弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士薬師寺一、同水上孝正の上告理由第一点について。
 本件は旧所得税法が適用される事件である。すなわち、本件係争の昭和二四年度
分の所得金額又は所得税額の更正決定に対する不服申立の手続については旧法の規
定によるべきものとされているからである(昭和二五年三月三一日法律七一号附則
二二項参照)。従つて原判決が出訴期間につき新所得税法五一条二項を適用すべき
ものとしたのはあやまりである。しかして、旧所得税法の規定によれば、税務署長
の更正決定(国税局長が自ら更正決定をしたときは同局長の更正決定)に対し異議
あるものは一箇月内に国税局長に審査の請求ができ、この請求に対してなされた国
税局長の審査決定に対しては訴願を提起し、又は裁判所に出訴することができるも
のとされており(旧所得税法四八条ないし五一条、同旧施行規則四七条四八条六五
条ないし六七条参照)、訴願庁は国税局長の直近上級行政庁である国税庁長官であ
り(訴願法二条参照)、訴願期間は六〇日(同法八条参照)、裁判所えの出訴期間
は審査決定のあつたことを知つた日から六箇月である(行政事件訴訟特例法五条参
照)、そして所論再審査請求なる制度は旧法には存在しなかつたのである。そうだ
とすると本件国税局長の審査決定に対しては国税庁長官に訴願は許されたが、同局
長に対し重ねて再審査を請求することは認められていなかつたのであり、従つて右
再審査の請求を以てしては出訴期間の進行を阻止することができなかつたわけであ
る。されば、上告人の昭和二四年度分の所得金額及び所得税額については、昭和二
五年七月一三日付の審査決定が上告人に到達した日、すなわち同年同月二七日から
六箇月の経過により、出訴期間は満了し、もはや訴訟によりこれを争うことのでき
ない状態になつていたものと解するの外はない。此の点に関し原判決は新所得税法
を適用したかきんはあるが、その終局の判断は叙上と同趣旨に帰し正当である。な
お、附言するが、昭和二七年一一月六日付の誤謬訂正決定なるものが初めの昭和二
五年七月一三日付の審査決定を取消して新たに審査決定をやり直した趣旨のもので
あるとすれば、この新たになされた決定に対し決定の日から六箇月内出訴が許され
るわけであるが、原判決の認定によれば前示昭和二七年一一月六日付の決定は初め
の審査決定の誤謬一を訂正し一部を取消した趣旨のものに過ぎないというのである
から、これにより一旦徒過されていた出訴期間が改めて進行を関始するいわれのな
いことは原審の判断するとおりであり、また後になされた誤謬決定のみを捉えてそ
の取消を求めることは訴の利益を欠くものであることも原審の判示するとおりであ
る。
 以上の次第で所論は違憲をいう点をも含めて(この点は前提を欠く)すべて理由
がなく採用できない。
 同第二点について。
 しかし、原判決はその挙示の証拠によつて、本件課税は所論のいうように見込課
税ではなく、その内容に重大且つ明白なかしが存在するものとは認められないと判
断しているのであり右証拠に照合すればその判断の過程に所論違法のかどあるを見
出し難い。所論はひつきよう原審の事実認定並びに証拠の取捨選択に関する専権行
使を非難するに帰するものであつて、採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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