弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを罰金八千円に処す。
     罰金を納めることができないときは金二百円を一日の割で被告人を労役
場に留置する。
     押収している証第一乃至二一号(原判決掲記の歯科医療用器具及材料)
は没収する。
     原審訴訟費用は被告人の負担とする。
     昭和二六年一月二三日附の起訴状による公訴は棄却する。
         理    由
 先づ職権で審査するに、
 記録を調べると、原審検察官は、原裁判所に対し昭和二五年一〇月七日附起訴状
(但し昭和二六年二月七日附訴因変更請求書により訴因の変更あり)により被告人
は無免許で昭和二五年五月八日頃から同年七月一六日頃までの間、高知県高岡郡a
村でB外一九名に対し抜歯、入歯等をして歯科医業をしたものとして公訴を提起し
たるに拘らず更らに同裁判所に対し昭和二六年一月二三日附起訴状により被告人が
無免許で同一期間同一場所において、同一人等に対し抜歯等をして歯科医業をなし
たものとして公訴を提起したことが明らかで<要旨>ある。然し無免許歯科医業の如
き職業犯にありては一旦公訴が提起せられるとその判決あるまでの同種違反行 旨>為は包括して一罪を構成するものであるから検察官において訴因に洩れた行為を
強いて審理の対象と為さんと欲するならば訴因追加の手続を採るべく、更めて公訴
を提起することは許されないものと言はなければならない。然るに本件における昭
和二六年一月二三日附起訴状による後の公訴事実は、昭和二五年一〇月七日附起訴
状による先きの公訴事実と同種の違反行為てあつて犯行の期間、場所、相手方を全
然同じうするものであるから、かかる公訴は既に公訴の提起があつた事件につい
て、更に公訴が提起されたものであることは疑を容れない。故に後になされた昭和
二六年一月二三日附の公訴は、刑訴法第三三八条第三号により判決をもつて棄却し
なければならない筋合である。然るに原審は斯る措置に出でず右両公訴を併合審理
し後の公訴についても判決をしたのは不法に公訴を受理した違法があるから同法第
三九二条第二項第三九七条第三七八条第二号により原判決を破棄する。
 右の如く原判決を破棄する以上検察官の別紙量刑不当の論旨はこれを判断する余
地がない。
 しかして事案は直ちに審判することができるものと認められるから刑訴法第四〇
〇条但書に則り自判する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は歯科医師の免許を受けていないに拘らず昭和二五年五月八日頃から同年
七月一八日頃まで高岡郡a村において報酬を得てB外一九名の者に抜歯、入歯等を
して(その詳細は原判決添付第一の一覧表の通りである)歯科医業をしたものであ
る。
 (証拠)
 原判決挙示の各証拠(その記載を引用する)
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は、歯科医師法第一七条に違反し同法第二九条第一号罰金等臨
時措置法第二条に該るので罰金刑を選択しその額の範囲内で主文の通り量刑し刑法
第一八条第一九条第一項第二号第二項刑訴法第一八一条により罰金の換刑、押収物
の没収、訴訟費用の負担等を定める。
 (被告人等の主張に対する判断)
 被告人の判示所為は単なる歯科技工ではなく歯科医療に属するものと解すべきで
あるから罪とならない旨の主張は採用しない。
 (公訴棄却の理由)
 前段説示の理由により刑訴法第四〇四条第三三八条第三号に則り昭和二六年一月
二三日附起訴状による公訴は棄却する。
 仍つて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 太田元)

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