弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を広島高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 職権をもって調査するに、
一 原審の確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 上告人は、昭和三四年四月被上告人の前身であるD公社に入社し、同五八年
一月からはE電報局長として勤務していた。
 2 D公社は、同五九年一月二六日、上告人に対し、同年二月一日付けでF通信
局局長室調査役を命ずる旨の配置転換をした。
 3 上告人は、翌六〇年五月八日、広島地方裁判所に対し、右配置転換命令に基
づく就労義務を負わないことの確認を求める旨の本件訴えを提起したところ、同裁
判所は、同六三年七月二六日上告人敗訴の判決を言い渡した。
 4 被上告人は上告人に対し、同年八月三日、社員就業規則六五条一項一号(勤
務成績がよくないとき)及び同項四号(原判決に五号とあるのは誤記)(その他そ
の職務に必要な適格性を欠くとき)に該当するとして、解雇する旨の意思表示をし
た。
二 右事実関係の下において、原審は、被上告人が本訴の事実審口頭弁論の終結前
に右解雇の意思表示をして上告人の雇用契約上の地位を争ったのであるから、上告
人は本件訴えと併せて雇用契約上の地位の確認を求める訴えを提起するなどして右
契約上の地位を確定しておかなければ本訴につき確認の利益を有するとはいえない
ところ、上告人はかかる措置に出ないので、本件訴えは結局確認の利益を欠き不適
法であるに帰するとして、本案の判断を示した第一審判決を取り消し、本件訴えを
却下した。
三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとお
りである。
 労働者が配置転換命令に基づいて労働する義務を負わないことの確認を求める訴
え(いわゆる配転無効確認の訴え)を提起して訴訟を遂行している場合に、使用者
が労働者を解雇する旨の意思表示をしてその雇用契約上の地位を争ったときは、労
働者が中間確認の訴えの提起又は訴えの追加的変更の申立てなどの方法によりその
雇用契約上の地位の確認を求める訴え(いわゆる地位確認の訴え)を提起して右の
地位を法律上確定しておくことが、労使間の紛争の解決という点からも裁判所ない
し訴訟制度の在り方という点からも望ましいことはいうまでもない。しかし、この
ような場合に、労働者が地位確認の訴えを提起しなかったからといって、右の労働
者に配転無効確認の訴えについて判決を求める利益がないということはできない。
ただ、このような場合に労働者が地位確認の訴えを提起しなかったときにも、裁判
所は、労働者が雇用契約上の地位を有するかどうか、換言すれば、使用者のした解
雇の意思表示がその効力を生じたかどうかにつき、まず、審理判断せざるを得ない
のであって、その結果、労働者が (ア)もし雇用契約上の地位を有するのであれ
ば、進んで配転無効確認の訴えにかかる請求の理由の有無につき審理判断すべきで
あり、また、(イ)もし雇用契約上の地位を失ったのであれば、そのことの故をも
って配転無効確認の訴えを却下すべきである(もっとも、使用者のした解雇が当該
配置転換命令に労働者が従わないことのみを理由とするときは、解雇の効力の有無
はもっぱら配置転換命令の効力の有無如何にかかることとなり、解雇の効力につき
判断することは、とりもなおさず、配置転換命令の効力すなわち本案についての判
断を示したこととなるから、配転無効確認の訴えにかかる請求は、これを棄却すべ
きである)。
 したがって、単に被上告人が上告人に解雇の意思表示をしたという事実を確定し
たのみで、右解雇の意思表示が効力を生じたかどうかについて何ら審理判断するこ
となく、直ちに本件訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断は、到底
是認し得ないものといわなければならない。
四 以上によれば、本件訴えを却下した原判決には法令の解釈適用を誤った違法が
あり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。したがって、原
判決はすでにこの点において破棄を免れないものであるから、上告理由についての
判断を省略し、被上告人のした解雇の効力の有無等につきさらに審理を尽くさせる
ため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎

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