弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人重松蕃、同長田弘、同片岡政雄の各上告趣意第一点について。
 国民の権利はすべて公共の福祉に反しない限りにおいて立法その他国政の上で最
大の尊重をすることを必要とするものであるから、憲法二八条が保障する勤労者の
団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利も公共の福祉のために制限
を受けるのはやむを得ないところである。ことに公務員は、国民全体の奉仕者とし
て(憲法一五条)、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の執行に当つては、全
力を挙げてこれに専念しなければならない(地方公務員法三〇条、国家公務員法九
六条一項)性質のものであるから、団結権、団体交渉権等についても、一般に勤労
者とは違つて特別の取扱を受けることがあるのは当然であること、および他人に対
し権利を有する者が、その権利を実行する行為は、それがその権利の範囲内であつ
て、かつ、その方法が社会通念上一般に許容される限度を超えないかぎり、何等違
法の問題は生じないけれども、その行為が右の範囲又は程度を超えるときは、違法
となり犯罪を構成することがあるべきことは、すでに当裁判所の判例とするところ
であり(昭和二四年(れ)六八五号同二八年四月八日大法廷判決、刑集七巻四号七
七五頁、昭和二四年(れ)一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六
号一二八九頁)、地方公務員法五八条一項によれば、労働組合法は職員(本件にお
いては、福島県教職員組合)に関しては適用されない旨を定めているから、労働組
合法一条一項の規定も適用ないし準用はなく、また、地方公務員法五五条一項にい
う交渉も、労働組合法において認められた団体交渉権でないことは明らかである。
 そして、原判決の是認した第一審判決判示の被告人の所為のごときは、社会通念
上許された範囲を逸脱するものであつて、正当な行為であるとはいえない。されば、
原判決のこの点に関する判示は、右当裁判所の判例および地方公務員法の各条規の
解釈と同趣旨に出でたものと解することができるから、原判決が憲法二八条、刑法
九五条一項に違反し、労働組合法一条二項の解釈、適用の誤りなどがあるという各
主張は採用できない(なお、刑法九五条にいわゆる暴行とは、公務員の身体に対し
直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいうのであつて、被
告人の本件所為が右の暴行にあたることは明らかである。)。
 弁護人重松蕃の上告趣意第二点は、事実誤認を前提とする単なる法令違反の主張
であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人長田弘の上告趣意第二点について。
 刑訴三二一条一項二号但書および同条項三号但書の規定により検察官または司法
警察職員の面前における供述を録取した書面を証拠とするにあたつて、その供述が
特に信用すべき情況の下に作成されたかどうかの認定は、事実審裁判所の裁量に属
し、右各号但書にいわゆる「前の供述を信用すべき特別の情況」は必ずしも外部的
な特別の事情によらなくても、その供述の内容自体によつて判断をすることができ
ること、ならびに刑訴三二一条一項二号および同条項三号所定の事由がある場合に、
同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨げるものでないことは、当裁判所の判
例とするところである(昭和二六年(あ)一一一一号同年一一月一五日第一小法廷
判決、刑集五巻一二号二三九三頁、昭和二七年(あ)五四九七号同二九年九月一一
日第二小法廷決定、刑集八巻九号一四七九頁、昭和二九年(あ)一一六四号同三〇
年一月一一日第三小法廷判決、刑集九巻一号一四頁、昭和二六年(あ)二三五七号
同二七年四月九日大法廷判決、刑集六巻四号五八四頁)。
 記録によると、所論Aは、第一審第四回、第五回の各公判で証人として尋問され、
被告人も右A証人に対して反対尋問をしており、また、被告人の弁護人は、第一審
第二回公判において、所論Bの証人尋問申請をなしたが、その採否の決定がなされ
る前に同人が死亡したので、検察官は、第一審第八回公判で、Bの司法警察員に対
する供述調書とAの検察官に対する供述調書の証拠調を請求し、第一審は右各書面
の証拠調を行つて、これらを判決の証拠として採用していることが明らかである。
 されば、原判決のこの点に関する判断は、右当裁判所判例の趣旨に徴し何ら違法
はないばかりでなく、被告人に反対尋問の機会を与えないで取り調べた供述を録取
した書類を証拠としても、憲法三七条二項に違反しないことは、すでに当裁判所の
判例が示しているところであるから(昭和二三年(れ)八三三号同二四年五月一八
日大法廷判決、刑集三巻六号七八九頁)、論旨を採るを得ない。
 同弁護人の上告趣意第三点および第四点は、いずれも事実誤認、単なる訴訟法違
反の主張にほかならないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 弁護人片岡政雄の上告趣意第二点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張をいで
ないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三七年一月二三日
     最高裁判所第三小法廷
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
 裁判長裁判官高橋潔は死亡のため署名押印することができない。
            裁判官    河   村   又   介

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