード会社が受け難い高い料率で
サービスを開始するなど,各レコード会社と利益相反ともなりう
る事項についてもP7の立場で協議・決定をしており,レコード
会社の立場とは明確に区別されている。また,運営会議や集中ミ
ーティングで決定したことで各レコード会社に伝達すべき事項に
ついては,P7のP69が責任者になって各レコード会社に対し
て説明をしていた。このことは,P19や原告P1に対する伝達
についても,同様であった。
②P7は,あくまで5社とは別法人であり,P7の運営会議等の
議論の内容が5社の連絡交渉の内容であるとすることは原則とし
てできないものである。したがって,P7の運営会議等の内容が
5社の連絡交渉の内容であると認定するためには,この原則を覆
すに足る実質的な証拠が必要であることはいうまでもないが,特
にP7における着うた配信事業の開始にあたっての運営会議やア
フィリエート戦略の検討を行う運営会議等について,かかる実質
的証拠は存在しない。
③本件審決の「P7は,レコード会社である5社が結束して5社
が保有等する楽曲の原盤権により各社の利益を上げるために共同
出資して作られた会社である(審決案の「理由」欄の第6の1」
(4)ウ)との認定については,そもそもP7は,本件審決別紙審
決案でも認めているとおり,レーベル(すなわちレコード会社)
主導の着メロ提供事業を共同して営むために設立された会社であ
るから,本件審決は,ここでも,証拠には一切存在しない「もと
もとP7は,レコード会社である5社が結束して5社が保有等す
る楽曲の原盤権により各社の利益を上げるために共同出資して作
られた会社である」との事実を認定している。これは明らかに実
質的証拠の欠缺である。
④本件審決の「レコード会社にしか出来ないビジネス」などの「
運営会議等における検討事項などにかんがみても,運営会議等で
の検討はレコード会社の利益を念頭に置いたものが多い(審決」
案の「理由」欄の第6の1(4)ウ)との認定については,P7に
おいて平成14年12月に開始した着うた配信事業は,音源の原
盤権者からP7が業務委託を受けて当該事業を行うものであり,
音源の原盤権者の大半がレコード会社であるため,P7の主要取
引先は各レコード会社となっていることから,かかる取引先であ
るレコード会社にメリットを提供できない限り,P7における着
うた配信事業は成り立たないことが明らかであり,P7の運営会
議等でレコード会社の利益を念頭に置くことは極めて自然であ
る。なお,P7の運営会議等においてレコード会社の利益を念頭
に置いたとしても,それは5社のみの利益ではなく,取引先であ
るレコード会社全般の利益である。
⑤P7において着うた提供事業を開始するに当たってP19が提
供したプレゼンテーション資料である「新たな着信コンテンツの
ご案内(査第106号証,査第107号証,査第111号証)」
中の「レコード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起」,
こらない安定したビジネス「参入障壁を築き,競合他社が参」,
入する余地を排除」との3つの文言は,5社が他の着うた提供業
者の参入を困難にするとともに着うた提供事業における優位性を
維持したいとの共通の認識を有していたとの事実を推認するに足
る実質的証拠とはなり得ない。
すなわち「レコード会社にしか出来ないビジネス」とは,着,
うた提供事業が音源を利用するため,着うた提供ビジネスを行う
ためには当該音源について原盤権が必要であるところ,原盤権を
主に保有等しているのはレコード会社であるから,着うたの配信
事業は,その原盤権を保有等しているレコード会社が自ら配信し
たり又は第三者に利用許諾をして配信させたりすることができる
ビジネスであることを表現したにすぎない。
「価格競争の起こらない安定したビジネス」とは,着うたは,
原盤権を使用するため,対象となる実演家の原盤権を保有等する
レコード会社が自ら配信を行うか又は当該レコード会社が第三者
に利用許諾をして配信させるかする以外に配信することができ
ず,そして,原盤権を保有等するレコード会社が自ら配信を行う
場合には当然自ら価格を決定することができ,また,利用許諾を
するに当たってもその対価・料率を自ら決定することができるの
であるから,誰でも着メロ音源を作成して送信でき各着メロ音源
ごとに品質の差異がほとんどみられない着メロビジネスとは異な
り,価格競争が起こりにくいビジネスであることを表現したにす
ぎないものである。
「参入障壁を築き,競合他社が参入する余地を排除」とは,あ
くまでも,着うた提供事業をいち早くスタートして,マーケット
シェアを高め,これによりP7が後から参入する企業よりも優位
に立ち(着うたカテゴリー・サイトの一番上にくること,先行)
者利益を享受することを表現したにすぎないものである。
⑥アフィリエートについては,P7に着うた配信事業を委託する
一部のレコード会社が個別の案件ごとに開発費用を負担して個別
の音源ごとのハイパーリンクを作成することをP7に依頼してお
り,このようなサービスシステムの提供についてP7が検討を依
頼された結果,P7として,ハイパーリンクによるアフィリエー
ト類似の方式を実現できるシステムをアフィリエート・サービス
・プロバイダー的に構築し,このようなレコード会社のニーズに
応えることができないかと検討していたものである。また,アフ
ィリエート類似の方式を行うためには,そのためのシステムの構
築が必要であり,これについての費用も必要になるのであり,P
7においてアフィリエート類似の方式を検討することは当然であ
る。
5社が競合サイトの発生を防止したいのであれば,P7以外の
着うた配信業者に対しては業務委託による音源の提供さえも行わ
ないはずであるのに,現実には,5社は業務委託による音源の提
供を多数行っている。したがって,競合サイトの発生防止が5社
の利益につながるとの理由で,アフィリエート戦略が5社の戦略
であったとの結論にはならない。
P7におけるアフィリエート戦略は,平成15年11月25日
ころの集中ミーティングの後は平成16年4月6日の集中ミーテ
ィングまで検討されておらず,アフィリエート問題がさして重要
視されていなかったことは明らかである。
本件審決では,アフィリエート戦略が「他の着うた提供業者に
対して楽曲を提供しないようにするための楽曲の提供に代わる対
応策」であるとされているが,そうだとすれば,5社はアフィリ
エート方式を積極的に利用しているはずだが,実際にはアフィリ
。,エート方式が利用された例はほとんどなかったこのことからも
レコード会社である5社にとってアフィリエート方式が「他の着
うた提供業者に対して楽曲を提供しないようにするための楽曲の
提供に代わる対応策」であったとする実質的証拠がないことは明
らかである。
(c)価格競争を避けること及びレコード会社以外の者が着うた提供
事業に参入することを困難にすることの動機を認定する実質的証拠
はないこと
着うた提供事業において価格競争が起こらないようにするためで
あれば,5社は素直に「利用許諾も業務委託も自由であるが,配信
価格をP7以上とすること」を合意すればよいのであって,すなわ
ち,具体的には,業務委託方式の場合には「配信価格をP7以上と
すること」を合意し,利用許諾による場合には「配信価格がP7以
上となるように許諾料を設定する」とすればよいのである。しかし
ながら,かかる事実はどこにもなく,むしろ,本件審決別紙審決案
でも認めているとおり,P5は業務委託により80円で音源を提供
しているのである。他方で,レコード会社と着うた提供業者との協
議により,方式は利用許諾だが着うた1曲の許諾料を100円とす
れば,ユーザーに対する着うた1曲の提供価格は必然的に100円
以上とならざるを得ない。このように原盤権の利用許諾を行ったと
しても価格競争を避けることができるのであるから,価格競争を避
ける動機をもって5社が共同して原盤権の利用許諾を拒絶すること
はあり得ない。
音源は,他の商品とは異なり,まさに個人の嗜好によって選択さ
れるものであって,特定の歌手や楽曲のファンが,価格が安いから
といって,好きでもない他の歌手や楽曲を着うたにすることはあり
得ない。したがって,例えば,P1グループ会社以外の他のレコー
ド会社が,着うたの価格を上げたり下げたりし,また,多数の第三
者に利用許諾をしたりしても,それが,アーティストといった実演
家や対象となる楽曲の異なるP1グループ会社の他の着うたの配信
価格に影響を及ぼすことはないのであって,利用許諾を拒絶するこ
とと配信価格の維持とは全く関係がない。
仮に,レコード会社以外の者が着うた提供事業の市場に参入する
ことを困難にしたいのであれば,業務委託方式さえも5社間で共同
して拒絶するはずであるが,実際にはそのようなことは一切してい
ないのである。業務量の負荷の問題はあるにせよ,5社を含めたレ
コード会社にとってみると,単に着うたの売上を考えたならば,音
源を配信する着うた提供業者が多ければ多いほど,これらの楽曲を
携帯電話にダウンロードするユーザーの数やダウンロードする回数
が増えるのであって,レコード会社にとってみれば,着うた配信事
業者が増加することにはメリットがあるといえるのである。したが
って,5社が,レコード会社以外の者が着うた提供事業の市場に参
入することを困難にする動機を持つことはあり得ない。
(ウ)意思の連絡を認定するに足る間接事実の不存在及び間接事実によ
る推認の経験則違背
本件では,以下のとおり,5社による原盤権の利用許諾の申し込み
に対する拒絶行為の一致は極めて自然である。そのため,むしろ「,
単に行為の結果が外形上一致した事実があるだけである」もしくは「
一方の原盤権の利用許諾の申入れの拒絶を他方が単に認識し認容する
のみである」と合理的に認定されるのであって,意思の連絡を推認す
ることは明らかに経験則に反しており,実質的証拠を欠いている。
(a)レコード会社が原盤権の利用許諾を拒絶することが一般的であ
ること
意思の連絡のない22社においても現に原盤権の利用許諾を拒絶
しているレコード会社が多数存在し,特に大手レコード会社(株式
会社P68,株式会社P70,株式会社P67,株式会社P59,
等)が原盤権の利用許諾を拒絶しているという事実は,結局のとこ
ろ,レコード会社全般において原盤権の利用許諾を拒絶することが
極めて自然であることを示すものである。したがって,5社による
原盤権の利用許諾の拒絶も極めて自然な行為なのであって,かかる
事実だけをもってしても,5社の意思の連絡は認められない。
(b)5社において原盤権の利用許諾を拒絶する個々の理由が存在す
ること
原告P1の自社配信主義は,平成12年12月にP19グループ
会社においてパソコン向けの有料音源配信ビジネスを「P71」に
おいて単独で開始した際に,既に上記グループ会社における基本的
なビジネスポリシーとして確立していたものであり,P7において
着うた提供事業が行われる以前から現在に至るまで貫かれている方
針である。この配信ビジネスは,世界で初めて商業化された著作権
保護技術対応の有料音楽配信サービスとしてP19グループ会社が
行ったものであり,音楽配信ビジネスにおいて一切利用許諾を行わ
ない自社配信主義はP19グループ会社において独自に定められた
ものである。このように原告P1においては,自社配信主義に則っ
て原盤権の利用許諾を拒絶しているものであり,その理由は極めて
合理的なものである。
(エ)原盤権等の利用許諾の拒絶に関連する5社間の意思の連絡につい
て実質的証拠を欠いていること
5社からP7に出向していた者が5社において「要職を担う者」で
あることを裏付ける実質的証拠は存在していない。また,原告P1の
社員でP7の取締役及び執行役員となった者は,P1グループ会社に
おける原盤権等の利用の決定に関わる部署(マーケティンググループ
契約部又は契約グループ)や子会社(レーベルカンパニー)と関係が
ないし,ましてや原盤権等の利用許諾の申入れを受ける担当でもなけ
れば,これを拒絶する立場にある担当でもないのであるから,仮に原
告P1の社員でP7の取締役及び執行役員となった者が要職を担って
,,いたとしても意思の連絡を推認する事実とはなり得ないのであって
このことを根拠に意思の連絡を認定することは実質的証拠を欠く認定
である。
P7の運営会議等で協議された内容が原告P1の関係各部署へ情報
伝達された事実も証拠も存在しないし,原盤権の利用許諾の拒絶に関
。,する情報の伝達についても同様であるP1グループ会社においては
,,P7において着うた配信事業を開始する以前からパソコン向け配信
携帯電話向け配信などで音源をダウンロード配信するにあたっては,
プロモーションを行うべきレコード製作会社としての基本業務に当た
る原盤権の一次使用と位置づけ,自ら価格を決定し,自社で配信する
か適切な「業務委託先」を選択して配信するかという自社配信主義を
採用しており,原盤権の利用許諾の申入れに対しては拒絶することが
既に定められていたのであるから,原告P1がP7の運営会議等の協
議内容を踏まえて原盤権の利用許諾を拒絶したということはなく,か
かる観点からも意思の連絡は否定される。
ウ原告P5
原告P5が他社と共同して原盤権の利用許諾を拒絶した事実はない。
利用許諾の申出に対して拒絶した場合があったとしても,それは,単に
条件が合わなかったために自らの判断で許諾しなかったにすぎないので
あって,5社のうち原告P5以外の4社の利用許諾に関する状況も同様
である。なお,原告P5は,株式会社P72との間で平成18年9月2
0日付けの配信契約,株式会社P73との間で平成18年9月29日付
けの配信契約をそれぞれ締結し,包括的に多数の楽曲の原盤権を着うた
に利用することを許諾している。それにもかかわらず,本件審決では,
原告P5が締結している上記2社との配信契約において原告P5に配信
価格決定権限が留保されている条項がないことを認めながらも,共同取
引拒絶行為を取り止めたとは認めていない。他方,P6は,勧告に同意
した上で同様の配信契約を締結しているが,審査官はこのことをもって
共同取引拒絶を取り止めたと主張していたのであるから,P6と同様に
配信契約をしている原告P5について,これらの契約の存在のみをもっ
てしては共同取引拒絶を取り止めたと判断することはできないというの
は,論理が破綻している。
エ被告
原告らの主張はいずれも争う。本件審決は,5社が原盤権の利用許諾
を拒絶した各行為について,5社間における明示の意思の連絡を直接証
する証拠は存しないものの,実質的な証拠である種々の間接証拠により
認定できる以下の事実,すなわち,①5社が共同して設立し運営する
P7に対し着うた配信を業務委託する一方で,他の着うた提供業者ある
いは着うた提供事業を開始しようとする者からの楽曲の提供の申入れに
対して5社が利用許諾をしたことはほとんどなかった事実,②その申
入れに対する5社の対応状況,③P7において着メロ提供事業及び着
うた提供事業を始めた際の背景事情や動機,④P7においてアフィリ
エート戦略を検討していた状況,等の間接事実を総合して判断すれば,
5社間において,相互に他の4社も原盤権の利用許諾を拒絶することを
認識してこれを認容した上で,他の着うた提供業者からの利用許諾の申
入れに対して拒絶していたものと認められ,5社間において利用許諾を
共同して拒絶することについて意思の連絡があったと認められる,と判
断したものであり,本件審決に誤りはない。
原告らの主張は,本件審決の上記判断構造を誤解又は曲解し,本件審
決の上記判断と矛盾しない事実(原告らによる原盤権の利用許諾の拒絶
行為は,個々に行われれば適法な権利行使であり,経済的な合理性もあ
る自然な行為であり,意思の連絡がないとされた他のレコード会社も同
様の行為をしている,等)を強調するもの,又は,証拠に反する不合理
な事実(P7と原告らは利益を共通にしない,着うた配信市場において
は,ブランド間競争の影響は無視し得る程度のものにすぎない,等)を
主張するものであり,失当である。
(2)争点2(排除措置の必要性があるか否か)
ア原告P2,同P3及び同P1
現在においては,P6及び原告P5の2社は他の着うた提供業者に対
して原盤権の利用許諾を行なっており,原告P2,同P3及び同P1も
業務委託形式において多くの楽曲提供を行っている。このように,5社
の他の着うた提供業者に対する対応は,それぞれ,現実的に全く異なっ
たものとなっている。かかる事情からも明らかなとおり,仮に本件違反
行為として問題とされている5社間の「意思の連絡」が過去に存在して
いたとしても,そのようなものは現時点では完全に終了ないし消滅して
いるものである。
本件違反行為として問題とされている5社間の「意思の連絡」なるも
のは,黙示的かつ受動的なものにとどまるところ,このような黙示的か
つ受動的な「意思の連絡」は,通常の対価引上げ行為に係るような明示
的かつ積極的なものと比較して,仮に過去に存在したとしても,その拘
束力が極めて弱いものといわざるを得ない。明示的かつ積極的な「意思
の連絡」については,仮に過去にそれが存在していた場合には,現時点
でもその拘束力が及んでいる可能性を否定し切れないとして,それを排
除措置によって修正する必要性が認められるとしても,本件違反行為の
ような黙示的かつ受動的な「意思の連絡」という極めて稀有な事例につ
いては,現時点でなお拘束力が及んでいることを前提として排除措置に
よって修正する必要性はもはや認められないものである。
イ原告P5
仮に5社間において,本件違反行為として問題とされている「意思の
連絡」が平成16年当時に認められたとしても,そのようなものは現時
点においては既に終了ないし消滅しており,特に排除措置を取るべき必
要性があるとは到底認められない(前記1(ウ)記載のとおり,原告P5
は,株式会社P72及び株式会社P73との間で,原告P5にユーザー
への配信価格を決定する権限が留保されていることを明示する条項の存
在しない着うた提供に係る包括的楽曲提供契約を締結している。な。)
お,本件審決は,P6につき「約3,000曲もの楽曲について他の,
着うた提供業者に対して提供している」として提供を評価しているが。
(本件審決別紙審決案84ページ,原告P5は,これをはるかに凌駕)
する約1万曲もの楽曲をP7以外の他の着うた提供業者に対して提供し
ており,さらに,現在の取扱いは,商品数及び楽曲数のいずれにおいて
も大差のないものとなっている。
ウ被告
原告らの主張は争う。不当な取引制限についての事案において,違反
行為の終了時期につき「本件のように受注調整を行う合意から離脱し,
たことが認められるためには,離脱者が離脱の意思を参加者に対し明示
的に伝達することまでは要しないが,離脱者が自らの内心において離脱
を決意したにとどまるだけでは足りず,少なくとも離脱者の行動等から
他の参加者が離脱者の離脱の事実を窺い知るに十分な事情の存在が必要
であるというべきである」とされているところ(東京高等裁判所平成1
5年3月7日判決(P74審決取消請求事件判決,公正取引委員会審)
決集第49巻624ページ,本件においても,同様に,違反行為の終)
了を認定するに当たっては,違反行為者が共同取引拒絶行為を取り止め
た事実につき他の違反行為者がこれを窺い知るに十分な事情の存在が必
要であるというべきである。そうとすれば,単に,原告P5が原告P5
にユーザーへの配信価格を決定する権限が留保されていることを明示す
る条項のない包括的楽曲提供契約を2件締結したとしても,当該契約の
,,当事者ではない他の違反行為者は原告P5の行動を知ることはできず
原告P5の当該行動をもって,同社が共同取引拒絶行為を取り止めた事
実を他の違反行為者が窺い知ることができるというものではないから,
未だ原告ら4社で共同して原盤権等の利用許諾を拒絶するとの合意(意
思の連絡)から離脱したことを認め得るものではない。さらに,原告P
2,同P3及び同P1については,利用許諾の拒絶という行為態様には
特段の変化はなく,業務委託の形式で他の着うた提供業者に楽曲を提供
しているとしても,それをもって,原告P2,同P3及び同P1が利用
許諾の拒絶行為を取り止めたとも,取り止めたことにつき他の違反行為
,。者がそれを窺い知るに十分な事情が存在するともいうことはできない
第3当裁判所の判断
1当裁判所は,原告らの本件各請求をいずれも棄却すべきものと判断する。
その理由は,以下のとおりである。
2争点1(5社が共同して原盤権の利用許諾を拒絶していたか否か)につい

(1)取引拒絶の共同性についての判断基準
独占禁止法19条は「事業者は,不公正な取引方法を用いてはならな
い」と規定し,同法2条9項柱書は「この法律において「不公正な取引。
方法」とは,次の各号のいずれかに該当する行為であって,公正な競争を
阻害するおそれがあるもののうち,公正取引委員会が指定するものをい
う」と規定し,本件告示1項柱書は「正当な理由がないのに,自己と。,
競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という)と共同して,次の。
各号のいずれかに掲げる行為をすること」と規定し,その1号は「ある事
業者に対し取引を拒絶し又は……すること」と定めている。ここにいう
「共同して」に該当するためには,共同取引拒絶の規制の趣旨が,拒絶者
集団が意思の連絡をもって共同で取引を拒絶する行為が被拒絶者の市場に
おける事業活動を不可能又は著しく困難にし,ひいては不公正な取引につ
ながる弊害があるため,その弊害を除去することにあること,しかし,反
面において,そのような意思の連絡のない外形的に一致したにすぎない取
引拒絶行為をも規制することとなれば,事業者の経済行為の自由に対する
過度の規制となり得ること,を踏まえれば,単に複数事業者間の取引拒絶
行為の外形が結果的に一致しているという事実だけでなく,行為者間相互
に当該取引拒絶行為を共同でする意思すなわち当該取引拒絶行為を行うこ
「」。,とについての意思の連絡が必要となるものと解すべきであるそして
この場合の「意思の連絡」とは,複数事業者が同内容の取引拒絶行為を行
うことを相互に認識ないし予測しこれを認容してこれと歩調をそろえる意
思であることを意味し「意思の連絡」を認めるに当たっては,事業者相,
互間で明示的に合意することまでは必要ではなく,他の事業者の取引拒絶
行為を認識ないし予測して黙示的に暗黙のうちにこれを認容してこれと歩
調をそろえる意思があれば足りるものと解すべきである。
(2)本件における認定事実
上記(1)の判断基準を踏まえ,本件において,原告らに原盤権の利用許
諾について共同した拒絶行為があったか否かを判断するに,まず,前記第
2の2(二)に記載の本件審決の認定事実のとおり(当裁判所も,本件審決
の前記認定事実は実質的証拠に基づくもので,その認定は相当なものであ
ると判断する,①他の着うた提供業者からの楽曲提供の申入れに対す。)
る5社の対応は,別紙「楽曲提供の申入れに対する5社の対応」に記載の
とおりであり,他の着うた提供業者からの利用許諾の申入れに対しては,
P7の存在などを理由に拒絶しているか,又は,アフィリエートを認めた
ほかは,楽曲の提供を了承したとしても,その方法はほとんど業務委託に
よるものであり,利用許諾をしたものであっても,ある特定の楽曲のみを
一定期間に限るなど特定の条件を満たした場合に限られていること(5社
が保有等している原盤権について,他の着うた提供業者に対して利用許諾
した割合(平成16年10月末時点,曲数ベース)は,原告P1,同P。
3及び同P5にあっては0であり,原告P2にあっては0.04パーセン
トであり,P6にあっては0.51パーセントであった,②もともと。)
着メロ提供事業においては,そのビジネスの構造上(レコード会社の有す
る原盤権とは無関係に,誰でもP18を通じて作詞者及び作曲者に著作権
使用料を支払えば,音源を作成してユーザーに楽曲のメロディを提供する
ことが可能,レコード会社に何の利益ももたらされていなかったこと。)
についてレコード会社側に大きな不満があり,いずれ着メロが着音楽にな
ることを予想して,レコード会社が複数集まって着メロ提供事業を行うP
7を設立したという経緯があること,③着うた提供事業は,原盤に録音
された歌声等の楽曲(音源)の一部が提供の対象となるという事業の性格
上,原盤権者以外の者が着うた提供事業を営むには,配信する予定の楽曲
の原盤権について原盤権者等から利用許諾を受けるか,原盤権者等との間
で当該楽曲の配信について業務委託契約を締結するかする必要があるか
ら,レコード会社などの原盤権者は,原盤権者以外の者に比べると,容易
に事業を展開することができ,複数のレコード会社が集まって着メロ提供
事業を行うことを前提に設立されたP7は,着うた提供事業を始めるのに
極めて有利であったこと,④P7において着うた提供事業を開始するま
,,,,での経緯は(a)まずレコード会社であったP19が平成14年5月
P7の運営委員会において,P7として着うた提供事業を行うことについ
て提案し,(b)その後,P7の運営委員会や着うた提供事業開始に向けて
の詳細な検討を行うためのワーキングチームによるミーティングにおいて
検討が繰り返され,P7として着うた提供事業を行うことの合意が5社に
よって得られ,(c)その後,P7で運営する着うた提供サイトでの提供楽
曲を増やすため,5社以外のレコード会社に対する着うた提供事業への参
加を促すための説明会を開催したり,プロダクション等の理解を求めるた
め,着うた提供事業の概要説明に関する資料を作成したりした後,P7の
開設する「P43」のサイトにおいて,平成14年12月から着うた提供
事業が開始されたものであること,⑤P19は,P7の運営委員会にお
いて,平成14年5月,着メロ提供事業において価格競争が激化している
中で原盤権を保有等するレコード会社が今後優位性を持つためには,原盤
権を利用したコンテンツの新市場を開拓する必要があること,着うた提供
事業は各レコード会社が協力することで大きなビジネスとなること,レコ
ード会社としてうまみのあるビジネス構造を新市場において構築していく
,,,ことなどを説明し着うた提供事業におけるレコード会社のメリットを
だれでも容易に参入可能な着メロ提供事業とは異なり「レコード会社に,
しか出来ないビジネス」であること,当時価格競争が激化していた着メロ
提供事業とは異なり「価格競争の起こらない安定したビジネス」である,
こと「レコード会社にしか出来ない原盤着メロポータルサイトを展開す,
ることで,早期にマーケットシェアを高め,参入障壁を築き,競合他社が
参入する余地を排除する」こと,などと説明し,その内容について検討が
行われ,また,参加の可能性のある他のメーカーにもこれらとほぼ同じ内
容を含む説明資料を用いて説明したこと,⑥原盤権を保有等していない
者が着うた提供事業を行う場合,原盤権を保有等する者から利用許諾を受
ける方法と配信業務の業務委託を受ける方法とがあるが,業務委託契約の
下では,ユーザーに提供する着うたの価格は,着うた配信業務の委託者で
ある原盤権者等が設定することとなり,着うた提供業者は自由にその価格
を設定することができないから,5社は,他の着うた提供業者からの楽曲
の提供の申入れに対して,業務委託は認めても利用許諾をしなければ,他
の着うた提供業者が配信価格を低く設定することによって着うたの配信価
格の安定を乱すことを阻止することが容易である一方,他の着うた提供業
者は,原盤権を保有等する者から業務委託を受けて着うたを配信すること
ができれば,外形的には着うた提供事業からは排除されてはいないが,実
際には着うた提供についての価格設定権を有していないため,価格面では
十分には競争できない状況となること,⑦着うた提供事業は,パソコン
に比べて画面が極端に小さい携帯電話におけるインターネットを利用した
事業であるという特殊性から,着うた提供事業で業績を上げるためには,
自己のサイトが着うたのカテゴリー・サイトの上方に位置付けられなけれ
ばならず,そのためにはユーザーのアクセス数とダウンロード数をできる
だけ多数確保することが必要であること,⑧着うたのユーザーは,中学
生・高校生から20歳代前半の者が主であり,これらの年代層に人気のあ
る楽曲を多数提供できるサイトであることがユーザーのアクセス数やダウ
ンロード数を多く確保できる条件となるところ,5社が原盤権を保有等し
P7を通じて着うたとして提供している楽曲の割合は,P138が発表す
る「シングルランキング2004付」のランキング100位以内におい
て47パーセントであり,5社がP7を通じて提供する着うたがダウンロ
ードされる回数は,提供される着うたのダウンロード数全体の約44パー
セントを占めていたこと(レコード会社などの原盤権者がそれぞれ単独で
サイトを開設して自己が保有等する楽曲についてのみ提供するよりも,複
数のレコード会社等が共同してそれぞれ保有等する多数の楽曲を集めたサ
イトにより提供する方が,単一のサイトにおいてより多数の人気楽曲を提
供できるため,ユーザーのアクセス数やダウンロード数が増えることは明
らかである,⑨平成15年3月ころ以降,他の事業者が着うた提供事。)
業の開始を検討するようになり,5社が他の事業者から利用許諾の申入れ
を受けることが多くなった際,その申入れが5社各社に対する個別の依頼
であるにもかかわらず,5社各社の要職を担う者が集まるP7の運営委員
会等の場において「アフィリエート戦略案」と題する資料を基に,他の,
着うた提供業者には利用許諾を行わず(上記資料においては「競合サイ,
トの発生防止」がアフィリエート戦略の主な目的とされ,また「着うた,
ファイルを複数作成し,複数のサイトに提供することは,業務負荷を高め
ることになり,必ずしも望むところではない」との記載もある,ユー。。)
ザーが利用許諾の申入れの対象となっている楽曲をダウンロードしたい場
合には他の着うた提供業者のサイトからP7のサイトに誘導する方法(ア
フィリエート)をとることを検討したこと,⑩P7に対し他の事業者か
ら直接アフィリエートの依頼があったとしても,最終的に当該楽曲につい
てアフィリエートの方式をとるか否かは原盤権を有する各レコード会社の
判断で決せられるものであるにもかかわらず,運営委員会等において,平
成15年10月ころから平成16年4月ころまでの約半年間にもわたっ
て,アフィリエート戦略が繰り返し検討され続けていたこと,⑪アフィ
リエートを検討する平成16年4月6日ころの集中ミーティングにおい
て「望む,望まないに関わらず周囲からの攻勢が顕在化してきており,,
拒否することものらりくらりとかわすことも難しい状況に至っている」こ
とが討議されるなど,5社がそれぞれ他の着うた提供業者からの利用許諾
の申入れについて判断をしているのであれば5社が集まる場所である集中
ミーティングにおいて他の着うた提供業者からの利用許諾の申入れについ
て討議される理由も必要もないこと,⑫上記の集中ミーティングにおい
ては「楽曲を他のサーバーに出さないことを守るためのシステムが必,
」,「」,,要防衛的なアフィリエート戦略が至急必要といった意見も出され
5社がP7以外に楽曲を出さないことを前提としたシステムがP7に必要
であることが議論されていたこと,⑬アフィリエート戦略の第1の目的
は,P7が運営するサイトである「P43」以外の競合サイトが発生する
ことを防止することにあり,競合するサイトの発生が防止できれば,着う
た提供事業を営んでいるP7の利益に直結するものであると同時に,P7
に人気楽曲が集中することになれば,P7に資本参加し楽曲を提供してい
る5社の利益にもつながるものであること,⑭アフィリエート戦略の検
討経過の中で,アフィリエートの提携先の条件として「レコード会社が,
望まないサービスをしていないこと「着メロ提供事業を行う者でない」,
こと「レコード会社と競合性の高いサイトを運営していないこと,等」,」
のレコード会社の利益を守る観点からの検討が行われていたこと,以上の
事実が認められる(先に述べたとおり,本件審決が認定したこれらの事実
は実質的証拠に基づくものであり,その認定は相当なものである。。)
(3)判断
上記の各事実によれば,5社は,着メロ提供事業においては,誰でも容
易に音源を作成してユーザーに楽曲のメロディーを提供する事業を開始す
ることができ,原盤権を保有等するレコード会社に利益がもたらされない
,,ことに大きな不満を持っていたところ新規事業である着うた提供事業は
着メロ提供事業とは異なり,原盤に録音された歌声等の楽曲(音源)の一
部をユーザーに提供する事業であり,事業を開始するにあたっては楽曲の
原盤権の利用許諾を得る必要があることから,原盤権を保有等するレコー
ド会社が事業を行うについて極めて優位な立場にあることを利用し,原盤
権を保有等するレコード会社が結束してP7を通じて率先して着うた提供
事業という新規市場を開拓することによって,レコード会社以外の者の参
入をできるだけ排除し,5社の原盤権に基づく利益を確保することを意図
して,着うた提供事業を開始したものということができる(P7は,その
設立当初から,P7自体には利益を留保せず,レコード会社に利益を分配
することが前提とされていた(H13/5/8プレゼンテーション資料(査第9
),,,)。)。,,3号証査第74号証第75号証第97号証そして5社は
P7による着うた提供事業が軌道に乗った後は,他の着うた提供業者の参
入によって着うたの配信価格の安定が脅かされることのないよう,他の着
うた提供業者に対して利用許諾の方法では楽曲を提供しないこととし,そ
れに代わる対応策として,P7の運営委員会等においてアフィリエート戦
略を検討してきたものと認められる。そして,結果的にも,5社は,他の
着うた提供業者に対して,当該業者が着うたの配信価格を設定できる利用
許諾の形態での楽曲の提供はほとんど行っていないのである。
これらの事情を総合考慮すれば,5社は,それぞれ,他の着うた提供業
者が価格競争の原因となるような形態で参入することを排除するためには
他の着うた提供業者への原盤権の利用許諾を拒絶することが有効であるこ
と(他の業者に対する楽曲の提供を拒絶しきれない場合にはアフィリエー
トを認めることが対応策であること)を相互に認識し,その認識に従った
行動をとることを相互に黙示的に認容して,互いに歩調をそろえる意思で
あった,すなわち,5社には原盤権の利用許諾を拒絶することについて意
思の連絡があったと認めることができるものである。
(4)原告らの主張について
ア(ア)原告P2及び同P3は,着うた提供業者に対する原盤権の利用許
諾の拒絶に関して「原盤権の利用許諾を拒絶することは,著作権法,
上,原盤権者に認められた正当な権利行使である「原盤権の利用。」,
拒絶は,原告P2及び同P3のそれぞれ独自の健全な経営判断に基づ
くものである「原告P3は,製造業者としての立場から,もとも。」,
と商品については自社販売を旨としていた「P7を通じて着うた。」,
を提供していた27社のうち5社を除く22社の中の大手レコード会
社の中にも,5社と同様の方針を採用し,原盤権の利用許諾の拒絶を
行っているものが存在する「5社に係る利用許諾割合は,他のレ。」,
コード会社22社とは異なり,1社平均での当該割合の分母数が約2
000曲と極めて多数に上るため,計算結果としての本件利用許諾割
合の数字が相対的に小さく見えるにすぎない「人気楽曲それ自体。」,
の数が少なく,そのライフサイクルも短期化傾向を示していることか
らして,一定時点において他の着うた提供業者が欲しがるような人気
楽曲の数は極めて少なく,必然的に利用許諾割合の分子数も小さくな
る「利用許諾をすることによって原告P2及び同P3が利益を上。」,
げられるような着うた提供業者は極めて限られている「他の着う。」,
た提供業者の供述は,利害関係人の供述として,物的証拠の支えなく
して信用すべきでない「着うた関連市場に内在する制限的要素か。」,
らして,原告P2及び同P3においては,原盤権の利用許諾に伴うデ
メリットを上回るだけのメリットを容易に見出し難い,と主張す。」
る。
(イ)しかしながら,原告P2及び同P3の上記各主張は,要するに,
原盤権者の立場から着うた提供業者に利用許諾を拒絶する行為の法的
正当性,経済的合理性を強調し,それゆえに原告P2及び同P3によ
る利用許諾の拒絶行為の共同性が否定される,とするものであるが,
本件審決は,このような原盤権の利用許諾の拒絶行為を5社が意思の
連絡の下に「共同して」行ったことが独占禁止法に違反する違法な行
為であると判断しているのであり,先に認定判断したとおり,本件に
表れた一切の事情(前記(2)の①ないし⑭に記載の着メロ提供事業の
ビジネス構造に対する5社の不満,P7設立の経緯,着うた提供事業
を開始する動機や経緯,P7の運営委員会等における5社の要職を担
う者同士の検討状況,アフィリエート戦略の検討の経緯,等)を考慮
すれば,5社が意思の連絡の下に共同してP7以外の着うた提供業者
に対して利用許諾を拒絶する行為を行っていたことは優に認められる
というべきであって,そのような利用許諾の拒絶行為を5社が個別に
行っていた場合にはそれが著作権法の観点から適法であって経済的合
理性を有する行為であると評価できるとしても,そのことは,本件に
おいて5社が意思の連絡の下に共同して利用許諾を拒絶していたとの
事実認定やそれが独占禁止法に違反する違法な行為であるとの評価を
左右するものではないというべきである。また,他の着うた提供業者
は,5社に対して利用許諾を拒絶されたことについて損害賠償請求を
行う等,5社と対立する法的関係にあるわけではなく,その供述が利
害関係人の供述として信用できないとまではいえないというべきであ
る。
したがって,原告P2及び同P3の上記各主張は採用することがで
きない。
イ(ア)原告P2及び同P3は,着うた提供事業を開始するまでの背景等
に関し「原告P1は,単独で着うた提供事業を始めようとしたとこ,
ろ,P17から採算性の観点から難色を示されたために,複数のレコ
ード会社と協力して多くのユーザーを集めるべく,複数のレコード会
社から多くの楽曲を提供してもらうためにP7への楽曲の提供を呼び
かけたにすぎず,このような行為は,正当な業務活動として当然に許
容されるものである「本件審決が利用許諾の拒絶の共同性の根拠。」,
とした「レコード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起こ」,
らない安定したビジネス」及び「参入障壁を築き,競業他社が参入す
る余地を排除する」という3つの文言は,プレゼンテーション資料上
の文言として誇張・強調を含んだ表現である上,P7の利益を追求す
るに際して当然考慮される内容にすぎず,何ら非難されるいわれはな
い「原告P2は,その親会社より原盤権の利用許諾を受けている。」,
立場にあるところ,原盤権の利用許諾の決定は親会社の役職員の権限
に属するものであるが,親会社の役職員がP7の運営会議に参加した
ことはなく,原告P2以外の4社の役職員と事前に連絡ないし接触を
持ったこともない「原告P3において原盤権の利用許諾の決定権。」,
限を有しているのは各制作部署であるが,各制作部署に所属する役職
員がP7の運営会議に参加したことはなく,これら以外の場で,原盤
権の利用許諾の拒絶に関して,原告P3以外の4社の役職員と事前に
連絡ないし接触を持ったこともない,と主張する。。」
(イ)しかしながら,着うた提供事業の開始に際して,原告P1が単独
で事業を行うことについてP17から採算性の観点から難色を示さ
れ,そのことゆえに原告P1が他のレコード会社にP7への楽曲の提
供を呼びかけた事情があったとしても,原告P1がP7に楽曲を提供
した他の4社と意思の連絡の下に共同して他の着うた提供業者への原
。,盤権等の利用許諾を拒絶する行為が正当化されるわけではないまた
「レコード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起こらない」,
安定したビジネス」及び「参入障壁を築き,競業他社が参入する余地
を排除する」とのプレゼンテーション資料中の文言は,プレゼンテー
ション資料中の文言であるがゆえに,多少の誇張・強調を含むもので
はあるとしても,むしろ,説明者において伝えたい内容が率直・端的
に表現されていると理解することが可能であるし,さらに,その文言
自体からしても,また,これらの資料を検討した複数の者の認識から
しても(査第18号証,第54号証,第87号証,第109号証,第
110号証,P7としての利益の追求というよりも,むしろレコー)
ド会社としての利益の追求に重点が置かれていたと認められるもので
ある(前記(3)のとおり,そもそも,P7自体には利益を留保せず,
レコード会社に利益を分配することが前提とされていたのである。。)
さらに,原告P2の親会社の役職員や原告P3において原盤権の利用
許諾に関する決定権限を有する部署の役職員がP7の運営委員会等に
参加したことがなかったとしても,通常の企業における意思決定手続
と同様に,P7の運営委員会等における検討の場に参加した原告P2
又は同P3の役職員は,情報を収集して検討を加えた上で,原盤権の
利用許諾に関する決定権限を有する部署(原告P2においては親会社
における該当部署を含む)に情報を伝達し,その意思決定を仰ぐ,。
といった手続がとられていたものと推認できるものである。
したがって,原告P2及び同P3の上記各主張も採用することがで
きない。
ウ(ア)原告P2及び同P3は,5社で結束する動機等に関し「着うた,
関連市場に内在する制限的要素からすれば,そもそも,他の着うた提
供業者が着うたを現行の趨勢価格である1曲100円より安く提供す
るということは困難であり,したがって,5社が利用許諾を共同で拒
絶する動機は形成されない「原盤権の利用許諾料の定め方いかん。」,
によっては,着うた配信価格の設定という観点においても,原盤権の
利用許諾契約と業務委託契約との間には実質的な差異は認められず,
5社が利用許諾のみを共同して拒絶する動機は形成されない「ブ。」,
ランド間競争に関し,着うたという商品の差別化の強さ,楽曲に係る
着うたに関する値付け幅の限界及び5社以外の着うたを提供するレコ
ード会社の売上高が着うた関連市場全体の半額を超えていること,な
どの諸事情を前提とすれば,5社が原盤権の利用許諾を共同して拒絶
する動機は形成され得ない,と主張する。。」
(イ)しかしながら,着うたを常時1曲100円を下回る価格で提供し
続けることは,利益確保の観点から一般的には困難といえても(査第
21号証,P7に営業上対抗するために一定期間のキャンペーンと)
して1曲100円を下回る低価格で着うたを提供することはあり得る
し(査第83号証,実際にも1曲100円以下で着うたを提供して)
いた業者も存在したのであって(査第18号証,第28号証,第31
号証,第34号証,第110号証,着うたのユーザーが中学生・高)
校生から20歳代前半までの着うたのダウンロードに金銭的な限界が
ある者が大部分であることも併せ考慮すれば,たとえ着うた市場に内
在的制限(着うたカテゴリー・サイトの上方に位置付けられている着
うた提供業者のサイトにアクセスが集中し,着うたカテゴリー・サイ
トの下方に位置付けられ,携帯電話の画面のスクロールを行わなけれ
ば表示されないような着うた提供業者のサイトにはほとんどアクセス
が集まらないという競争上の制限)が存在するとしても,なお,価。
格競争が生じ得ないとまではいえないというべきである。また,原盤
権の利用許諾料をいかに定めようとも,原盤権の利用許諾を行った場
合には,着うたの配信価格は利用許諾を受けた着うた提供業者が決定
することになるのであり,5社による着うたの配信価格の統制には自
ずと限界があるから,着うた配信価格の設定という観点において利用
許諾契約と業務委託契約との間に実質的な差異が生じないとはいえな
いものである。
したがって,原告P2及び同P3の上記各主張も採用することがで
きない。
エ(ア)原告P2及び同P3は,アフィリエート戦略に関し「P7がア,
フィリエート戦略の実施によって株式会社として自らの利益を追求す
ることは,事業者において正当な業務活動として許容される範囲の活
動であり,何ら法的非難に値するものではない「自らの利益を追。」,
求するにあたり,その取引先であるレコード会社の利益に配慮するこ
とも正当な業務活動として許容される範囲の活動である「レコー。」,
ド会社が原盤権の行使態様を自ら単独の判断で決することは,正当な
業務活動として許容される範囲の活動であるところ,5社それぞれに
とっては,仮にP7よりも有力な競合サイトが生じたのであれば,当
該競合サイトにおいて着うたを配信すれば足りるのであり,P7の利
益と5社それぞれの利益は共通ではない「P7における「競合サ。」,
イトの発生防止」というアフィリエート戦略案の目的は,5社が他の
着うた提供業者に対する原盤権の利用許諾を含めた楽曲提供という選
択肢を有していることを前提にして初めて意味を有するものであり,
むしろ,本件違反行為として問題とされている「意思の連絡」を推認
するものではなく,これを排斥するものに他ならない「競合サ。」,「
イトの発生防止」が本件違反行為の目的であったのであれば,原盤権
の利用許諾のみを共同で拒絶するのでは全く不足で,5社は業務委託
をも共同で拒絶しなければならないことになるが,本件審決によって
も,着うた配信に係る業務委託まで共同拒絶がなされていたことは認
定されていない「原告P2は,その親会社より原盤権の利用許諾。」,
を受けている立場にあるところ,原盤権の利用許諾の決定は親会社の
役職員の権限に係るものであるが,親会社の役職員がP7のアフィリ
エート戦略に関する運営会議に参加したことはなく,原告P2以外の
4社の役職員と事前に連絡ないし接触を持ったこともない「原告。」,
P3において原盤権の利用許諾の決定権限を有しているのは各制作部
署であるが,各制作部署に所属する役職員がP7のアフィリエート戦
略に関する検討の場に参加したことはなく,これら以外の場で原盤権
の利用許諾の拒絶に関して原告P3以外の4社の役職員と事前に連絡
ないし接触を持ったこともない,と主張する。。」
(イ)しかしながら,アフィリエート戦略の採用によってP7の競合サ
イトの発生を防止することは,P7の利益につながると同時に,P7
の出資者でありかつP7に5社の要職を担う役職員を派遣してその運
(,営に当たっている5社の利益に直結することは明らかである5社は
P7以外の着うた提供業者に楽曲の提供を行った場合であっても,楽
曲提供の対価を得ること自体はできるが,P7のみに楽曲を提供し,
人気楽曲を集中させることができれば,5社からP7に支払われる業
務委託料を差し引いても,着うたの配信によってP7に多大な利益が
生じ,5社はこれについて利益配当の形でこれを取得することができ
るのであって「仮にP7よりも有力な競合サイトが生じたのであれ,
ば,当該競合サイトにおいて着うたを配信すれば足りる」と5社が。
考えていたとは到底認められないというべきである。そして,5。)
社は,P7の運営委員会等におけるアフィリエート戦略の検討に際し
て,アフィリエートの提携先につき,①レコード会社が望まないサ
ービスをしていないこと,②着メロなど競合性の高いサイトを運営
していないこと,等の原盤権を保有等するレコード会社の利益を守る
観点から選定条件を設定して検討していたものであり(査第165号
証,第176号証,その検討期間も平成15年10月ころから平成)
16年4月ころまでの約半年間の長期にわたるものであって(P7の
立場からのみの検討であれば,原盤権を保有等するレコード会社に判
断を委ねれば足りるはずである,運営委員会の検討の中では「望。),
む,望まないに関わらず周囲からの攻勢が顕在化してきており,拒否
することものらりくらりとかわすことも難しい状況に至っている」。
などの原盤権を保有等するレコード会社の立場からの発言も出されて
いることからすれば(査第181号証,P7におけるアフィリエー)
ト戦略の検討は,むしろレコード会社である5社の利益を図ることを
主眼として行われたと認めるべきものである。また「競合サイトの,
発生防止」というアフィリエート戦略の目的は,5社による利用許諾
の拒絶に納得しない他の着うた提供業者に対して妥協的なアフィリエ
ートを提案することによって「利用許諾」を断念させることにあった
ものであるから「競合サイトの発生防止」という目的でアフィリエ,
ート戦略が検討されていたことをもって5社が「利用許諾」という形
態での競合サイトの発生という選択肢を有していたことの根拠(利用
許諾の拒絶についての5社の意思の連絡を否定する根拠)となるもの
ではないというべきであるし,本件審決が利用許諾とは異なる業務委
託については5社が共同で拒絶している事実を認定していないことと
も矛盾しないというべきである。なお,原告P2の親会社の原盤権の
利用許諾の決定権限を有する役職員との関係や,原告P3の各制作部
署の役職員との関係については,先に述べたとおりである(上記イ(
イ)。)
したがって,原告P2及び同P3の上記各主張も採用することがで
きない。
オ(ア)原告P1は「本件において5社間に原盤権の利用許諾の拒絶に,
ついて「意思の連絡」があるというためには,少なくとも,①原盤
権の利用許諾の拒絶に関連する5社間の事前の連絡交渉が存在するこ
と,②原盤権の利用許諾の申し込みに対する拒絶行為の一致が不自
然なものであること,③他の事業者の行動とは無関係に独自の判断
によって原盤権の利用許諾の申し入れに対する拒絶を行ったものでは
ないこと,の3つの要件を全て満たす必要がある,と主張する。。」
(イ)確かに,原盤権を保有等する5社が個別に特定の着うた提供業者
(P7)には業務委託を行いそれ以外の着うた提供業者には利用許諾
を拒絶するということは,何ら違法ではなく,自らが出資したP7の
利益ひいては自らの利益を図るために,P7にのみ楽曲を提供し他の
着うた提供業者には利用許諾を拒絶するという行為は,経済的合理性
に適った行為ということもできるから,結果的に5社のいずれもがP
7以外の着うた提供業者に利用許諾を拒絶したことは,それ自体は不
自然な行為とまではいえないものである。
しかしながら,5社それぞれが個別に行う原盤権の利用許諾の拒絶
行為が上記のとおり適法かつ自然な行為と評し得るとしても,5社が
意思の連絡の下に共同して取引拒絶をすれば,それは独占禁止法19
条,2条9項,本件告示1項1号に違反する違法な行為となるもので
あり(5社それぞれが有する著作隣接権に基づく原盤権の利用許諾の
拒絶行為も,それが意思の連絡の下に共同してなされた場合には,そ
れぞれが有する著作隣接権で保護される範囲を超えるもので,著作権
法による「権利の行使と認められる行為」には該当しないものにな
る,そして,意思の連絡があったというためには,前記(1)で述べ。)
,,たとおり事業者相互間で明示的に合意することまでは必要ではなく
他の事業者の取引拒絶行為を認識ないし予測して黙示的に暗黙のうち
にこれを認容してこれと歩調をそろえる意思があれば足りるものと解
すべきであるから,原告P1の上記主張は採用することができないも
のである。
カ(ア)原告P1は,本件審決の事実認定には実質的証拠が欠缺している
として「本件審決は,5社が第三者に対して業務委託方式による音,
源の提供をも拒絶していることを前提に意思の連絡を認定している
が,5社が業務委託方式による音源の提供までも拒絶していると認定
できる実質的証拠はない「P7における運営委員会等は,あくま。」,
でも5社とは別法人であるP7の運営に関する事項を協議・決定する
場であり,5社のための協議をするとか5社の意識あわせをするとか
いう場ではなく,P7の運営委員会等での協議が5社の協議の場であ
るとする実質的証拠はない「本件審決の「P7は,レコード会社。」,
である5社が結束して5社が保有等する楽曲の原盤権により各社の利
益を上げるために共同出資して作られた会社である」との認定は,実
質的証拠を欠いている「P7の運営委員会等においてレコード会。」,
社の利益を念頭に置いたとしても,P7の主要取引先はレコード会社
であり,レコード会社にメリットを提供できない限りP7における着
うた提供事業は成り立たないのであるから,レコード会社の利益を念
頭に置くことは自然である。なお,ここでいうレコード会社の利益と
は,5社のみの利益ではなく,取引先であるレコード会社全般の利益
である「P7において着うた提供事業を開始するに当たってP1。」,
「9が提供したプレゼンテーション資料中に記載された3つの文言(
レコード会社にしか出来ないビジネス「価格競争の起こらない安」,
定したビジネス」及び「参入障壁を築き,競業他社が参入する余地を
排除)は,いずれも,5社が他の着うた提供業者の参入を困難にす」
るとともに着うた提供事業における優位性を維持したいとの共通の認
識を有していたとの事実を推認するに足る実質的証拠とはなり得な
い「レコード会社のニーズに応え,また,システムの構築に要す。」,
る費用の問題を検討するために,P7においてアフィリエート方式を
検討することは当然である「5社が競合サイトの発生を防止した。」,
いのであれば,P7以外の着うた配信業者に対しては業務委託による
音源の提供さえも行わないはずであるのに,現実には,5社は業務委
託による音源の提供を多数行っている「P7におけるアフィリエ。」,
ート戦略の検討は,平成15年11月25日ころの集中ミーティング
の後は平成16年4月6日の集中ミーティングまで検討されておら
ず,アフィリエート問題はそれほど重要視されていなかった「実。」,
際にはアフィリエート方式が利用された例はほとんどなく,5社にと
ってアフィリエート方式が「他の着うた提供業者に対して楽曲を提供
しないようにするための楽曲の提供に代わる対応策」であったとする
実質的証拠がないことは明らかである,と主張する。。」
(イ)しかしながら,まず,本件審決の認定事実(本件違反行為)は,
5社が他の着うた提供業者に対して原盤権の利用許諾を意思の連絡の
,,下に共同して拒絶していたとするものでありこの認定の根拠として
5社が他の着うた提供業者に対して業務委託方式による音源の提供ま
でも拒絶していたとは認定していないのであるから,原告P1のこの
点の主張はその前提を欠き,失当である。また,先に認定判断したよ
うに(前記(2)の②,もともと着メロ提供事業においては原盤権を)
有するレコード会社に何の利益ももたらされていなかったことについ
てレコード会社側に大きな不満があり,いずれ着メロが着音楽になる
ことを予想して,5社が着メロ提供事業を行うP7を設立したという
経緯があったこと,着うた提供事業は,原盤に録音された歌声等の楽
曲(音源)の一部を配信する事業であり,原盤権を有するレコード会
社が事業を始めるのに極めて有利であったことから,5社が結束して
P7を通じて着うた提供事業を行うという新規市場を開拓し,レコー
ド会社以外の者の参入をできるだけ排除して5社の原盤権に基づく利
,,,益を確保することを意図し着うた提供事業を開始したこと5社は
P7による着うた提供事業が軌道に乗った後は,他の業者の参入によ
って着うたの配信価格の安定が脅かされることのないよう他の着うた
提供業者に対して利用許諾の方法により楽曲を提供することをしない
こととし,それに代わる対応策として,P7の運営委員会等において
アフィリエート戦略を検討し,レコード会社の利益を守る観点からア
フィリエート提携先の条件(レコード会社が望まないサービスをして
いないこと,着メロなど競合性の高いサイトを運営していないこと,
等)を設定して検討していたこと,などの事情からすれば,P7の運
営委員会等における検討は,P7の利益ないしはレコード会社全体の
利益というよりも,むしろ5社のみの利益を図ることを主眼として行
われていたものというべきである。さらに,プレゼンテーション資料
中の3つの文言(レコード会社にしか出来ないビジネス「価格競「」,
争の起こらない安定したビジネス」及び「参入障壁を築き,競業他社
が参入する余地を排除)についても,先に述べたように(イ(イ),」)
説明者において伝えたい内容を率直・端的に表現しているものと理解
することができる上,その文言自体からしても,また,これらの資料
を検討した複数の者の認識からしても,P7としての利益の追求とい
うよりも,むしろレコード会社5社としての利益の追求に重点が置か
れていたと認め得るものである。なお,前記のとおり(エ(イ)「),
競合サイトの発生防止」というアフィリエート戦略の目的は,5社に
よる利用許諾の拒絶に納得しない他の着うた提供業者に対して妥協的
なアフィリエートを提案することによって「利用許諾」を断念させる
ことにあったものであるところ,業務委託においては,委託先(受託
者)である着うた提供業者において着うたの配信価格を設定すること
ができず,原盤権を保有等するレコード会社において配信価格をコン
トロールすることが可能であり,これによっても5社が最も避けるべ
きものと考えていた価格競争は生じないのであるから,5社が他の着
うた提供業者に業務委託を実際に行っていたとしても,このことは,
アフィリエート戦略の目的である「競合サイトの発生防止」とは矛盾
しないものである。さらに,平成15年11月25日ころの後は平成
16年4月6日の集中ミーティングまでアフィリエート戦略に関する
会議が開かれていなかったとしても,その間にアフィリエート戦略に
関する検討が全く中断していたとまではいえず,同日の集中ミーティ
ングにおいては,レコード会社の利益を守る立場からの発言を含めて
約4時間30分にわたる議論が行われたのであって(査第181号
証,5社及びP7がアフィリエート問題を重要視していなかったと)
いうことはできない。また,実際にアフィリエート方式が利用された
例の多寡も,5社がアフィリエート戦略を利用許諾の拒絶のための対
応策として位置付けていたとの認定を覆すものではないというべきで
ある。
したがって,原告P1の上記各主張も採用することができない。
キ(ア)原告P1は,本件審決の事実認定に実質的証拠が欠缺していると
して,さらに「着うた提供事業において価格競争が起こらないよう,
にするためであれば,5社は素直に「利用許諾も業務委託も自由であ
るが,配信価格をP7以上とすることを合意すればよいのである,。」
「音源は,他の商品とは異なり,まさに個人の嗜好によって選択され
るものであって,特定の歌手や楽曲のファンが,価格が安いからとい
って,好きでもない他の歌手や楽曲を着うたにすることはあり得な
い「5社を含めたレコード会社にとってみると,単に着うたの売。」,
上を考えたならば,音源を配信する着うた提供業者が多ければ多いほ
ど,これらの楽曲を携帯電話にダウンロードするユーザーの数やダウ
ンロードする回数が増えるのであって,レコード会社にとっても着う
た提供業者が増加することにはメリットがあるのである,と主張。」
する。
(イ)しかしながら,5者間で「配信価格をP7以上とすること」を合
意することは,より違法性の高い価格カルテルに該当する行為であり
(独占禁止法89条1項1号,3条,2条6項,価格競争を回避す)
るためであれば5社は素直にそのような行為をするはずであるとはい
えない。また,他の着うた提供業者が着うたを低価格で提供すれば,
着うた全体の提供価格に影響が及び得ること,着うたのユーザーがす
べて特定の楽曲にしか興味を示さないものとはいえないこと(楽曲の
傾向が共通する複数のアーティストに魅力を感じるユーザーが存在し
ないとはいえない,着うたのユーザーは,中学生・高校生から2。)
0歳代前半までの着うたのダウンロードに金銭的な限界がある者が大
部分であること,なども併せ考慮すれば,ユーザーがより安価な着う
たに魅力を感じることもあり得るというべきである(P23参考人審
訊速記録。さらに,先に述べたような,レコード会社に利益がもた)
らされない着メロ提供事業のビジネス構造へのレコード会社の不満,
着うた提供事業におけるレコード会社の優位性の確保(利益確保,)
P7が行うサイト以外の競合する着うた提供業者の行うサイトの発生
防止のためのアフィリエート戦略の検討,といった諸事情を踏まえれ
ば,レコード会社が「着うた提供業者が増加することにはメリットが
ある」と考えていたとは到底認められないものである。。
したがって,原告P1の上記各主張も採用することができない。
ク(ア)原告P1は,本件審決の意思の連絡の認定につき「本件では,,
5社のみならず意思の連絡がないと認定された22社を含むレコード
会社による原盤権の利用許諾の拒絶行為の一致は極めて自然であるか
ら「単に行為の結果が外形上一致した事実があるだけである」もし,
くは「一方の原盤権の利用許諾の申入れの拒絶を他方が単に認識し認
容するのみである」と合理的に認定されるのであって,意思の連絡を
推認することは経験則に反する「原告P1は,基本的なビジネス。」,
ポリシーである自社配信主義に則って原盤権の利用許諾を拒絶してい
るものであり,その理由は極めて合理的である,と主張する。。」
(イ)しかしながら,先にも述べたとおり(オ(イ),5社が原盤権の)
利用許諾の拒絶行為を個別に意思の連絡なく行った場合には,それぞ
れの行為が経済的合理性を有するもの又は基本的な自社配信主義とい
うビジネスポリシーに基づく自然な行為とはいえても,そのような拒
絶行為を5社が意思の連絡の下に共同して行った場合には,独占禁止
法及び本件告示に違反する違法な行為となるのであり,そして,本件
審決は,そのような意思の連絡を利用許諾の拒絶行為の結果が外形上
一致したことのみをもって認定しているものではなく,前記((2)の
①から⑭まで)記載の認定事実を総合して意思の連絡を認定したもの
であるから,原告P1の上記各主張も採用することができない。
ケ(ア)原告P1は,5社間の意思の連絡について「5社からP7に出,
向していた者が5社において「要職を担う者」であることを裏付ける
実質的証拠は存在せず,原告P1の社員でP7の取締役及び執行役員
となった者は,P1グループ会社における原盤権の利用許諾の決定に
関わる部署(マーケティンググループ契約部又は契約グループ)や子
会社(レーベルカンパニー)とは関係がない「P7の運営会議等。」,
で協議された内容が原告P1の関係各部署へ情報伝達された事実も証
拠も存在しない。利用許諾の拒絶は,原告P1が採用する自社配信主
義に基づくものであって,P7の運営会議等の協議内容とは関係がな
い,と主張する。。」
(イ)しかしながら,原告P1についていえば,P19のP75は,原
告P1のデジタルネットワークグループP76部長と兼務する形で平
成15年6月にP7の取締役に就任し,平成16年4月にはP7の取
締役を辞任すると同時に執行役員に就任しているのであって(査第2
3号証,同人が,着うた提供事業の開始に際して,P19の立場を)
代表してP7の運営会議で着うた提供事業の提案及びプロモーション
を行った者であったことからすれば「要職を担う者」であったと評,
するに十分であり,また,先に述べたとおり,原告P1においても,
通常の企業における意思決定手続と同様に,P7の運営委員会等にお
ける検討の場に参加した原告P1の役職員が,情報を収集して検討を
加えた上で,原盤権の利用許諾に関する決定権限を有する部署に情報
を伝達し,その意思決定を仰ぐ,といった手続がとられたものと推認
できるものである。さらに,仮に原告P1が利用許諾を拒絶した理由
の中に自社配信主義のポリシーを採用していたことが含まれていたと
しても,そのことのみによって,他の4社との利用許諾の拒絶につい
ての意思連絡を否定する根拠とはならないというべきである。
原告P1の上記各主張も採用することができない。
コ(ア)原告P5は「原告P5が他社と共同して原盤権の着うた提供業,
者への利用許諾を拒絶した事実はない。利用許諾の申出に対して拒絶
した場合があったとしても,それは単に条件が合わなかったために自
らの判断で許諾しなかったにすぎないものである」と主張する。。
(イ)しかしながら,前記(2)(3)で認定判断したとおり,もともと着メ
ロ提供事業においては原盤権を有するレコード会社に何の利益ももた
らされていなかったことについてレコード会社側に大きな不満があ
り,いずれ着メロが着音楽になることを予想して,5社が着メロ提供
事業を行うP7を設立したという経緯があったこと,着うた提供事業
は,原盤に録音された歌声等の楽曲(音源)の一部を配信する事業で
あり,原盤権を有するレコード会社が事業を始めるのに極めて有利で
あったことから,5社が結束してP7を通じて着うた提供事業を行う
という市場を開拓し,レコード会社以外の者の参入をできるだけ排除
して5社の原盤権に基づく利益を確保することを意図し,着うた提供
事業を開始したこと,5社は,P7による着うた提供事業が軌道に乗
った後は,他の業者の参入によって着うたの配信価格の安定が脅かさ
れることのないよう他の着うた提供業者に対して利用許諾の方法によ
,,り楽曲を提供することをしないこととしそれに代わる対応策として
P7の運営委員会等においてアフィリエート戦略を検討し,レコード
会社の立場を守る観点からアフィリエート提携先の条件(レコード会
社が望まないサービスをしていないこと,着メロなど競合性の高いサ
イトを運営していないこと,等)を設定して検討していたこと,結果
的にも,5社は他の着うた提供業者に対して利用許諾の方法での楽曲
提供をほとんど行っていないこと,などの事情によれば,原告P5を
含む5社が意思の連絡の下に共同して他の着うた提供業者への利用許
諾を拒絶していたものと認めることができるものである。
したがって,原告P5の上記主張は採用することができない。
3争点2(排除措置の必要性があるか否か)について
(1)原告らは「現在,P6及び原告P5の2社は,他の着うた提供業者,
に対して原盤権の利用許諾を行なっており(原告P5が他の着うた提供業
者に提供した楽曲数はP6のそれを凌駕している,原告P2,同P3。)
及び同P1も,業務委託形式において多くの楽曲提供を行っており,5社
の他の着うた提供業者に対する対応は現実的には全く異なったものとなっ
ているのであるから,仮に本件違反行為として問題とされている5社間の
「」,利用許諾の拒絶についての意思の連絡が過去に存在していたとしても
そのようなものは現時点では完全に終了ないし消滅している「本件違。」,
反行為のような黙示的かつ受動的な「意思の連絡」は,拘束力が極めて弱
く,これをなお排除措置によって修正する必要性はもはや認められないと
いうべきである」と主張する。。
(2)しかしながら,5社のいずれかが利用許諾の拒絶に係る意思の連絡か
ら離脱したというためには,離脱者が離脱の意思を他の参加者に対して明
示的に伝達することまでは要しないものの,離脱者が自らの内心において
離脱を決意したにとどまるだけでは足りず,少なくとも離脱者の行動等か
ら他の参加者において離脱者の離脱の事実を窺い知ることができる十分な
事情の存することが必要である。
これを本件についてみるに,P6は,本件勧告を応諾し,平成17年4
月26日,本件勧告と同趣旨の審決(平成▲年(勧)第▲号)を受け,当
該勧告審決において命じられた排除措置(本件違反行為を取り止める旨の
取締役会決議,原告ら4社及びP7に対する通知,従業員及び着うた提供
事業を行い又は行おうとする事業者への通知,研修及び監査,等)を履行
しているのであり,これらの事実からすれば,P6については,利用許諾
の拒絶に係る意思の連絡から離脱していることが認められるというべきで
あるが,その余の原告ら4社のうち,原告P2,同P3及び同P1は,業
務委託形式において楽曲提供を行ってはいるものの,利用許諾の形式にお
いては楽曲の提供を行っておらず,また,原告P2,同P3及び同P1が
利用許諾の拒絶の方針を変更して将来において利用許諾を行う可能性があ
ることを他の者が窺い知ることができるほどの十分な事情があるとも認め
られない。原告P5は,株式会社P72及び株式会社P73との間で着う
た提供に係る包括的楽曲提供契約を締結した旨を主張するが,その配信契
約書(査第253号証)には典型的な業務委託契約のように原告P5にユ
ーザーへの配信価格を決定する権限が留保されていることを明示する条項
はないものの,この配信契約の存在のみをもって,原告P5が利用許諾の
拒絶の方針を変更したものとまでは認めることができず,仮に方針を変更
したものであるとしても,そのことを他の者が窺い知ることができるほど
に十分な事情があるものとも認められない。原告ら4社を本件勧告を応諾
して排除措置を履行したP6と同視することはできないというべきであ
る。
したがって,原告らの上記各主張も採用することができない。
4まとめ
以上のとおりであり,原告らは,原盤権の利用許諾をP7以外の着うた提
供業者に対して意思の連絡の下に共同して拒絶していたものであり,それに
よって公正な競争を阻害するおそれがあり,現在においてもその排除措置の
必要性は認められるから,本件審決を取り消すべき事由は認められないもの
である。原告らの本件各請求はいずれも理由がない。
第4結論
よって,原告らの本件各請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負
担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用
して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官原田敏章
裁判官北村史雄
裁判官坂本宗一
裁判官小出邦夫
裁判官藤岡淳は,転補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官原田敏章

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