弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成29年3月13日宣告
平成28年(わ)第342号,第400号
判決
主文
被告人Aを懲役2年6月に,被告人Bを懲役1年6月及び罰金50万円に
処する。
被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは,金5000
円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から,被告人Aに対し4年間,被告人Bに対し3年
間,それぞれその懲役刑の執行を猶予する。
被告人Aから金30万円を追徴する。
訴訟費用は被告人Bの負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,大分県警察事務職員であり,同県別府警察署生活安全課保安営業係
として勤務し,風俗関係事犯等に関する行政施策等の職務に従事していたもの,被
告人Bは,大分県C保健所長から飲食店営業の許可を受け,同県別府市ab番c号
Dビル3階において,設備を設けて客の接待をし,客に飲食をさせる深夜酒類提供
飲食店「E」を,Fとともに実質的に経営していたものであるが
第1被告人Bは,F及び前記「E」の店長Gと共謀の上
1大分公安委員会から風俗営業(1号営業)の許可を受けないで,平成28年
8月28日午後11時30分頃から同月29日午前1時30分頃までの間,同店に
おいて,従業員「H」ことIをして,客席に同席させて客の談笑の相手をさせ,客
に酒類を提供して飲食させるなどの接待をさせ,もって無許可で風俗営業を営み
2前記1の日時場所において,前記I(当時17歳)に対し,前記1の客に前
記接待をさせ,もって営業所で18歳未満の者に客の接待をさせ
第2被告人Aは,前記生活安全課が前記「E」に対する捜索等を実施するに当
たり,捜索予定日等の捜査情報は,自己の職務上知り得た秘密であったにもかかわ
らず,平成28年9月13日,大分県別府市内において,被告人Bに対し,電話で,
前記捜索予定日が同月16日である旨教示した上,同月16日,前記別府警察署に
おいて,被告人Bの携帯電話に,「いや,もうすぐ着くぞ」などと記載した電子メ
ールを送信するなどして,捜査員らの動向等を教示し,もって職務上知り得た秘密
を漏らし
第3被告人Aは,同年10月8日,大分市d町e丁目f番g号J店前の喫煙コ
ーナーにおいて,被告人B及び前記Fから,前記第2記載のとおり,職務上知り得
た秘密を不正に漏らしたことの謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを知り
ながら,現金30万円の供与を受け,もって自己の職務上不正な行為をしたことに
関して賄賂を収受し
第4被告人Bは,前記Fと共謀の上,前記第3記載の日時場所において,被告
人Aに対し,前記第3記載の趣旨の下に現金30万円を供与し,もって同人の前記
職務上不正な行為をしたことに関して賄賂を供与し
たものである。
(法令の適用)
1被告人Aについて
罰条
判示第2の所為地方公務員法60条2号,34条1項前段
判示第3の所為刑法197条の3第2項
刑種選択
判示第2の罪懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判
示第3の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で
法定の加重)
刑の執行猶予刑法25条1項
追徴刑法197条の5後段(判示第3の犯行により
収受した賄賂で没収することができない)
2被告人Bについて
罰条
判示第1の1の所為刑法60条,風俗営業等の規制及び業務の適正
化等に関する法律49条1号,3条1項,2条1
項1号
判示第1の2の所為刑法60条,風俗営業等の規制及び業務の適正
化等に関する法律50条1項4号,22条1項3

判示第4の所為刑法60条,198条
刑種選択
判示第1の1及び2の各罪いずれも懲役刑及び罰金刑を併科
判示第4の罪懲役刑を選択
併合罪の処理
懲役刑について刑法45条前段,47条本文,10条(最も重
い判示第4の罪の刑に法定の加重)
罰金刑について刑法45条前段,48条1項,2項(懲役刑と
併科し,判示第1の1及び2の各罪所定の罰金の
多額を合計)
労役場留置刑法18条
刑の執行猶予刑法25条1項(懲役刑について)
訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文(全部負担)
(量刑の理由)
被告人Aは,従前から被告人Bとの間で職務に関して情報の提供を受けるなどし
ていたところ,被告人Bの経営する飲食店が捜査対象となっていることを知り,警
察事務職員の職務上知った捜査情報を被告人Bに漏えいした上,情報提供に対する
見返りを期待し,自ら積極的に賄賂を催促している。収受した賄賂の金額も,少な
いとはいえない。当初は賄賂を収受する目的がなかったとしても,公務員の職務の
公正及びこれに対する国民の信頼を大きく損ねている。また,漏えいした情報は,
捜索の実施予定日や捜査員の動向といった厳に秘密にすべき最重要情報であり,現
にその後の捜査に具体的な支障が生じたことにも照らすと,適正な刑事司法作用を
害した程度は大きいといえる。
被告人Bは,上記の情報提供に基づき摘発を免れるための対策を講じ,捜索をや
り過ごすことができた見返りとして,少なくない金額の賄賂を供与したものであり,
自ら進んで供与しようとしたものではないにしても,贈賄の犯情は良くない。また,
風営法違反行為についても,開店当初から年少者のみを雇用して,約5か月にわた
り客の接待をさせる中で犯行に及んでおり,善良な風俗や年少者の健全な育成に与
えた悪影響は軽視できない。そして,被告人Bは,共犯者である共同経営者ととも
に,店長に対して無許可営業や未成年者の雇用を指示していたほか,賄賂の提供に
ついても,被告人Aから催促され,共同経営者に相談を持ちかけて金額や渡す時期
等を決定しており,風営法違反及び贈賄の犯行において主導的な役割を果たした。
以上からすれば,被告人らの刑事責任は決して軽いものではない。
その上で,被告人両名とも罪を認めて反省の態度を示していること,被告人両名
にはいずれも前科がなく,家族が今後の立ち直りを支援する旨約束していることな
どの事情を考慮して,被告人らを主文の刑に処した上,今回に限り,それぞれその
懲役刑の執行を猶予することとする。
(求刑・被告人Aに対し懲役2年6月及び金30万円の追徴,被告人Bに対し懲役
1年6月及び罰金50万円)
平成29年3月13日
大分地方裁判所刑事部
裁判長裁判官今泉裕登
裁判官家入美香
裁判官藤丸貴久

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛