弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人北光二、同滝沢繁夫、同田中三男の上告理由第一ないし第三について
 所論は、いわゆる三ない原則を定めた本件校則(以下「本件校則」という。)及
び本件校則を根拠としてされた本件自主退学勧告は憲法一三条、二九条、三一条に
違反する旨をいうが、憲法上のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共
団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規
定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互
間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでないことは、当裁判所大
法廷判例(昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日判決・民集二七巻一
一号一五三六頁)の示すところである。したがって、その趣旨に徴すれば、私立学
校である被上告人設置に係る高等学校の本件校則及び上告人が本件校則に違反した
ことを理由の一つとしてされた本件自主退学勧告について、それが直接憲法の右基
本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はないものというべきである。所論
違憲の主張は、採用することができない。そして、所論の点に関する原審の事実認
定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、原審の確定した事実関係
の下においては、本件校則が社会通念上不合理であるとはいえないとした原審の判
断は、正当として是認することができる。右判断は、所論引用の判例と抵触するも
のではない。原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論
難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものに
すぎず、採用することができない。
 同第四及び第五について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯する
ことができる(なお、所論は、原判決は上告人が自発的に退学願を提出した旨認定
したとしてこれを非難するが、原判決の認定判示するところは、被上告人は上告人
に対して自主退学を勧告したもので退学処分をしたものではないというにとどまる
のであって、右非難は当たらない。)。そして、上告人の行為の態様、反省の状況
及び上告人の指導についての家庭の協力の有無・程度など、原審の確定した事実関
係の下においては、上告人に対してされた本件自主退学勧告が違法とはいえないと
した原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、独自の見解に立っ
て原判決を論難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非
難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    貞   家   克   己
            裁判官    佐   藤   庄 市 郎
            裁判官    可   部   恒   雄

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