弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松木弘の上告趣意第一点及び第二点について。
 論旨は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。第一審
判決挙示の証拠によれば、選挙運動の報酬並びに資金等として判示のように金員の
供与がなされた事実を肯認し得られるので、証拠によらない認定であるということ
はできない。
 同第三点は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない
 弁護人鍛治利一の上告趣意第一点乃至第三点について。
 控訴裁判所は、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによつて直ちに判決す
ることができると認める場合でも、常に新たな証拠を取り調べた上でなければ、破
棄自判できないものではないことは、すでに当裁判所の判例によつて示されたとお
りである(昭和二七年(あ)五九七号同二九年六月八日第三小法廷判決、昭和二五
年(あ)六二号同年四月二〇日第一小法廷判決、昭和二五年(あ)二九八一号同二
六年一月一九日第二小法廷判決参照)。それ故原判決には所論の違法はないので、
これを前提とする違憲の論旨は理由なく、また憲法三九条違反の主張も当裁判所大
法廷判決(昭和二四年新(れ)二二号同二五年九月二七日大法廷判決、昭和二四年
(れ)五九号同二五年一一月八日大法廷判決)の趣旨に徴し採用することができな
い(同趣旨の論旨に対する昭和二六年(あ)三六八四号同二八年五月一日第二小法
廷判決、昭和二八年(あ)二一三四号同三〇年四月五日第三小法廷判決)。
 同第四点について。
 論旨は、原審が第一審の訴訟記録を審査しただけで被告事件について新たな有罪
判決をしたことは、憲法三七条に違反すると主張する。しかしながら、原審は刑訴
法に従つて公開の公判廷において弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聞いた上判決し
ているのであつて、公開の公判を開かないわけではなく、また原判決は執行猶予の
期間等を変更したのみで、犯罪事実の認定、刑の量定そのものは第一審判決と同様
に判示しているのであるから、所論は本件に副わないものとして採用することがで
きない。
 同第五点について。
 所論は、量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年七月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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