弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年(行ケ)第10717号審決取消請求事件
平成18年10月11日判決言渡,平成18年9月6日口頭弁論終結
判決
原告トッポリーオプトエレクトロニクスコーポレイション
訴訟代理人弁理士山田勇毅
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理人井口猶二,末政清滋,高木彰,田中敬規
主文
1特許庁が不服2002-13257号事件について平成17年6月7日にし
た審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
主文と同旨の判決。
第2事案の概要
本件は,原告被承継人インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイ
ション(以下「IBM」という)が,名称を「有機発光素子用のカプセル封入材。
としてのシロキサンおよびシロキサン誘導体」とする発明について特許出願(国際
出願)をして拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたところ,審判請求
は成り立たないとの審決がなされたため,IBMから同発明に係る特許を受ける権
利を承継した原告が,同審決の取消しを求めた事案である。
1特許庁における手続の経緯
()本件出願(甲第4号証)1
出願人:IBM
発明の名称:有機発光素子用のカプセル封入材としてのシロキサンおよびシロ「
キサン誘導体」
出願番号:特願平10-504964
出願日:平成8年7月10日
翻訳文提出日:平成11年1月8日
()本件手続2
原告は,審判請求後の平成16年9月29日にIBMから特許を受ける権利を承
継し,審決謄本送達後の平成17年8月8日,特許庁にその届出をした。次に掲げ
る行為は,すべて特許庁がIBMに対し又はIBMが特許庁に対し行われ,本件訴
えは原告が提起した。
拒絶査定日:平成14年4月11日
審判請求日:平成14年7月16日(不服2002-13257号)
手続補正日:平成16年8月6日(甲第2号証,以下「本件補正」という)。
拒絶理由通知日:平成16年10月19日(甲第3号証,以下「本件拒絶理由通
知」という)。
審決日:平成17年6月7日
審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない」「。
審決謄本送達日:平成17年6月22日(IBMに対し)
2本願発明の要旨
審決が対象とした発明本件補正後の請求項1に記載された発明であり以下本(,「
願発明」という。なお,請求項の数は16個である)の要旨は,以下のとおりで。
ある。
「請求項1】一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極【
と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機領
域とを有し,
発光部分がシロキサンで覆われ,前記シロキサンが前記光の経路内に配置された
光学要素を含み,
前記光学要素は,前記シロキサンに埋め込まれるか,前記シロキサン中に形成さ
れるか,または前記シロキサンのポケット状の部分内に配置される,レンズ,回折
格子,ディフューザ,偏光子,またはプリズム,あるいはこれらの任意の組み合わ
せからなる,ことを特徴とする有機発光素子」。
3審決の理由の要点
()審決は,IBMに対してなされた本件拒絶理由通知に対し,IBMから何1
らの応答もなかったことにより,本件拒絶理由通知に係る拒絶理由を引用すること
により,審決の理由としている。
()そして,本件拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)に係る拒絶理由は,以2
下のとおりであるが,要するに,本願発明が,特開平8-83688号公報(甲第
5号証。以下「刊行物1」という)及び特開平5-36475号公報(甲第7号。
証。以下「刊行物3」という)にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が。
容易になし得た発明であり,また,特開平7-37688号公報(甲第6号証。以
下「刊行物2」という)及び刊行物3それぞれ記載された発明に基づいて,当業。
者が容易になし得た発明でもあるので,特許法29条2項の規定により特許を受け
ることができないというものである。
理由
本願の請求項1乃至4,11及び13に係る発明(以下「本願発明1乃至4,11及び1,
3」という)は,下記の刊行物1或いは2に記載された発明と下記の刊行物3に記載された。
発明とに基いて当業者が容易になし得た発明であるから,特許法第29条第2項の規定により
特許を受けることができない。
刊行物1.特開平8-83688号公報
刊行物2.特開平7-37688号公報
刊行物3.特開平5-36475号公報
1.本願発明
本願発明1乃至4,11及び13は,平成16年8月6日付けの手続補正書により補正され
た明細書及び図面の記載からみて,請求項1乃至4,11及び13に記載されたとおりのもの
と認める。
2.対比・判断
[本願発明1について]
刊行物1の「実施例3の図4の広栄化学工業(株)製コーエイハードM-101オーバーコ
ート層16」及び同「実施例18の図11の広栄化学工業(株)製コーエイハードM-101
オーバーコート層24」の光硬化性樹脂を,刊行物3の段落「0013」に記載されるポリシ
ロキサンに換えて,本願発明1の構成とすることは当業者にとって格別の困難性はない。
また,刊行物1の「実施例13の図8の基板兼光散乱部11c」のポリエチレンテレフタレ
ートフィルムを,刊行物3の段落「0013」に記載されるポリシロキサンに換えて,本願発
明1の構成とすることは当業者にとって格別の困難性はない。
さらに,光学要素を,刊行物1の光散乱部以外の,レンズ,回折格子,偏光子,プリズムに
換えて使用することも格別の困難性がない。
したがって,本願発明1は,刊行物1に記載された発明と刊行物3に記載された発明とに基
いて当業者が容易になし得た発明である。
「,」,「」刊行物2の実施例3の図56のプラスチック基板32を刊行物3の段落0013
に記載されるポリシロキサンに換え,且つ,刊行物2の無機発光層を有機発光層に換えて,本
願発明1の構成とすることは当業者にとって格別の困難性はない。
また,光学要素を,刊行物2の高屈折率部以外の,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光
子,プリズムに換えて使用することも格別の困難性がない。
したがって,本願発明1は,刊行物2に記載された発明と刊行物3に記載された発明とに基
いて当業者が容易になし得た発明である。
[本願発明2乃至4,11及び本願発明11を引用する本願発明13について]
省略
()被告は,本訴になって最初に出された準備書面において,その趣旨が下記3
のとおり(原文のまま)であると主張する(本件拒絶理由通知に係る拒絶理由,し
,。たがって審決の理由が被告主張のとおりであることにつき原告はこれを争わない
以下,被告の下記主張を「審決理由」という。。)
(1)本件発明
省略(上記2のとおり)
(2)引用例
本件審決の理由とした拒絶理由通知において引用した特開平8-83688号公報(刊行物
1;甲第5号証)には,次の事項が記載されている。
ア「この有機EL装置の断面の概略を図2に示す。図2に示したように,この有機EL装置.
10aは基板11aとこの基板11aの片面(内側面)に形成された有機EL素子12とを備
え,有機EL素子12は基板11a側から順に陽極(透明性電極;ITO膜)/正孔輸送層/
有機発光層/陰極(鏡面性電極;Mg・In層)を積層してなる。これらの部材のうち,陽極
(透明性電極)を符号13で,また陰極(鏡面性電極)を符号14で示す(第10頁第18。」
欄第32行~第40行)
イ「まず,基板として実施例1で使用したガラス板と同じもの(ただし,ITO膜は設けら.
),。れていないを用いこの基板の内側面に実施例1と同様にしてレンズシートIを固着させた
このとき,レンズシートIの向きはレンズが形成されている側の面が有機EL素子と対向する
向きとした。次に,このレンズシートIの上に光硬化性樹脂(広栄化学工業(株)製のコーエ
イハードM-101)を塗布して,実質的に平坦な表面を有するオーバーコート層を設けた。
このとき,オーバーコート層の膜厚(最大膜厚)は10μmとした。この後,前記のオーバー
コート層上に前述の方法(ITO膜の成膜を含む)により有機EL素子を形成して,目的とす
る有機EL装置を得た。この有機EL装置の断面の概略を図4に示す。図4に示したように,
この有機EL装置10cは基板11aと,この基板11aの片面(内側面)にエポキシ系接着
剤図示せずによって固着された光散乱部としてのレンティキュラーレンズシート15aレ()(
ンズシートI)と,このレンズシート15a上に形成されたオーバーコート層16と,このオ
ーバーコート層16上に形成された有機EL素子12とを備えている(第11頁第19欄第。」
28行~第47行)
ウ「片面にレンズ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(レンティキュラーレ.
ンズの金型に流し込んで成形したもの)を基板兼光散乱部として用い,この基板においてレン
ズ処理してない側の主表面上に前記の方法(ITO膜の成膜を含む)により有機EL素子を形
成して,目的とする有機EL装置を得た。この有機EL装置の断面の概略を図8に示す。図8
に示したように,この有機EL装置10dは基板11cとこの基板11cの片面(内側面)に
形成された有機EL素子12とを備え,基板11cの外側面(有機EL素子12が形成されて
いる面とは反対側の面)にはレンティキュラーレンズ20がレンズ処理によって形成されてい
る。この基板11cは光散乱部を兼ねている(第12頁第21欄第4行~第16行)。」
エ「まず,基板として透明ガラス板(日本板ガラス社製のOA-2,厚さ1.1mm)を用.
い,この基板の内側面にアルミニウムを班点状に付着させることにより光散乱部を形成した。
この光散乱部の形成は真空蒸着法により行い,そのときの成膜条件は減圧度1×10Pa,
アルミニウムを入れた坩堝の温度1200℃とした。また,班点状に付着したアルミニウムの
膜厚(平均値)は0.01μmであり,被覆率は約50%であった。次に,この光散乱部上に
光硬化性樹脂(広栄化学工業(株)製のコーエイハードM-101)からなるオーバーコート
層を設けることにより実質的に平坦な面を形成した。このとき,オーバーコート層の膜厚(基
板面を基準とした膜厚)は10μmとした。この後,前記のオーバーコート層上に前述の方法
(ITO膜の成膜を含む)により有機EL素子を形成して,目的とする有機EL装置を得た。
この有機EL装置の一部切欠き斜視図を図11として示す。図11に示した有機EL装置10
gは基板11fと,この基板11fの片面(内側面)に班点状に付着したアルミニウム23か
らなる光散乱部と,この光散乱部を被覆するオーバーコート層24と,このオーバーコート層
24上に形成された有機EL素子12とを備えている(第12頁第22欄第34行~第13。」
頁第23欄第5行)
オ.図2
カ.図4
キ.図8
ク.図11
刊行物1の前記記載事項ア,イ.の記載,及びオ,カ.の図面,そして,刊行物1の陽極..
と陰極とは接触電極であって前記2つの電極との間に電圧を印加した場合に電界発光により光
が発生することは自明であり,また,発光部分がオーバーコート層で覆われ,オーバーコート
,,層が光の経路内に配置されたレンズシートを含むことは明らかであることから刊行物1には
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機発光層とを有
し,
発光部分がオーバーコート層で覆われ,前記オーバーコート層が光の経路内に配置されたレ
。」(,「」。)ンズシートを含むことを特徴とする有機EL素子以下刊行物1記載の発明aという
が開示されている。
また,刊行物1の前記記載事項ア,エ.の記載,及びオ,ク.の図面,そして,刊行物1..
の陽極と陰極とは接触電極であって前記2つの電極との間に電圧を印加した場合に電界発光に
より光が発生することは自明であり,また,発光部分がオーバーコート層で覆われ,前記オー
バーコート層が光の経路内に配置された光散乱部を含むことは明らかであることから,刊行物
1には,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機発光層とを有
し,
発光部分がオーバーコート層で覆われ,前記オーバーコート層が光の経路内に配置された光
散乱部を含むことを特徴とする有機EL素子(以下「刊行物1記載の発明b」という)が。」,。
開示されている。
また,刊行物1の前記記載事項ア,ウ.の記載,及びオ,キ.の図面,そして,刊行物1..
の陽極と陰極とは接触電極であって前記2つの電極との間に電圧を印加した場合に電界発光に
より光が発生することは自明であり,また,発光部分が基板兼光散乱部で覆われ,前記基板兼
光散乱部が光の経路内に配置されたことは明らかであることから,刊行物1には,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機発光層とを有
し,
発光部分が基板兼光散乱部で覆われ,前記基板兼光散乱部が光の経路内に配置されたことを
特徴とする有機EL素子(以下「刊行物1記載の発明c」という)が開示されている。。」,。
また本件審決の理由とした拒絶理由通知において引用した特開平7-37688号公報刊,(
行物2;甲第6号証)には,次の事項が記載されている。
ケ「図5は,本発明の第3の実施例であるEL素子31を示す側面図である。EL素子31.
は,前記EL素子1とほぼ同様に構成されるけれども,基板32に光吸収部34が形成されて
いることを特徴とする。なお,EL素子31において前記EL素子1と同様に構成される部材
には,同様の参照符を付して示している。
【0024】図6は,前記基板32を示す平面図である。基板32は,たとえばプラスチック
で実現される。たとえば,光吸収部34とされる低屈折率な黒色の耐熱性プラスチック材料か
ら成る基板32に,その厚み方向に貫通して微細な穴を多数(本実施例では4)設け,該穴に
高屈折率な透光性を有するプラスチック材料を埋込むことによって高屈折率部33が形成され
る。画素11は,この高屈折率部33にそれぞれ対応して形成される。
【0025】このような基板32の一方表面32aには,前記EL素子1と同様に第1帯状電
極3,第1絶縁層4,EL発光層5,第2絶縁層6,第2帯状電極7がこの順に積層されたE
L構造体が形成され,また他方表面32bにも同様に分光フィルタ8が形成される(第4頁。」
第6欄第1行~第20行)
コ.図5
サ.図6
刊行物2の前記記載事項ケ.の記載,及びコ,サ.の図面,そして,刊行物2の第1帯状.
電極3と第2帯状電極7は一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極
であって,前記2つの電極との間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生することは
自明であり,また,発光部分が高屈折率部が形成されたプラスチック基板で覆われ,前記高屈
折率部が形成されたプラスチック基板が光の経路内に配置されたことは明らかであることか
ら,刊行物2には,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生するEL発光層とを有
し,
発光部分が高屈折率部が形成されたプラスチック基板で覆われ,前記高屈折率部が形成され
たプラスチック基板が光の経路内に配置されたことを特徴とするEL素子(以下「刊行物。」,
2記載の発明」という)が開示されている。。
また本件審決の理由とした拒絶理由通知において引用した特開平5-36475号公報刊,(
行物3;甲第7号証)には,次の事項が記載されている。
シ「発明の目的】本発明の目的は,先願の有機ELデバイスよりも長寿命の有機ELデバイ.【
スを製造することが可能な,有機EL素子の封止方法を提供することにある(第2頁第2欄。」
第33行~第35行)
ス「保護層の材料である電気絶縁性高分子化合物は,物理蒸着法(以下,PVD法というこ.
とがある)により成膜可能なもの,化学気相蒸着法(以下,CVD法ということがある)によ
り成膜可能なもの,またはパーフルオロアルコール,パーフルオロエーテル,パーフルオロア
ミン等のフッ素系溶媒に可溶のものであればよいが,透湿度の小さなものが特に好ましい。各
電気絶縁性高分子化合物の具体例としては,それぞれ以下のものが挙げられる(第3頁第3。」
欄第29行~第37行)
セ「CVD法[プラズマ重合法(プラズマCVD]により成膜可能な電気絶縁性高分子化合.)

ポリエチレン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリビニルトリメチルシラン,ポリメチルトリ
メトキシシラン,ポリシロキサン等(第3頁第4欄第5行~第9行)。」
(3)本件発明と刊行物1記載の発明aとの対比
本件発明と刊行物1記載の発明aとを比較すると,刊行物1記載の発明aの「有機発光層」
「」,「」「」。及び有機EL素子は本願発明の有機領域及び有機発光素子にそれぞれ相当する
また,刊行物1記載の発明aの「レンズシート」は「レンズ」の一種であるので,刊行物1記
載の発明aの「レンズシート」は,本願発明の「レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,
またはプリズム,あるいはこれらの任意の組み合わせからなる」光学要素に相当する。
ここで,刊行物1の前記記載事項イ.及びカ.の図面により,刊行物1記載の発明aのオー
バーコート層はレンズシートの上に設けて平坦な表面とするものであるから,できあがったも
,。のとして見た場合レンズシートがオーバーコート層に埋め込まれているということができる
そして,刊行物1記載の発明aのオーバーコート層と本件発明のシロキサンとは,発光部分を
覆うという同一の機能を有しているからいずれも,被覆層と言い換えることができる。
したがって,本件発明と刊行物1記載の発明aは,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機領域とを有
し,
発光部分が被覆層で覆われ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,
前記光学要素は,前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記
被覆層のポケット状の部分内に配置される,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,また
,,。」はプリズムあるいはこれらの任意の組み合わせからなることを特徴とする有機発光素子
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点]被覆層に関して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物1記載の発明a
はオーバーコート層である点。
(4)本件発明と刊行物1記載の発明aにおける相違点の判断
上記相違点について検討する。
刊行物1の前記記載事項ア,イ,及びオ,カ.の図面により,刊行物1記載の発明aの...
オーバーコート層は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,刊行物3に記
載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記載の発明
aのオーバーコート層に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
(5)本件発明と刊行物1記載の発明bとの対比・判断
本件発明と刊行物1記載の発明bとを比較すると,刊行物1記載の発明bの「有機発光層」
及び「有機EL素子」は,本願発明の「有機領域」及び「有機発光素子」にそれぞれ相当する
ものである。また,刊行物1記載の発明aの「光散乱部」は「ディフューザ」と同じ意味であ
,「」,「,,,り刊行物1記載の発明aの光散乱部は本願発明のレンズ回折格子ディフューザ
,,」。偏光子またはプリズムあるいはこれらの任意の組み合わせからなる光学要素に相当する
ここで,刊行物1の前記記載事項エ.及びク.の図面により,刊行物1記載の発明bのオー
バーコート層は光散乱部の上に設けて平坦な表面とするものであるから,できあがったものと
,。,して見た場合光散乱部がオーバーコート層に埋め込まれているということができるそして
刊行物1記載の発明bのオーバーコート層と本件発明のシロキサンとは,発光部分を覆うとい
う同一の機能を有しているからいずれも,被覆層と言い換えることができる。
そうすると,本件発明と刊行物1記載の発明bとの一致点,相違点は,本件発明と刊行物1
記載の発明aとの一致点,相違点と同一である。
したがって,前記(4)の判断で既述したのと同様の理由により,刊行物1記載bの発明の
オーバーコート層は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,刊行物3に記
載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記載の発明
bのオーバーコート層に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
(6)本件発明と刊行物1記載の発明cとの対比
本件発明と刊行物1記載の発明cとを比較すると,刊行物1記載の発明cの「有機発光層」
「」,「」「」。及び有機EL素子は本願発明の有機領域及び有機発光素子にそれぞれ相当する
また,刊行物1記載の発明cの「基板兼光散乱部」における「光散乱部」は「ディフューザ」
と同じ意味であるので,刊行物1記載の発明cの「光散乱部」は,本願発明の「レンズ,回折
,,,,」格子ディフューザ偏光子またはプリズムあるいはこれらの任意の組み合わせからなる
光学要素に相当する。
ここで,刊行物1の前記記載事項ウ.及びキ.の図面により,刊行物1記載の発明cの基板
兼光散乱部は基板の外側面に形成したものであるから,光散乱部として機能する部分は,基板
中に形成されているということができる。そして,刊行物1記載の発明cの基板兼光散乱部と
本件発明のシロキサンとは,発光部分を覆うという同一の機能を有しているからいずれも,被
覆層と言い換えることができる。
したがって,本件発明と刊行物1記載の発明cは,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する有機領域とを有
し,
発光部分が被覆層で覆われ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,
前記光学要素は,前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記
被覆層のポケット状の部分内に配置される,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,また
,,。」はプリズムあるいはこれらの任意の組み合わせからなることを特徴とする有機発光素子
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点]被覆層に関して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物1記載の発明c
は基板兼光散乱部である点。
(7)本件発明と刊行物1記載の発明cにおける相違点の判断
上記相違点について検討する。
刊行物1の前記記載事項ア,ウ,及びオ,キ.の図面により,刊行物1記載の発明cの...
基板兼光散乱部は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,刊行物3に記載
された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記載の発明c
の基板兼光散乱部に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
(8)本件発明と刊行物2記載の発明との対比
本件発明と刊行物2記載の発明とを比較すると,刊行物2記載の発明の「電界発光により光
が発生するEL発光層」は,本願発明の「電界発光により光が発生する領域」に相当する。ま
,「」「」。た刊行物2記載の発明の高屈折率部は光学要素として機能することは明らかである
ここで,刊行物2の前記記載事項ケ.及びコ,サ.の図面により,刊行物2記載の発明の.
高屈折率部はプラスチック基板にプラスチック材料を埋め込んで形成されたものであるから,
,。高屈折率部である光学要素はプラスチック基板の中に埋め込まれているということができる
そして,刊行物2記載の発明の高屈折率部が形成されたプラスチック基板と本件発明のシロキ
サンとは,発光部分を覆うという同一の機能を有しているからいずれも,被覆層と言い換える
ことができる。
したがって,本件発明と刊行物2記載の発明は,
「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する領域とを有し,
発光部分が被覆層で覆われ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,
前記光学要素は,前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記
被覆層のポケット状の部分内に配置されることを特徴とする発光素子」。
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]被覆層に関して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物2記載の発明
はプラスチック基板である点。
[相違点2]発光領域,発光素子に関して,本願発明が有機発光領域,有機発光素子であるの
に対して,刊行物2記載の発明はそのような限定のない点。
[相違点3]光学要素に関して,本願発明がレンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,また
はプリズム,あるいはこれらの任意の組み合わせからなるのに対して,刊行物2記載の発明は
高屈折率部である点。
(9)本件発明と刊行物2記載の発明における相違点の判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
刊行物2の前記記載事項ケ.及びコ,サ.の図面により,刊行物2記載の発明の高屈折率部.
が形成されたプラスチック基板は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,
刊行物3に記載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物
2記載の発明の高屈折率部が形成されたプラスチック基板に替えて用いることは,当業者が容
易に想到し得た事項である。
[相違点2]について
有機発光領域,有機発光素子は周知慣用の技術事項であるので,刊行物2記載の発明を有機
発光領域,有機発光素子に適用することは,当業者が容易に想到し得た事項であり,適用に際
し,特段の阻害要因もない。
[相違点3]について
光学要素として,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,またはプリズム,あるいはこ
れらの任意の組み合わせからなるものは,周知慣用の技術事項である。そして,刊行物2記載
の発明の光学要素は,光の漏れを減少させて輝度を向上させるという機能を有しているので,
同様の輝度を向上させる機能を有するレンズに替えて用いることは,当業者が容易に想到し得
た事項である。
(10)むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明又は刊行物2記載の発明及び刊行物3に記
載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第
29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点
,(「」。)審決理由は本願発明と刊行物1記載の発明a以下引用発明1aという
との対比において一致点の認定を誤るとともに,審決理由が認定した相違点の判断
を誤り(取消事由1,2,本願発明と刊行物1記載の発明b(以下「引用発明1)
b」という)との対比において一致点の認定を誤るとともに,審決理由が認定し。
た相違点の判断を誤り(取消事由3,4,本願発明と刊行物1記載の発明c(以)
下「引用発明1c」という)との対比において,一致点の認定を誤るとともに審。
決理由が認定した相違点の判断を誤り(取消事由5,6,本願発明と刊行物2記)
載の発明(以下「引用発明2」という)との対比において,一致点の認定を誤る。
とともに審決理由が認定した相違点の判断を誤った(取消事由7,8)ものである
から,審決は,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(本願発明と引用発明1aとの一致点の認定の誤り)
審決理由は,本願発明と引用発明1aとが「一方が陽極として働き,もう一方,
が陰極として働く2つの接触電極と,前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に
電界発光により光が発生する有機領域とを有し,発光部分が被覆層で覆われ,前記
被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,前記光学要素は,前記被覆
層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記被覆層のポケット
状の部分内に配置される,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,またはプリ
ズム,あるいはこれらの任意の組み合わせからなる,ことを特徴とする有機発光素
子」である点で一致すると認定したが,以下のとおり,誤りである。。
()まず,本願発明の要旨の「発光部分がシロキサンで覆われ」との規定にお1
ける「発光部分」とは,光を放射する部分である有機発光素子の表面部分をいうも
のである。そして,本件補正(甲第2号証)によって特許請求の範囲が補正された
後の明細書(甲第4号証。以下,本件補正後の明細書を「本願明細書」という)。
に「シロキサンおよびシロキサン誘導体は,有機素子と密着する透明で非反応性,
のシールを形成する。これは,水,溶剤,埃などの外部汚染物質に対する優れた障
壁を提供する。提案のカプセル封入材はまた,OLED素子に用いられる(カルシ
ウム,マグネシウム,リチウムなどの)高反応性金属電極を腐食から保護する」。
(7頁6~10行「シロキサンおよびシロキサン誘導体の別の重要な特徴は,空),
気,溶剤,または水が捕捉されないように下の有機材料と密着することである。こ
れによって有機素子の寿命が延長する(同頁17~19行)と記載されているよ。」
うに,シロキサンは,有機発光素子と密着することにより,有機発光素子の外部汚
染物質に対する障壁を提供するものである。このことは,シロキサンで覆われる有
機発光素子の表面は,空気,溶剤,水等の外部汚染物質と接する状態にあること,
,。,すなわち装置の最表面を形成する状態にあることを前提としているしたがって
「」,,本願発明の発光部分がシロキサンで覆われとの規定は装置の最表面を形成し
空気,溶剤,水等の外部汚染物質と接する状態にある有機発光素子の表面をシロキ
サンで覆うということである。
これに対し,引用発明1aの有機発光素子においては,オーバーコート層のさら
に外側に基板が配置されており,基板側から光を取り出すものである。すなわち,
装置の最外層は基板であり,オーバーコート層は基板と有機発光素子との間に配置
されているから,装置の最表面を形成し,空気,溶剤,水等の外部汚染物質と接す
る状態にある有機発光素子の表面をオーバーコート層で覆うものではない。
したがって,本願発明と引用発明1aとが「発光部分が被覆層で覆われ」る点で
一致するとした認定は誤りである。
()また,本願発明の要旨の「シロキサンが前記光の経路内に配置された光学2
要素を含み」との規定における「含む」とは,引き続いて規定されているように,
光学要素が「前記シロキサンに埋め込まれるか,前記シロキサン中に形成される,
か,または前記シロキサンのポケット状の部分内に配置される」ことをいうもので
あり,光学要素が,シロキサンによって周囲を囲まれていなければならない。
これに対し,引用発明1aのオーバーコート層は,レンズシートの上に被覆され
ているにすぎず,オーバーコート層がレンズシートを「含む」ものではない。
したがって,本願発明と引用発明1aとが「被覆層が前記光の経路内に配置され
た光学要素を含(む」点で一致するとした認定は誤りである。)
2取消事由2(本願発明と引用発明1aの相違点についての判断の誤り)
審決理由の認定に係る,本願発明と引用発明1aとの相違点である「被覆層に関
して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物1記載の発明aはオーバー
コート層である点」につき,審決理由は「刊行物1記載の発明aのオーバーコー,
ト層は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,刊行物3に記載
された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記
載の発明aのオーバーコート層に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た
事項である」と判断したが,誤りである。。
すなわち,刊行物1に「凹凸面を有する光散乱部を前記の凹凸面が有機EL素子
と対向する向きに基板の内側面上に設けた場合には,この光散乱部の上にオーバー
コート層を設けて実質的に平坦な面を形成した後,このオーバーコート層上に有機
EL素子を形成する(段落【)と記載されているように,引用発明1aの。」】0033
,(),オーバーコート層は光散乱部レンズシートの凹凸面を平坦化するものであり
刊行物1には,オーバーコート層によって有機発光素子を封止することは,開示も
示唆もされていない。上記1の()のとおり,引用発明1aの有機発光素子装置で1
は,基板と有機発光素子との間にオーバーコート層を形成するものであって,オー
バーコート層は最表面に露出するものではないから,封止という役割をするはずも
なく,その必要もないのである。他方,刊行物3記載の発明(以下「引用発明3」
という)のシロキサンは,有機発光素子の保護膜であって,レンズシートの凹凸。
面を平坦化するためにのものではない。したがって,引用発明1aのオーバーコー
ト層と引用発明3のシロキサンとは,機能が異なるものであり,引用発明1aのオ
ーバーコート層を引用発明3のシロキサンに換える動機付けがない。
また,刊行物1,3には,有機発光素子の最表面を水,溶剤,埃などの外部汚染
物質に対する優れた障壁(シールド層)を形成するために,シロキサン及びシロキ
サン誘導体で被覆することは,開示も示唆もされていない。
したがって,上記相違点に係る本願発明の構成は,引用発明1a及び引用発明3
に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない。
3取消事由3(本願発明と引用発明1bとの一致点の認定の誤り)
審決理由は,本願発明と引用発明1bとの一致点及び相違点は,本願発明と引用
,「,発明1aとの一致点及び相違点と同一であるとするから一方が陽極として働き
もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,前記2つの電極の間に電圧を印加し
た場合に電界発光により光が発生する有機領域とを有し,発光部分が被覆層で覆わ
れ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,前記光学要素は,
前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記被覆層の
ポケット状の部分内に配置される,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,ま
たはプリズム,あるいはこれらの任意の組み合わせからなる,ことを特徴とする有
機発光素子」である点を,本願発明と引用発明1bとの一致点と認定したもので。
あるが,以下のとおり,誤りである。
()まず,本願発明の「発光部分がシロキサンで覆われ」との規定が,装置の1
最表面を形成し,空気,溶剤,水等の外部汚染物質と接する状態にある有機発光素
子の表面をシロキサンで覆うということであることは,上記1の()のとおりであ1
る。
,,,,これに対し引用発明1bは引用発明1aと同様装置の最外層は基板であり
オーバーコート層は基板と有機発光素子との間に配置されているから,装置の最表
面を形成し,空気,溶剤,水等の外部汚染物質と接する状態にある有機発光素子の
表面をオーバーコート層で覆うものではない。
したがって,本願発明と引用発明1bとが「発光部分が被覆層で覆われ」る点で
一致するとした認定は誤りである。
()また,本願発明において「シロキサンが前記光の経路内に配置された光学2,
要素を含(む)」とは,光学要素が「前記シロキサンに埋め込まれるか,前記シロ,
キサン中に形成されるか,または前記シロキサンのポケット状の部分内に配置され
る」ことをいうものであり,光学要素が,シロキサンによって周囲を囲まれていな
ければならないことは,上記1の()のとおりある。これに対し,引用発明1bの2
光散乱部は班点状なので,オーバーコート層が光散乱部を含むように見えるが,オ
ーバーコート層の端部では光散乱部が露出しているから(刊行物1図11,オー)
バーコート層が光散乱部の周囲を完全に囲むものではなく,オーバーコート層は,
光散乱部を含むとはいえない。
したがって,本願発明と引用発明1bとが「被覆層が前記光の経路内に配置され
た光学要素を含(む)」点で一致するとした認定は誤りである。
4取消事由4(本願発明と引用発明1bの相違点についての判断の誤り)
上記のとおり,審決理由は,本願発明と引用発明1bとの相違点は,本願発明と
引用発明1aとの相違点と同一であるとするから「被覆層に関して,本願発明が,
シロキサンであるのに対して,引用発明1bはオーバーコート層である点」を相違
点と認定したものであるところ,審決理由は,この相違点につき「刊行物1記載,
bの発明のオーバーコート層は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っ
ている,刊行物3に記載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としての
シロキサンを刊行物1記載の発明bのオーバーコート層に替えて用いることは,当
業者が容易に想到し得た事項である」と判断したが,誤りである。。
すなわち,引用発明1bのオーバーコート層は,引用発明1aのオーバーコート
層と同様,光散乱部の凹凸面を平坦化するものであり(刊行物1段落【,刊0033】)
行物1には,オーバーコート層によって有機発光素子を封止することは,開示も示
。,,唆もされていない上記3の()のとおり引用発明1bの有機発光素子装置では1
基板と有機発光素子との間にオーバーコート層を形成するものであって,オーバー
コート層は最表面に露出するものではないから,封止という役割をする必要がない
ことも引用発明1aと同様である。他方,引用発明3のシロキサンが,有機発光素
,,子の保護膜であって光散乱部の凹凸面を平坦化するためにのものではないことは
上記2のとおりであるから,引用発明1bのオーバーコート層と引用発明3のシロ
キサンとは,機能が異なるものであり,引用発明1bのオーバーコート層を引用発
明3のシロキサンに換える動機付けがない。
また,刊行物1,3に,有機発光素子の最表面を水,溶剤,埃などの外部汚染物
質に対する優れた障壁(シールド層)を形成するために,シロキサン及びシロキサ
ン誘導体で被覆することが,開示も示唆もされていないことも,上記2のとおりで
ある。
したがって,上記相違点に係る本願発明の構成は,引用発明1b及び引用発明3
に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない。
5取消事由5(本願発明と引用発明1cとの一致点の認定の誤り)
審決理由は「刊行物1記載の発明cの基板兼光散乱部と本件発明のシロキサン,
とは,発光部分を覆うという同一の機能を有しているからいずれも,被覆層と言い
換えることができる」とした上で,本願発明と引用発明1cとの一致点を,引用。
,「,発明1aとの一致点及び引用発明1bとの一致点と同様一方が陽極として働き
もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,前記2つの電極の間に電圧を印加し
た場合に電界発光により光が発生する有機領域とを有し,発光部分が被覆層で覆わ
れ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,前記光学要素は,
前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記被覆層の
ポケット状の部分内に配置される,レンズ,回折格子,ディフューザ,偏光子,ま
たはプリズム,あるいはこれらの任意の組み合わせからなる,ことを特徴とする有
機発光素子」である点と認定したが,以下のとおり,誤りである。。
,,,,,すなわち上記1の()のとおり本願発明のシロキサンは発光部分つまり1
光を放射する部分である有機発光素子の表面部分を覆い,有機発光素子の外部汚染
物質に対する障壁を提供するものである。
これに対し,刊行物1の「片面にレンズ処理を施したポリエチレンテレフタレー
トフィルム(レンティキュラーレンズの金型に流し込んで成形したもの)を基板兼
光散乱部として用い,この基板においてレンズ処理していない側の主表面上に前記
の方法(ITO膜の成膜を含む)により有機発光素子を形成して,目的とする有機
EL装置を得た。この有機EL装置の断面の概略を図8に示す(段落【)。」】0058
との記載及び図8によれば,引用発明1cの基板兼光散乱部は,その上に有機発光
素子を形成するための土台となる基板であって,本願発明のシロキサンと明らかに
機能を異にするものである。引用発明1a及び引用発明1bには,基板と有機発光
素子との間に配置されたオーバーコート層があったが,引用発明1cには,そもそ
も,オーバーコート層がないのであるから,本願発明のシロキサンに相当する被覆
層は存在していない。
したがって,本願発明と引用発明1cとが「発光部分が被覆層で覆われ,前記被
覆層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,前記光学要素は,前記被覆層
に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記被覆層のポケット状
の部分内に配置される」点で一致するとした認定は誤りである。
6取消事由6(本願発明と引用発明1cの相違点についての判断の誤り)
審決理由の認定に係る,本願発明と引用発明1cとの相違点である「被覆層に関
して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物1記載の発明cは基板兼光
散乱部である点」につき,審決理由は「刊行物1記載の発明cの基板兼光散乱部。,
は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆っている,刊行物3に記載され
た,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記載の
発明cの基板兼光散乱部に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た事項で
ある」と判断したが,誤りである。。
すなわち,刊行物3に「CVD法[プラズマ重合法(プラズマCVD]により)
,,成膜可能な電気絶縁性高分子化合物ポリエチレンポリテトラフルオロエチレン
,,。」ポリビニルトリメチルシランポリメチルトリメトキシシランポリシロキサン等
(段落【)と記載されているとおり,引用発明3は,CVD法(化学気相蒸0013】
着法)により,シロキサンを成膜するものである。CVD法は,基板上に被膜を形
成する手段であって,基板自体を形成する際に使用される方法ではないから,引用
発明3のシロキサンを引用発明1cの「基板兼光散乱部」に換えて適用する動機付
けがないし,阻害事由があるというべきである。
また,刊行物1,3に,有機発光素子の最表面を水,溶剤,埃などの外部汚染物
質に対する優れた障壁(シールド層)を形成するために,シロキサン及びシロキサ
ン誘導体で被覆することが,開示も示唆もされていないことも,上記2のとおりで
ある。
したがって,上記相違点に係る本願発明の構成は,引用発明1c及び引用発明3
に基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない。
7取消事由7(本願発明と引用発明2との一致点の認定の誤り)
審決理由は「刊行物2記載の発明の高屈折率部が形成されたプラスチック基板,
と本件発明のシロキサンとは,発光部分を覆うという同一の機能を有しているから
いずれも,被覆層と言い換えることができる」とした上で,本願発明と引用発明。
2とが「一方が陽極として働き,もう一方が陰極として働く2つの接触電極と,,
前記2つの電極の間に電圧を印加した場合に電界発光により光が発生する領域とを
有し,発光部分が被覆層で覆われ,前記被覆層が前記光の経路内に配置された光学
要素を含み,前記光学要素は,前記被覆層に埋め込まれるか,前記被覆層中に形成
されるか,または前記被覆層のポケット状の部分内に配置されることを特徴とする
発光素子」である点で一致すると認定したが,以下のとおり,誤りである。。
,,,,,すなわち上記1の()のとおり本願発明のシロキサンは発光部分つまり1
光を放射する部分である有機発光素子の表面部分を覆い,有機発光素子の外部汚染
物質に対する障壁を提供するものである。
これに対し,引用発明2の「プラスチック基板」のような基板は,有機発光素子
などの薄膜層をその表面に形成するための土台となるものであって,本願発明のシ
ロキサンと明らかに機能を異にするものである。また,刊行物2の図5によれば,
,(。)引用発明2ではプラスチック基板32の一方の面に発光素子3~7電極を含む
を形成しており,発光素子は外部に露出していて,被覆層に当たるものは存在しな
い。
したがって,本願発明と引用発明2とが「発光部分が被覆層で覆われ,前記被覆
層が前記光の経路内に配置された光学要素を含み,前記光学要素は,前記被覆層に
埋め込まれるか,前記被覆層中に形成されるか,または前記被覆層のポケット状の
部分内に配置され」ている点で一致するとした認定は誤りである。
8取消事由8(本願発明と引用発明2の相違点1についての判断の誤り)
審決理由の認定に係る,本願発明と引用発明2との相違点1である「被覆層に関
して,本願発明がシロキサンであるのに対して,刊行物2記載の発明はプラスチッ
ク基板である点」につき,審決理由は「刊行物2記載の発明の高屈折率部が形成。,
されたプラスチック基板は発光部分を覆うものであり,同様に発光部分を覆ってい
る,刊行物3に記載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロ
キサンを刊行物2記載の発明の高屈折率部が形成されたプラスチック基板に替えて
用いることは,当業者が容易に想到し得た事項である」と判断したが,誤りであ。
る。
すなわち,上記6のとおり,引用発明3は,CVD法により,シロキサンを成膜
するものであるところ,CVD法は,基板上に被膜を形成する手段であって,基板
自体を形成する際に使用される方法ではないから,引用発明3のシロキサンを引用
発明2の「プラスチック基板」に換えて適用する動機付けがないし,阻害事由があ
るというべきである。
また,刊行物2,3には,有機発光素子の最表面を水,溶剤,埃などの外部汚染
物質に対する優れた障壁(シールド層)を形成するために,シロキサン及びシロキ
サン誘導体で被覆することは,開示も示唆もされていない。
したがって,上記相違点に係る本願発明の構成は,引用発明2及び引用発明3に
基づいて,当業者が容易に想到し得るものではない。
第4被告の反論の要点
1取消事由3(本願発明と引用発明1bとの一致点の認定の誤り)に対し
()原告は,引用発明1bの有機発光素子装置の最外層が基板であり,オーバ1
ーコート層は基板と有機発光素子との間に配置されていることを理由として,引用
発明1bが「発光部分が被覆層で覆われ」るものではないと主張するが,引用発明
1bの発光部分(有機発光素子)とオーバーコート層との関係を見れば,オーバー
()。「」コート層は発光部分有機発光素子を覆っているといえるものである最外層
や「基板」は,本願発明の要旨に基づく本願発明の構成となっていないから,これ
らに基づく原告の主張は失当である。
,「」,()原告は本願発明におけるシロキサンが・・・光学要素を含(む)とは2
光学要素が,シロキサンによって周囲を囲まれていなければならないとした上,引
用発明1bのオーバーコート層の端部では光散乱部が露出しているから,オーバー
コート層が光散乱部の周囲を完全に囲むものではなく,オーバーコート層が光散乱
部を含むとはいえないと主張する。
しかしながら,本願発明の要旨は「シロキサンが・・・光学要素を含(む)」態,
様として,光学要素が「シロキサンに埋め込まれる」こと「シロキサン中に形成,,
される」こと,及び「シロキサンのポケット状の部分内に配置される」ことを挙げ
ているところ「埋め込まれる」との用語は,例えば,特開平4-14831号公,
()(),報乙第3号証や特開平5-90399号公報乙第4号証に見られるように
周囲が完全に囲繞される構造ではない場合にも用いられるから,引用発明1bの光
散乱部はオーバーコート層に埋め込まれたものということができる。のみならず,
本願明細書の図2によれば,本願発明における,光学要素が「シロキサンのポケッ
ト状の部分内に配置される」こととは,シロキサンによって周囲が完全に囲繞され
ない場合も含んでいることが認められるところ,引用発明1bの光散乱部は,少な
くとも,オーバーコート層のポケット状の部分内に配置されるものであるから,い
ずれにせよ,引用発明1bのオーバーコート層は光散乱部を含むものである。
2取消事由4(本願発明と引用発明1bの相違点についての判断の誤り)に対し
()原告は,引用発明1bのオーバーコート層は,光散乱部の凹凸面を平坦化1
するものであるのに対し,引用発明3のシロキサンは,有機発光素子の保護膜であ
って,光散乱部の凹凸面を平坦化するためにのものではないから,引用発明1bの
オーバーコート層と引用発明3のシロキサンとは機能が異なるものであり,引用発
明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに換える動機付けがないと主
張する。
しかしながら,発光部分(引用発明1bの有機EL素子,引用発明3の積層構造
体)と被覆層(引用発明1bのオーバーコート層,引用発明3のシロキサン)との
関係を見ると,引用発明1bも引用発明3も発光部分が被覆層に覆われているもの
であり,また,引用発明1bと引用発明3とは,有機発光素子という同一技術分野
に属しているので,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに
置き換えて相違点に係る構成とすることに格別の困難性はない。
また,引用発明1bのオーバーコート層は,平坦化することによって密着性を良
くし,発光部分を覆うという機能を有しており,引用発明3のシロキサンは,発光
部分を覆うことによって保護しているから,発光部分を覆うという機能を有してい
る。そうすると,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに置
き換えて用いることは,より良い材料を試みようとする当業者にとって当然のこと
である。さらに,引用発明1bのオーバーコート層の平坦化の機能に着目したとし
ても,特開平1-307247号公報(乙第1号証)や特開平2-123754号
公報(乙第2号証)に見られるように,平坦化膜としてシロキサンを用いることは
従来周知の技術事項である。そうすると,引用発明1bのオーバーコート層を引用
発明3のシロキサンに置き換えることに,何らの阻害要因も存在しない。
()なお,原告は,引用発明1bの有機発光素子装置では,オーバーコート層2
は最表面に露出するものではないと主張するところ,本願発明においてシロキサン
が最表面に露出することは,本願発明の要旨の規定するところではないから,上記
主張は意味がなく,主張自体失当であるが,念のため,下記のとおり反論する。
有機発光素子において,光を基板側から取り出すことも光を基板とは反対側から
取り出すことも,特開平4-125683号公報(乙第5号証,特開平8-10)
()。9373号公報乙第6号証に記載されているように従来周知の技術事項である
そうすると,光を基板とは反対側から取り出すことは任意のことであるから,引用
発明1bにおいて光を基板とは反対側から取り出すような構成とすれば,基板上に
有機発光素子,光散乱部を埋め込んだオーバーコート層を,順に配置する構成とな
り,オーバーコート層が表面となることは自明である。そして,保護層としてシロ
キサンを用いることは,刊行物3のほか,特開平7-263722号公報(乙第7
号証,特開平2-197232号公報(乙第8号証,特開平7-147189号))
公報(乙第9号証,特開平7-169567号公報(乙第10号証)に記載され)
ているように従来周知の技術事項であり,また,保護層としてのシロキサンを最表
面として用いることも,上記特開平7-263722号公報,特開平2-1972
32号公報に記載されているように従来周知の技術事項である。
したがって,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに置き
換えて最表面とすることにも格別の困難性はなく,封止という役割や外部汚染物質
に対する障壁という作用効果も,引用発明3や,従来周知の技術事項から当業者が
予測できる範囲内のことである。
3その余の取消事由に対し
原告主張のその余の取消事由について,原告の主張を争う。
第5当裁判所の判断
便宜上,取消事由3,4から判断する。
1取消事由3(本願発明と引用発明1bとの一致点の認定の誤り)について
()原告は,本願発明の「発光部分がシロキサンで覆われ」との規定が,装置1
の最表面を形成する有機発光素子の表面をシロキサンで覆うということであるのに
対し,引用発明1bの装置の最外層は基板であり,装置の最表面を形成する有機発
光素子の表面をオーバーコート層で覆うものではないから,本願発明と引用発明1
bとが「発光部分が被覆層で覆われ」る点で一致するとした認定は誤りであると主
張する。
しかしながら,装置の最表面を形成する有機発光素子の表面をシロキサンで覆う
こと(したがって,シロキサンが装置の最外層となること)は,本願発明の要旨の
規定するところではなく,このことを前提とする原告の上記主張を採用することは
できない。そして,刊行物1の「実施例18まず,基板として透明ガラス板(日
本板ガラス社製のOA-2,厚さ1.1mm)を用い,この基板の内側面にアルミ
ニウムを班点状に付着させることにより光散乱部を形成した。この光散乱部の形成
は真空蒸着法により行い,そのときの成膜条件は減圧度1×10Pa,アルミニ-4
ウムを入れた坩堝の温度1200℃とした。また,班点状に付着したアルミニウム
の膜厚(平均値)は0.01μmであり,被覆率は約50%であった。次に,この
光散乱部上に光硬化性樹脂・・・からなるオーバーコート層を設けることにより実
質的に平坦な面を形成した。このとき,オーバーコート層の膜厚(基板面を基準と
した膜厚は10μmとしたこの後前記のオーバーコート層上に前述の方法I)。,(
TO膜の成膜を含む)により有機EL素子を形成して,目的とする有機EL装置を
得た。この有機EL装置の一部切欠き斜視図を図11として示す。図11に示した
有機EL装置10gは基板11fと,この基板11fの片面(内側面)に班点状に
付着したアルミニウム23からなる光散乱部と,この光散乱部を被覆するオーバー
コート層24と,このオーバーコート層24上に形成された有機EL素子12とを
備えている(段落【)との記載及び図11によれば,製造順序は,オーバ。」】0063
ーコート層,有機発光素子の順であるとしても,最終的な構造を見る限り,引用発
明1bのオーバーコート層は,有機発光素子(発光部分)を覆っているものといえ
るから,本願発明と引用発明1bとが「発光部分が被覆層で覆われ」る点で一致す
るとした審決理由の認定に誤りはない。
,「」,()原告は本願発明におけるシロキサンが・・・光学要素を含(む)とは2
光学要素が,シロキサンによって周囲を囲まれていなければならないとした上,引
用発明1bのオーバーコート層は,光散乱部を含んでいるように見えるが,オーバ
ーコート層の端部では光散乱部が露出しているから,オーバーコート層が光散乱部
の周囲を完全に囲むものではなく,オーバーコート層が光散乱部を含むとはいえな
いと主張する。
しかしながら,本願発明の要旨は「シロキサンが・・・光学要素を含(む)」こ,
との具体的態様として「光学要素は,前記シロキサンに埋め込まれるか,前記シ,
ロキサン中に形成されるか,または前記シロキサンのポケット状の部分内に配置さ
れる」と規定しているところ,本願明細書の「カプセル封入材は,前記有機発光素
子から放出される光の光路内にあるように配置された光学要素を含む。カプセル封
入材中に形成され,または埋め込まれる光学要素の例には,レンズ,フィルタ,カ
ラー・コンバータ,回折格子,プリズムなどがある(6頁22~25行「本。」),
発明の第1の実施形態を第1図に示す・・・この例において,カプセル封入材1。
7中に埋め込まれる光学素子はレンズ18である・・・このようなレンズ18は。
(第1図に示すように)カプセル封入材17中に埋め込まれた離散型の光学素子と
することができる。同様に,レンズ20は,第2図に概略的に示すように,カプセ
ル封入材22のポケット状部分21内に配置することもできる。封入をさらに簡略
化するため,かつコスト低減のために,エンボス加工(第3図参照)などによりシ
ロキサン中にレンズを直接形成することもできる(10頁8~24行)との各記。」
,()載及び図1~3によれば光学要素がシロキサンに埋め込まれる態様図1の態様
では,光学要素がシロキサンによって周囲を囲繞されていることが窺われるが,光
学要素がシロキサン中に形成される態様(図3の態様)及び光学要素がシロキサン
のポケット状の部分内に配置される態様(図2の態様)においては,シロキサンが
光学要素の周囲全部を囲むものでないことは明らかである。そして,本願明細書中
に「シロキサン中に形成される」場合や「シロキサンのポケット状の部分内に配,
置される」場合には,周囲全部を囲むものでなくてもよいが「シロキサンに埋め,
込まれる」場合には,シロキサンによって周囲を囲繞されることが必要であること
を示す記載もない。そうすると「埋め込まれる」との用語が,常に周囲を囲繞さ,
れている場合にのみ用いられるか否かにかかわらず,本願発明における「シロキサ
ンが・・・光学要素を含(む)」ことが,光学要素がシロキサンによって周囲を囲繞
されていることのみを表すものでないことは明らかであるから,原告の上記主張を
採用することはできず,本願発明と引用発明1bとが「被覆層が前記光の経路内に
配置された光学要素を含(む)」点で一致するとした審決理由の認定に誤りはない。
2取消事由4(本願発明と引用発明1bの相違点についての判断の誤り)につい

()被告は,発光部分(引用発明1bの有機EL素子,引用発明3の積層構造1
体)と被覆層(引用発明1bのオーバーコート層,引用発明3のシロキサン)との
関係を見ると,引用発明1bも引用発明3も発光部分が被覆層に覆われているもの
であり,また,引用発明1bと引用発明3とは,有機発光素子という同一技術分野
に属しているので,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに
。,置き換えて相違点に係る構成とすることに格別の困難性はないと主張するそして
引用発明1bの発光部分が被覆層に覆われているといえることは,上記1の()の1
とおりであり,刊行物1,3の各記載によれば,引用発明3においても発光部分が
被覆層に覆われているといえること,引用発明1b及び引用発明3が有機発光素子
という同一技術分野に属していることも,被告主張のとおりである。
しかしながら,刊行物1の「本発明の有機EL装置では・・・光散乱部を設けた
基板上に有機EL素子が形成されているわけであるが,凹凸面を有する光散乱部を
前記の凹凸面が有機EL素子と対向する向きに基板の内側面上に設けた場合には,
この光散乱部の上にオーバーコート層を設けて実質的に平坦な面を形成した後,こ
のオーバーコート層上に有機EL素子を形成する。オーバーコート層を設けること
なく前記の光散乱部上に直接有機EL素子を形成すると,前記の光散乱部と直接接
することになる透明性電極(有機EL素子を構成する透明性電極=陽極)が前記光
散乱部の凹凸の影響を受けて平坦にならないため,有機EL素子を構成する各層の
厚さが一定でなくなる結果,発光面に多数のダークスポットが生じ足り,ショート
パスによる断線が生じ易くなる(段落【)との記載によれば,引用発明1。」】0033
aのオーバーコート層は,光散乱部の凹凸面上に直接有機発光素子を形成した場合
における,光散乱部の凹凸の影響による発光面の多数のダークスポットの発生やシ
ョートパスによる断線などを避けるため,光散乱部の凹凸面を実質的に平坦化する
目的で形成するものであることが認められる。
他方,刊行物3の「本発明の方法は・・・有機EL素子の前記積層構造体の外,
,,,表面に電気絶縁性高分子化合物からなる保護層を設けた後この保護層の外側に
電気絶縁性ガラス,電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体からなる群
より選択される1つからなるシールド層を設けることを特徴とするものである」。
段落保護層の材料である電気絶縁性高分子化合物は物理蒸着法以(【】),「,(0008
下,PVD法ということがある)により成膜可能なもの,化学気相蒸着法(以下,
CVD法ということがある)により成膜可能なもの,またはパーフルオロアルコー
ル,パーフルオロエーテル,パーフルオロアミン等のフッ素系溶媒に可溶のもので
あればよいが,透湿度の小さなものが特に好ましい。各電気絶縁性高分子化合物の
具体例としては,それぞれ以下のものが挙げられる(段落【「②CVD。」】),0011
法[プラズマ重合法(プラズマCVD]により成膜可能な電気絶縁性高分子化合)
物ポリエチレン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリビニルトリメチルシラン,
,。」(【】),「,ポリメチルトリメトキシシランポリシロキサン等段落保護層は0013
用いる高分子化合物に応じて,それぞれPVD法(上記①の高分子化合物,CV)
D法(上記②の高分子化合物,キャスト法またはスピンコート法(上記③の高分)
子化合物)により設けることができる。保護層の厚さは,用いる材料や形成方法に
もよるが,10nm~100μmであることが好ましい(段落【「長寿。」】),0015
命の有機EL素子を得るうえからは,保護層の形成過程での発光層や対向電極の特
性劣化をできるだけ抑止することが望ましく,そのためにはPVD法やCVD法に
より真空環境下で保護層を設けることが特に好ましい。そして,同様の理由から,
積層構造体を構成する発光層の形成から保護層の形成までを一連の真空環境下で行
うことが特に好ましい(段落【「本発明の方法では,このようにして設。」】),0021
けた保護層の外側に,電気絶縁性ガラス,電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁
。,性気密流体からなる群より選択される1つからなるシールド層を設けるこのとき
積層構造体は保護層により守られたかたちになっているので,シールド層の形成に
は種々の方法を適用することができる(段落【)との各記載によれば,引。」】0022
用発明3のシロキサンは,有機発光素子の外表面にシールド層を形成する際の影響
から有機発光素子を保護すること等を目的とする保護膜として設けられるものであ
,,り保護層形成過程での発光層や対向電極の特性劣化をできるだけ抑止するために
CVD法により真空環境下で形成されることが特に好ましいことが認められる。
また,特開平1-307247号公報(乙第1号証)には,一般にCVD法(プ
ラズマCVD法)によって成膜された酸化膜は極めて薄く,平坦化目的には適さな
いことが記載されている(1頁右欄6~15行。)
そして,刊行物1の上記記載によれば,引用発明1bのオーバーコート層は,光
散乱部の凹凸面を実質的に平坦化し得るものでなければならないが,引用発明3の
シロキサンが,その形成方法や膜厚を含めて平坦化に適した特質を有することを認
めるに足りる証拠はなく,却って,上記刊行物3の記載や特開平1-307247
号公報の記載に照らすと,平坦化には適さないことが窺われる。そうすると,たと
え,引用発明1bも引用発明3も発光部分(引用発明1bの有機EL素子,引用発
明3の積層構造体)が被覆層(引用発明1bのオーバーコート層,引用発明3のシ
ロキサン)に覆われているものであり,また,引用発明1bと引用発明3とは,有
機発光素子という同一技術分野に属しているとしても,それだけでは,引用発明1
bのオーバーコート層に換えて引用発明3のシロキサンを用いることが,当業者に
とって容易になし得たと論理付けることはできない。
被告は,特開平1-307247号公報(乙第1号証)や特開平2-12375
4号公報(乙第2号証)に見られるように,平坦化膜としてシロキサンを用いるこ
とは従来周知の技術事項であると主張するが,特開平1-307247号公報は,
上記のとおり,CVD法(プラズマCVD法)によって成膜された酸化膜が極めて
薄いため,平坦化目的には適さないとするものであって,そのシロキサンによる平
坦化層の形成方法(3頁左上欄3行~右上欄6行)は,CVD法によりなされるも
のではない。このことは,特開平2-123754号公報記載のシロキサンによる
層形成(3頁右上欄末行~左下欄14行)においても同様である。しかも,これら
の刊行物に記載される平坦化膜は,引用発明1bや引用発明3のような有機発光素
子装置ではなく,半導体装置に形成されるものであるところ,保護層形成過程にお
いて受けるダメージに関して,有機発光素子を,半導体素子と同様に扱ってよいこ
とが知られていると認めるに足りる証拠もない。そうすると,上記各刊行物に,半
導体装置において,CVD法以外の方法により,シロキサンを用いた平坦化膜の形
成が記載されているからといって,これに従って,上記のとおり「CVD法[プ,
ラズマ重合法(プラズマCVD]により成膜可能な電気絶縁性高分子化合物・)
・・ポリシロキサン等「長寿命の有機EL素子を得るうえからは,保護層の形。」,
成過程での発光層や対向電極の特性劣化をできるだけ抑止することが望ましく,そ
のためにはPVD法やCVD法により真空環境下で保護層を設けることが特に好ま
しい」との記載のある刊行物3に開示されたシロキサンの保護膜を,真空環境下に
おけるCVD法以外の方法により形成して,引用発明1bのオーバーコート層に代
わる平坦化膜に使用することが,当業者に容易になし得るものとは認めることがで
きない。
なお,被告は,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシロキサンに置
き換えて用いることは,より良い材料を試みようとする当業者にとって当然のこと
であるとも主張するが,上記のとおり,引用発明3のシロキサンが,平坦化に適し
た特質を有するものとは認められないのであるから,これを引用発明1bのオーバ
ーコート層に代わる「より良い材料」ということはできないのであって,被告の上
記主張を採用することもできない。
()被告は,光を基板とは反対側から取り出すことも従来周知であり,任意に2
なし得ることであるから,引用発明1bにおいて光を基板とは反対側から取り出す
ような構成とすれば,基板上に有機発光素子,光散乱部を埋め込んだオーバーコー
ト層を順に配置する構成となり,オーバーコート層が表面となることは自明である
ところ,保護層としてシロキサンを用いることも刊行物3等に記載されたとおり,
従来周知の技術事項であって,引用発明1bのオーバーコート層を引用発明3のシ
ロキサンに置き換えることに格別の困難性はなく,封止という役割や外部汚染物質
に対する障壁という作用効果も,引用発明3や,従来周知の技術事項から当業者が
予測できる範囲内のことである旨主張する。
しかしながら,本願発明の進歩性に関するこのような判断は,本件拒絶理由通知
や審決理由において示されたものと明らかに相違するものであり,本件の事案及び
訴訟の経緯に照らし,相当であるとはいえない。
念のために,判断すると,刊行物1の,上記1の()で摘記した段落【】及10063
び上記()で摘記した段落【】の各記載によれば,引用発明1bは,基板の内10033
側面にアルミニウムを班点状に付着させることにより光散乱部を形成し,その上に
有機発光素子を形成するものであるから,光散乱部の凹凸面上に直接有機発光素子
を形成した場合における,光散乱部の凹凸による悪影響を避けるため,光散乱部の
凹凸面を実質的に平坦化する目的でオーバーコート層を設けることが必要となるも
のと認められるが,引用発明1bにおいて光を基板とは反対側から取り出すような
構成とした場合には,光散乱部を光の経路内に配置するためには,光散乱部の上に
有機発光素子を形成するのではなく,有機発光素子の上に光散乱部を形成すること
になるから,少なくとも平坦化を目的として,オーバーコート層を設ける必要はな
くなるものと推認され,そうであれば,基板上に有機発光素子,光散乱部を埋め込
んだオーバーコート層を順に配置する構成となるとの被告の主張は,直ちに採用し
得るものではない。
()以上のとおりであるから,本願発明と引用発明1bの相違点についての審3
決理由の(したがって審決の)判断は,誤りというべきである。
3その他の取消事由について
審決理由の,本願発明と引用発明1aの相違点についての判断(取消事由2,)
本願発明と引用発明1cの相違点についての判断(取消事由6)及び本願発明と引
用発明2の相違点1についての判断(取消事由8)について,検討する。
()本願発明と引用発明1aの相違点についての判断(取消事由2)について1
刊行物1の「光散乱部の具体例としては,下記()~()のものが挙げられる」19。
(段落【「()レンズシートからなるもの(段落【「実施例3001510016】),」】),
まず,基板として実施例1で使用したガラス板と同じもの(ただし,ITO膜は設
けられていない)を用い,この基板の内側面に実施例1と同様にしてレンズシート
Iを固着させた。このとき,レンズシートIの向きはレンズが形成されている側の
面が有機EL素子と対向する向きとした。次に,このレンズシートIの上に光硬化
,。性樹脂・・・を塗布して実質的に平坦な表面を有するオーバーコート層を設けた
このとき,オーバーコート層の膜厚(最大膜厚)は10μmとした。この後,前記
のオーバーコート層上に前述の方法(ITO膜の成膜を含む)により有機EL素子
を形成して,目的とする有機EL装置を得た。この有機EL装置の断面の概略を図
4に示す。図4に示したように,この有機EL装置10cは基板11aと,この基
板11aの片面(内側面)にエポキシ系接着剤(図示せず)によって固着された光
散乱部としてのレンティキュラーレンズシート15a(レンズシートI)と,この
レンズシート15a上に形成されたオーバーコート層16と,このオーバーコート
層16上に形成された有機EL素子12とを備えている(段落【)との各。」】0053
記載,上記2の()の段落【】の記載及び図4によれば,引用発明1aは,基10033
板上に光散乱部としてレンズシートを固着させ,その上に,オーバーコート層及び
有機発光素子を,この順により形成したものであって,そのオーバーコート層は,
引用発明1bの場合と同様,有機発光素子(発光部分)を覆っているといえるもの
であり,有機発光素子と対向するレンズシート(光散乱部)の凹凸面を実質的に平
坦化する目的で形成するものであることが認められる。
そうすると,上記2の()で述べたと同様,引用発明1aのオーバーコート層に1
換えて引用発明3のシロキサンを用いることは,当業者といえどもこれを容易にな
し得ると認めることはできないから「刊行物3に記載された,有機発光素子の封,
止機能を有する保護層としてのシロキサンを刊行物1記載の発明aのオーバーコー
ト層に替えて用いることは,当業者が容易に想到し得た事項である」とした,本。
(),願発明と引用発明1aの相違点についての審決理由のしたがって審決の判断は
誤りというべきである。
()本願発明と引用発明1cの相違点についての判断(取消事由6)について2
刊行物1の「光散乱部は・・・有機EL素子が設けられる基板から離れた状態で
配置されていてもよいが・・・基板自体が光散乱部として機能するものであるこ,
とが好ましい(段落【「実施例13片面にレンズ処理を施したポリエ。」】),0015
チレンテレフタレートフィルム(レンティキュラーレンズの金型に流し込んで成形
したもの)を基板兼光散乱部として用い,この基板においてレンズ処理してない側
(),の主表面上に前記の方法ITO膜の成膜を含むにより有機EL素子を形成して
目的とする有機EL装置を得た。この有機EL装置の断面の概略を図8に示す。図
8に示したように,この有機EL装置10dは基板11cとこの基板11cの片面
(内側面)に形成された有機EL素子12とを備え,基板11cの外側面(有機E
L素子12が形成されている面とは反対側の面)にはレンティキュラーレンズ20
。。」がレンズ処理によって形成されているこの基板11cは光散乱部を兼ねている
(段落【)との各記載及び図8によれば,引用発明1cは,光散乱部を兼ね0058】
た基板上に直接有機発光素子が形成されるものであって,光散乱部を兼ねた基板と
有機発光素子との間にオーバーコート層がなく,光散乱部を兼ねた基板が有機発光
素子(発光部分)を覆っているといえるものであることが認められる。
しかるところ,審決理由は,本願発明と引用発明1cの相違点について「刊行,
物3に記載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを
刊行物1記載の発明cの基板兼光散乱部に替えて用いることは,当業者が容易に想
到し得た事項である」と判断するが,上記2の()のとおり,CVD法により真空。1
環境下で形成されることが特に好ましい引用発明3のシロキサンは,膜厚が薄いた
,,,めに平坦化膜に適した特質を有するものとも認められないのであるからまして
有機発光素子装置を支持する基板に用いるのに適した特質を有するものとは,到底
認められず,引用発明1cの光散乱部を兼ねた基板に換えて引用発明3のシロキサ
ンを用いることは,当業者といえどもこれを容易になし得るものでないことは明ら
かである。したがって,本願発明と引用発明1cの相違点についての上記審決理由
の(したがって審決の)判断は,誤りというべきである。
()本願発明と引用発明2の相違点1についての判断(取消事由8)について3
刊行物2の「図5は,本発明の第3の実施例であるEL素子31を示す側面図で
ある・・・基板32に光吸収部34が形成されていることを特徴とする(段落。。」
【「図6は,前記基板32を示す平面図である。基板32は,たとえばプ0023】),
ラスチックで実現される。たとえば,光吸収部34とされる低屈折率な黒色の耐熱
性プラスチック材料から成る基板32に,その厚み方向に貫通して微細な穴を多数
(本実施例では4)設け,該穴に高屈折率な透光性を有するプラスチック材料を埋
込むことによって高屈折率部33が形成される(段落【「このような基。」】),0024
板32の一方表面32aには,前記EL素子1と同様に第1帯状電極3,第1絶縁
層4,EL発光層5,第2絶縁層6,第2帯状電極7がこの順に積層されたEL構
造体が形成され(る)(段落【)との各記載及び図5,図6によれば,引用発」】0025
明2は,厚み方向を貫通して数か所に,高屈折率と透光性を有するプラスチック材
料を埋め込むことによって,高屈折率部33を形成したプラスチック基板上に,直
接発光素子(有機発光素子と限定されてはいない)が形成されるものであって,。
高屈折率部が形成されたプラスチック基板と発光素子との間にオーバーコート層が
なく,高屈折率部が形成されたプラスチック基板が,発光素子(発光部分)を覆っ
ているといえるものであることが認められる。
しかるところ,審決理由は,本願発明と引用発明2の相違点1について「刊行,
物3に記載された,有機発光素子の封止機能を有する保護層としてのシロキサンを
刊行物2記載の発明の高屈折率部が形成されたプラスチック基板に替えて用いるこ
とは,当業者が容易に想到し得た事項である」と判断するが,CVD法により真。
空環境下で形成されることが特に好ましい引用発明3のシロキサンが,発光素子装
置を支持する基板に用いるのに適した特質を有するものとは,到底認められず,引
用発明2の高屈折率部が形成されたプラスチック基板に換えて引用発明3のシロキ
サンを用いることは,当業者といえどもこれを容易になし得るものでないことは,
上記()の引用発明1cの場合と同様である。したがって,本願発明と引用発明22
の相違点1についての上記審決理由の(したがって審決の)判断は,誤りというべ
きである。
4結論
,(,,),以上によればその余の点取消事由157について判断するまでもなく
審決には,結論に影響を及ぼす誤りがあるというべきであるから,取り消されるべ
きである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
石原直樹
裁判官
高野輝久

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛