弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
被告が昭和五二年五月二七日付で原告に対し、原告の昭和五〇年一二月一日から昭
和五一年一一月三〇日までの事業年度の事業に係る事業所税についてした更正処分
を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文と同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
(一) 原告会社は、カーペツトの製造販売を業とするものであるが、被告に対
し、昭和五〇年一二月一日から昭和五一年一一月三〇日までの事業年度の事業に係
る事業所税について別表(一)記載の内容の申告をしたところ、被告は昭和五二年
五月二七日付で原告会社に対し、同表(二)記載の内容の右事業所税の更正処分を
した。原告会社はこれに対し同年七月二〇日異議申立てをしたが、被告は同年八月
一九日これを棄却する旨の決定をした。
(二) 原告会社は、その事業の用に供している堺市<地名略>所在の事務所兼倉
庫(床面積五、〇九〇・三八平方メートル・以下「本件建物」という)が、地方税
法七〇一条の三四第三項二二号(昭和五三年法律第九号による改正前のもの・以下
「旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号」という)に該当する施設であつて非課
税であるとの見解のもとに申告をした。ところが、被告は、本件建物は右非課税規
定に該当せず、ただ、そのうち福利厚生施設である部分七三・五七平方メートルだ
けが非課税であるとの見解を採つて本件更正処分をした。
(三) 本件建物は、原告会社が民間金融機関から資金を借り入れて建築したもの
であるが、その敷地(四、七〇二・三〇平方メートル)は、原告会社が、訴外日本
敷物団地協同組合を介して訴外中小企業振興事業団から中小企業振興事業団法二〇
条一項二号イ所定の資金(以下「高度化資金」という)を借り入れて取得したもの
である。
(四) 原告会社は、昭和四三年から本件建物の所在地の周辺に逐次土地を取得し
て建物を建築又は取得してきたが、これらの資金は、すべて日本敷物団地協同組合
を介して中小企業振興事業団から高度化資金の貸付けを受けてまかなつた。
ところで、原告会社は、本件建物の建築に当つても高度化資金の借入れを右組合に
申し込んだ(高度化資金の貸付けには実務上このような方法が採られている)が、
同組合の金融事業規定によつて借入のわくが定められており、原告会社の場合既に
その限度に達していたため、再三の交渉にもかかわらず高度化資金の借入れができ
ず、やむをえず民間金融機関の資金で本件建物を建築した。
(五) 本件建物は、その全部が旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号に該当す
ると解すべきである。すなわち、
右規定は、中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ又はロ所定の事業を行う者が、
高度化資金の貸付けを受けて事業を実施している場合には、その事業の用に供する
施設は非課税とする旨定めているが、原告会社の場合、右の事業主体に関する要件
に該当し、本件建物の取得について高度化資金の貸付けを受けている。したがつ
て、本件建物はまさに右規定に該当する。
(六) 結論
1 被告の本件更正処分は、旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号の解釈を誤つ
た違法があるので、その取消しを求める。
二 請求原因に対する被告の答弁と主張
(認否)
請求原因(一)ないし(三)の事実は認め、同(四)の事実は不知、同(五)の主
張は争う。
(主張)
旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号は、事業所税の課税客体である建物(事業
所用家屋)それ自体が高度化資金の貸付けを受けて建築された場合の規定であつ
て、その建物が高度化資金の貸付けを受けて建築されたものでなければ、その敷地
が高度化資金の貸付けを受けて取得されても右条項に該当しない。このことは、条
文の文理解釈からも、また、事業に係る事業所税の課税客体が建物(資産割)と従
業者の給与(従業者割)のみであつて、土地ではないことからも明白である。ちな
みに、昭和五三年法律第九号による改正後の地方税法七〇一条の三四第三項二二号
によれば、右の被告の主張がより一層明確に裏づけられるのであつて、新法の趣旨
は旧法の下においても十分尊重されるべきである。
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 当事者間に争いがない事実
請求原因(一)ないし(三)の各事実は当事者間に争いがない。
二 旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号の解釈について
(一) 旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号は、
(1) 中小企業振興事業団法二〇条一項二号イ又はロの中小企業構造の高度化に
寄与する事業で政令で定めるものを行う者が、
(2) 高度化資金の貸付け等を受けて当該事業を実施する場合における、(3)
 当該事業の用に供する施設で政令で定めるもの
につき、当該施設に係る事業所床面積及び従業者給与総額に対しては事業に係る事
業所税を非課税とする旨規定している。
ところで、本件の場合、原告会社が右(1)の要件に、また本件建物が右(3)の
要件に各該当することは、被告が明らかに争わない。
そこで、本件の争点は、右(2)の要件に該当するかどうかという問題に帰着す
る。以下、この争点について検討する。
(二) 本件のように高度化資金の貸付けを受けて土地を取得し、その地上に自己
資金で事業用家屋を建築し、そこで、政令に定める事業を実施する場合(以下本件
の場合という)には、右(2)の要件、つまり高度化資金の貸付けを受けて事業を
実施する場合に該当すると解するのが相当である。そのわけは次のとおりである。
(1) まず、右規定は、「高度化資金の貸付けを受けて事業を実施する」といつ
ているだけで、高度化資金を何に使うか、また、どのような目的でその資金の貸付
けを受けるかは限定されていない。そうはいつても、中小企業振興事業法二〇条二
項イ、ロの規定から、高度化資金は「土地、建物その他の施設を取得し、造成し、
及び設置する」ことのためにしか貸し付けられないから、使途はおのずから限定さ
れることになる。しかし、本件のように、建物つまり事業所用家屋の敷地を取得す
るため高度化資金の貸付けを受けることが、右規定の「高度化資金の貸付けを受
け」との文言に含まれないと解することは、少なくとも、この非限定的文言からは
出てこない。却つて、高度化資金の貸付けを受けて土地を取得し、その上に建物を
建ててそれを倉庫等として政令で定める事業に利用している場合は、その敷地も同
時にその事業の用に供されているわけであるから、貸付けと事業の実施との間に関
連があり、「貸付けを受けて事業を実施する」との文言に含まれるとした方が自然
である。
(2) さらに、実質面から考えると、旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号の
立法趣旨は、中小企業振興事業団が「中小企業の経済的社会的存立基盤の変化に対
処し、中小企業構造の高度化を促進するために必要な指導、資金の貸付け等の事業
を総合的に実施するとともに、中小企業の経営管理の合理化及び技術の向上を図る
ために必要な研修、指導等の事業をあわせて行なうことにより、中小企業の振興に
寄与することを目的とする」(中小企業振興事業団法一条)法人であることから、
その業務の一環として行われる高度化資金の貸付けを受けて行われる倉庫等の集団
化等の事業が、中小企業構造の高度化という公益に合致するという点にあると解せ
られる。そうして、これらの事業のためには建物だけでなく、そのための敷地が必
要であることはいうまでもないから、高度化資金を借りた者が、それを事業用家屋
の敷地の取得のために使う場合でも、倉庫等の集団化等の目的を達することができ
るとしなければならない。したがつて、本件の場合にも事業所税を非課税とする実
質的、合理的な理由を見出すことができる。もつとも、立法政策上高度化資金を事
業用家屋の建築のために使う場合にだけ非課税とすることも考えられるが、少なく
とも旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号にはそのような限定がないことは前述
したとおりである。
(3) なお、成立に争いがない乙第二ないし第四号証によると、仙台市、神戸
市、千葉市では、被告と同様、本件の場合に事業所税を賦課する取扱いをしている
ことが認められ、この認定に反する証拠はない。
しかし、これらの市が非課税の扱いをしていないからといつて、当裁判所のこの点
に関する上記の解釈の正当性が奪われる理はない。
三 以上の理由によつて、本件建物は旧地方税法七〇一条の三四第三項二二号に該
当するから、これと異なる見解のもとにされた被告の本件更正処分には右規定の解
釈を誤つた違法があり、取消しを免れない。
四 むすび原告会社の本件請求は理由があるので認容し、訴訟費用の負担について
行政事件訴訟法七条、民訴法八九条に従つて、主文のとおり判決する。
(裁判官 古崎慶長 井関正裕 西尾 進)

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