弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告人を懲役20年に処する。
2未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
3札幌地方検察庁で保管中の金槌1本(平成28年領第1466号符
号1-1)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成28年8月23日午前11時頃,北海道岩見沢市・・・・・被告人方居
宅内において,A(当時55歳)に対し,殺意をもって,その頭部等を金槌
(主文3項記載の物件)で数十回殴打し,よって,その頃,同所において,
同人を脳挫傷により死亡させて殺害し,
第2その頃,同所において,上記A所有又は管理の現金約7099円在中の財布
等7点(時価合計約2000円相当)を窃取した上,上記被告人方敷地にお
いて,同所に駐車中の上記A所有の自動車1台(時価約10万円相当)を乗
り去り窃取し
たものである。
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為刑法199条
判示第2の所為刑法235条
刑種の選択判示第1の罪につき有期懲役刑を,同第2の罪
につき懲役刑を各選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判
示第1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
没収刑法19条1項2号,2項本文(主文3項記
載の物件は,判示第1の犯行の用に供した物
で,犯人以外の者に属しない物)
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
被告人は,事前に金槌や包丁などを準備した上,被害者の隙を窺い,背後から,
金槌で,被害者の頭部等を多数回殴っている。顔面や頭蓋骨に骨折が見られること
に照らすと,強烈な力で殴ったことが認められる。被害者がうめき声をあげると,
タオルケットで口を塞ぐなどしてなおも殴り続けたというのであり,執拗で残酷で
ある。殺意も強い。被害者の生命が失われた結果が重大であるのはいうまでもなく,
なぜ殺されるのかも分からないまま,大きな苦痛の中,絶命した被害者の無念は察
するに余りある。遺族のショックも大きい。被害者の妻がその死を悲しみ,被告人
に対して厳しい処罰を望むのも当然である。また,何の罪もない被害者の幼い娘が
父親を失い,心に大きな傷を負っており,本当に気の毒である。
被告人は,被害者の殺害に及んだ理由について,被害者が憎かった,刑務所に入
りたかったなどと述べる。そして,被害者らを恨むようになったのは,不倫関係に
あった被害者の妻に生活費などとして金を渡していたところ,被害者らがその金を
返すと約束し,返済の目途が立つまでという約束で被害者らから住居や食事等が提
供されていたのに,次第に待遇が悪くなり,金の返済を受けられないまま,住居か
ら追い出されそうになったことなどが原因であるという。しかし,犯行直前に行わ
れた被害者やその妻とのメールのやりとりからすると,被害者らが金の返済を約束
していたというのは,相当に疑わしい。被告人が動機として述べるそのほかの点も,
人の生命を奪う理由として到底納得できるものではなく,いずれにしても身勝手な
犯行というほかない。
さらに,罪名は異なるものの,人を殺めた前科があるのに本件に及んでいること
からすると,生命の尊さを軽んじているというほかない上,法廷においてこの点に
向き合っていることを窺わせる発言も全くない。
そうすると,被告人が自首した上で,犯罪事実自体は認めていることを考慮して
も,検察官の求刑が重すぎるとはいえず,懲役20年の刑を科し,自分のやったこ
との重さに向き合わせる必要があると判断した。
(求刑懲役20年,主文掲記の金槌の没収)
平成29年3月3日
札幌地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官中桐圭一
裁判官高杉昌希
裁判官北島睦大

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