弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 論旨第一点について。
 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定め得るものである
が(憲法第二九条第二項)、わが国法が、「公衆電気通信事業の合理的且つ能率的
な経営の体制を確立し、公衆電気通信設備の整備及び拡充を促進し、並びに電気通
信により国民の利便を確保することによつて、公共の福祉を増進する」ためにB公
社(以下公社という。)を設立し(公社法第一条参照)て、独占的に公衆電気通信
事業を営ませることとし、「公社が迅速且つ確実な公衆電気通信役務を合理的な料
金であまねく、且つ、公平に提供することを図ることによつて、公共の福祉を増進
する」ために公衆電気通信法及びその附属法令を制定し(同法第一条、第三条参照)
て、電話の利用関係を規律しているところからみると、わが国法は、公共の福祉の
見地から、電話利用関係の内容をすべて右法令の定めるところに従い一定するとと
もに、加入者は、法令の知、不知にかかわらず、法令の定める一定の内容の加入権
のみを享有し得ることとしたものと解すべきである。換言すれば、電話加入権の内
容は、わが国法上、公共の福祉のために、右の限度において、一般財産権と異なる
取扱を受けることとなつたものと解すべきである。従つて、もし、公衆電気通信法
が公社の一方的意思表示により定額料金制を度数料金制に変更することを認める趣
旨であるならば同法の施行により、その契約上の地位は、公社の一方的変更に服さ
ざるを得ないものとなつたものと解すべきであるから、公社の一方的変更をもつて、
法の根拠に基かない行政権により財産権の一方的侵害といい得ないのはもとより、
これをもつて、契約違反といい得ないことも当然である。
 そこで、公衆電気通信法が定額料金制を度数料金制に一方的に変更することを認
める趣旨であるかどうかについて考えてみるに、同法中には、これを許す趣旨の直
接の明文はないが、同法第六八条が五級局及び六級局の電話料金につき定額制によ
る場合と度数制による場合と両様の料金制を掲げているのは、五級局と六級局との
加入電話については、定額料金制を度数料金制に変更することを公社の裁量に任す
ことを前提とするものと解すべきことは、以下に述べるとおりである。けだし、電
話の料金制度としては、度数料金制の方が加入者の負担が提供された役務に応じて
公平であること、無駄な通和が抑制されるので交換能率が向上し、従つて良好な役
務が提供できること、その結果経費が節約されて低廉な料金による役務の提供が可
能となり電話の普及が助長されることの諸点において、公社法第一条及び公衆電気
通信法第一条の目的を達成する上から、いつそう合理的な制度であることは明らか
であつて、同法第六八条が七級局以下につき定額料金制のみを採用しているのも、
この制度が一般加入者のために有利且つ合理的であるとの見地から出たものではな
く、むしろ、加入者の少ない電話局については、定額料金制をとることが公社の経
営採算上やむを得ないとの見地から出たものと解すべきである。また、公衆電気通
信法は、加入者数に応じて電話取扱局の等級を区分し(第四四条)、四級局以上に
ついては、すべて度数料金制を採用すべきことを定めている(第六八条別表第二)
ところから、五級局または六級局の加入者の実数が四級局以上の加入者法定数に達
したときは、法律上当然に、度数料金制に切り替えざるを得ないこととなるわけで
あるが、この場合と比較して、加入者数が四級局以上の加入者法定数に達しない場
合の公社の一方的意思表示による度数料金制への切替が、加入者にいつそう不利益
を与えるものとは認められない。さらに、定額制を度数制に切り替えるべきかどう
かは、これによる料金収入の増減見込と新設備のために要する経費との見合により
決定さるべきものであるが、この点の判断は、電話事業の経営面及び技術面につい
て専門的知識を有するものでなければ適当にこれをなし得るものではない。しかも、
度数制への切替によつて電話加入権の財産的価値がとくに減少することについては、
本件において何等主張されていない。以上の諸点を総合して考えれば、公衆電気通
信法は、五級局及び六級局については、定額料金制を度数料金制に一方的に切り替
えることを公社の裁量に任す趣旨を含むものであつて、同法第六八条は、これを前
提とするものと解さざるを得ない。そして、電信電話営業規則第二九四条第二項は、
電話取扱局の加入者数の変動により、法律上当然に料金制を変更せざるを得ないこ
ととなる場合にとどまらず、公社が公衆電気通信法第六八条を根拠として、その裁
量により定額料金制を度数料金制に変更する場合をも予想し、これらの場合の手続
を定めた規定と解すべきである。
 所論違憲の主張は、公衆電気通信法が度数料金制への一方的切替を公社の裁量に
任す趣旨を含まないことを前提として、本件一方的変更をもつて、法の根拠に基か
ない行政権による財産権の侵害であるとするものであつて、原判決中措辞適切を欠
き、所論のような誤解を生ずる虞のある部分がないではないが、原判決の引用する
第一審判決と総合して原判決を解すれば、その趣旨は、公衆電気通信法第六八条が
一方的変更の根拠法となるべきことを前提として、本件一方的変更をもつて、同法
の範囲内において公社が制定した電話営業規則に従つてなされた適法・有効な行為
であるとするにあるものと解すべきであるから、所論違憲の主張は、原判示に添わ
ないものであるのみならず、その前提を欠くものとして、採用し得ない。
 論旨第二点について。
 (イ)一乃至四の論旨について。
 原判決の趣旨は、法律により定められた電話料金を法律の根拠なくして公社の規
則により一方的に変更し得るとするものではなく、かえつて、公衆電気通信法が五
級局および六級局につき定額料金制を度数料金制に変更することを公社の裁量に任
すべき趣旨を含むことを前提として、同法の範囲内において制定された電信電話営
業規則に従つてなされた本件の一方的変更をもつて適法・有効と解すべきであると
するにあるものと解すべきことは前述のとおりであつて、すでに、法律自体が度数
料金制への切替を公社の裁量に任すべき趣旨を含むものである以上、この切替の結
果、加入者が具体的に支払うべき料金の総額が従前より増加したとしても、これを
もつて、公衆電気通信法第六八条、財政法第三条の違反を云為すべきでないことは
いうまでもないところである。所論は採用し得ない。
 (ロ)五の論旨について。
 料金制の切替が公社の裁量に任されているものと解すべき以上、仮に、度数制を
採用することが六箇月の経過後において料金の増収をもたらすことが通例であると
しても、それだけで、本件の措置に裁量権の濫用があるといい得るものではなく、
原判決がこの点につき判断しなかつたとしても、これをもつて審理不尽の違法があ
るということはできない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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