弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鹿又文雄の上告趣意について。
 論旨は原判決は検察官が公訴事実として陳述をしていない原判決判示第二の偽造
公文書行使の罪を認定した違法があり従つて憲法第三一条にも違反するものである
というにある。記録によれば原審第一回公判期日において検察官は第一審判決の事
実摘示に基いて公訴事実の陳述をなし、そこには公文書偽造の事実の摘示はあるが、
偽造公文書行使の事実の記録のないことは所論のとおりである。しかし行使の目的
をもつてする公文書の偽造とその偽造公文書の行使とは刑法第五四条第一項後段の
牽連犯として科刑上の一罪に属するものであるから偽造公文書行使について公訴事
実の陳述がなかつたところで裁判所がこの部分についても審判することを妨げられ
るものでないと解しなければならない。然らば原判決には所論のような違法はない
のである。
 弁護人谷藤七郎、井出甲子太郎の上告趣意について。
 論旨は原審が第一回公判期日を昭和二五年七月一日に、第二回公判期日を同年九
月二九日に開きながら一五日以上開廷しなかつたものとして公判手続の更新をしな
かつたのは旧刑訴第三五三条に違反すると主張し刑訴規則施行規則第三条第三号で
「開廷後引き続き一五日以上開廷しなかつた場合においても必要と認める場合に限
り公判手続を更新すれば足りる」としたのは刑訴施行法第一三条の委任の範囲を超
え憲法に違反するものであると論じておる。しかし右刑訴規則施行規則第三条第三
号の規定が憲法第七七条に定める最高裁判所の権限の範囲内に属しかつ刑訴施行法
第一三条の委任の範囲であることは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二一二七
号同二五年一〇月二五日大法廷判決)とするところであるから論旨は理由がない。
 被告人の上告趣意について。
 被告人の論旨は公文書偽造行使詐欺には関与しておらず、相被告人A等の所為で
あるという事実誤認の主張に帰するが原判決挙示の証拠に照らせば到底採用できな
いし事実誤認の主張は刑訴応急措置法第一三条第二項の規定により上告適法の理由
とならないところである。
 以上の理由により刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条により主文のとおり判決す
る。
 右は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 竹内壽平関与
  昭和二六年六月二九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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