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平成27年9月30日判決言渡
平成27年(ネ)第10044号職務発明対価請求控訴事件(原審・東京地方裁
判所平成23年(ワ)第14368号)
口頭弁論終結日平成27年6月10日
判決
控訴人兼被控訴人株式会社リケン
(以下「一審被告」という。)
訴訟代理人弁護士日野修男
同藤井冨弘
同山本卓也
同大河内將貴
同木村圭太
同大林和人
被控訴人兼控訴人X
(以下「一審原告」という。)
訴訟代理人弁護士岩永利彦
主文
1一審原告の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。
(1)一審被告は,一審原告に対し,801万4406円及びこれに対する平成
23年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)一審原告のその余の請求を棄却する。
2一審被告の控訴を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを10分し,その1を一審被告の負
担とし,その余を一審原告の負担とする。
4この判決の第1項(1)は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判(控訴の趣旨)
1一審原告
(1)原判決中,第1項を次のとおり変更する。
(2)一審被告は,一審原告に対し,7576万3136円及びこれに対する平成
23年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2一審被告
(1)原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。
(2)一審被告敗訴部分につき一審原告の請求を棄却する。
第2事案の概要
本件は,一審被告の従業員であった一審原告が,一審被告に対し,3件の特許権
に係る職務発明についての特許を受ける権利を一審被告に承継させたことによる平
成16年法律第79号による改正前の特許法35条(旧35条)3項に基づく相当
の対価1億1380万7102円及びこれに対する請求日の後である平成23年5
月21日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払を求めた事案である。上記3件の特許権に係る職務発明が旧35
条1項の職務発明に当たることに争いはなく,一審原告は,一審被告が同職務発明
を独占的に実施して利益を得たとして,これについての相当の対価(同条3項,4
項)の支払を求めている。
原審は,一審原告の請求について,223万9585円及びこれに対する平成2
3年5月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限
度で一部認容し,その余の請求を棄却した。
これに対し,一審原告は,7576万3136円及びこれに対する平成23年5
月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で原
判決の変更を求めて一部控訴し,一審被告は,原判決中一審被告の敗訴部分を取り
消し,同敗訴部分について一審原告の請求を棄却することを求めて控訴した。なお,
一審原告は,原審において,上記3件の職務発明の平成7年度及び平成8年度分の
実施に係る相当の対価についても請求していたものの,当審においてはこの2年度
分の実施に係る相当の対価支払請求権については消滅時効の成立を認め,その分請
求を減縮しており,同職務発明の平成9年度分以降の実施に係る相当の対価につい
てのみ請求している。したがって,同職務発明の平成7年度及び平成8年度分の実
施に係る相当の対価は,当審における審理の対象ではない。
1争いのない事実等
争いのない事実等については,次のとおり原判決を付加,訂正するほかは,原判
決「事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから,これを引用する(以下,
原判決を引用する場合は,「原告」を「一審原告」,「被告」を「一審被告」,「別紙」
を「原判決別紙」とそれぞれ読み替える。)。
(原判決の補正)
原判決7頁16行目末尾に,行を改めて,次のとおり加え,同頁17行目冒頭の
「ア」を「イ」と,同頁18行目の「イ」を「ウ」とそれぞれ改める。
「ア一審原告は,一審被告に対し,平成22年12月2日到達の内容証明郵便に
よって,本件各発明の特許を受ける権利承継についての相当の対価支払債務の履行
を催告した(甲71)。」
2争点及び争点に関する当事者の主張
争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加,訂正するほか,原判
決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決11頁16行目冒頭から同頁21行目末尾までを次のとおり改める。
「(b)本件明細書1にはイオンプレーティングの方式としてHCD方式について
の記載はあるがAIP方式についての記載はない。
本件発明1,2の本件原出願当時(昭和59年10月5日),イオンプレーティン
グの方式としてAIP方式が広く知れ渡っており,公知の技術であった(乙145
ないし148)にもかかわらず,本件明細書1にはAIP方式についての記載がな
い。そして,HCD方式では金属が溶融した後,蒸発する過程を経るのに対し,A
IP方式ではそのような過程を経ないという製造工程の根本的な相違がある。
また,本件明細書1の段落【0011】には,クロムの蒸着速度がチタンの蒸着
速度より極めて速いことが記載されているけれども,AIP方式では皮膜形成速度
はアーク電流に依存し,金属の平衡蒸気圧に無関係であって,クロムよりチタンの
方が蒸着速度が速いことが公知であったといえるし,本件明細書1には,HCD方
式の実施例が記載されていることなどから,HCD方式を前提として初めて,本件
発明1の作用効果を奏功するものであるといえる。
HCD方式に限定する記載はないなどの理由では,本件発明1の技術的範囲にA
IP方式が含まれるものとはいえない。」
(2)原判決12頁7行目冒頭から同頁10行目末尾までを次のとおり改める。
「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●1992年(平成4年)当時,クラックや剥離の観点から,
Cr2Nの存在は良くないこと,すなわちCr2N+CrNの混合相を有する一審被
告製品1は期待した作用効果を発揮していないことの知見を得たものであり,それ
以後,一審被告は,本件発明1を実施しないこととした。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●そして,1999年(平成11年)3月8日
付け「IP-200サイドレールの開発」(甲41)には,「IP-200とは...」
の表題の下に,「真空チャンバー内でCrターゲット表面にアーク放電を発生させる
ことによりCrが金属イオン化するこのCrイオンがN2ガスと反応しCrNの
セラミクス皮膜となりワーク表面に形成される」との記載があることからすれば,
AIP炉で製造した製品(IP200)には,Cr2N型窒化クロムは含まれていな
い。
さらに,2号炉以後のすべてのIP炉における,「AIP法によるIP-200」
にはCr2NのX線回折ピークが認められない,つまりCrN単一相からなる皮膜で
ある(乙61)。
よって,一審被告製品1のうちAIP炉で製造した製品は,CrN型窒化クロム
単一相である。仮に,Cr2N型窒化クロムが含まれるとしてもその割合は非常に小
さいから,同製品は,本件発明1の「CrN型窒化クロムとC
r2N型窒化クロムからなる混合組織」との構成要件を充足しない。」
(3)原判決17頁8行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「ウ一審原告の主張に対し
本件特許規定等における実施賞は,「特許発明の実施が1年間を通して継続的にな
された場合には,当該年度の実施に対し,実施賞を支払う」とされているのに対し,
社長表彰は,「特許審査会審査長の申請により社長表彰を行うことができる。」とさ
れている。社長表彰は,一審被告が特に認めた場合に,任意に支払うものであり,
実施の報償である実施賞とは性格を異にするものである。また,一審被告は,一審
原告に対し,旧35条に基づく相当の対価支払請求権が存在することを前提にその
額に満たないことを知ってその一部を支払ったものではないから,相当の対価支払
債務の承認には当たらない。」
(4)原判決18頁1行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「ウ社長表彰による債務の承認
本件特許規定等の規定上,社長表彰の性質は,発明に対する相当の対価の支払と
しての性質を有するといえる。まず,社長表彰は,一審被告の特許表彰要領中(甲
6の2),実施賞と並列して記載されている。すなわち,一審被告の特許表彰要領の
4条の表題は,「第4条(実施賞及び社長表彰)」となっている。
次に,社長表彰(特許表彰要領4条2項)は,特許規定9条2項の規定に基づい
ており(特許表彰要領1条),その特許規定9条2項には,実施賞と社長表彰とを特
段区別する文言等はない。以上のとおり,規定上,社長表彰と実施賞での特別の差
異はなく,社長表彰が実施賞と同じ性質を有することは明白である。
また,社長表彰の要件が,「特許発明の実施効果が特に顕著であるとき」(特許表
彰要領4条2項)であること,社長表彰が規定されている特許社長表彰運用基準(甲
6の2)にも,「特許発明が3年間にわたり実施されており本項第1号に基づく実施
製品に占める当該特許発明の評価額(α)が0.5以上で,且つ,本項第2号に基
づく研究開発費回収後の年間実施利益評価額(P)が1千万円以上であるものとし,
社長表彰金額は本項3号に基づき支給するものとする。」(特許社長表彰運用基準2
条)とあること,同2項には,「特許発明を他に実施許諾することにより年間50万
円以上の実施料収入を得たときは,社長表彰(補償金)として実施料収入年額の3%
を支給する」とあることなどの本件特許規定等によれば,社長表彰が,本件各発明
を「実施」して利益を得たことに依存する表彰であること,すなわち実施に依存し
た報償であることは明白であり,また,上記特許社長表彰運用基準2条2項には「社
長表彰(補償金)」との記載があることから,社長表彰は補償金として扱われており,
社長表彰が職務発明の相当の対価(旧35条3項)の性質を有することは明白であ
る。
一審被告は,一審原告に対し,平成12年12月5日,社長表彰として,合計4
3万7000円を支払った。この社長表彰は,平成9年度から平成11年度の年平
均利益額に基づくものであるから,平成9年4月1日から平成12年3月31日ま
での本件各発明の実施を理由に支払われたものであり(甲4),上記期間の相当の対
価支払債務の承認に当たる。
よって,本件各発明についての平成9年4月1日から平成12年3月31日まで
の分(平成9年度から平成11年度分)の相当の対価支払債務の消滅時効は,いっ
たん平成12年12月5日に中断した。
エ催告による中断
(ア)一審原告は,一審被告に対し,平成22年12月2日到達の内容証明郵便に
よって,本件各発明の特許を受ける権利の承継についての相当の対価支払債務の履
行を催告した(甲71)。
一審原告は,その後,平成22年12月2日から6か月以内である平成23年4
月28日に,本件訴訟を東京地方裁判所に提起した。
よって,本件各発明の特許を受ける権利の承継についての相当の対価支払請求権
のうち,消滅時効期間の末日が平成22年12月2日から平成23年4月28日の
間に当たるものについては,平成22年12月2日に消滅時効は中断した。
(イ)社長表彰の支払が相当の対価支払債務の承認に当たる場合
本件各発明についての,平成9年4月1日から平成12年3月31日までの分(平
成9年度から平成11年度分)の相当の対価支払請求権の消滅時効は,社長表彰の
支払により平成12年12月5日に中断することになる。そして,再度平成12年
12月5日から消滅時効期間が進行し,その期間の末日は,平成22年12月5日
ということになる。
しかし,その消滅時効は,上記催告と訴訟の提起により,再度平成22年12月
2日に中断した。
よって,本件各発明の特許を受ける権利承継の相当の対価支払請求権について,
本件訴訟の提起までに消滅時効期間が経過したのは,平成7年度分と平成8年度分
のみということになる。
(ウ)社長表彰の支払が相当の対価支払債務の承認に当たらない場合(予備的主張)
仮に,社長表彰の支払が相当の対価支払債務の承認に当たらない場合も検討する
に,一審被告は,一審原告に対し,本件各発明についての,平成11年度分の実施
賞について,平成12年12月29日に支払ったため,平成11年度分の相当の対
価支払請求権の消滅時効は平成12年12月29日に中断する。そして,当該期間
分の相当の対価支払請求権については,再度平成12年12月29日から消滅時効
期間が進行し,その期間の末日は,平成22年12月29日ということになる。
しかし,その消滅時効は,上記催告と訴訟の提起により,再度平成22年12月
2日に中断した。
よって,本件各発明の相当の対価支払請求権について,本件訴訟の提起までに消
滅時効期間が経過したのは,平成7年度分ないし平成10年度分のみということに
なる。」
(5)原判決18頁16行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「前記のとおり,社長表彰の支払が債務の承認に当たり,相当の対価支払請求権
の消滅時効が中断したことを考慮すると,本件の相当の対価請求に係る実施品の対
象期間の始期は平成9年4月1日となる。
この場合,本件各発明の実施品の売上高は,それぞれ,別表売上高一覧表(控訴
審)①ないし③の「一審原告主張」欄に記載のとおりである。
(ア)本件発明1合計42億7296万8159円
トップリング3169万1001円
オイルリング42億4127万7158円
(イ)本件発明2合計36億1051万8706円
トップリング36億0881万8493円
オイルリング170万0214円
(ウ)本件発明3合計48億4043万0379円
トップリング43億0190万3897円
オイルリング5億3852万6482円」
(6)原判決19頁7行目冒頭から同頁8行目末尾までを次のとおり改める。
「(エ)以上によれば,オイルリング及びトップリングのいずれにおいても,その
超過売上げの割合は50%である。」
(7)原判決19頁11行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「仮に,市場において競合し,あるいは見かけ上競合品に見えても,特許権を侵
害しているような製品は,適切な特許権の行使により市場から排斥されることとな
り,真の競合品ではあり得ないから,独占の利益とは関係しない。
NPR社及びTPR社の各製品は,本件発明1又は2の技術的範囲に含まれるも
のであるから(甲12,乙58,107),本件特許権1及び2の侵害品であり,競
合品ではない。」
(8)原判決19頁14行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「また,TPR社が保有する上記特許権は,本件発明1又は2のいわゆる利用発
明にすぎず,このような利用発明の実施品は,本件特許権1又は2の単なる侵害品
である。」
(9)原判決19頁15行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「本件特許1及び2については,訂正等により無効理由を回避することが可能で
あった。
(a)本件特許1について
本件特許1についてはこれを無効とする旨の審決が確定しているが,本件特許1
の無効理由は,訂正請求により治癒可能なものであった。
上記審決によると,①本件明細書等では,原出願に係る発明の目的と同一の課
題である耐焼き付き特性に関し,CrNとCr2Nとからなる表面被覆層(試料No
1:本件原出願当初明細書等に記載の試料NO.4)が,本件原出願当初明細書等
の記載とは異なり(本件原出願当初明細書では,「耐焼き付き特性試験において満足
な特性を示さなかったので,本耐摩耗試験の対象から除いた。」と記載されている。),
過酷な使用条件下においても充分な焼き付き特性を示すものとして扱われているこ
と,また,②CrN型窒化クロムとCr2N型窒化クロムからなる混合組織を主成
分とした組織でなる表面被覆層の耐摩耗量測定試験を行うことにより,本件原出願
当初明細書等に記載のない,当該表面被覆層の耐摩耗性についての効果を確認して
いることが分割要件に反する理由とされている。
まず,上記②について,本件原出願当初明細書の第4図の「本耐摩耗試験結果」
には,試料NO.4の記載があり,そのデータも示されているから(甲72),表面
被覆層の耐摩耗性についての効果の確認は,本件原出願当初明細書等に少なくとも
その一部について記載はあったといえる。
次に,上記①について,上記のとおり,本件原出願当初明細書等には存在した耐
摩耗試験の結果(甲72。本件原出願当初明細書の第4図)からすれば,本件明細
書1の効果の記載を,耐摩耗性の方をより重視した記載等に訂正すれば矛盾が解消
する可能性があった。
また,仮に,本件原出願の補正により,表面被覆層の耐摩耗性についての効果を
述べることができないとしても,焼き付き特性については,少なくとも従来品の硬
質クロムメッキ材並であったのだから,その部分を重視した訂正により,矛盾が解
消する可能性があったといえる。
以上のとおり,本件明細書1の効果の該当部分について,より適切な記載へと訂
正を行えばこれを回避できる可能性があった。
ところが,一審被告が訂正請求をすることにより,上記瑕疵が治癒され無効主張
を覆す可能性があったにもかかわらず,本件の無効審判では訂正請求がされていな
いし,本件の無効審判において,一審被告は,審判請求人の主張を認容する旨の主
張をしていた。また,本件の無効審判の請求人は,一審被告訴訟代理人の一人であ
った。このように,本件の無効審判は,馴れ合いのものであったことは明らかであ
り,超過売上げの割合に関し,本件特許1の無効理由を考慮に入れるのは不当であ
る。
以上によれば,本件特許1の無効理由は,訂正請求によって治癒可能なものにす
ぎず,他方,無効審判を提起し,やるべきことをやらずにやすやすと無効審決を得
た一審被告が,本件発明1の無効を主張することは,信義則上許されない。
なお,本件のような状況で,一審原告の一審被告に対する職務発明の相当の対価
支払請求権の額の多寡が,その特許の無効審決の確定により影響を受けたとすると,
これは債権侵害という不法行為となり得る。すなわち,一審被告と本件一審被告訴
訟代理人とが共謀し,慣れ合いの無効審判を請求して本件特許1を無効に確定させ
るという共同不法行為を惹起し,これによって,相当の対価請求の額が減額された
という結果が発生したことになる。本件では,無効審判の請求人である一審被告訴
訟代理人と無効審判の被請求人である一審被告とが通謀した可能性が高く,つまり
行為者らに故意がある可能性が高いから,上記債権侵害の不法行為を認め得る。
(b)本件特許2について
原判決は,「CrN相の大きさが1000オングストローム以下の超微細組織から
成る」ことが本件分割出願の当初明細書又は図面の記載から自明であると認めるに
足りる証拠はない。・・・上記事実関係によれば,本件補正は,いわゆる要旨の変更
に当たるものであって,不適法と認められるから,本件特許2の出願は平成9年4
月30日にされたものとみなされる。」と認定した。
しかし,本件特許2の無効理由は,訂正により治癒可能なものであった。
確かに,本件特許2の明細書中には,「CrN相の大きさが1000オングストロ
ーム以下の超微細組織から成る」ことの記載はないが,そもそも本件原出願の当初
明細書中には,「被覆層において,金属クロム相と窒化クロムの相の混合相」の「大
きさは概ね1000Å以下である」との記載がある(甲72)。つまり,本件原出願
の当初明細書の記載からは,「CrN相の大きさが1000オングストローム以下の
超微細組織から成る」ことは自明といえる。
よって,本件特許2の無効理由は,本件特許2を本件原出願から分割する際に,
過誤によって落ちてしまった記載(CrN相の大きさが1000オングストローム
以下の超微細組織から成ること)があるためであり,この過誤により落ちてしまっ
た記載を訂正審判等により補充すれば,瑕疵は治癒される。
上記訂正は,請求項の訂正ではなく,明細書の訂正にとどまるものであるし,本
件特許2に対し,無効審判が提起されているわけでもない。
よって,本件特許2の無効理由は,本件原出願の当初明細書の範囲内での明細書
だけの訂正により回避可能なものであるから,超過売上げの割合に関し,本件特許
2の無効理由を考慮に入れるのは不当である。
本件特許2について,本件原出願から,分割出願したのは,出願人たる一審被告
である。そして,上記分割により,本来存在すべき「CrN相の大きさが1000
オングストローム以下の超微細組織から成ること」の記載を落としたのも一審被告
である。
一審被告が,自己のミスにより生じた無効理由を主張することは,信義則上許さ
れない。
(c)一審被告は,本件各特許に無効事由が存在するためおよそ独占の利益の発生
を考慮できないような極めて例外的な事情を何も主張していないし,仮に,上記例
外的事情が存在するとしても,それは,仮想実施料率を認定するに当たり総合考慮
すべき諸事情の中の一要素となり得るものであり,超過売上げの割合において考慮
される事情ではない。」
(10)原判決19頁18行目の「また,」から同頁20行目末尾までを削り,同2
0行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「(d)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●」
(11)原判決20頁3行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
「一審被告が主張するNPR社の実用新案権に係る考案は,軟窒化層を有する2
層構成のものであるのに対し,本件発明1は,CrNとCr2Nからなる混合組織を
主成分とした組織でなるイオンプレーティング皮膜層/下層ないし母材,という1
層構成ですむ発明である。さらに,本件発明2も1層構成である。
よって,本件発明1及び2とNPR社の実用新案に係る考案とは,全くタイプ・
系統の異なるものであるから,上記NPR社の先願の実用新案に係る考案があるか
らといって,本件発明1及び2がパイオニア発明の地位を追われることはない。
また,本件発明1及び2に関する,イオンプレーティングによるCr-N皮膜に
関して,発明時には雑誌記事となるくらい業界にインパクトを与えたものである(甲
80,81)。」
(12)原判決20頁15行目冒頭から同頁16行目末尾までを次のとおり改める。
「一審被告の主張する他の特許権は重要度の低い発明等にすぎないのに対し,本件
各発明はパイオニア発明であるといえる。
オイルリングにおいて,本件発明1及び2の果たした役割はより大きいとい
えるし,本件発明3についても,単なる性能の改善に関するものではなく,従前の
懸案事項を劇的に改善したものといえる。
以上によれば,本件発明1及び2の仮想実施料率は,オイルリングでは少な
くとも7%とするべきであり,トップリングでは少なくとも5%とするべきである。
また,本件発明3の仮想実施料率は,少なくとも3%とするべきである。」
(13)原判決23頁7行目末尾に,行を改めて,次のとおり加える。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
(14)原判決24頁15行目冒頭から25頁4行目末尾までを次のとおり改める。
本件各発明は,旧科学技術庁金属材料研究所の設備を借用して行われてお
り,発明に要した費用は,材料費,出張旅費及び僅かな手みやげ代にすぎなかった。
本件原出願及び本件発明3の特許出願における出願時明細書の作成,拒絶理
由に対する対応は一審原告ないしAが行っており,出願に際して一審被告が負担し
た費用は通常の場合より低額であった。
本件各発明は,一審原告(本件発明3についてはAも)以外の一審被告の従
業員からの示唆や助力を得ずに行われた。本件各発明をするについて,上司の具体
的な指示などなかった。
一審被告各製品の製造を行うために一審被告は新たな装置を準備したが,試
作は専ら一審原告が担当した。
一審被告各製品の売上げが平成8年度以降大幅に増加している一方,一審被
告のピストンリング全体の売上げの増加は1.16倍にすぎず,また,一審被告各
製品の平均利益率(経常利益率に該当する。)は,一審被告の平成9年度~平成17
年度における経常利益率の約3倍であることからすれば,一審被告の営業努力では
なく,本件各発明の技術的価値が売上げに貢献したといえる。
一審原告は,平均より昇進が遅く,本件各発明をしたことにより好待遇を受
けていなかった。一審原告が,一審被告において,管理職に登用されたのは48歳
であって,同期入社で同学歴(大卒)の者としては最後であり,一審被告での管理
職登用の平均年齢よりも7年以上遅かった(甲77)。
一審被告の設備投資はリスクのないものであった。●●●●●●●●●●●
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●●●●●●●●●●●●●●●●また,その後の設備投資も,需要量の増大にあ
わせ設備を導入しているのであり,設備投資リスクは全くない。
旧35条4項は,「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益
の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなけれ
ばならない。」と規定しており,条文上,相当の対価の利益の額を算定するのに,発
明がされた後の使用者等が貢献した程度を考慮することとはされていない(甲78,
79)。
よって,量産化のための設備投資を行ったこと,研究開発のみならず,製造,営
業その他の部署に属する多数の従業員の協力によるものであることなどは,すべて
発明がされた後の事情であり,これらは,条文の文言上,考慮できないものである。
以上からすれば,一審被告の本件各発明に対する貢献度は本件発明1及び2
については多くとも70%,本件発明3については多くとも90%にすぎない。」
(15)原判決25頁9行目冒頭から26頁7行目末尾までを次のとおり改める。
「ウ以上によれば,一審原告が支払を受けるべき本件各発明の相当の対価は,
次のとおり,合計7693万7535円であり,既払金117万4400円(実施
賞73万7400円,社長表彰43万7000円)を控除した残額は7576万3
136円である(小数点以下は切り上げで計算したもの)。
本件発明1
aトップリング
売上高3169万1001円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率5%×
(1-一審被告の寄与度70%)=23万7682円
bオイルリング
売上高42億4127万7158円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率
7%×(1-一審被告の寄与度70%)=4453万3410円
c合計4477万1092円
本件発明2
aトップリング
売上高36億0881万8493円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率
5%×(1-一審被告の寄与度70%)=2706万6138円
bオイルリング
売上高170万0214円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率7%×
(1-一審被告の寄与度70%)=1万7852円
c合計2708万3990円
本件発明3
aトップリング
売上高43億0190万3897円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率
3%×(1-一審被告の寄与度90%)×70%=451万6999円
bオイルリング
売上高5億3852万6482円×超過売上げの割合50%×仮想実施料率3%
×(1-一審被告の寄与度90%)×70%=56万5452円
第3当裁判所の判断
当裁判所は,一審被告が本件各発明を実施していたこと,及び,一審被告による
消滅時効の援用も理由がないため,一審原告が一審被告に対し本件各発明の特許を
受ける権利の承継に対する相当の対価の支払を請求することができ,その相当の対
価の額は,既払金を除き,801万4406円であると判断する。その理由は,以
下のとおりである。
1一審被告による本件各発明の実施の有無(争点1)について
争点1についての当裁判所の判断は,次のとおり,付加,訂正するほか,原判決
「事実及び理由」の第3の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決30頁11行目冒頭から同頁24行目末尾までを,次のとおり改め
る。
「bこれに対し,一審被告は,本件明細書1にはイオンプレーティングの方式
としてHCD方式についての記載はあるがAIP方式についての記載はないこと,
本件発明1,2の本件原出願当時(昭和59年10月5日),イオンプレーティング
の方式としてAIP方式が広く知れ渡っており,公知の技術であったこと,HCD
方式では金属が溶融した後,蒸発するという過程を経るのに対し,AIP方式では
金属の溶融蒸発するという過程を経ないという製造工程の根本的な相違があること,
また,本件明細書1の段落【0011】には,クロムの蒸着速度がチタンの蒸着速
度より極めて速いことが記載されているが,AIP方式では皮膜形成速度はアーク
電流に依存し,金属の平衡蒸気圧に無関係であって,クロムよりチタンの方が蒸着
速度が速いことが公知であったといえるし,本件明細書1には,HCD方式の実施
例が記載されていることなどから,HCD方式を前提として初めて,本件発明1の
作用効果を奏功するものであるといえることなどから,特許請求の範囲にはイオン
プレーティングの方式を限定する記載はないなどの理由では,本件発明1の技術的
範囲にAIP方式が含まれるものとはいえない旨主張する。
しかし,本件発明1,2の本件原出願当時(昭和59年10月5日),イオンプレ
ーティングの方式としてAIP方式が広く知れ渡っていることからすれば,AIP
方式によるイオンプレーティングについても,文言上特許請求の範囲の「イオンプ
レーティング」に含まれると解すべきである。本件明細書1におけるHCD方式の
記載は実施例に関する記載にすぎない。また,HCD方式では金属が溶融した後,
蒸発するという過程を経るのに対し,AIP方式では金属の溶融蒸発するという過
程を経ないという製造工程に相違があるとしても,AIP方式もイオンプレーティ
ングの一方式であることに変わりはない。
また,前記認定のとおり,AIP方式ではクロムの蒸着速度(成膜速度)はチタ
ンに比し多少遅い程度であるといえるから,本件明細書1の段落【0011】に,
クロムの蒸着速度がチタンの蒸着速度より極めて速いことが記載されており,AI
P方式ではクロムよりチタンの方が蒸着速度が速いことが公知であったといえると
しても,このことは,AIP方式が本件発明1の技術的範囲から除外されるまでの
根拠とはならない。
よって,一審被告の上記主張を採用することはできない。」
(2)原判決31頁22行目冒頭から32頁5行目末尾までを,次のとおり改める。
「b一審被告は,上記a③について,AIP炉で製造した製品(IP200)
には,Cr2N型窒化クロムが含まれていないと主張する。
一審被告は,その根拠として,まず,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1992年(平成4年)
当時,クラックや剥離の観点から,Cr2Nの存在は良くないこと,すなわちCr2
N+CrNの混合相を有する製品は期待した作用効果を発揮していないことの知見
を得たものであり,それ以後,一審被告は,本件発明1を実施しないこととした旨
主張する。
しかし,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●これによって,
AIP炉で製造された一審被告製品1(IP200)について,CrN単一相のみ
であり,Cr2N型窒化クロムを含まないものにしたということはできないし,同書
面は,一審被告が実際にCr2N型窒化クロムが含まれていない製品をAIP炉で製
造していたことを示す証拠とはいえない。
また,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●な
どから,AIP炉で製造した製品(IP200)には,Cr2N型窒化クロムが含ま
れていないと主張する。
しかし,調査報告書(乙58)によれば,その後の平成12年10月頃,一審被
告の技術開発部に所属する従業員が,AIP炉(2号炉)で製造したピストンリン
グの分析を行い,X線回折によれば43°付近にCr2Nに相当するピークが存在し
ていること,COMPO画像からは窒素濃度が高い暗部と低い明部があるのが観察
されることなどの相当の根拠を示した上で,AIP炉で製造した製品はCrN型窒
化クロム単一相に近いが,Cr2N型窒化クロムも存在すると結論付けていることが
認められる。そうすると,各証拠(甲41,乙63)の記載については,副成分の
Cr2N型窒化クロムの記載を省略して主成分である「CrN」のみを表記したとい
う可能性を否定することはできない。
よって,前掲各証拠(甲41,乙63,71)は,AIP炉で製造した製品には
Cr2N型窒化クロムが数%含まれるとの前記認定を左右するものではないといわ
ざるを得ない。
なお,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との記載がある。
しかし,上記のとおり,平成12年当時,一審被告の従業員が相当の根拠をもと
に導き出した,AIP炉で製造した製品はCrN型窒化クロム単一相に近いが,C
r2N型窒化クロムも存在するとの調査報告書(乙58)の結論を,本訴提起後に作
成された陳述書の記載によって否定することはできない。
以上によれば,AIP炉で製造した製品(IP200)には,Cr2N型窒化クロ
ムが含まれていない旨の一審被告の主張を採用することはできない。」
2消滅時効の成否(争点2)について
(1)消滅時効の起算点
ア勤務規則等の定めに基づき職務発明について特許を受ける権利を使用者に承
継させた従業者は,使用者に対し相当の対価支払請求権を取得するところ(旧35
条3項),同請求権についての消滅時効の起算点は,特許を受ける権利の承継時で
あるのが原則であるが,勤務規則等に使用者が従業者に対して支払うべき対価の支
払時期に関する定めがあるときは,その支払時期が消滅時効の起算点となると解さ
れる(最高裁判所平成15年4月22日第三小法廷判決民集57巻4号477頁参
照)。
イそこで,本件特許規定等に対価の支払時期に関する定めがあるかを検討する
に,証拠(甲6,30,乙7~10。なお,枝番の記載は省略する。)及び弁論の
全趣旨によれば,本件特許規定等について以下のとおり認められる。
(ア)本件原出願に係る発明の特許を受ける権利の移転(昭和59年9月10日)
当時の特許規定等
a特許規定(昭和46年施行)には,①会社が職務発明について特許を受け
る権利を承継したとき及び実施したときは,会社は従業者に対し相当の褒賞を支払
うこと(9条1項),②褒賞の金額及び支払の方法は特許表彰規定によること(同
条4項),③褒賞の金額に不服があるときは,会社に対し異議の申立てができる
こと(同条5項)が規定されている。
b特許表彰規定(昭和51年施行)には,①会社が出願したときは出願賞を
支払うこと(2条1項),②1年間の継続的な実施がされるごとに当該特許発明
の有効期間中実施賞を支払うこと(3条1項),③特許発明の実施効果が特に顕
著なとき等には,事業所長の申請により社長表彰を行うことができること(同条3
項)が規定されている。
(イ)本件発明3の特許を受ける権利の移転(平成6年2月21日)当時の特許規
定等
a特許規定(平成2年施行)には,①上記(ア)a①と同趣旨の規定(9条1項),
②褒賞の金額及び支払の方法は特許表彰要領による旨の規定(同条2項),③上
記(ア)a③と同趣旨の規定(9条3項)がある。
b特許表彰要領(平成5年施行)には,①上記(ア)b①と同趣旨の規定(2条
1項),②出願賞は出願完了後に支払うこと(同条2項),③出願が登録され
たときは登録賞を支払うこと(3条),④特許発明の実施が1年間を通じて継続
的にされた場合は,当該年度の実施に対し実施賞を支払うこと(4条1項),⑤特
許発明の実施効果が特に顕著であるときは,特許審査会審査長の申請により,社長
表彰を行うことができ,その運用は特許社長表彰運用基準によること(同条2項),
⑥特許審査会審査長は3月末までに特許審査部会長に実施賞支払の申請をするこ
と(5条1項)が規定されている。
(ウ)その後,本件特許規定等は数度にわたり改訂され,施行されたが,これらの
改訂を通じ,出願賞,登録賞,実施賞並びに社長表彰を支払うこと,褒賞の金額に
不服があるときは異議申立てができること,実施賞は年度内の特許発明の実施を要
件とすること(平成15年施行の改訂により,1年間の継続的な実施ではなく年度
内に実施があれば足りるとされた。),出願賞が出願完了後に支払われること,実
施賞は対象となる年度の後に支払手続がされることが規定されている。そして,一
審被告は,毎年,本件各発明の実施賞について,各実施年度終了後遅くとも1年以
内にこれを支払っている(前記争いのない事実等)。
また,上記の本件特許規定等の改訂に当たり,実施賞等の支払に関して経過規定
は設けられていない。
ウ上記イによれば,本件特許規定等は,一審被告が,本件各発明の特許を受け
る権利の承継の相当な対価の支払として,出願賞,登録賞,実施賞及び社長表彰を
支払うことを定めており,社長表彰以外は,支払時期の定めがあることが認められ,
これによれば,本件各発明の特許を受ける権利承継の相当の対価については,前掲
最判における「勤務規則等に,使用者が従業者に対して支払うべき対価の支払時期
の定めがあるとき」に該当し,その各支払時期が消滅時効期間の進行開始の起算点
となるものと認められる。そして,一審被告は,本件特許規定等に従って,本件各
発明の登録日以降,各年度毎の実施について,各年度終了日から遅くとも1年以内
に実施賞を支払っていること(前記争いのない事実等)からすれば,本件各発明の
各年度の実施に係る相当の対価については,各年度終了日の1年後の翌日から消滅
時効期間の進行が開始すると解するのが相当である。したがって,本件各発明の平
成9年度の実施分については,平成11年3月31日の翌日から,平成10年度の
実施分については,平成12年3月31日の翌日から,消滅時効の期間が進行する
ものと解される(なお,本件特許規定等の特許表彰要領(平成5年5月20日施行
のもの)の4条(1)項は,実施賞は,「特許発明(実体審査を経て登録された実用新
案及び登録意匠を含み,特許発明という。)の実施が1年間を通じて継続的になされ
た場合には,当該年度の実施に対し以下の通り実施賞を支払う。」と定めており(甲
6),特許発明が1年間を通じて継続的に実施された場合にのみ実施賞が支払われる
ものである。一審被告は,本件特許1及び2が平成9年度の途中で登録されている
ため,この規定について,登録された特許発明がその登録日以降1年間を通じて継
続実施されることが必要であると解して,平成9年度分については,その要件を満
たしていないとして,実施賞を支払わなかったと推認される。しかし,本件発明1
及び2は,実際には平成9年度の1年間継続的に実施されていたのであり,その特
許の登録が当該年度内になされただけである。上記規定は,実施賞が当該年度の特
許発明の実施に対する相当の対価の支払の趣旨であることからすれば,本来,特許
の登録時期にかかわらず,特許発明が1年間継続的に実施された場合に実施賞を支
払うとの趣旨に解することが合理的な解釈である。したがって,一審被告は,本来,
本件発明1及び2の平成9年度分実施について平成11年3月31日までには実施
賞を支払うべきであったのに,支払わなかったと解し得るところである(本件発明
3の平成9年度及び平成10年度分の実施についても同様である。なお,後記(2)
ア認定のとおり,一審被告は,社長表彰については,「特許発明が3年間にわたり実
施されて」(特許社長表彰運用基準)いるとして,本件各発明の平成9年度の実施か
ら平成11年度の実施について,本件特許規定等に定められた計算式に従って,実
績補償相当の金員を支払っているところからすれば,「特許発明の実施」に関し,社
長表彰については,上記の合理的な解釈を採用していたと解される。)。いずれにし
ても,本件特許規定等によれば,その実施賞等の定めにより,本件各発明の特許を
受ける権利の承継の相当の対価については,これを全体としてみると,その支払時
期の定めがある場合に該当すると認められる。)。
エ以上によれば,本件各発明の平成9年度以降の各年度の実施に係る相当の対
価(相当の対価と実際の支払額との差額)については,上記ウ認定の各時期から消
滅時効が進行するものと解される。
オ一審被告は,本件各発明についての相当の対価支払請求権の消滅時効は特許
を受ける権利の承継の時から進行するから,本件発明1及び2については,平成6
年9月10日の経過により,本件発明3については平成16年2月21日の経過に
より消滅したと主張する。
しかし,本件各発明については,出願賞,登録賞のほか,各年度経過後に各年度
の特許発明の実施に対し実施賞を支払うとの本件特許規定等があることは前記認定
のとおりであり,同規定に基づき,実際に各年度ごとに実施賞が支払われてきたの
であるから,本件各発明の特許を受ける権利承継の相当の対価についてその支払時
期の定めがあることは明らかであり,本件各発明の特許を受ける権利承継について
の相当の対価支払請求権の消滅時効が,その承継の時(昭和59年10月5日ない
し平成6年4月21日)から進行するとの一審被告の主張は到底採用し得ない。
(2)時効中断について
ア社長表彰による時効中断
社長表彰は,「特許発明の実施の効果が特に顕著である」ときは,特許審査会審査
長の申請により支払われるものであり(特許表彰要領4条(2)),「特許社長表彰運用
基準」の2条1項によれば,特許発明が3年にわたり実施されており,実施製品に
占める当該特許発明の評価値が0.5以上で,かつ研究開発費回収後の年間実績利
益評価額が1000万円以上のものに対し支払われるものであり,また,同条2項
には,「特許発明を他に実施許諾することにより年間50万円以上の実施料収入を得
たときは,社長表彰(補償金)として実施料収入年額の3%を支給する」と規定さ
れている(甲6,乙10)。
そして,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●上記2条1項の社長表彰に該当するとして,一審被告から一審原告
に対し,平成12年12月5日に,本件特許規定等所定の詳細な計算式に基づいて
計算された金額合計43万7000円が支払われている。(甲4)。
社長表彰は,このように特許発明の実施の効果が特に顕著なものに対し支払われ
るものであるから,いわゆる実績補償であり,本件各特許の特許を受ける権利承継
の相当の対価の支払に充当されるものである。また,上記の社長表彰は,一審被告
が,本件各発明の平成9年度から平成11年度の3年度分の実施に対し上記のよう
な検討を加え,実施賞に追加して支払われたものであるから,当該3年度分の実施
に係る本件各発明の特許を受ける権利承継の相当の対価の支払債務に充当されるも
のであり,本件各発明の当該3年度分の実施に係る相当の対価支払請求権に対する
債務の承認に当たると認められる。
一審被告は,社長表彰は,特許審査会審査長の申請により任意に支払うものであ
り,実施の報償である実施賞とは性格を異にするものであるとか,一審被告が原告
に対し,旧35条に基づく相当の対価支払債務が存在することを前提に,その額に
満たないことを知ってその一部を支払ったものではないから,相当の対価支払債務
の承認には当たらない,と主張する。
確かに,社長表彰は,一審被告が,特許審査会審査長の申請により特許発明の効
果が顕著であると判断したものに対し支払うものであることは前記認定のとおりで
あるものの,これが実績補償であり,特許発明の実施に基づく相当の対価の支払で
あることも前記認定のとおりであるから,実施の報償である実施賞とは性格を異に
するとの上記主張は採用し得ない。また,前記認定の本件特許規定等が社長表彰等
の支払基準について詳細に定めており,実際に本件各発明の実施の実績を詳細に認
定して,社長表彰を支払っていることからすれば,一審被告の一審原告に対する社
長表彰に基づく支払は,本件各発明の特許を受ける権利承継の相当の対価について
の支払であることを認識して支払ったものであると認められるから,旧35条に基
づく相当の対価支払債務の弁済であると認められるのであり,一審被告の上記主張
はいずれも採用することができない。
イ催告と本訴提起による中断
一審原告は,一審被告に対し,平成22年12月2日到達の内容証明郵便によっ
て,本件各発明の特許を受ける権利の承継についての相当の対価支払債務の履行を
催告した(甲71)。
一審原告は,その後,平成22年12月2日から6か月以内である平成23年4
月28日に,本件訴訟を東京地方裁判所に提起した。
よって,本件各発明の特許を受ける権利承継についての相当の対価支払請求権の
うち,平成9年度から平成11年度の実施に係る相当の対価支払請求権に関する消
滅時効は,平成12年12月5日の社長表彰の支払による債務の承認により時効の
進行が中断し,その後平成22年12月5日に消滅時効の10年の期間が経過する
ところ,平成22年12月2日の催告と本件訴訟の提起により,その消滅時効は再
び中断したものと認められる。
ウ以上によれば,本件各発明の平成9年度から平成11年度までの3年分の実
施に関する一審被告による消滅時効の援用は,理由がない。
3本件各発明により受けるべき利益の額(争点3)について
争点3についての当裁判所の判断は,次のとおり,付加,訂正するほか,原判決
「事実及び理由」の第3の3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決48頁19行目冒頭から同頁22行目末尾までを,次のとおり改め
る。
「ア上記2によれば,本件各発明についての相当の対価支払請求権は,一審原
告の請求に係る本件各発明の平成9年4月1日以降の実施による売上高に基づいて
算定されるべきものとなる。」
(2)原判決49頁4行目の「認められるから」から50頁5行目末尾までを次
のとおり改める。
「認められる。
そして,本件各発明の各実施炉における被告各製品の算定対象期間は,別紙売
上高一覧表(控訴審)①ないし③の一審原告主張の各欄記載のとおりであること
は,斜字体で記載した本件発明2の試作炉(AIP炉)2炉のIP251オイル
リング(DVM)の欄を除き,争いがない(一審原告は,原審において争いがあ
った部分について,当審において一審被告の主張と概ね合わせている。)。
以上によれば,本件各発明の相当の対価の算定の対象とする実施期間は,別紙
売上高一覧表(控訴審)①ないし③の「認定」欄の「算定対象期間」欄に記載の
とおりとなる(ただし,斜字体で記載した本件発明2の試作炉(AIP炉)2炉
のIP251オイルリング(DVM)の「算定対象期間」欄を除く。)」
(3)原判決51頁18行目冒頭から同頁26行目末尾までを次のとおり改め
る。
「(イ)平成9年4月1日以降の実施による売上高は,具体的な期間ごとの売上高
の増減等を認めるに足りる的確な証拠がないので,原判決別紙売上高一覧表①ない
し③の「一審原告主張」欄の売上高を同「日数」欄記載の実施期間日数で按分し,
上記イの実施期間日数を乗じることにより算出するのが相当であり,これによれば,
別紙売上高一覧表(控訴審)①ないし③の「認定」欄のとおりであると認められる
(小数点以下切り捨て。以下同じ)。」
(4)原判決52頁9行目冒頭から同頁19行目末尾までを次のとおり改める。
「エ以上によれば,平成9年4月1日以降の本件各発明の実施品の売上高の合
計は次のとおりとなる。
(ア)本件発明1合計42億7296万8155円
トップリング3169万1000円
オイルリング(DVM及びレール)42億4127万7155円
(イ)本件発明2合計36億1051万8702円
トップリング36億0881万8489円
オイルリング(DVM)170万0213円
(ウ)本件発明3合計48億4043万0374円
トップリング43億0190万3894円
オイルリング(DVM及びレール)5億3852万6480円」
(5)原判決54頁15行目冒頭から59頁1行目末尾までを次のとおり改める。
「(イ)以上のとおり,一審被告はイオンプレーティング法による窒化クロムの
被覆層を形成したピストンリング製品の分野において国内で約50%の,海外で約
20%のシェアを有し,他方,国内の競業他社であるNPR社及びTPR社は平成
11年4月より前からイオンプレーティング法による窒化クロムの被覆層を採用し
ていたことからすれば,NPR社とTPR社は一審被告各製品の競合品であるピス
トンリング製品を製造販売していたということができる。また,TPR社は,本件
発明1及び2と同様の作用効果を奏し,これらの代替技術となり得る特許権を有し
ていたことが認められる。
これに対し,一審原告は,NPR社及びTPR社の各製品は,本件特許1又は2
の技術的範囲に含まれるものであるし,TPR社が有する上記特許権に係る発明が
本件発明1及び2の利用発明にすぎず,その実施品は本件発明1及び2の単なる侵
害品であるから,競合品とはなり得ない旨主張する。
しかし,NPR社及びTPR社が実際に製造販売していた各製品が本件特許1又
は2の技術的範囲に含まれるものであるか否かは明らかではないし,現に,NPR
社とTPR社は一審被告各製品の競合品であるピストンリング製品を製造販売して
いたことは否定できない。
また,TPR社が有する上記特許権に係る発明が,その発明の内容に照らし,本
件発明1及び2をさらに改良したものであるとはいえるものの,その発明を実施し
た同社の製品が実際に本件特許権1及び2を侵害するものであったかどうかは定か
ではなく,上記特許権が本件発明1及び2の代替技術となり得る特許権であるとい
うことも否定はできない。
よって,一審原告の上記主張は採用することができない。
イ本件各特許権の権利行使
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ウ本件各特許の無効理由について
前記争いのない事実等のとおり,本件特許1についてはこれを無効とする旨の審
決が確定しているものの,本件の口頭弁論終結時点において,本件特許2及び3に
係る無効審判は請求されておらず,これらを無効とする旨の審決等による判断はさ
れていない。
無効審決の確定により,特許権は初めから存在しなかったものとみなされるが(特
許法125条本文),無効審決が確定するまでは,たとえ当該特許に無効理由がある
としても特許権は一応有効なものであって,事実上の独占力を有するものとして取
り扱われる。すなわち特許権に無効理由があったとしても,当該特許権の行使の結
果生じる独占の利益を享受できることとなる。したがって,本件特許1について本
件訴訟提起後に無効審決が確定したとしても,そのことは,それまでに一審被告の
得た利益の額に直ちに影響を及ぼすものではないといえる。
一審被告は,本件各特許には無効理由が存在しているから超過売上げは存在しな
いか,これを仮想実施料率で考慮するとしても,極めて低廉なものにしかなり得な
いと主張する。確かに,特許権の行使の場面やライセンス交渉の場面において,対
象特許に無効理由が存在することが同交渉の当事者双方の共通の認識になっている
場合には,一般的には,このことが同交渉において特許権者に不利に働くことは考
えられる。そうすると,独占の利益を算定する前提としての超過売上げの割合及び
仮想実施料率を決する場面においては,無効理由の存否がその多寡に影響を与える
ことがあり得るということはできる。しかし,ライセンス交渉等の場面における無
効理由の主張は,特許権侵害訴訟ないし無効審判において無効判断がなされる可能
性があることを指摘するというものであり,無効審判手続における訂正の手続等,
制度的にも無効理由を回避する手段が留保されていること等を考慮すると,無効理
由の指摘自体,その根拠が確定的とまではいい難い場合も少なくはない。
そこで,本件各特許について,無効理由等を検討することとする。
(ア)本件特許1について
証拠(乙43)によれば,本件特許1の無効審判は本件訴訟提起後に一審被告代
理人が請求したものであり,無効とされた理由は,本件特許1の分割出願は新たな
技術的事項を含むものとして分割要件に反するので,出願日の遡及が認められず,
その結果,本件原出願の公開特許公報により新規性を欠くというものである。
そして,上記審決によると,①本件明細書等では,原出願に係る発明の目的と
同一の課題である耐焼き付き特性に関し,CrNとCr2Nとからなる表面被覆層
(試料No1:本件原出願当初明細書等に記載の試料NO.4)が,原出願当初明
細書等の記載とは異なり(本件原出願当初明細書では,「耐焼き付き特性試験におい
て満足な特性を示さなかったので,本耐摩耗試験の対象から除いた。」と記載されて
いる。),過酷な使用条件下においても充分な焼き付き特性を示すものとして扱われ
ていること,また,②CrN型窒化クロムとCr2N型窒化クロムからなる混合組
織を主成分とした組織でなる表面被覆層の耐摩耗量測定試験を行うことにより,原
出願当初明細書等に記載のない,当該表面被覆層の耐摩耗性についての効果を確認
していることが分割要件(特許法44条1項)に反する理由とされている。
しかし,本件原出願の出願当初明細書(第2表)に記載されていた耐焼き付き試
験の結果に照らすと(乙28),本件明細書1における効果の記載については,耐焼
き付き特性の方をより重視した記載等に訂正することにより,CrNめっき処理と
同程度の耐焼き付き特性を有するピストンリングが得られることとなるから,審決
において指摘された,本件原出願の出願当初明細書等に記載のない表面被覆層の耐
摩耗性について効果を確認していることなどについての矛盾が解消される可能性が
あったことが窺われる。
よって,本件特許1については,明細書の発明の詳細な説明の一部を訂正するこ
とにより,本件特許1の分割出願は新たな技術的事項を含むものとして分割要件に
反するので,出願日の遡及が認められず,その結果,本件原出願の公開特許公報に
より新規性を欠くという審決が指摘する無効理由を回避し得る可能性があったとい
うことができる。
そうすると,一審被告が本件特許1について権利行使を試みておらず,本件特許
1について無効審決が確定したとしても,このことは超過売上げの割合及び仮想実
施料率を認定するに当たり総合考慮すべき諸事情の中の一要素となり得るにとどま
るものといえる。
さらに,上記の事情に加え,本件特許1についての無効審判が一審被告訴訟代理
人の一人により本件訴訟提起後に請求されており,無効審判手続で提出された答弁
書において,請求人の主張を認容する旨の主張をしていること,一審被告が無効審
判において訂正の手続等の無効理由を回避する手段を講じていないことなどの本件
審判手続における一審被告側の対応等を考慮すると,本件特許1について,超過売
上げの割合及び仮想実施料率を認定するに当たっても,無効審決が確定したことを
特に考慮することはできないといわざるを得ない。
なお,一審原告は,上記のような状況において,本件発明1の相当の対価支払請
求権の額の多寡が,本件特許1の無効審決の確定により影響を受けた場合,これは
一審被告の一審原告に対する債権侵害の不法行為となり得る旨主張する。しかし,
前記のとおり,本件特許1について無効審決が確定したことについての影響を超過
売上げの割合において特に考慮することはないし,仮想実施料率を認定するに当た
っても特に考慮することはできないから,一審原告の上記主張はその前提を欠くも
のといわざるを得ない。
(イ)本件特許2について
a一審被告が,本件特許2について,競業他社に対し,それぞれ特許権侵害の
警告をした際に,指摘された主な無効理由は,特許請求の範囲及び明細書の補正が,
いわゆる要旨の変更に当たるものであって,不適法と認められるから,本件特許2
の出願は平成9年4月30日にされたものとみなされ,それより前に頒布された本
件原出願の公開特許公報には,金属クロム相と窒化クロム相の混合相の大きさがお
おむね1000オングストローム以下であるピストンリングが開示されているので,
本件発明2は新規性又は少なくとも進歩性を欠くというものであったことが認めら
れる。
そこで,本件特許2について指摘された上記無効理由(補正要件違反による新規
性等の欠如)について検討する。
証拠(乙30,32,34,35,38)及び弁論の全趣旨によれば,①昭
和61年5月6日公開の本件原出願の公開特許公報(特開昭61-87950号)
には,特許請求の範囲として「少なくとも一つの摺動面に,金属クロムと窒化クロ
ムとの超微細な混合組織でなる被覆層を形成させたことを特徴とするピストンリン
グ。」と,発明の詳細な説明として「被覆層において,金属クロム相と窒化クロム
相との混合相」の「大きさは概ね1000Å以下である」と記載されていること,
②本件特許2の分割出願時の願書に添付した明細書には上記①の混合相の大きさ
に相当する記載はなかったこと,③一審被告は,平成9年4月30日付け手続補
正書により,特許請求の範囲の記載を「少なくとも一つの摺動面に,CrN型窒化
クロムを主成分とし,CrN相の大きさが1000オングストローム以下の超微細
組織でなるイオンプレーティング被覆層を形成したことを特徴とするピストンリン
グ。」と変更し,発明の詳細な説明中に「CrN相の大きさが1000オングスト
ローム以下の超微細組織でなる」との記載を追加する補正(以下「本件補正」とい
う。)をし,これに基づいて本件特許2について特許登録がされたこと,以上の事
実が認められる。
もっとも,本件原出願の出願当初明細書(乙28)には,「この発明は,ピスト
ンリングの摺動面に,金属クロムと窒化クロムとが超微細に混合してなる被覆層を
形成させることにより,前記の目的を達成する。ここで,前記被覆層において,金
属クロム層と窒化クロム層との混合層の微細化の程度は,光学顕微鏡による観察で
は識別が困難であり,X線解析によりクロム層と窒化クロム層との共存が確認可能
な程度に微細化されているもので,該混合層の大きさは概ね1000Å以下である。」
との記載があることが認められ,この記載から,CrN相の大きさが1000オン
グストローム以下であることが示唆されているということができる。また,分割出
願時の願書に添付した明細書によると,実施例によって得られるCrN膜の組織に
ついては,CrNの粒径が50nmを超えない程度であること,すなわち500オ
ングストローム以下であることが認められ,このことは当時の技術常識であったと
いうことができる(甲18,乙23)。そうすると,本件特許2の分割出願時の願
書に添付した明細書に混合相の大きさに相当する記載がなかったとしても,「Cr
N相の大きさが1000オングストローム以下の超微細組織から成る」ことが分割
出願時の願書に添付された明細書又は図面の記載から明らかであったと認めること
ができる。
上記事実関係によれば,本件補正が,いわゆる要旨の変更に当たり不適法な
ものであったと直ちに認めることはできない。
b以上のとおり,本件発明2について,競業他社が主張する無効理由は,本件
原出願の公開特許公報による新規性又は進歩性の欠如が一見して明らかなものであ
ったとは認められない。このような場合,特許権侵害の警告を受け,又はライセン
スを受けようとする者が,その交渉を自己に有利に進めるべく,本件発明2が進歩
性を欠き無効理由が存在する旨を一審被告に対し主張したとしても,特許庁のした
無効審決とか,侵害訴訟において裁判所が特許法104条の3の抗弁を理由がある
と認めて判決をした場合等の裏付けもない状況の下で(本件においては,本件口頭
弁論終結日現在,いまだ本件特許2について,無効審判が請求され,無効審決が確
定しているなどの事実は認められない。),超過売上げの割合及び実施料率を低廉化
させられ得るとは直ちに考え難い。
そうすると,本件特許2について,超過売上げの割合及び仮想実施料率を認定す
るに当たっても,競業他社から無効理由を指摘されたことを特に考慮することはで
きない。
(ウ)本件特許3について
一審被告は,本件発明3の「母材の表面粗さ」についてどの指標によるべきか記
に説示したとおり,Rz(十点平均粗さ)によるものと解するのが相当であるから,
一審被告の主張は採用できない。
(エ)以上のとおり,本件各特許について,無効審決が確定したことなどを超過売
上げの割合及び仮想実施料率等を認定するに当たって特に考慮することはできない。
エ超過売上げの割合
上記の諸事情,すなわち,一審被告は本件各発明の実施品である一審被告各製品
だけでなくそれ以外のピストンリング製品についても相当高いシェアを有している
こと,競業他社が一審被告各製品の競合品の製造販売をしていること,TPR社は
本件発明1及び2の代替技術に係る特許を保有していたこと,●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●など本件における諸事情を
考慮すれば,本件各発明が本件各製品の売上げに寄与したといえるとしても,その
程度が高いとみることは困難である。以上によれば,一審被告各製品の売上げのう
ち本件各特許権に基づく超過売上げの割合はいずれも20%であると認めるのが相
当である。
オこれに対し,一審原告は,①一審被告がオイルリング製品の市場を独占し
ていること,②TPR社及びNPR社のピストンリング製品は,その性能上一審
被告各製品の競合品となり得ないこと,③一審被告各製品は一審被告の他の製品
より利益率が高いこと,④TPR社が保有する特許権はIP300のトップリン
グのうちCrアンダーコート品に対応する技術にすぎず,その余の一審被告各製品
との関係で代替技術であるとはいえないこと,⑤●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●を根拠に,超過売上げの割合はオイルリング及びトップリ
ングのいずれも50%であると主張する。
しかし,①及び②について,前記ア(ア)aないしcに認定したところに照らし,
一審被告がオイルリング製品の市場を独占していたとは認められず,本件各特許の
出願時前後において,市場のシェアに変動はなかったといえるし,また,国内の競
業他社が製造販売するイオンプレーティング法による窒化クロムの被覆層を形成し
たピストンリング製品が一審被告各製品の競合品となっていたということができる。
③について,一審被告各製品が同社の他の製品より利益率が高いことを裏付ける的
確な証拠はない上,利益率が高いとしてもそのことから上記エの判断を覆すことは
困難である。④について,TPR社が保有する特許は,前記ア(ア)dの特許請求の
範囲の記載によれば,本件発明1及び2の実施品に代替し得る技術であると解する
ことができる。⑤について,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
したがって,一審原告の主張はいずれも採用することはできない。
カ他方,一審被告は,一審被告各製品の競合品の存在や特許の無効理由の存在
からすれば,一審被告に独占の利益はなく超過売上げは存在しないと主張する。し
かし,競合品や無効理由が存在することのみをもって特許発明の独占の利益が否定
されるものではないし,本件においては,無効理由を回避する手段を講じることも
可能であったというべきであるから,一審被告の主張は失当といわざるを得ない。」
(6)原判決61頁23行目の「③」の次に「また,本件発明1及び2につい
ては,前記認定のとおり,無効理由があるとは解されず,社長表彰においても、
特許発明として高い評価を受けていること(甲4),さらに,④」を加え,同頁
25行目の「仮想実施料率は各4%」を「仮想実施料率は各5%」と改める。
(7)原判決62頁1行目冒頭から3行目末尾までを次のとおり改める。
「ウこれに対し,一審原告は,NPR社の実用新案権に係る考案は2層構成で
あるのに対し,本件発明1は,CrNとCr2Nからなる混合組織を主成分とした組
織でなるイオンプレーティング皮膜層/下層ないし母材,という1層構成ですむ発
明であり,さらに,本件発明2も1層構成であることは変わらないから,本件発明
1及び2とNPR社の実用新案権に係る考案とは,全くタイプ・系統の異なるもの
である旨主張する。
しかし,前記認定のNPR社の実用新案登録請求の範囲(上記ア(エ))によると,
同考案は,軟窒化層を設けることが前提となってはいるものの,本件発明1及び2
と全くタイプ・系統の異なるものであるということはできないから,一審原告の上
記主張は採用することができない。
なお,本件発明1及び2に関する,イオンプレーティングによるCr-N皮膜に
関して,発明時には雑誌記事となったことが認められ(甲80,81),相応の評価
がされていたということはできる。
エさらに,一審原告は,オイルリングにおいて本件発明1及び2の果たした役
割がより大きいことを考慮すると,本件発明1及び2の仮想実施料率は,オイルリ
ングでは少なくとも7%とすべきであり,本件発明3の仮想実施料率は少なくとも
3%とすべきである旨主張し,一審被告は,これがゼロに近い旨をそれぞれ主張す
る。しかし,一審原告及び一審被告の上記各主張は,以上に説示したところに照ら
し,いずれも採用することができない。本件発明1及び2について,オイルリング
において果たした役割がより大きいとしても,前記認定と異なる仮想実施料率を認
めるに足りる事情であるとまではいい難い。」
4相当の対価の額(争点4)について
争点4についての当裁判所の判断は,次のとおり,付加,訂正するほか,原判決
「事実及び理由」の第3の4に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決62頁5行目末尾に,行を改めて,次のとおり加え,同頁6行目冒
頭の「ア」を「イ」と改める。
「ア旧35条3項及び4項が,従業者等と使用者等の利害関係を調整し両者間
の衡平を実現する趣旨の規定であることからすると,同条4項の「使用者等が貢献
した程度」を判断するに当たっては,使用者等が「その発明がされるについて」貢
献した事情のほか,特許の取得・維持やライセンス契約の締結に要した労力や費用,
あるいは,特許発明の実施品に係る事業が成功するに至った一切の要因・事情等を,
使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した一切の事情として考慮し
得るものと解するのが相当である。
これに対し,一審原告は,旧35条4項は「前項の対価の額は,その発明により
使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した
程度を考慮して定めなければならない」と規定しており,条文上,相当の対価の利
益の額を算定するのに,発明がされた後の使用者等が貢献した程度を考慮すること
とはされていないから,量産化のための設備投資をしたこと等の発明がされた後の
事情は考慮できない旨主張するが,上記の旧35条3項及び4項の趣旨に照らし,
採用することができない。
そこで,以下において,本件各発明についての一審被告の貢献に係る事情につい
て検討する。」
(2)原判決63頁23,24行目の「ことは明らかと解される」を「ことが推認
される。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●と改める。
(3)原判決63頁26行目の「被告の貢献度を95%と認める」を「一審被告の
貢献度を90%と認める」と改める。
(4)原判決64頁1行目冒頭から同頁3行目末尾までを次のとおり改める。
「ウこれに対し,一審原告は,一審被告の貢献度は,本件発明1及び2につい
ては多くとも70%である旨,一審被告は,一審原告の貢献度は1%である旨,そ
れぞれ主張するが,以上に説示したところに照らし,いずれも採用することができ
ない。」
(5)原判決64頁8行目冒頭から65頁15行目末尾までを次のとおり改める。
「(3)相当の対価の額の計算
ア本件発明1
(ア)売上高42億7296万8155円
(イ)超過売上げの割合20%
(ウ)仮想実施料率5%
(エ)一審被告の寄与度90%
(オ)相当の対価の額427万2968円
(計算式)42億7296万8155円×20%×5%×(100-90%)=
427万2968円
イ本件発明2
(ア)売上高36億1051万8702円
(イ)超過売上げの割合20%
(ウ)仮想実施料率5%
(エ)一審被告の寄与度90%
(オ)相当の対価の額361万0518円
(計算式)36億1051万8702円×20%×5%×(100-90%)=
361万0518円
ウ本件発明3
(ア)売上高48億4043万0374円
(イ)超過売上げの割合20%
(ウ)仮想実施料率2%
(エ)一審被告の寄与度90%
(オ)共同発明における一審原告の寄与度70%
(カ)相当の対価の額135万5320円
(計算式)48億4043万0374円×20%×2%×(100-90%)×
70%=135万5320円
(4)まとめ
したがって,一審被告による本件各発明の平成9年4月1日以降の実施に対応す
る本件各発明の相当の対価の額は,合計923万8806円となる。
上記金額から,上記相当の対価の一部として一審被告が一審原告に支払った平成
9年度分以降の実施賞78万7400円(前記争いのない事実等(5)ア(ア)~(サ))及
び社長表彰43万7000円を控除すると,残額は801万4406円である。」
5結論
以上によれば,一審原告の請求は,801万4406円及びこれに対する平成2
3年5月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限
度で理由があり,その余は理由がないから,一審原告の控訴に基づき,これと異な
る原判決を変更し,上記の限度で一審原告の請求を認容し,一審被告の控訴は理由
がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官設樂一
裁判官大寄麻代
裁判官岡田慎吾
発明1
売上高算定対象期間日数算定対象期間日数売上高
IP200トップリング7,576,201.7H9.4.1~H16.10.52,745H11.4.1~H16.10.52,0155,561,401
〃オイルリング(DVM)215,615,046.7H9.4.1~H15.2.282,160H11.4.1~H15.2.281,430142,745,146
〃オイルリング(レール)982,925,595.1H9.4.1~H15.2.282,160H11.4.1~H15.2.281,430650,733,148
IP200トップリング23,955,887.0H9.11.1~H16.10.52,531H11.4.1~H16.10.52,01519,071,952
〃オイルリング(DVM)46,258,378.0H9.11.1~H16.10.52,531H11.4.1~H16.10.52,01536,827,590
〃オイルリング(レール)1,875,182,445.0H9.11.1~H16.10.52,531H11.4.1~H16.10.52,0151,492,885,273
6号炉IP200オイルリング(レール)1,105,071,770.9H14.3.1~H16.4.30792H14.3.1~H16.4.307921,105,071,770
IP200トップリング158,912.2H9.4.1~H16.10.52,745H11.4.1~H16.10.52,015116,651
〃オイルリング(DVM)814,582.7H9.4.1~H16.10.52,745H11.4.1~H16.10.52,015597,954
〃オイルリング(レール)15,409,339.7H9.4.1~H16.10.52,745H11.4.1~H16.10.52,01511,311,409
合計4,272,968,159.0合計3,464,922,294
内訳(トップ)31,691,001内訳(トップ)24,750,004
(オイル)4,241,277,158(オイル)3,440,172,290
2号炉
試作炉
(HCD炉)
炉製品
原告主張認定
1号炉
売上高一覧表(控訴審)①
発明2
売上高算定対象期間日数算定対象期間日数売上高
IP251トップリング0.0H9.4.1~0H11.4.1~00
IP253トップリング0.0H9.4.1~0H11.4.1~00
IP251トップリング617,776,016.3H11.12.1~H16.9.51,741H11.12.1~H16.9.51,741617,776,016
IP253トップリング321,314,887.2H11.12.1~H16.9.51,741H11.12.1~H16.9.51,741321,314,887
IP300トップリング319,612,131.7H12.5.9~H16.9.51,581H12.5.9~H16.9.51,581319,612,131
5号炉IP251トップリング939,232,781.4H13.3.1~H16.9.51,285H13.3.1~H16.9.51,285939,232,781
6号炉IP251トップリング388,129,563.2H14.3.1~H16.9.5920H14.3.1~H16.9.5920388,129,563
IP251トップリング121,515,921.0H15.1.1~H16.6.30547H15.1.1~H16.6.30547121,515,921
〃オイルリング(DVM)976,842.0H15.2.27~H16.6.30490H15.2.27~H16.6.30490976,842
IP251トップリング12,831,058.1H16.2.1~H16.9.5218H16.2.1~H16.9.521812,831,058
〃オイルリング(DVM)482,588.7H16.2.1~H16.9.5218H16.2.1~H16.9.5218482,588
3号炉IP251トップリング
+(3号炉)803,205,609.1H9.4.1~H16.9.52,715H11.4.1~H16.9.51,985587,242,406
10号炉(10号炉)28,696,480.4H16.6.1~H16.9.597H16.6.1~H16.9.59728,696,480
IP251トップリング50,712,562.2H9.4.1~H16.9.52,715H11.4.1~H16.9.51,98537,077,140
〃オイルリング(DVM)240,783.2H15.12.25~H16.9.5256H15.12.25~H16.9.5256240,783
IP253トップリング3,465,845.0H10.2.4~H16.9.52,406H11.4.1~H16.9.51,9852,859,394
IP300トップリング2,325,637.3H13.9.18~H16.9.51,084H13.9.18~H16.9.51,0842,325,637
合計3,610,518,706.8合計3,380,313,627
内訳(トップ)3,608,818,493内訳(トップ)3,378,613,414
(オイル)1,700,214(オイル)1,700,213
炉製品
試作炉
(AIP炉)
原告主張認定
売上高一覧表(控訴審)②
2号炉
4号炉
8号炉
9号炉
発明3
売上高算定対象期間日数算定対象期間日数売上高
IP200トップリング3,227,842.1H9.4.1~H14.2.171,784H11.4.1~H14.2.171,0541,907,032
〃オイルリング(DVM)233,355,664.5H9.4.1~H14.2.171,784H11.4.1~H14.2.171,054137,868,200
〃オイルリング(レール)295,878,110.9H9.4.1~H14.2.171,784H11.4.1~H14.2.171,054174,806,910
IP200オイルリング(レール)0.0H9.11.1~0H11.4.1~00
IP251トップリング329,130,478.7H9.4.1~H14.2.171,784H11.4.1~H14.2.171,054194,452,648
IP253トップリング0.0H9.9.30~0H11.4.1~00
IP251トップリング228,238,293.0H11.12.1~H14.2.17810H11.12.1~H14.2.17810228,238,293
IP253トップリング125,324,297.0H11.12.1~H14.2.17810H11.12.1~H14.2.17810125,324,297
5号炉IP251トップリング230,013,025.0H13.3.1~H14.2.17354H13.3.1~H14.2.17354230,013,025
3号炉IP251トップリング
+(3号炉)2,283,889,252.7H9.4.1~H20.2.293,987H12.4.1~H20.2.292,8911,656,063,162
10号炉(10号炉)1,080,937,803.0H16.6.1~H21.7.311,887H16.6.1~H21.7.311,8871,080,937,803
試作炉IP200トップリング33,589.3H9.4.1~H16.5.302,617H12.4.1~H16.5.301,52119,522
(HCD炉)〃オイルリング(DVM)388,700.6H9.4.1~H16.5.302,617H12.4.1~H16.5.301,521225,912
〃オイルリング(レール)8,904,006.3H9.4.1~H16.5.302,617H12.4.1~H16.5.301,5215,175,007
試作炉IP251トップ16,579,255.8H9.4.1~H16.5.122,599H12.4.1~H16.5.121,5039,587,772
(AIP炉)〃オイルリング(DVM)0.0~000
IP253トップ3,509,060.0H10.2.4~H16.5.122,290H12.4.1~H16.5.121,5032,303,107
IP300トップ1,021,000.0H13.9.18~H16.5.12968H13.9.18~H16.5.129681,021,000
合計4,840,430,378.9合計3,847,943,690
内訳(トップ)4,301,903,897内訳(トップ)3,529,867,661
(オイル)538,526,482(オイル)318,076,029
原告主張認定
炉製品
1号炉
2号炉
4号炉
売上高一覧表(控訴審)③

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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