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平成14年(ワ)第583号 特許権専用実施権に基づく差止請求権不存在確認等請
求事件
口頭弁論終結の日 平成14年7月24日
判      決
         原      告     旭鋼機株式会社
         原      告     旭リサイクルサポート株式会社
         原告ら訴訟代理人弁護士  北 村 行 夫
同            永 野 周 志
被      告     リサイクルサポート株式会社
被      告     中央機工株式会社
被      告     株式会社古賀機械製作所
被告ら訴訟代理人弁護士  藤 井 信 孝
主      文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1(1) 原告旭鋼機株式会社と被告リサイクルサポート株式会社との間で、被告リ
サイクルサポート株式会社は、特許第3099269号特許権についての専用実施
権に基づき、原告旭鋼機株式会社が別紙物件目録記載の各物件を製造販売すること
を差し止める権利を有しないことを確認する。
(2) 原告旭リサイクルサポート株式会社と被告リサイクルサポート株式会社と
の間で、被告リサイクルサポート株式会社は、特許第3099269号特許権につ
いての専用実施権に基づき、原告旭リサイクルサポート株式会社が別紙物件目録記
載の各物件を販売することを差し止める権利を有しないことを確認する。
2(1) 被告らは、原告旭鋼機株式会社による別紙物件目録記載の各物件の製造販
売が特許第3099269号特許権又は同特許権の専用実施権を侵害する旨を第三
者に告知又は流布してはならない。
(2) 被告らは、原告旭リサイクルサポート株式会社による別紙物件目録記載の
各物件の販売が特許第3099269号特許権又は同特許権の専用実施権を侵害す
る旨を第三者に告知又は流布してはならない。
第2 事案の概要
(略称)原告旭鋼機株式会社        ― 原告旭鋼機
原告旭リサイクルサポート株式会社 ― 原告旭リサイクル
被告リサイクルサポート株式会社  ― 被告リサイクル
被告中央機工株式会社       ― 被告中央機工
被告株式会社古賀機械製作所    ― 被告古賀機械
株式会社アグリックス       ― アグリックス社
S                ― S
株式会社大真           ― D社
株式会社福岡機器製作所      ― F社
東芝機械株式会社 ― T社
日本ノーブルシステム株式会社   ― JNS社
後記基本的事実2(4)の特許権    ― 本件特許権
本件特許権の特許権者       ― 本件特許権者
本件特許権に係る発明       ― 本件発明
後記基本的事実3(4)の専用実施権  ― 本件専用実施権
別紙「有機リサイクル装置事業に関する基本覚書」(甲10)記載の覚書
― 本件基本覚書
別紙「リサイクル装置特許実施料に関する覚書」(甲11)記載の覚書
― 本件実施料覚書
(事案の要旨)
 本件は、原告らによる別紙物件目録記載の各物件の製造又は販売について、被
告リサイクルが本件特許権の専用実施権に基づく差止請求権を有しないにもかかわ
らず、これを有すると主張しているとして、原告らが、被告リサイクルに対し、前
記差止請求権の不存在確認を請求するとともに、原告らと競争関係にある被告らに
おいて、原告らによる前記各物件の製造又は販売が本件特許権又は本件専用実施権
を侵害する旨の虚偽の事実を原告の取引先に告知した(不正競争防止法2条1項1
4号)として、原告らが、被告らに対し、不正競争防止法3条1項に基づく差止請
求をした事案である。
(基本的事実)(証拠の記載のない事実は、当事者間に争いがない。)
1(1) 原告旭鋼機は、鉄鋼材及び第二次製品並びに非金属材料販売業等を目的と
する株式会社である(甲5)。
(2) 被告中央機工は、鉄工業等を目的とする株式会社である(甲7)。
(3) 被告古賀機械は、機械器具設置工事業等を目的とする株式会社である(甲
8)。
2(1) Sは、本件発明の発明者である。
(2) 原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、D社(その代表取
締役はSである。)に対し、各2億円以上の債権を有していた。
(3) 原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、前記(2)の債権回
収の趣旨で、Sから、本件発明について特許を受ける権利を譲り受けた。
(4) 原告旭鋼機及び被告中央機工は、平成9年9月30日、本件特許の特許出
願手続を行った。後に、被告古賀機械も、その特許出願人に加わり(乙8及び弁論
の全趣旨)、本件特許権は、平成12年8月18日、この3社を特許権者として登
録された。本件特許権の詳細は、次のとおりである。
特許番号 第3099269号
発明の名称 堆肥化装置及び堆肥化装置における有機廃棄物の撹拌方法
出願年月日 平成9年9月30日(特願平9-284660)
登録年月日 平成12年8月18日
特許請求の範囲 別紙特許公報【特許請求の範囲】欄記載のとおり。
(5) 別紙物件目録記載の各物件は、いずれも本件発明の実施品である。
3(1) 原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、平成12年5月、
別紙「有機リサイクル装置事業に関する基本覚書」(甲10)記載の覚書(本件基
本覚書)を締結した。
(2) 本件基本覚書1条に記載された「有機システム有限会社」は、平成12年
5月23日、産業廃棄物のリサイクルに関する研究開発及び廃棄物処理機の設計、
製作、販売等を目的として設立された。同社は、同年11月27日、「リサイクル
サポート有限会社」に商号変更の上、同年12月6日、被告リサイクルに組織変更
された(乙1、甲9)。
(3) 本件基本覚書3条に記載された原告旭リサイクルは、平成12年7月19
日、産業廃棄物のリサイクルに関する研究開発及び廃棄物処理機の設計、製作、販
売等を目的として設立された(甲6)。
(4) 原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、平成12年12月
12日、被告リサイクルとの間で、本件特許権について次の内容の専用実施権(本
件専用実施権)を設定する旨の契約を締結し、同13年1月9日、その旨の登録手
続を了した。
専用実施権者 被告リサイクル
範囲  地域 日本国内全域
期間 本件特許権消滅の日まで
内容 全部
対価の額 無償
4(1) 原告旭リサイクルは、平成13年9月17日、第三者から、別紙物件目録
記載の物件の一つであるADS-100VTの2ユニットの注文を受け、これを原
告旭鋼機に発注した(弁論の全趣旨)。
(2) 原告旭鋼機は、前記(1)の履行のために、T社に対し、その設計図面の作
成を依頼するとともに、F社に対しては、同設計図面に基づく製造を依頼した(乙
20~22)。
5(1) 被告らは、平成13年12月7日付け書面(甲15、16)において、T
社及びF社に対し、前記4(2)の各行為について同社らが本件特許権の専用実施権を
侵害する旨を通知した。
(2) 被告リサイクルは、本件訴訟においても、原告らによる別紙物件目録記載
の各物件の製造又は販売行為について、被告リサイクルが本件特許権の専用実施権
に基づく差止請求権を有すると主張している。
(争点)― 後記1ないし3の点に照らし、原告らが、本件基本覚書及び本件実施
料覚書に基づき、本件発明を実施することができたか否か。
1 各覚書自体の法的効力
(被告らの主張)
(1) 本件基本覚書は、「有機リサイクル装置」事業に関し、同装置に係る特許
出願人である原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社が、同事業を今後
円滑適切に遂行するための組織作りやその他役割分担を合意した基本的な取り決め
にすぎない。本件基本覚書には、本件発明の実施について何ら定められておらず、
実施権の種類(専用実施権又は通常実施権)や範囲(全部又は一部)等を定めた実
施許諾条項も存在しないから、本件基本覚書によっては、原告らが本件発明を実施
することはできない。
(2) 本件実施料覚書には、本件専用実施権者である被告リサイクルの記名押印
がない以上、被告リサイクルから原告らが実施権の許諾を受けたともいえない。
(原告らの主張)
(1) 被告らの主張(1)は否認する。本件基本覚書には、後記2の専用実施権の
設定にかかわりなく、本件特許権者が本件発明を実施し得る旨が合意されている。
(2) 被告らの主張(2)は否認する。本件実施料覚書は、本件専用実施権の設定
登録後であるにもかかわらず、原告らのみならず、被告中央機工、被告古賀機械
も、本件発明の実施品を製造販売することが当然の前提とされている。すなわち、
原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、本件発明の実施品を各自で
製造し、その利益の中から実施料名下で本件特許権の管理費を賄うことを意図して
いたのであり、被告リサイクルは、実施料の受領者として位置付けられているにす
ぎない。
2 本件専用実施権設定との関係
(被告らの主張)
(1) 本件専用実施権の設定に際し、本件特許権者に実施権を留保した事実はな
いから、本件特許権者であっても、本件発明を当然には実施することができない。
本件専用実施権の設定登録後に、被告リサイクルと原告旭リサイクルとの間で、原
告旭リサイクルが被告リサイクルから実施品を買い取って、これを販売する旨の
「販売代理店契約」(乙3)が締結されようとしたことすらあった。また、本件特
許権侵害についてのJNS社との交渉過程において、原告らによる本件発明の実施
と何ら調整を図ることなく、被告リサイクルがJNS社に独占的実施権を許諾する
という内容の和解案を提示するにつき、原告らもこれを了解していたのであるか
ら、原告ら主張のような本件特許権の実施権の留保があったとはいえない。
 原告らの主張(1)について、確かに、本件基本覚書には、有機リサイクル装
置に関する特許権を集中的に管理するために有機システム有限会社を設立する旨の
記載はあるが、当時、本件発明は特許出願中であったから、本件特許権について専
用実施権を設定しようと解釈するには無理がある。また、特許権の集中的な管理の
具体的手法に関する言及もない以上、専用実施権の設定に限られるわけでもないは
ずである。本件特許権者3社が実用新案権者である別件の実用新案権(甲18~2
1)については、被告リサイクルの専用実施権を設定しなかったこととも対照的で
ある。ただし、被告リサイクルにおいて、従業員がおらず、本件発明の実施品も製
造販売していないことは認める。
(2) 仮に本件特許権者に実施権を留保する旨の合意があったとしても、そのよ
うな合意は、専用実施権の物権的性格に反し、公序良俗違反であるから無効であ
る。また、仮に本件特許権者に実施権が有効に留保されていたとしても、原告旭リ
サイクルは、本件特許権者ではないから、実施権を有しない。
(原告らの主張)
(1) 被告らの主張(1)は否認する。本件専用実施権の設定は、本件基本覚書に
よる合意の延長線上にあり、各特許権者の実施を許容した上で、本件特許権の管理
を簡便ならしめることを目的としたものにすぎず、本件基本覚書における本件特許
権者による本件発明の実施を何ら変更するものではなかった。
 すなわち、平成11年7月以降、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀
機械の3社とSとの関係が悪化するようになり、Sが、第三者に対し、本件発明の
実施を許諾する行動を示すようになった。そこで、前記3社は、S、D社又は第三
者による将来の本件特許権侵害に対処するために、共同出資の会社を設立して、こ
の共同出資会社に本件特許権侵害差止請求等の訴訟を遂行させるために、専用実施
権を設定する旨を合意した。被告リサイクルは、このような合意に基づき設立され
た会社にすぎず、実際上も、同被告においては、従業員はおらず、本件発明の実施
品の製造販売も全くしていない。また、被告リサイクルと原告旭リサイクルとの間
の「販売代理店契約」(乙3)の締結は、被告らの発案によるものにすぎず、その
契約締結に至らなかったのも、原告らがこれに同意しなかったためである。さら
に、被告古賀機械は、①本件専用実施権設定の合意後、原告旭鋼機からの本件発明
の実施品についての見積り依頼に対する見積書を提出して、原告旭鋼機からの正式
発注があれば、これに応じようとしており、②本件専用実施権の設定登録後である
平成13年1月10日、株式会社吉松ファームとの間で、本件発明の実施品1ユニ
ットについての販売契約を締結し、同年3月末にこれを納品しているのであるか
ら、被告らの主張(1)は、このような自らの行動と矛盾する。
 JNS社に対する和解案は、JNS社にはSが取締役として関与していた
ことから、実施権許諾の対価として同社から支払われる実施料により、積年の懸案
であったD社(代表取締役S)に対する不良債権問題を最終的に解決することが可
能となることから提案されたものにすぎず、本件基本覚書とは、その観点や内容等
は異なる。JNS社との交渉中も、本件特許権者間では、本件特許権者間の内部的
な法律関係とJNS社との外部的な法律関係との調整を図る必要性が認識されてい
た。被告らの主張する別件実用新案権(甲18~21)は、むしろJNS社に対す
る和解案の中で、被告リサイクルが実施許諾する対象として予定されていた。同和
解案は、結局、不成立に終わっている。
(2) 被告らの主張(2)は否認する。
3 本件基本覚書3条②記載の「外注製造等」の該当性
(被告らの主張)
(1) 仮に原告らに本件発明の実施が許諾されていたとしても、本件基本覚書3
条②によれば、「外注製造等」が必要となった場合には、原告らは、被告中央機
工、被告古賀機械との協議による必要がある。
(2) 原告旭鋼機は、F社との間に何らの資本的つながりはなく、製品単価等の
指示をF社に出してもいない(むしろF社の見積りに原告旭鋼機が従うという関係
にある。)。また、T社作成の設計図面も、原告旭鋼機を経由することなく、F社
に直接交付され、本件発明の実施品は、T社作成の製造明細表に基づいて製造され
た。したがって、原告旭鋼機によるF社に対する製造依頼は、「外注製造等」に該
当する。
(3) ところが、原告らは、前記(2)の製造依頼について、前記(1)の協議を経て
いなかった。
(原告らの主張)
(1) 本件基本覚書の当事者である原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械
の目的は、本件発明の実施による債権回収の実現にあり、そのためには本件発明の
実施品の市場を独占すること、換言すれば、同市場における競争主体の増大を防止
することが必要であった。ここにいう競争主体とは、自己の計算において自由に本
件発明の実施品を製造販売する独立の経済主体のことである。したがって、本件基
本覚書3条②により被告中央機工、被告古賀機械との協議が必要とされる「外注製
造等」というのは、第三者にライセンスを供与する場合であって、本件発明の実施
品を第三者を機関として製造する場合はこれに含まれない(本件基本覚書3条②
は、特許法73条2項の「契約で別段の定」をしたものではなく、同条3項を再確
認したものにすぎない。)。
(2) 原告旭鋼機によるT社に対する設計図面の作成依頼やF社に対する製造依
頼は、いずれも原告旭鋼機のためにのみ行われ、この依頼に基づく製造物は、すべ
て同原告に引き渡されるものであった。すなわち、T社やF社は、いずれも原告旭
鋼機の機関として行ったにすぎないから、本件基本覚書3条②記載の「外注製造
等」には当たらない。
(3) 被告らの主張(3)は認める。
第3 判断
1 本件の事実経過
 前記基本的事実に証拠(甲17、乙8のほか後掲各書証)及び弁論の全趣旨
を総合すれば、次の事実が認められる。
(1) 平成9年以前より、原告旭鋼機は鋼材を販売し、被告中央機工及び被告古
賀機械は原告旭鋼機から鋼材を購入して機械を製造するという取引関係があった。
これらの3社は、D社に対する資金援助により、D社に対し、各2億円以上の未収
債権を有していた。ところが、D社が平成9年5月ないし6月に手形不渡りを出し
て事実上倒産したため、D社代表取締役であるSが有していた特許を受ける権利の
譲渡を受けることにより、その債権回収を図ることにした。原告旭鋼機及び被告中
央機工は、平成9年9月30日、本件発明について特許出願を行い(被告古賀機械
は、その当時、和議申請中であったため、当初は特許出願人には加わらなかっ
た。)、被告古賀機械を含む3社は、本件発明の実施品の製造販売を開始すること
とした。
(2) もっとも、もともと鋼材の販売会社にすぎなかった原告旭鋼機は、本件発
明の実施品を自ら製造する能力を有していなかったため、被告中央機工や被告古賀
機械の製造に係る実施品を購入して販売せざるを得なかった。被告中央機工や被告
古賀機械としても、原告旭鋼機から、本件発明の実施品の発注があれば、自社の売
り上げにつながるとして、これを拒否することなく、注文に応じていた。他方、被
告中央機工や被告古賀機械は、被告中央機工代表者の設立に係るアグリックス社を
通じて、自らも同製品を販売していた。この結果、前記3社間においても、2つの
販売ルートが併存することになり、被告中央機工及び被告古賀機械と原告旭鋼機と
の間において、その販売先が競合したり、販売価格の値下げ競争が行われるという
不合理な事態が発生し、当初の目的である債権回収に支障を来たすようになった。
(3) そこで、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、平成11
年9月25日付け「有機リサイクル装置製造・販売に関する確認書」(乙2)をも
って、前記(2)のように販売先が競合した場合は先着順とし、被告中央機工及び被告
古賀機械が統一の仕切価格やユーザーへの希望価格を作成する旨を合意するととも
に、D社がリサイクル装置を製造販売する事態が生じていたため、3社とも、技術
面、資金面、営業面のいずれの面からもD社と距離を置くことも合意した。これら
の合意は、前記3社が本件発明を実施することにより、D社に対する各自の未収債
権を回収しようとする当初の目的に沿ったものであった。さらに、前記3社として
は、そもそも販売先が競合しないような、より合理的なシステムを構築する必要が
あると考えるに至り、公認会計士による助言を受けつつ、必要な修正を加え(甲2
3、24)、平成12年5月、前記確認書(乙2)を発展させるものとして、本件
基本覚書(甲10)を締結することとなった。
(4) 本件基本覚書によれば、「有機リサイクル事業に関する業務フロー」(甲
10の別紙2)に示すとおり、製造は、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機
械の3社のみとし、販売は、販売先が競合しないように、3社の共同出資に係る有
機システム有限会社1社に担当させることとし、最終消費者への販売も、当分の間
は、販売代理店を原告旭リサイクル及びアグリックス社の2社のみとし、有機シス
テム有限会社から、この2社を介して行うこととされていた。有機システム有限会
社は、被告リサイクルの前身であり、その設立目的は、顧客情報の一元管理等のみ
ならず、有機リサイクル装置に関する特許権、実用新案権等の知的所有権の集中的
管理にもあった。そして、前記確認書(乙2)の際にも問題となっていたD社(又
は同代表者S)の行為に関しても、3社は共同して法的対処等も含め共同歩調を取
ることが、合意されていた。
(5) 本件特許権の登録日(平成12年8月18日)後も、D社(又は同代表取
締役S)ないしSがかかわったJNS社による本件特許権の侵害行為が継続したこ
とから、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社は、平成12年11月
ころ、この問題を弁理士に相談することとした。同弁理士からは、今後も同様の問
題が発生する可能性がある旨の指摘があった上、3社が統一的に行動するために
は、被告リサイクルに専用実施権を設定し、同社が本件特許権侵害行為に対処すべ
き旨が提案された。本件専用実施権の設定は、このような提案を踏まえたものであ
り、同設定契約の具体的内容というのも、その地域、期間、内容を極めて広汎なも
のとしながら、実施の対価は無償とされていた。本件専用実施権の設定を受けた被
告リサイクルも、弁護士を通じて、同年11月ころから平成13年4月ころにかけ
て、本件特許権侵害の可能性があると判断したJNS社との間で交渉活動を行う
(乙9、10、11の1及び2、12の1及び2、13の1~3、14、15、16の1及
び2)一方、同社には従業員がおらず、本件発明の実施品を製造販売することができ
ない状態に変わりはなかった。
(6) 被告リサイクルの代表者が、平成13年5月10日、原告ら代表者から被
告中央機工代表者に交替するに至り(甲9)、被告ら側としては、本件専用実施権
の設定を前提としても、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社(並び
に被告ら側の販売会社アグリックス社)による本件発明の実施が法的にも問題が生
じないように、本件専用実施権者との契約関係やその実施料額を整備する必要があ
ると考えるようになった。そこで、被告らは、被告古賀機械の顧問弁護士に依頼し
て、本件専用実施権の設定を踏まえた被告リサイクルとの間の契約書案を作成して
もらうこととした。この契約書案(乙3~5)において、販売担当会社は、本件基
本覚書の合意どおり、原告旭リサイクル及びアグリックス社とする(乙3、4「販
売代理店契約」)ことが予定されていたのに対し、製造担当会社は、本件基本覚書
とは異なり、被告中央機工及び被告古賀機械の2社のみが予定されていた(乙5
「製作物供給契約」)。そのため、原告らが、この契約書案に合意することはなか
った。他方、「リサイクル装置特許使用料に関する覚書」は、装置製造担当会社を
原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械の3社、装置販売担当会社を原告旭リ
サイクル及びアグリックス社の2社とするものであったため、平成13年8月18
日、一応の合意に至り(乙7)、同月31日には、その内容を一部変更しながら
も、本件発明の実施品の製造販売について被告リサイクルに支払うべき実施料には
本件基本覚書の別紙1のⅡ①~⑥記載の金員を含むことまで明記された上、合意さ
れるに至った(甲11)。
(7) 原告旭リサイクルの本件受注分について、原告旭鋼機がT社に対する設計
図面の作成やF社に対する製造を依頼したのは、次のような事情に基づくものであ
った。すなわち、従来から、被告らに発注した場合に提示される受注価格が高額で
あると考えていた原告らとしては、F社を含む他社に同見積りを依頼したところ、
1ユニット当たりF社以外の会社が2526万円(甲31)、F社が2700万円
(乙20)と比較的低額であったため、結局、平成13年10月、F社への発注を
決定するに至った(乙21、22)。この点について、原告らが被告らとの間で協
議を経ることはなかった(なお、原告らは、被告古賀機械が、原告旭鋼機からの当
該注文品(ADS-100VT2ユニット)の見積り依頼に対する見積書(甲3
0)を提出したと主張するが、被告らはこれを否認するほか、その根拠とする見積
書(甲30)には、「SS40 100V」という製品型番があるのみで他社に対
する見積り依頼(甲31、32)の製品型番とは異なり(本件実施料覚書(甲1
1)や被告ら側の本件発明の実施品(甲22)の製品型番とも一致しない。)、見
積りの具体的内容も、本件発明の実施品についてのものであることが明らかなF社
の見積り内容(乙20)とは著しく異なり、前記見積書(甲30)を本件発明の実
施品についてのものとは認めるに足りないから、原告らの前記主張は採用すること
ができない。)。
(8) JNS社との間の本件特許権侵害についての交渉過程において、原告旭リ
サイクルの発案(乙11の1及び2)により、被告リサイクルから、JNS社に対
し、本件特許権についての独占的実施権を許諾する内容の和解案が提案され、同案
を前提とした交渉が続けられていた(乙12の1及び2、13の1~3、14、1
5)。この和解交渉の経過については、被告リサイクルの株主でもある本件特許権
者(原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械)も、担当弁護士から報告を受け
る(乙12の1、13の1、14、15の各名宛人欄参照)などして十分に了解して
いた。
 しかし、JNS社に対する前記和解案は、結局、合意されるに至らなかっ
た(乙16の1及び2)、また、JNS社との交渉過程においても、本件特許権者と
しては、Sが取締役であったJNS社から本件発明の実施料を得ることにより、D
社(代表取締役S)に対する債権を回収しようと考えていたものにすぎず、その和
解案の内容も、独占的実施権を設定したJNS社から発注を受けた被告リサイクル
が下請メーカーを使用することを念頭に置いており、自らが本件発明の実施品を製
造することは全く予定していなかった。その担当弁護士からも、本件専用実施権の
設定契約(甲4の1)は、専用実施権登録申請用の契約であるにすぎず、専用実施権
設定に伴う詳細契約はまだ締結されていないという認識が示され、①被告古賀機械
や被告中央機工は、ユーザーから直接受注することもある、②被告リサイクルが本
件特許権者以外の第三者に製造発注することは、被告古賀機械や被告中央機工の意
図するところではないという前提のもとに、JNS社への独占的実施権の設定に際
しては、本件特許権者3社と被告リサイクルとの間でも、発注の道筋を取り決める
必要がある旨の意見が提示されていた(甲34)。
2 争点1(各覚書自体の法的効力)について
(1) 前記1認定の事実によれば、原告旭鋼機、被告中央機工及び被告古賀機械
の3社は、本件発明の実施(設立予定の原告旭リサイクルによる実施を含む。)に
よる各自の未収債権の回収という経済的目的を一貫して有しており、「有機リサイ
クル装置製造・販売に関する確認書」(乙2)や本件基本覚書(甲10)の締結
も、原告ら側と被告ら側との2つの販売ルートの競合による不都合を解消するため
に交わされた約定にすぎず、当初の目的をいささかも変更するものではなかったと
いうべきである。したがって、原告らは、本件基本覚書の締結当時、これに基づ
き、本件発明を実施することが当然予定されていたと考えるのが自然である。ま
た、被告リサイクルに対する実施料の支払額を定めた覚書(甲11、なお、その前
身である乙7も参照。)の締結も、これに記名押印した各社による本件発明の実施
を当然予定するものであったと考えるのが自然である。
(2) これに対し、被告らは、本件基本覚書が、前記3社間の組織作りや役割分
担を合意した基本的な取り決めを定めたものにすぎず、本件発明の実施について具
体的な定めもないことを根拠として、本件基本覚書によっては、原告らが本件発明
を実施することはできない旨を主張する。確かに、本件基本覚書の条項中、抽象的
な記載にとどまる部分が存することは否定できない。しかし、本件基本覚書は、既
に判示したとおり、当初の経済的目的を実現するにとっての障害を是正することに
主眼があるのであって、本件基本覚書の各条項を詳細に検討しても、前記3社によ
る本件発明の実施自体を否定する趣旨は全く窺われない。法的観点からは、やや不
十分な規定にとどまるものであったとしても、本件特許権が本件基本覚書締結当時
は未だ出願中のものにすぎなかった点も考慮すると、必ずしも不合理とはいえない
から、被告らの前記主張は採用することができない。
(3) また、被告らは、本件実施料覚書に被告リサイクルの記名押印がない点を
根拠として、同被告から原告らが実施権の許諾を受けたとはいえないと主張する。
しかし、前記1認定の事実によれば、本件発明の実施という観点からは、被告リサ
イクルが、独立の経済主体ではなく、せいぜい実施料の支払先としか観念されてい
なかったことは明らかであり、本件専用実施権の設定契約締結当時における被告リ
サイクルの代表者が原告らの代表者と同一人物であった(甲4の1、6)ことに照ら
しても、本件実施料覚書に被告リサイクルの記名押印がない点が前記解釈を妨げる
ものではないから、被告らの前記主張は採用することができない。
3 争点2(本件専用実施権設定との関係)について
(1) 専用実施権が設定されれば、専用実施権者は業としてその発明の実施をす
る権利を専有する(特許法77条2項)から、本件においても、本件専用実施権の
設定登録により原告らの本件発明の実施が妨げられる(特許法68条ただし書)の
ではないかという点を検討する必要がある。確かに、本件基本覚書(甲10)はも
とより、本件専用実施権の契約書(甲4の1)自体に、この点に関する明示的な記載
はみられず、原告らによる本件発明の実施を許諾する文書が別途作成されたとも認
めるに足りない。
(2) しかし、前記1認定の事実によれば、本件基本覚書には、被告リサイクル
による本件特許権の集中的管理がもともと予定されており、本件専用実施権設定の
直接的契機も、D社(又は同代表者S)による本件特許権侵害に対処するためとい
うのであって、被告リサイクル自身による本件発明の実施は予定されておらず、実
質的にも、同被告にその実施能力はなかったといわざるを得ない。本件専用実施権
の設定契約の内容に着目しても、仮に被告ら主張のように、特許権者である前記3
社の実施を否定する趣旨のものであれば、自らの未収債権の回収という経済的目的
のために、専用実施権者から相応の対価を徴収して、その目的を実現しようとする
のが通常であると思われるところ、被告リサイクルの支払うべき対価は無償とされ
ているのであるから、本件専用実施権の設定契約が特許権者による本件発明の実施
を否定する趣旨のものであったとは解されない。加えて、本件専用実施権の設定登
録後に、被告リサイクルに対する実施料の支払額を定めた覚書(乙7、甲11)の
締結が、これに記名押印した各社による本件発明の実施を予定するものであったこ
とも、争点1で判示したとおりである。
(3) 確かに、本件専用実施権の設定登録後に、原告ら被告ら間で、本件発明の
実施に関する新たな契約交渉があったことは窺われるが、被告らの発案に係るもの
であり、原告らによる拒否も、原告旭鋼機による製造を否定する内容であったこと
が原因であったとも解されるのであるから、原告らによる本件発明の実施を否定す
る根拠となるものではない。JNS社に提案された和解案も、合意に至らなかった
点で、本件基本覚書に定められた前記の合意内容を何ら変更するものではないばか
りか、JNS社との交渉過程において示された本件特許権者の認識としても、同事
件を受任した担当弁護士の認識(本件専用実施権の設定契約を同登録申請用の契約
にすぎないものと位置付けていた。)と同様であったと考えられる。被告らの主張
する別件実用新案権(甲18~21、乙27の1~4)も、むしろ被告リサイクルの
実施許諾の対象として前記和解案の中に盛り込まれていた可能性を否定し得ない
(乙13の3、14、15。これらの別件実用新案権が被告ら側の本件発明の実施品
に用いられていることにつき、甲22の表紙「実用新案登録」番号参照。)のであ
るから、いずれも前記認定を妨げるものではない。
(4) このような事情に照らすと、法的には、本件専用実施権の設定と同時に、
本件専用実施権者から本件特許権者及びその各販売会社(原告旭リサイクル及びア
グリックス社)に対し、本件基本覚書に定められた限度で、通常実施権を設定する
旨があわせて合意されたと解するのが相当である(この点に関する原告らの主張
は、必ずしも明確ではないが、このような解釈を含む趣旨と解される(原告らの準
備書面(2)21頁等、なお、甲17参照。)。)。したがって、本件専用実施権の設
定登録にもかかわらず、原告らは、本件発明を実施することができるというべきで
ある。
(5) なお、被告らは、本件特許権者に実施権を留保する旨の合意は公序良俗違
反として無効である旨を主張するが、その前提を異にするから、被告らの前記主張
は採用することができない。また、被告らは、特許権者ではない原告旭リサイクル
は実施権を有しないとも主張するが、既に判示したとおり、同原告への通常実施権
の設定も観念することができるから、被告らの前記主張も採用することができな
い。
4 争点3(本件基本覚書3条②記載の「外注製造等」の該当性)について
(1) 本件基本覚書3条②によれば、「外注製造等」が必要となった場合には、
原告旭鋼機は、被告中央機工、被告古賀機械との協議による必要がある旨が規定さ
れているため、前記基本的事実4(2)記載の原告旭鋼機の行為がこれに該当しないか
を次に検討する。原告らは、「外注製造等」というのは、第三者にライセンスを供
与する場合であり、第三者を機関として製造させる場合は含まれないと主張する。
(2) 本件発明は「堆肥化装置及び堆肥化装置における有機廃棄物の撹拌方法」
(甲2)というもので、別紙特許公報(甲2)記載のように、微生物を使用した有
機廃棄物の堆肥化装置に関する技術であり、必ずしも汎用性の高い技術分野に属す
るとはいえず、その実施品の最終価格も、1ユニット当たり数千万円に達するもの
である(甲22、乙6参照)。本件基本覚書が締結されるに至った経緯としても、
被告中央機工及び被告古賀機械と原告旭鋼機との間においてすら、販売先の競合や
販売価格の値下げ競争という事態が発生していたのであるから、前記3社間でも、
本件基本覚書締結当時、その需要者は比較的限られていることが十分認識されてい
たと考えられる(被告ら側の販売会社であるアグリックス社のカタログ(甲22)
でも、焼酎製造元、豆腐製造元、国立大学が実際に導入されたモデルケースとして
紹介されているにとどまる。)。
(3) そして、本件基本覚書の条項中、メンテナンス契約条項では、アグリック
ス社及び原告旭鋼機(又は原告旭リサイクル)の2社が独占的に締結する旨が約さ
れ、その趣旨がメンテナンス契約を独占的契約にすることにより第2次販売代理店
等の無制限の改造を防止し、知的所有権の保護を図ることにあった(甲10の別紙
2)。また、製造条項でも、外注製造等が必要となったときは前記3社の協議によ
り決定する旨を記載したことと対置して、「知的所有権の保護のために製造会社は
3社のみ」とする旨がわざわざ明記されていたものである。加えて、本訴提起前の
被告古賀機械の通知書(乙26)や被告リサイクルの証拠保全申立書(甲12)に
は、原告らが被告中央機工及び被告古賀機械に無断で本件発明の実施を第三者に依
頼することは許されないとの認識が示されており、新たな製作物供給契約案(乙
5)にも、被告古賀機械及び被告中央機工は、独占的排他的に契約製品製造の業務
を行い、下請けに行わせないことを約する旨の独占的製造委託条項(第3条)が、
同被告らの発案に係るものであったにもかかわらず、記載されていたことも併せ考
えると、本件基本覚書において、被告らとの協議を経ることなく原告ら側が本件発
明の実施品を製造し得る場合というのは、原告らが自ら製造する場合か又は被告被
告中央機工又は被告古賀機械にその製造を発注する場合に限られ、それ以外の第三
者に発注する場合は、本件基本覚書3条②の「外注製造等」に該当する(特許法7
3条2項の「別段の定をした場合」に該当する。)というべきである。
(4) これに対し、本件基本覚書の作成に関与した公認会計士作成の陳述書(甲
24)には、「外注製造等」を量産品の製造販売を希望する会社が現れた場合や想
定していない市場が現れた場合を考えていた旨の記載がある。しかし、前記陳述書
の記載は自らの記憶が曖昧であることを自認している点で、直ちに信用することが
できない。仮に同陳述部分を前提としても、本件特許権者自身による対応が不可能
な事態を想定したというのであるから、機関による製造をもともと予定していたと
は解されない。また、本件特許権者3社の知的所有権保護を目的としていたこと自
体は否定していない以上、必ずしも前記推認を妨げるものではない。したがって、
この点に関する原告らの主張は採用することができない。
(5) もっとも、当該第三者が原告旭鋼機の機関というにとどまらず、同原告と
実質的に同一視し得るものと位置付けることが可能であれば、本件基本覚書3条②
の「外注製造等」に該当しないと解する余地がないわけではない。
 そこで、更に検討すると、証拠(後掲各書証)及び弁論の全趣旨によれ
ば、次の事実が認められる。すなわち、被告古賀機械の原告旭鋼機に対する平成1
3年10月3日付け通知書(乙26)による警告後、原告旭鋼機は、F社との間
で、同月12日付け下請取引基本契約書(甲33)を作成した。同契約書には、F
社が原告旭鋼機のためにのみ注文品を製造し、注文品のすべてを同原告に納入する
ことのほか、F社の秘密保持義務、模倣の禁止が契約条項として記載されている一
方、F社は「原告旭鋼機の指揮監督下にある者」とは別人格の主体として位置付け
られており(第2条)、その個別契約の定めにおいても、F社の製造する注文品の
代金等は、別途、原告旭鋼機とF社との間の協議による旨が規定されていた(第3
条)。なお、原告旭鋼機とF社との間では、見積りの提出に関する2001年9月
21日付け契約書(甲32)も作成されており、同契約書には、原告旭鋼機が見積
りに必要な情報をF社に開示することを前提として、F社の機密保持義務、目的外
使用禁止及び秘密情報の返却義務等が規定されている一方、同原告の書面による同
意がある場合に、一定の例外を許容する条項も規定されていた(第3条。
ただし、同契約を2001年9月21日に遡及して発効させる旨の条項(第7条)
が存することに照らし、実際の作成日は後日と推認される。)。原告旭鋼機とF社
とは、その役員構成が共通するわけではなく、資本的なつながりも特に存しない
(乙17~19)。また、原告旭鋼機がF社と同時期に見積りを依頼した他社(甲
31)との関係では、本件特許権侵害を防止するための特段の書面が交わされた形
跡はない。
 前記認定の事実によれば、被告古賀機械の警告を踏まえ、原告旭鋼機が、
本件特許権侵害防止のために、F社との関係において一応の対策を講じようとした
ことは窺われるが、むしろ当該措置を講じなければF社をコントロールすることが
できない旨の原告旭鋼機の認識を反映したものといえる。のみならず、F社との各
契約内容も、F社の意思決定の自由を奪うものとは評価することはできず、F社
は、原告旭鋼機とは別個独立の経済主体たる地位を何ら失っていないというべきで
ある。したがって、仮に当該第三者を原告旭鋼機と実質的に同一視し得る場合には
本件基本覚書3条②の「外注製造等」に含まれないとみることができるとしても、
本件では、F社を原告旭鋼機と実質的に同一視し得るということはできないから、
「外注製造等」の該当性を否定するものではない。この理は、設計図面の作成を依
頼したT社についても同様である(乙28)。
5 まとめ
 したがって、本件専用実施権者から原告らに対する通常実施権の許諾は、も
ともと予定されていた本件基本覚書に定められた限度にとどまるものであるとこ
ろ、原告らによる本件発明の実施(原告旭鋼機による「外注製造等」が原告旭リサ
イクルの発注に係るものであったことは、前記基本的事実4(1)認定のとおりであ
る。)は、本件基本覚書3条②に違反したものであるから、専用実施権者である被
告リサイクルは、原告らに対し、その実施を差し止める権利を有することになる。
被告らが、その有する本件特許権又は本件専用実施権の侵害の事実を原告らの取引
先等の第三者に告知することは、その権利侵害を阻止するための正当な権利行使で
あって、これを虚偽の事実を告知流布する(不正競争防止法2条1項14号)もの
ということはできない。
第4 結論
 以上によれば、原告らの請求は、いずれも理由がない(なお、本件基本覚書
締結当時はもとより、現時点においても、原告らが本件発明の実施品を製造する能
力を有しないことは明らかであり、第三者に対する外注製造も制限を受ける結果、
原告らとしては、事実上、被告中央機工又は被告古賀機械から同実施品を購入せざ
るを得ないことになる。そして、仮にその購入価格が著しく高額であれば、原告ら
の実施を否定するに等しい事態が生ずることも想定されるところではある。しか
し、そのような事態を避けるために、本件基本覚書では、本件特許権者3社の協議
により、統一の仕切価格及び最終消費者への販売希望価格を決定することがもとも
と予定されており(本件基本覚書4条②)、被告ら側からも、同条項に沿った一応
の案(乙6)が提示され、同案によれば、原告ら側の転売利益を完全に否定するほ
どの購入価格が設定されているとまではいえない。また、本件基本覚書4条③によ
れば、同一最終消費者への営業が競合した場合には、共同受注に努め、前記3社間
の協議によりその割合を決定することまで予定されている。これらの点に照らせ
ば、原告らとしては、自ら合意した本件基本覚書の定めるところに従って、被告ら
との各協議を行うべきであり、仮に自らの希望する内容にそぐわず、前記協議が不
調に終わったとすれば、本件特許権について共有物分割請求を行うほかないことを
付言する。)。
 大阪地方裁判所第21民事部
       裁判長裁判官    小  松  一  雄
          裁判官中  平     健
 裁判官田  中  秀  幸  
物 件 目 録
 次の各有機廃棄物リサイクル装置(商品名 有機リサイクル装置Aベッセル)
    型 式       本体内容積       サ イ ズ
1 ADS-15VT    1.5m3
   W4273㎜×D1249㎜×H2173㎜
2ADS-21VT    2.1m3
   W4420㎜×D2145㎜×H2217㎜
3ADS-50VT    5.0m3
   W4875㎜×D2800㎜×H4465㎜
4ADS-72VT    7.2m3
   W6075㎜×D2800㎜×H4627㎜
5ADS-100VT  10.0m3
   W6065㎜×D3945㎜×H5677㎜

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