弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人原良男の上告趣意第一点、同平松勇の上告趣意第二点について。
 刑事事件において適正且つ迅速な裁判は、憲法上の要請であるとともにまた刑訴
法の目的とするところであるが(憲法三七条一項、刑訴法一条)、迅速な裁判の要
請は、適正な裁判並びに被告人の防禦権保持の要請と、なんら本質的に相容れない
ものではないのである。ところで、公職選挙法二五一条及び二五一条の二によれば、
同法による選挙の当選人が、自らその選挙に関し同条所定の罪を犯し刑に処せられ
たとき、及び選挙運動の総括主宰者又は出納責任者がその選挙に関し同条所定の罪
を犯して刑に処せられたときは、当該当選人の当選が無効となるのであるから、当
選人又は総括主宰者、出納責任者らが右犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された刑事
事件にあつては、事犯の性質上、右当選人としての法律関係を速かに確定させるた
め、特に他の事件に優先して審理判決すべき要請が存するのであり、同法二五三条
の二の規定は、まさに右の要請に応えようとする趣旨に出でたものであつて、合理
的な根拠があるものとして是認されるべく、これがため裁判が粗漏、拙速に流れ被
告人の防禦権を不当に制限するも可なりとする趣旨でないこと固よりである。それ
ゆえ同条の規定をもつて憲法一四条に違反するものとすることはできない。また、
憲法三七条一項にいう「公平な裁判所の裁判」というのは、組織構成等において偏
頗のおそれのない裁判所による裁判という意味であり(昭和二二年(れ)第一七一
号同二三年五月五日言渡、昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日言渡各大
法廷判決)、憲法三七条二項は被告人又は弁護人からした申請に基きすべての証人
を喚問し不必要と思われる証人までをも悉く尋問しなければならないとする趣旨を
定めたものでないこと(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日言渡大法廷判決)
いずれも当大法廷の判例の趣旨とするところである。それゆえ論旨は理由がない。
 弁護人原良男の上告趣意第二点について。
 記録によれば、原判決は所論「共謀」又は「謀議」の事実を厳格な証明によつて
認定していること明白であるから、判例違反の主張は前提を欠き採るを得ない。
 弁護人平松勇の上告趣意第一点について。
 所論は、上告趣意書差出最終日を延期しなかつた当審の措置を非難するもので、
原判決の違法違憲を主張するものではないから、上告適法の理由とならない。
 弁護人草光義質の上告趣意は単なる法令違反の主張で上告適法の理由とならない。
(原判決がその是認した事実について示した擬律は相当である。)
 弁護人原良男の上告趣意第三点は訴訟法違反及び事実誤認、弁護人平松勇の上告
趣意第三点及び第四点は各訴訟法違反、第五点は再審請求事由の存在、第六点及び
第七点は各事実誤認の主張であつて以上すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
弁護人柏木博の上告趣意のうち憲法違反をいう点は、憲法三七条一項にいう「公平
な裁判所の裁判」とは、組織構成等において偏頗のおそれのない裁判所による裁判
という意味であることすでに説示したとおりであるから理由がなく、所論のうち訴
訟法違反及び事実誤認を主張する点は、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。
 弁護人平松勇の上告趣意補充書(昭和三五年一一月五日付)は上告趣意書提出期
間経過後の提出にかかる不適法のものであるからこれに対しては判断を加えない。
 記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、弁護人原良男の上告趣意第一点、弁護人平松勇の上告趣意第二点につき
裁判官斎藤悠輔、同池田克、同下飯坂潤夫の意見があるほか、裁判官全員一致の意
見で刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
 右論点に対する裁判官斎藤悠輔、同池田克、同下飯坂潤夫の意見は、次のとおり
である。
 公職選挙法二五三条の二の規定は、元来全審級に通ずる訓示的規定であつて、こ
れに従うと否とによつて判決に影響を及ぼすものではない(現に原一、二審判決は
同条項所定の期間内になされていないこと記録上明らかである)。されば所論は上
告適法の理由と認められない。しかのみならず同条は、当選人又は総括主宰者、出
納責任者が同条所定の犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された刑事事件においては、
当選人としての法律関係を速かに確定させるため他の事件に優先して審理判決すべ
きものとする法意にほかならないのであつて、これがため裁判が粗漏、拙速に流れ
被告人の防禦権を不当に制限するも可なりとする趣旨でないことは明らかである。
しかるに論旨は、同条の規定によつて被告人の防禦権が不当に制限され被告人が特
に不利益を被むるものであることを前提として、同条が憲法一四条、三七条に違反
すると主張するものであるから、違憲の主張はその前提をも欠き、この点よりする
も上告適法の理由とするをえないものである。
  昭和三六年六月二八日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    横   田   喜 三 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    高   木   常   七
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    山   田   作 之 助

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛