弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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                主     文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
                事     実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告が原告に対して平成13年5月22日付けでした自動車運転免許停
止処分を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 本案前の答弁
 主文と同旨
(2) 本案の答弁
ア 原告の請求を棄却する。
イ 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 被告は,平成13年5月22日,原告の自動車運転免許(同○年○月○
日北海道公安委員会交付第○○○○○○○○○○○○号,普通自動車免許)
の効力を30日間停止する処分(以下「本件処分」という。)をし,本件処
分は同年6月20日に原告に到達した。
(2) 本件処分の理由は,原告が,平成13年4月7日午後3時56分ころ,
公安委員会が道路標識によって最高速度を時速40キロメートルに指定した
北海道瀬棚郡a町b番地付近において,指定の最高速度を時速30キロメー
トル超える時速70キロメートルで普通貨物自動車(札幌○○ぬ○○○○)
を運転し(以下「本件違反行為」という。)たというものであった。
(3) しかし,原告は,本件違反行為をしていないから,本件処分は,事実認
定を誤った違法なものである。
(4) よって,原告は,被告に対し,本件処分の取消しを求める。
2 被告の本案前の主張
(1) 本件処分の効果は,原告に到達した日から30日の経過で失われた。
(2) 原告は,本件処分が原告に到達しその効果が生じた日から1年間,無違
反,無処分で経過したことにより,その翌日からは道路交通法上前歴のない
者とされるから,原告が本件処分を理由に同法上不利益を受けることはなく
なった。
(3) 原告(70歳未満)は,その免許証の更新日までに継続して免許を受け
ている期間が5年以上である者に当たるから,道路交通法92条の2第1
項,同法施行令33条の7第1項により,更新前の免許証の有効期間が満了
する日の直前の誕生日の40日前の日等の前5年間において違反行為をした
ことがないという基準に適合するときは,優良運転者としてその免許証の有
効期間の末日が更新前の免許証の満了日等の後の5回目の誕生日から起算し
て1月を経過する日となる。しかし,このような道路交通法上の優遇措置を
受ける地位の侵害が顕在化するのは,将来における免許証の交付時又は更新
時であって,現時点では,このような地位は,免許証の更新時までに違反行
為があれば消滅する不確定なものにすぎない。そして判決により本件処分が
取り消されても,その判決の効果によって,違反行為それ自体を消滅させ
て,優良運転者として認められ得る地位を回復することはできない。また,
本件処分の取消判決の拘束力により,将来における免許証の更新等の際に,
関係行政庁が原告に違反行為がなかったとして取り扱うべき法的義務を負う
ものではなく,このことは判決の拘束力がその主文のみならず理由中の判断
にも生じると解したとしても同様である。免許証の更新の際に違反行為があ
ったとして優良運転者に当たらないとの認定を前提とした行為がされた場合
に,これを不利益処分と評価できるとしても,本訴において,原告は,運転
免許の効力停止処分の取消しにより回復すべき地位を訴えの利益としている
のであって,優良運転者としての地位の回復を訴えの利益としているもので
はない。
(4) 以上によれば,原告は,本件処分の取消しによって回復すべき法律上の
利益を有しない。
3 請求原因に対する認否
請求原因(1),(2)の事実は認める。
4 抗弁
原告は,本件違反行為をしたから,これを理由とする本件処分に違法はな
い。
5 抗弁に対する認否
否認する。
     理      由
1 請求原因(1)の事実(被告が原告の自動車運転免許を30日間停止する本件
処分をし,これが平成13年6月20日原告に到達したこと)は当事者間に争
いがない。
そうであるから,本件処分の効果は,本件処分が原告に到達した平成13年
6月20日から30日が経過したことにより消滅したこととなる。
2(1) その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから
真正な公文書と推定すべき乙第14号証及び弁論の全趣旨によれば,原告は
平成13年6月20日から現在(平成14年8月27日)まで無事故無違反
であることが認められる。
(2) そこで,道路交通法をみるに,同法では,違反行為をした者に対し処分
を行うに際して,当該違反者が過去3年以内に運転免許停止処分等を受けた
ことがある場合には,このような前歴が処分の内容を決める際に考慮される
から,前歴ない者に比べて不利益な取扱いを受けることになるが,過去3年
以内の前歴であっても,その処分等の日から1年間を無違反・無処分で経過
した場合にはこれを前歴として考慮しないこととされているところ,上記
2(1)の事実によれば,原告は,本件処分が原告に到達した平成13年6月
20日から1年間を無違反・無処分で経過したことになるから,同日から1
年を経過した日の翌日からは,原告が違反行為をしたとしてもそれに対する
処分を行うに際して,本件処分が前歴として考慮されて原告が道路交通法上
不利益を受けるおそれはなくなる。
3 次に,道路交通法92条の2第1項,同法施行令33条の7によれば,免許
証の更新日等までに継続して免許を受けている期間が5年以上である者であっ
て,更新前の免許証の有効期間が満了する日の直前のその者の誕生日の40日
前の日等の前5年間において違反行為をしたことがないものは,優良運転者と
して取り扱われ,更新日等における年齢が70歳未満である場合に,更新等に
よる免許証の有効期間の末日が更新前の免許証の満了日等の後の5回目の誕生
日から起算して1月を経過する日とされるのに対し,同じく更新日等までに継
続して免許を受けている期間が5年以上の者であって,所定の期間内において
違反行為をしたものは,違反運転者等として取り扱われ,更新等による免許証
の有効期間の末日が満了日等の後の3回目の誕生日から起算して1月を経過す
る日とされている。
しかし,免許証の更新等に際し,上記のような免許証の有効期間の伸長等の
点で道路交通法上有利に扱われる優良運転者の要件は,上記のとおり,法令
上,所定の期間内に違反行為がないことと規定されているが,違反処分歴のな
いことはその要件とされていないし,同じく,不利に扱われる違反運転者等の
要件も,上記のとおり,所定の期間内に違反行為をしたこととされ,違反処分
歴があったことはその要件とされていない。したがって,本件処分により,当
然に,優良運転者の要件が認められないことになったり,違反運転者等の要件
が認められることになるわけではなく,また,本件処分が取り消されても,こ
れにより優良運転者の要件である違反行為がなかったことが認められることに
なるとか,違反運転者等の要件である違反行為があったことが認められないこ
とになるといった効果が生じるわけではない。
さらに,本件処分の取消判決の拘束力が本件違反行為の有無についての理由
中の事実認定にわたる場合であっても,上記の免許証の更新等は,本件処分と
は異なる新たな法律関係を形成するものであるから,判決の拘束力によって,
関係行政庁に,原告の免許証の更新等の際に本件違反行為がなかったと認定し
た上で処分すべき法的義務が生じることはない。
4 以上によれば,原告は,本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益
を有しない。
よって,本件訴えは,訴えの利益を欠くものであり,不適法なものであるか
ら,これを却下することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民
事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
    札幌地方裁判所民事第2部
        裁判長裁判官  橋 本 昇 二
           裁判官  氏 本 厚 司
           裁判官  石 川 真紀子

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