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平成17年(ネ)第10119号特許権侵害差止等請求控訴事件
平成19年5月15日判決言渡,平成19年2月22日口頭弁論終結
(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第1394号,同年(ワ)第3681号,平成17年9
月22日判決)
判決
控訴人兼被控訴人(原審原告・原審反訴被告)
株式会社アーランド
(以下「原審原告」という)。
訴訟代理人弁護士東谷宏幸
控訴人兼被控訴人(原審被告・原審反訴原告)
カースル産業株式会社
(以下「原審被告カースル産業」という)。
控訴人兼被控訴人(原審被告・原審反訴原告)
カースル株式会社
(以下「原審被告カースル」という)。
主文
1原判決中,原審原告敗訴部分を次のとおり変更する。
()原審原告の本訴請求を棄却する。1
()原審被告カースル産業及び原審被告カースルの,原審原告が,特許第352
97700号の特許権に基づいて,原審被告カースル産業及び原審被告カースルに
対し,原判決別紙物件目録2記載の製品の製造,販売の差止めを求める権利を有し
ないことの確認に係る訴えを却下する。
()原審原告は,原審被告カースル産業及び原審被告カースルが原判決別紙物3
件目録2記載の製品を製造販売することが,原審原告の前項記載の特許権を侵害す
る旨を,原審被告カースル産業及び原審被告カースルの取引先その他の第三者に告
知し,流布してはならない。
()原審被告カースル産業及び原審被告カースルのその余の反訴請求を棄却す4
る。
2原審被告カースル産業及び原審被告カースルの控訴及び当審において拡張し
た請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,第1,第2審を通じ,これを3分し,その1を原審被告カース
ル産業及び原審被告カースルの連帯負担とし,その余を原審原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原審原告
()ア原判決中,原審原告の敗訴部分を取り消す。1
イ原審被告カースル産業及び原審被告カースル(以下,両者を併せて「原審
被告ら」という)は,原判決別紙物件目録1記載のレンジフードフィルタを製造。
し,販売し,販売のために宣伝,広告をしてはならない。
ウ原審被告らは,その所有する同目録1記載のレンジフードフィルタを廃棄
せよ。
エ原審被告らは原審原告に対し,連帯して1億円及びこれに対する,原審被
,,告カースルは平成17年3月19日から原審被告カースル産業は同月23日から
各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ原審被告らの反訴請求をいずれも棄却する。
()原審被告らの控訴及び当審における追加的請求をいずれも棄却する。2
()訴訟費用は,第1,第2審とも,原審被告らの負担とする。3
()()のエの部分につき仮執行の宣言41
2原審被告ら
()原判決を次のとおり変更する。1
ア原審原告が,特許第3597700号の特許権に基づいて,原審被告らに
対し,原判決別紙物件目録2記載の製品の製造,販売の差止めを求める権利を有し
ないことを確認する。
イ原審原告は,原審被告らが原判決別紙物件目録2記載の製品を製造販売す
ることが,原審原告の前項記載の特許権を侵害する旨を,原審被告らの取引先その
他の第三者に告知し,流布してはならない。
ウ原審原告は原審被告らに対し,読売新聞及び朝日新聞の各関東版及び関西
版に,別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告(表題並びに原審原告及び原審被告らの各
商号は4号活字,その余の部分は8ポイント活字を使用)を各1回ずつ掲載せよ。
エ原審原告は,原審被告らに対し,1億4748万0130円及びこれに対
する平成17年10月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ原審原告の請求を棄却する。
()原審原告の控訴を棄却する。2
()訴訟費用は第1,第2審とも原審原告の負担とする。3
()()のエの部分につき仮執行の宣言41
(()のエの請求中,原審原告に対し,3000万円を超える部分の金員及びこれ1
に対する平成17年10月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払
を求める部分は,当審において拡張した請求である)。
第2事案の概要
原審原告の本訴請求は「レンジフードのフィルタ装置」に関する特許権(以下,
「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という)を有する。
原審原告が,原審被告らに対し,原審被告らが,原判決別紙物件目録1記載のレン
ジフードフィルタ(以下「本件差止対象製品」という)を製造販売して,本件特。
許権を侵害していると主張して(なお,原審原告は,原審被告カースル産業が製造
し,原審被告カースルが販売する原判決別紙物件目録2記載の製品(以下「被告製
品」という)が,本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1に記載された発明。
(以下「本件発明」という)の技術的範囲に属し,本件差止対象製品に該当する。
。),,,,,と主張する特許法100条1項2項民法709条719条1項に基づき
①本件差止対象製品の製造販売及び販売のための宣伝広告の差止め,②本件差止対
象製品の廃棄,③原審原告に生じたとする損害額1億0400万円の内金1億円及
びこれに対する各原審被告に対する訴状送達日の翌日から支払い済みまで年5分の
割合による遅延損害金の連帯支払を,それぞれ求める事案である。
原審被告らの反訴請求は,①被告製品に対する,本件特許権に基づく製造販売差
止請求権の不存在確認を求めるとともに,②原審原告が,原審被告らによる被告製
品の製造販売が本件特許権の侵害である旨の虚偽の事実を告知,流布しており,そ
れが不正競争防止法2条1項14号に該当する不正競争行為であるとして,同法3
,,,,,,条1項4条14条に基づき<ア>上記告知流布行為の差止め<イ>謝罪広告
<ウ>原審原告らの損害額とする1億4748万0130円及びこれに対する平成1
7年10月1日から支払い済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,それ
ぞれ求める事案である。
原判決は,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできず,
,,,,また本件特許権は無効審判において無効とされるべきものと認められさらに
原審原告は,過失により,原審被告らによる被告製品の製造販売が本件特許権の侵
害である旨の虚偽の事実を告知,流布していると認められるとして,原審原告の本
訴請求を全部棄却し,また,原審被告らの反訴請求のうち,①被告製品に対する,
本件特許権に基づく製造販売差止請求権の不存在確認請求,②原審原告による上記
虚偽の事実の告知,流布行為の差止請求,③損害賠償請求(ただし,原審被告カー
スル産業につき100万7926円,原審被告カースルにつき25万円及びそれぞ
れ平成17年5月10日から支払い済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払
の限度で)を,それぞれ認容し,その余の請求を棄却した。
1前提となる事実(当事者間に争いがない)。
()原審原告は,プラスチック製家庭用品の製造販売等を業とする株式会社で1
ある。
原審被告カースルは,プラスチック製日用雑貨の製造販売,家庭用雑貨製品の製
造販売等を業とする株式会社,原審被告カースル産業は,プラスチック製品の製造
販売,家庭用雑貨製品の製造販売等を業とする株式会社である。
()原審原告は,下記特許権(本件特許権)を有している。2
発明の名称「レンジフードのフィルタ装置」
出願日平成10年4月27日
登録日平成16年9月17日
特許番号特許第3597700号
特許請求の範囲
「請求項1】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金【
属製フィルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記金属製フィルタのフロント
面をカバー可能なフィルタと,このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィル
タを,前記フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状
伸縮性紐状体とで構成されており,前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に
形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿
入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能であり,前記フィ
ルタは,不織布で構成されているとともに,金属製フィルタのフロント面を被包可
能なサイズを有し,かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形
成されており,金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面の
フィルタに緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取
り付け,レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置。
【請求項2】レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設され,かつ剛性
で方形プレート状に形成された複数の金属製フィルタ要素で構成された金属製フィ
ルタを覆うためのフィルタ装置であって,前記複数の金属製フィルタ要素の全体又
は個別の金属製フィルタ要素を被包可能なフィルタと,このフィルタの周縁部を収
縮可能な紐状体とで構成されており,前記紐状体は,収縮率5∼60%の伸縮性紐
状体で形成されている請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】金属製フィルタ又はフィルタ要素のフロント面よりもサイズが大き
く,平面方形状のフィルタのうち4つのコーナー部と各辺に対応する周縁部の少な
,,くとも一箇所との挿通孔に伸縮性紐状体が挿通しておりフィルタの取付状態では
金属製フィルタ又はフィルタ要素の裏面において伸縮性紐状体を収縮させ,前記フ
ロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させる請求項1又は2記載のフィル
タ装置」。
()本件特許に係る請求項1記載の発明(本件発明)を,構成要件に分説する3
と,以下のとおりである。
①レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィル
タを覆うためのフィルタ装置であって,
②前記金属製フィルタのフロント面をカバー可能なフィルタと,
③このフィルタの周縁部に取り付けられ,かつフィルタを,前記フロント面で
緊張させて前記金属製フィルタに取付けるためのリング状伸縮性紐状体とで構成さ
れており,
④前記金属製フィルタは剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上
端部が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気
口の下部に形成された溝に挿入可能であり,
⑤前記フィルタは,不織布で構成されているとともに,
⑥金属製フィルタのフロント面を被包可能なサイズを有し,
⑦かつ前記金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成されてお
り,
⑧金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタ
に緊張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け,
レンジフードの換気口に装着できるフィルタ装置。
()原審被告カースル産業は,被告製品を製造販売し,原審被告カースルは,4
被告製品を販売している被告製品は被告らの共通の工場で製造されている原。,。(
審原告は,原審原告らが共同で被告製品を製造していると主張する)。
()被告製品は,本件発明の構成要件⑤,⑥を充足する。5
()原審原告は,被告製品が,本件発明の技術的範囲に属し,原審被告らによ6
るその製造販売行為が,本件特許権を侵害すると主張する。
()原審原告は,平成16年10月12日ころ,日本生活協同組合連合会(日7
本生協連)に対し「書類送付のご案内」と題し「キャップ式フィルターの特許証,,
及び書類のコピーを同封しております。当社の主力商品でありますので,是非内容
をご検討ください」との文言のある書面に,本件特許に係る特許証及び本件特許。
に係る公開公報(特開平11−300130号。特許請求の範囲の請求項1の記載
は「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィル,
タを覆うためのフィルタ装置であって,前記金属製フィルタのフロント面をカバー
可能なフィルタと,このフィルタを,前記フロント面で緊張させて前記金属製フィ
ルタに取付けるための紐状体とで構成されているフィルタ装置」というものであ。
る)を同封して送付し,また,平成17年3月16日ころ,コープ九州事業連合。
に対し「先日・・・キャップ式フィルターの特許をご案内させていただきました,
が,当社のコピー商品がコープ九州様の・・・掲載されていました「販売を中。」,
止していただけない販売会社にも訴えを起こすことも考えております」等の文言。
のある書面を送付した。
2争点
()被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか。1
原審原告は,原審被告らに対し,本件差止対象製品の製造販売等の差止め,本件
差止対象製品の廃棄,及び,原審被告らが本件差止対象製品を製造販売したことに
基づく損害賠償の請求をした上,原審被告らが本件差止対象製品を共同で製造し,
各自の名義で販売していると主張し,また,被告製品も本件差止対象製品に該当す
ると主張するが,被告製品以外に,原審被告らが製造販売する本件差止対象製品が
存在することについては,原審被告らが争うにもかかわらず,何ら具体的な主張及
び立証がない。
そうすると,原審原告の上記各請求のうち,被告製品以外の本件差止対象製品を
対象とし,又は被告製品以外の本件差止対象製品の製造販売を原因とする部分は,
直ちに理由がないことに帰することになるから,被告製品が本件発明の技術的範囲
に属するかどうか,具体的には,下記の点が本件の争点となる。
ア被告製品が,本件発明の構成要件①∼④,⑦,⑧を充足するか(以下「争点
1のア」という。。)
イ仮に,被告製品が,本件発明の構成要件⑦を充足しないとしても,被告製品
は,本件発明と均等であるとして,本件発明の技術的範囲に属するか(以下「争点
1のイ」という。。)
()本件発明に係る特許は,無効審判において無効とされるべきものか(以下2
「争点2」という。。)
()被告製品の製造販売に関し,原審被告らが先使用権を有するということが3
できるか(以下「争点3」という。。)
()仮に,原審被告らによる本件特許権侵害があったとした場合に,これによ4
り原審原告に生じた損害はいくらか(以下「争点4」という。。)
()原審原告が,原審被告らによる被告製品の製造販売が本件特許権の侵害で5
ある旨の虚偽の事実を告知,流布するという,不正競争防止法2条1項14号に該
当する不正競争行為をしたか。また,これについて,原審原告に故意又は過失があ
るか(以下「争点5」という。。)
()仮に,原審原告に,故意又は過失に基づく不正競争防止法2条1項14号6
に該当する不正競争行為があったとした場合に,これにより原審被告らに生じた損
害はいくらか(以下「争点6」という。。)
()仮に,原審原告に,故意又は過失に基づく不正競争防止法2条1項14号7
に該当する不正競争行為があったとした場合に,原審被告らの信用回復のための措
置として,謝罪広告を行うことを要するか(以下「争点7」という。。)
第3争点に関する当事者双方の主張
(,,,。)1争点1のア被告製品が本件発明の構成要件①∼④⑦⑧を充足するか
について
(原審原告の主張)
被告製品は,本件発明の構成要件①∼④,⑦,⑧を充足するものである。原審被
告らは,各構成要件を充足しないとして,種々の主張をするが,以下のとおり,失
当である。
()構成要件①,②について1
原審被告らは,被告製品には,レンジフード用の金属製フィルタを覆う以外に,
他の用途もあるから,構成要件①,②を充足しないと主張するが「他の用途がな,
い」ことは本件発明の構成要件ではない。
()構成要件③について2
原審被告らは,被告製品の周縁部に取り付けられたゴム糸が線状であって「リ,
ング状」ではないと主張するが,構成要件③の「リング状伸縮性紐状体」との規定
は「ゴム」そのものが「リング状」であることを要求するものではなく,ゴムを,
縫いつけた後が全体としてリング状をしており,収縮性のある紐状の形状をしてい
れば足りるものである。そして,被告製品は,ゴム糸がフィルタの周囲を一周する
ように縫いつけているから,その形状はリング状であり,構成要件③を充足する。
()構成要件④について3
原審被告らは,被告製品が,上下端部を排気口に形成された溝やスリットに挿入
可能である金属製フィルタに取り付けるほかに,溝やスリットのない金属製フィル
タに取り付けることもできるし,他の用途もあるとして,構成要件④を充足しない
と主張するが「溝やスリットに挿入可能である金属製フィルタ以外のフィルタに,
取り付けることができないこと」は,本件発明の構成要件ではないから「上端部,
が排気口の上部に形成された溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の
下部に形成された溝に挿入可能」である金属製フィルタに取り付けることができる
以上,構成要件④を充足する。
()構成要件⑦について4
原審被告らは,金属製フィルタの縦,横の寸法の組合せは,92種類あり,被告
製品は,これらの金属製フィルタの大半と「相似形状」ではないと主張する。
しかしながら「相似」との語句は「一つの図形が一様に拡大又は縮小すると他,,
の図形と完全に重ね合わせられること」という数学的用語法のほかに「互いに似,
ていることという通常の用語法が広く認識されており本件特許に係る明細書甲」,(
第1号証。以下「本件明細書」という)には,数学的分野における限定された用。
語法に従って「相似」との語句を使用することが記載又は示唆されているわけでは
ないから,構成要件⑦に関しても,通常の用語法に従い「互いに似ていること」,
,「」。,という意味で相似との語句が用いられているというべきであるそうすると
被告製品のフィルタは,金属製フィルタと同様に方形状をしているから,両者は,
「相似形状」であるというべきであり,構成要件⑦を充足する。なお,原審被告ら
は,被告製品のフィルタは四隅が丸くなっているから,平面方形状ではないと主張
するが,原審被告らの主張する四隅とは,被告製品のフィルタ全体から見て局所的
な箇所にすぎず,フィルタの角辺は,それぞれその約9割が直線により形成されて
いるのであるから,全体として,方形状といって何ら差し支えないものである。
()構成要件⑧について5
,,,,原審被告らは被告製品は微力なゴム糸を使用し金属製フィルタの裏面から
フィルタをフロント面で緊張させるような緊張力又は牽引力を作用させることは不
可能であると主張するが,被告製品のフィルタが,金属製フィルタに被せるだけで
外れないのは,ゴム糸の収縮力により緊張しているからであり,構成要件⑧を充足
する。
(原審被告らの主張)
()構成要件①,②について1
被告製品は「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設されている金,
属製フィルタを覆う」ことも可能であるが,他の用途もあるから,構成要件①,②
を充足しない。
()構成要件③について2
「」,「」,構成要件③のリング状伸縮性紐状体はリング状と規定されている以上
切れ目のない輪でなければならないが,被告製品の周縁部に取り付けられたゴム糸
は,線状であって「リング状」ではない。,
()構成要件④について3
被告製品は,構成要件④に係る「上端部が排気口の上部に形成された溝又はスリ
ットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能」である
「剛性で方形プレート状に形成されている」金属製フィルタに取り付けることも可
能であるが,溝やスリットのない構造の金属製フィルタに取り付けることもできる
し,他の物の各種カバーとしての用途もあるから,構成要件④を充足しない。
()構成要件⑦について4
構成要件⑦は,フィルタが,金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に
形成されていることを規定する。しかしながら,金属製フィルタの縦,横の寸法の
組合せは,92種類あり,被告製品は,これらの金属製フィルタの大半と「相似形
状」の関係にはない。のみならず,被告製品のフィルタは,四隅が丸くなっている
から,平面方形状に形成されているものでもない。したがって,被告製品は,構成
要件⑦を充足しない。
()構成要件⑧について5
構成要件⑧により,本件発明のフィルタは,紐状体の収縮による緊張力又は牽引
力が金属製フィルタの裏面から作用することにより,フロント面で緊張し,金属フ
ィルタに密着する(緊張する)ことが要求される。しかしながら,被告製品は,微
力なゴム糸を使用しているので,金属製フィルタの裏面から,フィルタをフロント
面で緊張させ,金属フィルタに密着させるような緊張力又は牽引力を作用させるこ
とは不可能である。
(,,,2争点1のイ仮に被告製品が本件発明の構成要件⑦を充足しないとしても
被告製品は,本件発明と均等であるとして,本件発明の技術的範囲に属するか)。
について
(原審原告の主張)
,,,,仮に被告製品が本件発明の構成要件⑦を充足しないとしても以下のとおり
被告製品は,本件発明と均等であるものとして,本件発明の技術的範囲に属するも
のである。
()本件発明は,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け,レンジフード1
のフード内の排気口に着脱可能に配設されている金属製フィルタの裏面において,
フィルタ周縁部の伸縮性紐状体の収縮により,フロント面のフィルタに緊張力又は
牽引力を作用させることを特徴としており,フィルタと金属製フィルタとの形状が
数学的意味においてまで相似するかどうかということや,フィルタ四隅の角部の微
細な形状は,本件発明の本質的部分ではない。
()本件発明において,フィルタ四隅の局所的な角部に丸みをもたせたり,フ2
ィルタを,方形状ではあるが,金属製フィルタと数学的な意味で相似形状ではない
フィルタに置き換えたとしても,金属製フィルタの裏面において,フィルタ周縁部
の伸縮性紐状体の収縮により,フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用さ
せるという本件発明の目的を達成することができ,同一の作用効果を奏するもので
ある。
()フィルタ四隅の局所的な角部に丸みをもたせたり,フィルタを,方形状で3
はあるが,金属製フィルタと数学的な意味で相似形状ではないフィルタに置き換え
ることは,被告製品の製造時において,当業者であれば,製品成形の過程において
容易に想到することができたものである。
()被告製品は,上記⑦以外の本件発明の構成要件を充足するものである。4
したがって,被告製品は,本件発明と均等であるものというべきである。
(原審被告らの主張)
原審原告の主張は争う。
(,。)3争点2本件発明に係る特許は無効審判において無効とされるべきものか
について
(原審被告らの主張)
本件発明に係る特許は,以下のとおり,無効審判において無効とされるべきもの
である。
()新規性の欠如1
ア本件発明は「工房DEKO」が平成2年出願の実用新案登録第20417,
61号考案を商品化し,一般的に広く販売している商品である(乙第58号証。)
,,,。また原審被告らは被告製品を平成9年11月から一般に製造販売している
さらに,原審原告は,本件発明の実施品を平成元年から,一般に製造販売してい
る。
したがって,いずれにせよ,本件発明は,本件特許出願前に日本国内において公
然実施をされた発明である。
イ本件発明は,実願昭60−146162号(実開昭62−56117号)の
マイクロフィルム(乙第37号証。以下「審判甲第1号証刊行物」という)に記。
載された発明である。
()進歩性の欠如2
本件発明は,下記各刊行物にそれぞれ記載された発明に基づいて,当業者が容易
に発明をすることができたものであるから,進歩性がない。
ア審判甲第1号証刊行物
(。「」イ実公平6−11056号公報乙第38号証以下審判甲第2号証刊行物
という)。
ウ実願平3−31109号(実開平4−118119号公報)のCD−ROM
(乙第39号証。以下「審判甲第3号証刊行物」という)。
エ実願昭55−127345号(実開昭57−50631号公報)のマイクロ
フィルム(乙第40号証。以下「審判甲第4号証刊行物」という)。
オ実願平成1−69332号(実開平3−10136号公報)のマイクロフィ
ルム(乙第29号証。以下「審判甲第5号証刊行物」という)。
カ実願昭54−127351号(実開昭56−46728号公報)のマイクロ
フィルム(乙第41号証。以下「審判甲第6号証刊行物」という)。
キ実願昭57−9656号(実開昭58−111821号公報)のマイクロフ
ィルム(乙第42号証。以下「審判甲第7号証刊行物」という)。
ク実公昭54−45019号公報(乙第43号証。以下「審判甲第8号証刊行
物」という)。
(。「」ケ特開平6−137622号公報乙第45号証以下乙第45号証刊行物
という)。
()特許法36条違背3
本件明細書は,以下のとおり,特許法36条(平成14年法律第24号による改
正前のもの。以下,同条につき同じ)に違背するものである。。
ア本件発明は,不織布フィルタを金属製フィルタに密着(緊張)させるもので
あるが,伸縮性に乏しい不織布により作成したフィルタを,どのようにして金属製
フィルタに密着(緊張)させるかについて,本件明細書の発明の詳細な説明に何ら
の記載もなく,当業者は,本件発明の実施をすることができないから,本件明細書
は,同条4項に違背するものである。
イ本件明細書の発明の詳細な説明には「フィルタが金属製フィルタ又はその,
要素から遊離するのを防止できる(段落【)と記載されているが,溝,スリ」】0010
ットに挿入する方式の金属製フィルタは,通常,フロント面側に把手が設けられて
いて,そのままではフィルタを金属製フィルタから遊離させずに取り付けることは
できない。しかるに,本件明細書の発明の詳細な説明には,どのようにしてフィル
タを金属製フィルタから遊離させずに取り付けるかについて,何らの記載もなく,
当業者は,本件発明の実施をすることができないから,本件明細書は,同条4項に
違背するものである。
ウ本件明細書の特許請求の範囲の請求項1には「前記金属製フィルタに対応,
した相似形状の平面方形状に形成されており」との規定があるが「相似形状の平,,
」,,,面方形状に形成されているのはフィルタであるのかフィルタ装置であるのか
換言すれば,ゴムひもを付ける前の不織布であるのか,付けた後の不織布であるの
かが明確ではない。したがって,本件明細書は,特許請求の範囲が不明確であり,
36条6項に違背するものである。
(原審原告の主張)
本件発明に係る特許は,無効審判において無効とされるべきものではない。
()「新規性の欠如」との主張に対し1
原審被告らの主張は争う。
「工房DEKO」が商品化し,販売している旨,原審被告らが主張する商品(乙
第58号証)は,その販売時期が不明であり,また,その形状や構成も明確とはい
い難いが,伸縮自在ニットなるものを,金属製フィルタの角に位置させて取り付け
るものであって,本件発明のように,リング状伸縮性紐状体を金属製フィルタの裏
側に位置するように取り付けるものではない。そのため,伸縮自在ニットの伸縮性
はニット部を金属製フィルタ角部に止める作用しかしておらず,フィルタを金属製
フィルタに緊張させる作用がない。
また,原審被告らが,平成9年11月から製造販売していたとするものが,本件
発明と同一であるか否か,明らかではない。
さらに,原審原告が平成元年から製造販売しているのは,換気扇用のフィルタで
あって,金属製フィルタに被せる構成のものではない。
審判甲第1号証刊行物記載の発明は,ナイロン生地を筒織りにし,それを丸形や
楕円形に裁断しているため,本件発明の「ガードと相似形状の平面方形状の不織布
フィルタ」を予測することができない。
したがって,本件発明に係る特許に新規性がないとする原審被告らの主張は失当
である。
()「進歩性の欠如」との主張に対し2
原審被告らの主張は争う。
なお,原判決は,本件発明が,審判甲第1∼第3号証刊行物及び審判甲第5号証
刊行物にそれぞれ記載された発明(以下,審判甲第5号証刊行物に記載された発明
を「引用発明」という)に基づき,容易に発明することができたものであると判。
断したが,以下のとおり,誤りである。
すなわち,審判甲第5号証刊行物には「フィルタを,前記フロント面で緊張さ,
せて前記換気扇に取り付ける」との構成及び「換気扇の裏面での紐状体の収縮によ
り,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用させ」るとの構成は,記
載されていない。原判決は,審判甲第5号証刊行物にこれらの構成が記載されてい
るとして,引用発明と本件発明との一致点及び相違点の認定を行った誤りがある。
,,,したがって本件発明と引用発明との対比においては原判決の挙げた相違点1
2のほか,少なくとも「本件発明は,フィルタを,金属製フィルタのフロント面,
で緊張させて,金属製フィルタに取り付けるものであるのに対し,引用発明は,こ
」(「」。),「,のような構成を有していない点以下相違点3という及び本件発明は
金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,金属製フィルタのフロント面のフ
ィルタに緊張力又は牽引力を作用させるものであるのに対し,引用発明は,このよ
うな構成を有していない点(以下「相違点4」という)において相違するもので」。
あるところ,当業者が,これらの相違点を容易に想到し得るものではない。
すなわち,仮に,相違点1,2において,換気扇の排気口を覆うためのフィルタ
装置である引用発明を,レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配置されて
いる金属製フィルタを覆う用途に転用することを容易に想到し得たとしても,それ
は「用途」において転用可能であることに想到し得たということにすぎず,この,
ような転用によって新たに生ずる作用効果についてまで,当業者が容易に想到でき
るということにはならない。本件発明は,相違点3,4に係る構成を有することに
より,フィルタと金属製フィルタとの間に大きさの違いがあっても,フィルタは,
その大きさと金属製フィルタの大きさとの差異に応じて,金属製フィルタの裏面に
回り込み,金属製フィルタのフロント面を弛みなく覆うことができるという顕著な
作用効果を奏するものであるところ,このような作用効果は,裏面を想定できず,
フィルタを換気扇の側面や換気扇の前面についた枠体の側面で係止する引用発明に
おける技術思想をもっては,全く想定し得ないものである。したがって,本件発明
は,審判甲第1∼第3号証刊行物及び審判甲第5号証刊行物から,予測し得ない顕
著な作用効果を奏するものであり,これらの刊行物に記載された発明に基づいて容
易に発明をすることができたとすることはできない。
()「特許法36条違背」との主張に対し3
原審被告らの主張は争う。
ア「緊張」とは,物が完全に張りつめた状態だけを指すのではなく,緩んだ状
態から引っ張られれば,完全に張りつめた状態までに至らなくとも,緩んだ状態と
の比較で「緊張している」ということができる。本件発明において,金属製フィル
タに被せられたフィルタが抜け落ちないのは,収縮性紐状体の収縮力によってフィ
ルタが「緊張」しているからにほかならない。
イ金属製フィルタの把手の突起部分が金属製フィルタの一部をなしているので
あれば,突起付近については把手の突起に緊密であれば,本件発明の構成を満たし
ている。
ウ本件発明では,金属製フィルタが方形であって,フィルタ部材である不織布
の裁断形状が方形であることから,両者の関係を「相似形状」と記載しているので
ある。
4争点3(被告製品の製造販売に関し,原審被告らが先使用権を有するというこ
とができるか)について。
(原審被告らの主張)
原審被告らは,平成9年11月から被告製品(レンジフード用キャップ式フィル
タ「F−7686レンジフードフィルタ)を製造販売している。被告製品が,」
本件発明の技術的範囲に属するのなら,被告らには先使用権がある。
(原審原告の主張)
原審被告らの主張は争う。
先使用の根拠として,原審被告らが提出する乙第62ないし第64号証は単なる
帳簿であり,乙第65,第66号証は販売店の単なる証明であって,いずれも商品
販売の客観的裏付けにならないばかりか,仮に,原審被告らが,何らかの商品を販
,,。売していたとしてもそれがどのような構成のものであったかは明らかではない
5争点4(仮に,原審被告らによる本件特許権侵害があったとした場合に,これ
により原審原告に生じた損害はいくらか)について。
(原審原告の主張)
原審原告は,平成10年10月ころから,本件発明の実施品であるレンジフード
フィルタの製造販売を開始し,販売開始後3年間は極めて順調な売上増を達成して
いた。ところが,平成13年ころから,原審被告らが本件差止対象製品の製造を始
め,そのころから,原審被告ら各自の名義で全国の生活協同組合(コープ)を中心
に販売を開始した。このため,原審原告の製品は,売上高が頭打ちないし減少とな
り,値下げすることも余儀なくされた。
この売上減少(増加するはずであった売上増加見込み数の減少も含む)及び値。
下げによる損害は,損害額1億0400万円を下らない。
(原審被告らの主張)
原審原告の主張は争う。
6争点5(原審原告が,原審被告らによる被告製品の製造販売が本件特許権の侵
害である旨の虚偽の事実を告知,流布するという,不正競争防止法2条1項14号
に該当する不正競争行為をしたか。また,これについて,原審原告に故意又は過失
があるか)について。
(原審被告らの主張)
本件特許権は無効であり,仮に有効であっても,被告製品は特許権侵害にはなら
ない。
ところが,原審原告は,本件特許登録後の平成16年10月に日本生活協同組合
連合会に対し(乙第28号証,同年11月にコープ九州事業連合に対し(乙第2)
),,,,(),6号証またそのころ藤栄大阪支店を介して千趣会に対し乙第50号証
平成17年4月にコープきんき事業連合に対し(乙第53号証の1,それぞれ,)
被告製品が,本件特許権を侵害するかのような記載のある書面を送付して,虚偽の
事実の告知,流布を行った。
しかも,原審原告は,日本生活協同組合連合会に対する書面に,本件特許に係る
特許証と公開公報を添付し,本件特許に係る権利範囲より広い公開公報記載の特許
請求の範囲により,本件特許がなされたかのように装ったり,コープ九州事業連合
に対する書面には,販売会社に対する訴えを提起する旨記載して脅迫したりした。
したがって,原審原告の上記行為が,不正競争防止法2条1項14号に該当する
不正競争行為に当たり,かつ,これについて,原審原告に故意又は過失があること
は明らかである。
(原審原告の主張)
原審被告らの主張は争う。
7争点6(仮に,原審原告に,故意又は過失に基づく不正競争防止法2条1項1
4号に該当する不正競争行為があったとした場合に,これにより原審被告らに生じ
た損害はいくらか)について。
(原審被告らの主張)
上記6(争点5)において主張した原審原告の不正競争行為により,原審被告ら
は,以下の損害を被った(原審被告らが被った損害割合は各50%である。。)
()平成16年11月から平成17年12月までの期間中における売上減少増1(
加するはずであった売上増加見込み数の減少も含む)に伴う逸失利益額1億0。
689万4000円
()本件訴訟並びに上記6(争点5)において主張した原審原告の不正競争行2
為に起因する無効審判請求,判定請求等に係る弁護士・弁理士費用635万61
30円(今後の追加支出見込額300万円を含む)。
()本件訴訟への対応を専属業務とした従業員5名に係る給与相当額1923
3万円
()取引先への損害填補見込額1500万円4
原審被告らの販売先である株式会社後藤は,通信販売会社である千趣会に被告製
品を販売していたが,上記6(争点5)において主張した原審原告の不正競争行為
により,千趣会は,被告製品を通信販売カタログから抹消し,これがため売上額が
減少した株式会社後藤は,原審被告らに,損害の填補を要求している。また,同様
の事態は,今後も生ずるものと考えられる。
()合計額1億4748万0130円5
(原審原告の主張)
原審被告らの主張は争う。
8争点7(仮に,原審原告に,故意又は過失に基づく不正競争防止法2条1項1
4号に該当する不正競争行為があったとした場合に,原審被告らの信用回復のため
の措置として,謝罪広告を行うことを要するか)について。
(原審被告らの主張)
原審原告の不正競争行為の内容にかんがみて,原審被告らの信用回復のための措
置として,謝罪広告を行うことを要する。
(原審原告)
原審被告らの主張は争う。
第4当裁判所の判断
(,。)1争点2本件発明に係る特許は無効審判において無効とされるべきものか
について
()争点2の()の主張(新規性の欠如)について11
ア乙第58号証によれば「工房DEKO」が「換気扇用フィルターすっぽ,
りポイ」との名称の換気扇用フィルタを販売していたこと,当該フィルタが,不織
布より成るフィルタとその周縁部に取り付けた「伸縮性自在ニット」なるものによ
って構成されていることを認めることができるが,その販売時期を明らかにする証
拠がないのみならず,当該換気扇フィルタの構成が,本件発明の構成要件⑧を備え
ていたことを認めるに足りる証拠もないから,本件発明が当該換気扇フィルタと同
一であると認めることもできない。
イ原審被告らは,被告製品を平成9年11月から,一般に製造販売している旨
主張するが,被告製品が,本件特許の出願日である平成10年4月27日以前に,
一般に製造販売されていたと認めるに足りる的確な証拠はない。
ウ原審被告らは,原審原告が,本件発明の実施品を平成元年から,一般に製造
,,販売している旨主張するが本件特許の出願日である平成10年4月27日以前に
原審原告が製造販売していた商品が,本件発明の各構成要件を充足し,その技術的
範囲に属するものであったことを認めるに足りる証拠はない。
エ原審被告らは,本件発明が,審判甲第1号証刊行物に記載された発明である
と主張する。
しかしながら,審判甲第1号証刊行物には「換気扇及びフードを通過する油分,
及びチリを,手前でくいとめるもので,ウーリー加工をした細いナイロン生地()1
を筒織りにし,それを丸及び楕円形に裁断し,廻りにゴム()を取付け伸縮自由と2
したもので,丸及び正方形,長方形のあらゆる型のカバーに使用する事を可能にし
た,換気扇及びキッチンフードのフィルター(実用新案登録請求の範囲)の考案」
が記載されているものの,金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成
されたフィルタの記載はなく(本件発明の「相似形状」の意義については後に検討
するが,当該検討を経た後の「金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状」
に形成されたフィルタの記載は,審判甲第1号証刊行物にない,したがって,審。)
判甲第1号証刊行物に記載されたものは,少なくとも,本件発明の構成要件⑦を備
えているものということはできない。
オ以上のとおり,本件発明が新規性を欠くとの原審被告らの主張は,採用する
ことができない。
()争点2の()の主張(進歩性の欠如)について22
ア審判甲第5号証刊行物の記載事項
審判甲第5号証刊行物には,以下の事項が記載されている。
(ア)「換気口に取付けられる換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,フィル
タと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有
することを特徴とする換気扇カバー(実用新案登録請求の範囲)。」
(イ)「産業上の利用分野]本考案は,使い捨て方式で換気口に取付け可能な[
換気扇カバーとその取付構造に関する(1頁15∼17行)。」
(ウ)「従来の技術と考案が解決しようとする課題]従来,塵芥や異物の流入[
により,羽根の損傷,モータの負荷の増大や故障を防止するため,室内等の換気口
に換気扇カバーが装着されている。この換気扇カバーは,通常,方形状の換気口に
適合した所定寸法の枠体と,該枠体に取付けられたフィルタとで構成されている。
しかしながら,換気扇が取付けられた換気口は,効率的に換気するため,換気部
の容積や換気量等に応じて種々の大きさに設定されている。例えば,家庭の台所用
換気扇,レンジフード用換気扇や業務用換気扇等では,自ずから換気量が異なり,
換気量に応じた大きさの換気口が必要である。従って,上記構造の換気扇カバーで
は,大きさの異なる換気口に対処できず,多種類の換気扇カバーを用意する必要が
ある(1頁18行∼2頁13行)。」
(エ)「本考案の目的は,上記問題点に鑑みてなされたものであり,換気口の大き
さが異なっていても,容易に取付けることができる安価な換気扇カバーを提供する
ことにある。また本考案の他の目的は,換気扇の前面が遮蔽されているか否かに
拘わらず,柔軟なフィルタであっても外観が良好で換気扇へ吸込まれることのない
換気扇カバーの取付構造を提供することにある(4頁1∼8行)。」
(オ)「課題を解決するための手段及び作用]本考案は,換気口に取付けられ[
る換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,フィルタと,該フィルタの周縁部に
設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な紐状体とを有する換気扇カバーにより,上
記課題を可決するものである。上記構成の換気扇カバーによれば,フィルタの周
縁部には,該周縁部を収縮可能な紐状体が設けられているため,換気口を換気扇カ
バーで被冠し・・・紐状体を収縮性材料で形成することにより,換気口の大きさ,
が異なっていても換気扇カバーを容易に取付けることができる(4頁9∼末行)。」
(カ)「実施例・・・換気扇カバーは,フィルタ(1)と,該フィルタ(1)の[]
周縁部に設けられた伸縮性紐状体(2)とを有し・・・フィルタ(1)は,その中
央部を余した周縁部が全周に亘り内方へ折曲され,開口部(4)を有する袋状に形
成されている。なお,フィルタ(1)は,通気性を有する材料で形成されていれば
よいが,難燃性不織布で形成されているのが好ましい(5頁13行∼6頁7行)。」
(キ)「フィルタ(1)のうち開口部(4)の周縁部は,フィルタ(1)と固着又
,()。()は縫合することにより環状挿通孔3が形成されているこの環状挿通孔3
には,フィルタ(1)の周縁部の長さよりも短く,伸縮性を有する材料,例えば,
合成ゴム等からなる環状の紐状体(2)が配されている(6頁15∼末行)。」
(ク)「上記構造の換気扇カバーによると,換気口の前面が遮蔽部材等で遮蔽され
た換気扇に適用する場合には,紐状体(2)を伸張させ,開口部(4)を大きくし
た状態で,換気口(5)を換気扇カバーで被冠し,換気口(5)の枠部材(6)の
端部等に紐状体(2)を掛止した状態で紐状体(2)を解放することにより,換気
扇カバーを容易に取付けることができる。また取付け状態においては,フィルタ
(1)が上記遮蔽部材により支持されるので,柔軟なフィルタ(1)であっても,
換気扇(7)の吸引力によりフィルタ(1)が換気口(5)に吸引されることがな
い。さらには,フィルタ(1)の中央部が取付状態において平面部(1a)を形成
,(),。,するので換気口のフィルタ1は面一となり美観を損ねることはないなお
フィルタ(1)の大きさや紐状体(2)の伸縮力を調整することにより,異なる大
きさの換気口(4)にも容易に取付けることができる(7頁1∼17行)。」
(ケ)「伸縮性紐状体(2)は,環状挿通孔(3)に収容された状態で配されてい
る必要はなく,縫合等の適宜の手段によりフィルタ(1)の周縁部と少なくとも部
分的に一体に設けてもよい(9頁14∼17行)。」
イ引用発明の構成
上記アの各記載によれば,審判甲第5号証刊行物には,使い捨て方式の換気扇カ
バーについての発明が記載されており,当該発明において,①換気扇カバーは,換
気扇の換気口側の前面にかぶせる(被冠する)ことにより装着され,換気扇の換気
口を覆うことができ,②換気扇カバーのフィルタは,不織布で構成されており,中
央部を余した周縁部が全周にわたり内方へ折曲され,開口部を有する袋状に形成さ
れていて,換気扇のフロント面をカバー可能なものであり,③フィルタの周縁部に
,,,は合成ゴムから成る伸縮可能な環状の紐状体が取り付けられており④紐状体を
伸張させ,開口部を大きくした状態で,換気口を換気扇カバーで被冠し,換気口の
枠部材の端部等に紐状体を掛止した状態で紐状体を解放することにより,換気扇カ
バーを容易に取り付けることができるものである。
そうすると,審判甲第5号証刊行物には「換気口に取付けられる使い捨て方式,
の換気扇カバーであって,該換気扇カバーが,不織布からなるフィルタと,該フィ
ルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有する換気
扇カバーであって,紐状体を,伸張させ,開口部を大きくした状態で,換気口を換
気扇カバーで被冠し,換気口の枠部材の端部等に紐状体を掛止した状態で紐状体を
解放することにより換気口に取り付けることができる換気扇カバー」の発明(引用
発明)が記載されているものと認めることができる。
ウ対比
引用発明の「換気扇カバー「フィルタ「収縮可能な環状紐状体」は,本件」,」,
発明の「フィルタ装置「フィルタ「リング状伸縮性紐状体」にそれぞれ相当」,」,
するものと認められ,そうすると,本件発明と引用発明との一致点及び相違点は,
下記のとおりである。
(一致点「フィルタ装置であって,フィルタと,このフィルタの周縁部に取り付)
けられるリング状伸縮性紐状体とで構成され,前記フィルタは,不織布で構成され
ている,換気口に装着できるフィルタ装置であって,リング状伸縮性紐状体の収縮
作用を利用して取り付けることができる換気扇カバー」である点
(相違点A)本件発明は「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配設さ,
れている金属製フィルタを覆うためのもの」であって「前記金属製フィルタは,,
剛性で方形プレート状に形成されているとともに,上端部が排気口の上部に形成さ
れた溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿
入可能である」のに対して,引用発明は,換気扇の換気口を覆うためのものである

(相違点B)本件発明のフィルタが「金属製フィルタのフロント面をカバー可能,
な」ものであって「被包可能なサイズを有し,かつ金属製フィルタに対応した相,
似形状の平面方形状に形成されている」のに対して,元来,金属製フィルタを覆う
ものではない引用発明の換気扇カバーのフィルタは,上記構成を有していない点
(相違点C)本件発明のリング状伸縮性紐状体が「フィルタを,金属製フィルタの
フロント面で緊張させて前記金属製フィルタに取り付けるための」ものであって,
「金属製フィルタの裏面での収縮により,金属製フィルタのフロント面のフィルタ
,」に緊張力又は牽引力を作用させて金属製フィルタに対してフィルタを取り付ける
のに対して,引用発明の紐状体は,換気扇の換気口の枠体に取り付けるためのもの
であって,紐状体の枠体への収縮力によりフィルタを取り付けるものである点
エ相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
a審判甲第3号証刊行物には「本考案は,調理用ガスレンジの上方に配設さ,
れて排煙を行うレンジフードに装着して使用される使い捨てタイプのレンジフード
用フィルターに関するものであり(段落【「この種のレンジフードは・」】),,0001
・・吸気口にはガード用金網等のフィルター部材が吸気口を囲む開口周壁を覆う状
態で張設され,金網等のフィルター部材を介して排気されるようになっている・。
・・しかしながら,レンジフードは頻繁に使用されるために,上記金網等のフィル
ター部材のみで使用すると頻繁に洗浄が必要になり,金網内部に付着した油を洗浄
除去するのが面倒であると共に,洗浄を怠って放置しておくと付着し凝固した油が
。」滴状となってガスレンジ上に落下するという不衛生な事態をまねく問題があった
(段落【】∼【「本考案は・・・レンジフードの吸気口に配設された00030004】),,
金網等からなるフィルター部材の下面に着脱自在に装着されるフィルターであっ
て,一端に上記フィルター枠体の端部が収容可能な袋状端部を設けた不織布からな
るシート状フィルターと,上記シート状フィルターの他端部をフィルター部材に巻
き込み状態で係止させる係止部材とからなることを特徴とするレンジフード用フィ
。」(【】),「,ルター装置である段落本考案の実施例を図面に従って説明すると0008
図1,図2は本考案のレンジフード用フィルター装置Aの一実施例を示し・・・,
不織布1を・・・矩形体とし,その上端部を折り返すとともに折り返し部の両端を
接着もしくは融着によって接合して・・・袋状端部2aを形成したシート状フィル
ター2と,上記不織布1と同じ材料で・・・浅い袋体3aよりなる係止部材3とか
ら構成してあり,レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部
材4に,前記シート状フィルターの袋状端部2aを被せるとともに,フィルター部
材4の他端部にシート状フィルター2の他方の自由端部2bを巻き込み,この巻き
込み状態のままで袋体よりなる係止部材3を装着してある。なお,前記フィルタ
ー部材4は,深型のレンジフードの金網性フィルター部材がそのまま使用され,シ
。」(【】ート状フィルター2を下面側にしてレンジフードに取り付けられる段落0012
【】),「,∼図1から図4に示した本考案のレンジフード用フィルター装置Aは0013
いずれもシート状フィルター2を下面側にして図5に示すように,深型のレンジフ
ードBの吸気口に,金網性のフィルター部材4とともにフード内面の係止金具等1
0を利用して着脱自在に係止させて使用される(段落【)との各記載があ。」】0019
り,これらの記載に図1,2,5を併せ見れば,審判甲第3号証刊行物には「レ,
ンジフードのフード内の排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱
自在に設け,その金属フィルタの油汚れを防止するため,不織布からなる使い捨て
のフィルタで金属フィルタのフロント面を覆うこと」が記載されていると認められ
る。
bまた,審判甲第1号証刊行物には「換気扇及びフードを通過する油分及び,
チリを,手前でくいとめるもので,ウーリー加工をした細いナイロン生地()を筒1
織りにし,それを丸及び楕円形に裁断し,廻りにゴム()を取付け伸縮自由とした2
もので,丸及び正方形,長方形のあらゆる型のカバーに使用する事を可能にした,
換気扇及びキッチンフードのフィルター(実用新案登録請求の範囲「本案を使」),
用する時は,カバーの外側からかぶせる丈でよい(2頁13∼15行「本案。」),
は上述の如き構造作用であるから,あらゆる換気扇及びキッチンフードのフィルタ
。」(),,ーとして使用出来るものである3頁3∼5行との各記載があり第5図には
キッチンフードの環状の換気口にフィルタを被せて用いる態様と,キッチンフード
の排気口に配設される2枚の方形状のガードに,フィルタを被せて用いる態様が示
されている。
さらに,審判甲第2号証刊行物には「この考案は,換気扇用のフィルター体に,
関する(1頁左欄下から2行「素材を不織布又は難燃不織布を用いてフィル。」),
ター部を形成し,該フィルター部の周縁に弾性又は伸縮自在とする筒状の覆体を結
合して換気扇用のフィルター体を構成する(2頁左欄44∼47行「図面の。」),
第2図を説明すれば・・・方形状の換気扇カバー6の排気口5の前面に,前記し,
たフィルター体Aのフィルター部1を位置させる。さらに,フィルター体Aの覆
体2の伸縮性及び弾性を利用して換気扇カバー6外周縁を覆う様にして手を離せ
ば,該弾性により覆体2開口部は換気扇カバー6外周縁内側に絡み付く様に覆着す
る(2頁右欄23∼30行「図面の第4図を説明すれば,キッチンフード1。」),
0の斜め上下間に,後記するフードカバー12を嵌着させる受11を形成する。
方形状のフードカバー12の前面に,前記したフィルター体Bのフィルター部7を
位置させる。さらに,フィルター体Bの覆体8を引っ張るようにフードカバー12
外周縁より内側に向け覆う様にして手を離せば,覆体8の弾性により覆体8の開口
部は収縮し,フードカバー12内側に絡みつくように覆着する。該フィルターB
を覆着させたフードカバー12を,前記フードカバー12の受11に嵌着すること
によって,フィルター体Bの覆体8は受11の両内側とフードカバー12両外側の
間に挟まれるため,フィルター体B全体が固定されるものである(2頁右欄48。」
行∼3頁左欄11行)との各記載があり,第2図には,フィルタを方形状の換気扇
カバーに取り付けた態様が,第4図には,レンジフードのフード内の排気口に着脱
可能に配置され,上端部が排気口の上部に形成された溝に挿入可能であり,下端部
が排気口の下部に形成された溝に挿入可能なプレート状のフードカバーに,フィル
タを取り付けた態様が,それぞれ示されている。
そうすると,これら審判甲第1,第2号証刊行物には,審判甲第5号証刊行物記
載のような,方形のカバーが設けられているだけの通常の換気扇(第3,第4図)
と,審判甲第3号証刊行物に記載されている,フードが設けられたレンジフードの
ガード(フードカバー)の双方に用いられるフィルタが記載されていることが認め
,,,,,られそうであれば本件特許出願前においてフィルタ部材を通常の換気扇と
レンジフードの双方において用いるように検討することが,通常なされていたもの
であることが推認される。
また,審判甲第2号証には,上端部が排気口の上部に形成された溝に挿入可能で
あり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入可能な方形プレート状に形成さ
()。れたフィルタ部材フードカバーの構成も開示されていると認めることができる
c上記aのとおり,審判甲第3号証刊行物には「レンジフードのフード内の,
排気口の位置に,剛性で四角形板状の金属フィルタを着脱自在に設け,その金属フ
ィルタの油汚れを防止するため,不織布からなる使い捨てのフィルタで金属フィル
タのフロント面を覆うこと」が記載されており,このことと,上記bのとおり,本
件特許出願前において,フィルタ部材を,審判甲第5号証刊行物記載のような通常
の換気扇と,審判甲第3号証刊行物記載のようなレンジフードの双方において用い
るように検討することが,通常なされていたものであることを併せ考えれば,引用
発明に係る「不織布からなるフィルタと,該フィルタの周縁部に設けられ,かつ上
記周縁部を収縮可能な環状紐状体とを有するレンジフード用換気扇カバー」を,審
判甲3号証刊行物に記載されているような,レンジフードのフード内の排気口の位
置に,着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属フィルタのフロント面を覆う
カバーとして用いることは,当業者であれば容易に想到することができるものとい
うことができる。そして,この場合に,引用発明に係るカバーが取り付けられる金
属フィルタを,上記審判甲第2号証刊行物に開示されたように,上端部が排気口の
上部に形成された溝に挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿
入可能な方形プレート状に形成することも,当業者が適宜なし得ることである。
dしたがって,引用発明において,そのカバーを審判甲第3号証刊行物記載の
発明に適用し,相違点Aに係る本件発明の構成を備えるようにすることは,当業者
が容易に想到することができたものといわざるを得ない。
(イ)相違点Bについて
上記(ア)のとおり,引用発明のカバーを,審判甲第3号証刊行物記載のレンジフ
ードのフード内の排気口の位置に,着脱自在に設けられた剛性で四角形板状の金属
フィルタのフロント面を覆うカバーとして用いるとすれば,当該カバーを構成する
フィルタのサイズを,取付対象である金属フィルタのフロント面を覆うことができ
るものとすることは,適用するに当たって当然考慮すべき事項である。また,取付
対象である金属フィルタは,板状であるから,引用発明のカバーを金属フィルタに
取り付けるためには,当該カバーにおける「フィルタの周縁部に設けられ,かつ上
記周縁部を収縮可能な環状紐状体」を,金属フィルタの裏面に位置させる必要があ
ることも明らかであり,そうとすれば,引用発明のカバーを構成するフィルタのサ
イズを,金属フィルタを被包可能なものとすることも,当業者が,当然考慮すべき
設計事項である。
さらに,一般に,ある部材をカバー部材により覆う場合には,そのカバー部材を
対象部材と同様の形状とすることは,通常行われていることと認められるから,引
用発明のカバーを構成するフィルタを,方形状の金属フィルタを覆うものとして用
いるに当たり,金属フィルタに対応した相似形状の平面方形状に形成することも,
当業者が適宜なし得る程度の設計事項というべきものである。
したがって,相違点Bは,単なる設計事項にすぎないから,相違点Bに係る本件
発明の構成を備えるようにすることは,当業者が,容易に想到し得る程度のもので
ある。
(ウ)相違点Cについて
a引用発明のカバーを,審判甲第3号証刊行物記載の剛性で四角形板状の金属
フィルタのフロント面を覆うカバーとして用いるとした場合に,金属フィルタが板
状であるから,引用発明のカバーを金属フィルタに取り付けるためには,当該カバ
ーにおける「フィルタの周縁部に設けられ,かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状
体」を,金属フィルタの裏面に位置させる必要があることは,上記(イ)のとおりで
あるところ,このように構成した場合には,上記「フィルタの周縁部に設けられ,
かつ上記周縁部を収縮可能な環状紐状体」の収縮力によって,金属フィルタのフロ
ント面のフィルタに,多少なりとも緊張力又は牽引力が作用することは明らかであ
る。
したがって,相違点Cは,引用発明のカバーを,審判甲第3号証刊行物記載の剛
性で四角形板状の金属フィルタのフロント面を覆うカバーとして用いることに伴
い,必然的に備えられる構成にすぎない。
,,,(,bなお原審原告は本件発明が相違点C原審原告の主張に係る相違点3
4)に係る構成を備えることにより,フィルタと金属製フィルタとの間に大きさの
違いがあっても,フィルタは,その大きさと金属製フィルタの大きさとの差異に応
じて,金属製フィルタの裏面に回り込み,金属製フィルタのフロント面を弛みなく
覆うことができるという顕著な作用効果を奏するものであるところ,このような作
用効果は,裏面を想定できず,フィルタを換気扇の側面や換気扇の前面についた枠
体の側面で係止する引用発明における技術思想をもっては,全く想定し得ないもの
であると主張する。
しかしながら,本件発明に係る特許請求の範囲(本件特許権の請求項1)には,
「金属製フィルタの裏面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊
張力又は牽引力を作用させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け」と,
の規定があるものの,フロント面のフィルタに作用する緊張力又は牽引力の程度に
ついては「金属製フィルタに対してフィルタを取り付け」との作用に係る規定以,
外に特段の規定がないから,フィルタが金属製フィルタから外れないという程度の
緊張力又は牽引力であれば足りるといわざるを得ず,そうすると,本件発明におい
て,必ずしも,フィルタが金属製フィルタのフロント面を弛みなく覆うことができ
るという効果を奏するということはできない。
,,,そして上記aのとおり引用発明のカバーを金属フィルタに取り付ける場合に
「収縮可能な環状紐状体」が金属フィルタの裏面に位置するようにしなければなら
,,,,ずその結果紐状体の収縮力によって金属フィルタのフロント面のフィルタに
多少なりとも緊張力又は牽引力が作用することは明らかであるところ,これによる
作用効果は,上記のとおり,格別顕著なものということはできず,また,当業者が
予測可能なものというべきである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ上記のとおり,本件発明は,審判甲第5号証刊行物記載の引用発明と,審判
甲第1∼第3号証刊行物記載の発明とに基づいて,当業者が容易に発明をすること
ができたものであり,特許法29条2項に違背するものというべきである。
()そうすると,争点2についての,その余の原審被告らの主張について判断3
するまでもなく,本件発明に係る特許は,無効審判において無効とされるべきもの
である。
したがって,原審原告の請求は,その余の点につき判断するまでもなく,いずれ
も理由がない。
また,原審被告らの請求のうち,被告製品に対する,本件特許権に基づく製造販
売差止請求権の不存在確認を請求する部分に係る訴えは,被告製品が,本件差止対
象製品の製造販売の差止めを求める請求の対象物として原審原告が特定した範囲と
重複するものであるから,不適法というべきである。
(,,,。)2争点1のア被告製品が本件発明の構成要件①∼④⑦⑧を充足するか
について
上記1のとおり,本件発明に係る特許は,無効審判において無効とされるべきも
のであって,原審原告の原審被告らに対する請求は,その余の点につき判断するま
でもなく,いずれも理由がないというべきであるが,被告製品が,本件発明の技術
的範囲に属するといえるものであるか否かは,争点5についての判断(特に,原審
原告の故意過失の有無)に影響を及ぼすと考えられるので,争点5に先だって,争
点1のアについて判断する。
()被告製品が本件発明の構成要件⑤,⑥を充足することは,当事者間に争い1
がなく,以下のとおり,乙第1号証の1,2,第56号証(特に添付の被告製品に
),,,係る説明書及び弁論の全趣旨によれば被告製品は本件発明の構成要件①∼④
⑦,⑧を充足するものであることが認められる。
()構成要件①,②について2
原審被告らは,被告製品が「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配,
設されている金属製フィルタを覆う」ことも可能であるとした上,他の用途もある
から,構成要件①,②を充足しないと主張する。
しかしながら,被告製品が「レンジフードのフード内の排気口に着脱可能に配,
設されている金属製フィルタを覆う」ことが可能である以上,構成要件①,②を充
,,,,,足するものであり仮に他の用途があるとしてもそのことにより構成要件①
②に係る充足性が妨げられるものではない。
()構成要件③について3
原審被告らは「リング状伸縮性紐状体」との要件に係る「リング状」が,切れ,
目のない輪でなければならないとした上,被告製品の周縁部に取り付けられたゴム
糸は,線状であって「リング状」ではないと主張する。,
しかしながら「リング」との語は,一般に円環状のものを示すことが多いが,,
例えば,ボクシングやレスリング等の競技を行う方形の台を「リング」というよう
に,方形状のものを示すことがないわけではなく,このことに,本件明細書の「前
記紐状体も不定形又は円形リング状に限らず,方形リング状であってもよい(段。」
落【)との記載を併せ考えれば,構成要件③における「リング状」は,方形0018】
状のものが含まれるものと解するのが相当である。
また,本件明細書の「フィルタ2のうち,開口部5の縁部には環状挿通孔4が形
成され,この環状挿通孔4には・・・伸縮性を有する材料,例えば,合成ゴムな,
どで構成された環状紐状体3が配されている(段落【)との記載,並びに。」】0012
「伸縮性紐状体3は,環状挿通孔4に収容する必要はなく,縫合などの適当な手段
,。」(【】)によりフィルタの周縁部に少なくとも部分的に一体化してもよい段落0017
及び「紐状体が挿通可能な環状挿通孔は必ずしも必要ではなく,フィルタの周縁部
の複数箇所(例えば,3∼10箇所,特に4∼10箇所)で,紐状体が伸縮又は挿
通可能な形態で,紐状体と一体化してもよい(段落【)との各記載によれ。」】0019
ば,構成要件③において,伸縮性紐状体をフィルタの周縁部に取り付ける手段とし
ては,周縁部に設けた環状挿通孔に伸縮性紐状体を挿通することのほか,縫合等の
手段により,フィルタの周縁部で伸縮性紐状体とフィルタとを一体化することなど
が想定されていることが認められる。そして,伸縮性紐状体をフィルタ周縁部に設
けた環状挿通孔に挿通する手段による場合には,伸縮性紐状体の収縮力をフィルタ
に及ぼすために,伸縮性紐状体が切れ目のない閉じた状態であることが必要である
が,伸縮性紐状体をフィルタ周縁部で縫合等の方法によりフィルタと一体化する手
段による場合には,必ずしも,伸縮性紐状体が切れ目のない閉じた状態であること
は必要でなく,切れ目があったとしても,当該切れ目を挟んだ両端部が近接してい
れば,伸縮性紐状体の収縮力をフィルタのほぼ全体に及ぼすことができ,かつ,例
えば,一般に「リング」と称される指輪の中には,円環の一部に狭小の切れ目があ
るものも存在することなどを考慮すれば,上記のような切れ目のある態様の伸縮性
紐状体であっても「リング状」といえないわけではない。,
したがって,被告製品の周縁部に取り付けられたゴム糸が「リング状」ではない
とする原審被告らの主張を採用することはできない。
()構成要件④について4
原審被告らは,被告製品が,構成要件④に係る「上端部が排気口の上部に形成さ
れた溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿
入可能」である「剛性で方形プレート状に形成されている」金属製フィルタに取り
付けることも可能であるとした上,溝やスリットのない構造の金属製フィルタに取
り付けることもできるし,他の物の各種カバーとしての用途もあるから,構成要件
④を充足しないと主張する。
しかしながら,上記()と同様,被告製品が「上端部が排気口の上部に形成され2,
た溝又はスリットに挿入可能であり,下端部が排気口の下部に形成された溝に挿入
可能」である「剛性で方形プレート状に形成されている」金属製フィルタに取り付
けることが可能である以上,構成要件④を充足するものであり,仮に,溝やスリッ
トのない構造の金属製フィルタに取り付けることができ,あるいは他の用途がある
としても,そのことにより,構成要件④に係る充足性が妨げられるものではない。
()構成要件⑦について5
原審被告らは,金属製フィルタの縦,横の寸法の組合せは,92種類あり,被告
,「」,製品はこれらの金属製フィルタの大半と相似形状の関係にはないのみならず
被告製品は,四隅が丸くなっていて,平面方形状に形成されているものではないと
して,被告製品が構成要件⑦を充足しないと主張する。
しかるところ,乙第1号証の1,2,第9号証,第56号証(特に添付の被告製
品に係る説明書)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品を構成するフィルタの寸法
は「57㎝×44㎝(ゴム糸取付後は55㎝×42㎝」であり(以下,フィルタ)
,「」。),,及び金属製フィルタの寸法は長辺×短辺として表示する被告製品自体は
「45㎝×30㎝」までの金属製フィルタに取付可能であること,市販されている
レンジフード用の金属フィルタであって,被告製品が取付可能であるサイズのもの
としては,少なくとも別表記載の59個のもの(以下「金属製フィルタ1」∼「金
属製フィルタ59」という)があることが認められ,被告製品を構成するフィル。
タ及び上記金属フィルタの縦横比(長辺:短辺」の比の値)を算出すると,同表「
のとおりである。
ところで「相似形状」の意義については,構成要件⑦が「相似形状の平面方形,
状に形成されており」と規定し「相似形状」の語句が「平面方形状」の語句を限,
定していることにかんがみて,単に方形状であれば「相似形状」の要件を満たすと
解することはできない。しかしながら,数学的な厳密さをもって「相似形状」と解
すれば,本件発明を実施することさえ困難となるから,結局,縦横の辺の長さの比
がおおむね等しければ,相似形状といえるものと解するのが相当である。また,別
表記載のとおり,市販されている金属フィルタの縦横比はきわめて多様であり,そ
,,「,のことは当業者の技術常識であると考えられるから本件明細書の本発明では
レンジフードにおいて,サイズ,取付け角度の異なる種々のレンジフードの金属製
フィルタ又はフィルタ要素に対して,フィルタを緊張させて簡便かつ容易に取付け
でき,交換も容易である(段落【)との記載を併せ考えても,本件発明に。」】0025
おける「相似形状」が,市販されている金属製フィルタの大部分に対して具備すべ
き要件であるとは解されず,縦横比がおおむね等しい金属フィルタがごく小数であ
って,例外的ともいえるような場合でないとき,換言すれば,金属フィルタの相当
数において,おおむね縦横比が等しければ,構成要件⑦に関し,技術的範囲に属す
るものというべきである。
これを被告製品について考えれば,被告製品を構成するフィルタの寸法は「57
㎝×44㎝(ゴム糸取付後は55㎝×42㎝」であり,その「長辺:短辺」の比)
の値が約1.3であることに照らして,±0.15の範囲である1.15∼1.4
5の比の値を有する金属フィルタとの関係で「相似形状」として構成要件⑦を充,
足するものと認めるのが相当であるそうすると別表記載の59個中25個金。,,(
属製フィルタ2,3,6∼8,11,14,15,17,19,25∼32,39
∼41,46∼49)がこれを充足し,これは,相当数というに足りるから,被告
製品は,構成要件⑦を充足すると認められる。
なお,原審被告らは,被告製品のフィルタは,四隅が丸くなっているから,平面
方形状に形成されているものではないとも主張するが,上掲証拠によれば,被告製
品のフィルタの四隅は,ゴム糸取付前は直角をなしていて丸みはなく,ゴム糸取付
後も,各隅のわずかな部分が丸みを帯びるにすぎないと認められるから,全体とし
て,方形状と認めることができる。
()構成要件⑧について6
原審被告らは,被告製品は,微力なゴム糸を使用しているので,金属製フィルタ
の裏面から,フィルタをフロント面で緊張させ,金属フィルタに密着させるような
緊張力又は牽引力を作用させることは不可能であると主張する。
しかしながら,上記乙第56号証中の被告製品に係る説明書によれば,被告製品
を金属フィルタに取り付けた際,フィルタを金属フィルタのフロント面に密着させ
ていることが窺えるのみならず,上記のとおり,本件発明の「金属製フィルタの裏
面での紐状体の収縮により,前記フロント面のフィルタに緊張力又は牽引力を作用
させて,金属製フィルタに対してフィルタを取り付け」との規定(構成要件⑧),
に係る,フロント面のフィルタに作用する緊張力又は牽引力の程度については,フ
ィルタが金属製フィルタから外れないという程度の緊張力または牽引力であれば足
りるというべきであるから,上記被告の主張を採用することはできない。
()以上のとおり,被告製品は,本件発明の構成要件①∼⑧を充足するもので7
あると認めることができる。
3争点5(原審原告が,原審被告らによる被告製品の製造販売が本件特許権の侵
害である旨の虚偽の事実を告知,流布するという,不正競争防止法2条1項14号
に該当する不正競争行為をしたか。また,これについて,原審原告に故意又は過失
があるか)について。
()上記第2の1の()の事実によれば,原審原告にとって,原審被告らは「競11
争関係にある他人」に当たるものと認められる。
また,同()の事実に,乙第26,第28,第49,第50号証,第53号証の7
1,2及び弁論の全趣旨を総合すれば,原審原告は,本件特許権の登録後である平
,,成16年10月以降原審被告らの被告製品販売先である日本生活協同組合連合会
コープ九州事業連合,コープきんき事業連合及び千趣会に対し,直接書面により,
又は他者を介して,被告製品が本件特許権を侵害するものである旨の告知をしたこ
とが認められるところ,上記1のとおり,本件発明に係る特許は,無効審判におい
て無効とされるべきものであって,被告製品が本件特許権を侵害するということは
できない。
そうすると,原審原告による上記行為は,不正競争防止法2条1項14号の不正
競争行為に該当するものと認められる。
したがって,同法3条1項に基づき,その差止めを求める原審被告らの請求は理
由がある。
()しかしながら,原審原告による上記行為が,不正競争防止法2条1項142
号の不正競争行為に該当するものと認められるのは,本件発明に係る特許が,無効
審判において無効とされるべきものであるという点にある。そして,特許権者にお
いて,特定の者の製造する物品が当該特許権の侵害品である旨を第三者に対し警告
する場合には,その製造者に対し警告する場合と比べ,より一層の慎重さが要求さ
れるとしても,上記1の本件特許に係る無効事由の内容に照らし,また,上記2の
とおり,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属すると認められることにかんがみ
ると,本件においては,特許権者である原審原告が具体的な無効事由につき出願時
又はそれ以降にその存在を疑って調査検討をすることを期待することができるよう
な事情は認め難いから,原審原告による上記行為につき,故意過失があったとまで
は直ちに認めることはできない。
なお,上記第2の2の()の事実に上掲証拠を総合すれば,原審原告は,上記行7
為において,日本生活協同組合連合会,コープきんき事業連合などに対し送付した
書面に,本件特許に係る特許証と,本件特許出願に係る公開公報(特開平11−3
00130号)を添付したことが認められ,この事実によれば,送付を受けた日本
生活協同組合連合会等は,原審原告が,上記公開公報記載の発明について特許権を
取得したかのように誤認するおそれがあるものと推認されるが,そうであるからと
いって,本件発明に係る特許が,無効審判において無効とされるべきものであると
いう事由により,被告製品が本件特許権の侵害品に当たらないという点に関する原
審原告の故意過失を基礎付けるということはできない。
()したがって,原審原告に対し,謝罪広告及び損害賠償を求める原審被告ら3
の請求は理由がない。
4以上によれば,原審原告の請求は全部理由がないから棄却すべきであり,原審
被告らの,被告製品に対する,本件特許権に基づく製造販売差止請求権の不存在確
認を請求する部分に係る訴えは,不適法として却下すべきであり,その余の原審被
告らの請求のうち,原審被告らが原判決別紙物件目録2記載の製品を製造販売する
ことが,原審原告の前項記載の特許権を侵害する旨を,原審被告らの取引先その他
の第三者に告知流布することの差止めを求める部分は,理由があるから認容し,そ
の余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであって,これと一部異なる原判
決をそのように変更することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条,64条を
適用して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
石原直樹
裁判官高野輝久は,差支えにつき,署名押印することができない。
裁判長裁判官
塚原朋一
(別紙)
謝罪広告目録
お詫び
カースル株式会社様
カースル産業株式会社様
両社製品の取り扱い業者様
両社のお客様並びに消費者各位様
この度はキャップ式レンジフードフィルターにつきまして,関係各位の皆様方に大変ご迷惑
をお掛けし誠に申し訳御座いませんでした。
当社は,先日よりカースル株式会社様並びにカースル産業株式会社様のキャップ式レンジフ
ードフィルターが,いかにも当社特許を侵害していると言うような誤った内容の文書とカース
ル株式会社様やカースル産業株式会社様の取引先に送付してカースル株式会社様,カースル産
業株式会社様に対し営業妨害を行い関係各位の皆様に混乱やご迷惑をお掛けしております。
この内容につきましても,特許公報ではなく特許取得以前の公開公報を用い,関係各位の皆
様方に同社キャップ式レンジフードフィルターが,さも特許侵害をしているような誤った情報
を流す大変悪質なものでした。
又,特許請求の範囲を見ましても,その取付方法,機能共に全く前記特許とは異なっており,
特許侵害などしておりませんでした。
関係各位の皆様方には大変なご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫びすると共に,今後二
度とこの様なことが無いように致します。申し訳ありませんでした。
深くお詫び申し上げます。
株式会社アーランド

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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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独立支援は3名

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