弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴趣意は弁護人小松正次郎提出の控訴趣意書記載のとおりであるからこれ
を引用する。
 所論の要旨は、被告人は原判示の如くAを殴つたことはない。これを認めた警察
及び検察官に対する供述調書は被告人の原審公判廷における一貫した否認の供述に
徴し任意性を欠くものである。仮に被告人がAを殴つたにしても、原判示物置小屋
が取毀されているとの報せを受けて極度に興奮し心神喪失の状態にあつたもので被
告人は刑責がないし、更にまた仮に然らずとしても、被告人父子が占有している物
置小屋が、所有者であるB協同組合連合会の指図によりその雇つた作業員により承
諾なしに取毀されるという急迫不正の侵害に対し、これを防衛するため止むことを
得ざるに出でた正当防衛行為であるから刑責はない。以上理由がないにしても原審
の量刑は重すぎるというのである。
 しかしながら、原審証人C、Dの証言によると警察及び検察庁における被告人の
供述が任意にされたものであることが認められ、他に右調書の任意性に疑を挿むべ
き何等の資料はなく、而して供述調書及び原判決の挙げる証人A(二回)、E(二
回)、F、G、Hの証言を綜合すると、被告人が原判示のとおりAを殴打したこと
は充分これを認めることができる。而して右証拠によると被告人は連合会の処置に
対し立腹していたことは認められるが、これがため心神喪失の状態に陥つて本件所
為に及んだものとは認められないし、又右所為に及んだのは、従来被告人父子等に
おいて占有使用してきた連合会所有の原判示物置小屋の明渡しの交渉の結末がつか
ないうちに、連合会は明渡訴訟の結果等法的手段によらず判示日時頃右連合会の職
員F外一名が判示Aを含む人夫四人を引きつれて右小屋の取りこわしに行き、被告
人の父Iの制止するのをきかず、取りこわしにがかつたので、急報を受けた被告人
は現場にかけつけ、おりから小屋の屋根のトタン板の取りはずし作業をしていた右
Aの頭と肩とを背後から丸太棒をもつてどなりながら二回殴打したこと、被告人は
検察官に対しAを殴打したのは正当防衛による旨を供述しているが、司法警察員に
対しては「私はいそいで自宅へ帰り物置小屋を見ると、四、五人の人夫がこわして
いるので、立腹してこわしている現場へ行きました。見ると道具を外へほうり出し
ているので、かつとなり、どこで握つたのかはつきり記憶しませんが、現場で丸太
棒をもつて、おれの家の小屋を誰にことわつてこわしているのかと言うと、人夫
は、私達は連合会の命令で来たのや文句があれば上の人に言つてくれと申したの
で、私は丸太棒を握りAに傷を負わしたが、興奮していたので、どこをたたいたか
記憶はない」と供述しているこ<要旨>とが認められる。以上を総合すると、右小屋
に対する被告人らの占拠が不法なものであつたとしても、これを排除するに
は法的手段によるべく、実力をもつて右小屋の取こわしをするがごときことは、ま
さに急迫不正の侵害に該当するという外はなく、被告人が判示暴行をあえてしたの
は防衛の意思によるとともに、相手方に対する憤激によるものと考えられる。そし
て行為が正当防衛となるためにはもつぱら防衛の意思によることを要するとの考え
方もあるが、しかし他人から侵害をうけて憤激の情を持つことなくもつぱら防衛の
意思によつて反撃する場合に限り正当防衛を認めるのは人間本来の感情性を無視し
た立論というの外はなく、憤激の情を発しながら且つ防衛の意思による場合でも正
当防衛となる場合があるとすべきであり、それが正当防衛となるか否かは、刑法第
三六条にいわゆる已むことを得ざるに出でたか否かによつて決すべきものと解する
のを相当とする。そして已むことを得ないか否かは具体的状況に照し通常何人も執
るべき程度の行為であるか否か換言すれば相当性があるか否かによつて決すべく、
被告人の本件行為は、屋根に上つている前記Aに対し屋根の取りこわしを制止すべ
き交渉をすることなく、いきなり丸太棒をもつてしかも背後から同人の頭と肩とを
殴打したもので、かくのごときは已むことを得なかつたものとすることはとうてい
できない。従つて被告人は傷害の罪責は免れないことはもちろんである。次に本件
犯行の動機、態様、被告人の傷害罪の前科等記録に現われた諸般の事情を考える
と、所論を斟酌しても、被告人を罰金三、〇〇〇円に処した原審の量刑は決して重
すぎるとは認められないから所論はいずれも理由なく、本件控訴は棄却すべきもの
とし刑訴第三九六条、訴訟費用の負担につき同法第一八一条第一項を適用して主文
のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 松村寿伝夫 裁判官 小川武夫 裁判官 柳田俊雄)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛