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平成26年11月20日判決言渡
平成26年(ネ)第10091号損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成26年第15374号)
口頭弁論終結日平成26年11月11日
判決
控訴人株式会社イー・ピー・ルーム
被控訴人国
指定代理人中島伸一郎
同浅原陽子
同駒崎利徳
同平川千鶴子
同古閑裕人
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人は,控訴人に対し,30万円及びこれに対する平成26年6月3
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
1控訴人は,平成9年5月2日,発明の名称を「放電焼結装置」とする特許の
設定登録を受けた(特許第2640694号)。特許庁は,異議申立て(平成
10年異議第70682号)を受け,平成13年7月4日,上記特許を取り消
す決定(以下「本件取消決定」という。)をした。
本件は,控訴人が,特許庁がした本件取消決定が国家賠償法上違法であると
主張して,被控訴人に対し,30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日で
ある平成26年6月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金の支払を求めた事案である。
原審は,控訴人は,本件取消決定の違法を主張して国に対する損害賠償請求
訴訟の提起を繰り返しており,本件訴えも,これら前訴の実質的蒸し返しであ
り,信義則に反し,かつ,訴権の濫用に当たる不適法なものであるとして,本
件訴えを却下したため,控訴人が前記第1の1の裁判を求めて控訴した。
2前提となる事実及び当事者の主張は,後記3のとおり,当審における控訴人
の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の2及び3記載のと
おりであるから,これを引用する。ただし,原判決3頁25,26行目の「乙
1・6頁」の次に「,乙3の1・3頁」を加える。
3当審における控訴人の主張
原判決第2の2のアの判決(以下「前記アの判決」といい,同イないし
サの判決についても同様にいう。)には再審事由があるから,本件訴えを退
ける理由には当たらない。
前記イの判決には,控訴人の立証権を侵害した違法があり,現在東京地方
裁判所に係属しているから,本件訴えを退ける理由には当たらない。
前記ウないしサの判決は,いずれも給付の原因に対する裁判を脱漏したも
のであるから,脱漏した給付の原因に基づく給付の訴えである本件訴えは,
給付の訴えを脱漏した裁判の繰り返しには当たらない。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,本件訴えは,前訴の実質的蒸し返しであり,信義則に反し,か
つ,訴権の濫用に当たる不適法なものであると判断する。その理由は,当審に
おける主張について,次のとおり判断するほか,原判決「事実及び理由」の第
3(原判決5頁23行目冒頭から26行目末尾まで。)記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
1当審における控訴人の主張について
控訴人は,前記アの判決には再審事由があるから,本件訴えを退ける理由
には当たらないと主張する。
しかし,原判決が前訴の蒸し返しであるとして挙げている訴訟は,前記ウ
ないしサの判決に係るものであり,前記アの判決に係る訴訟はこれに含まれ
ていない。
したがって,控訴人の上記主張は,前提を欠くものであって,採用するこ
とができない。
控訴人は,前記イの判決には,控訴人の立証権を侵害した違法があり,現
在東京地方裁判所に係属しているから,本件訴えを退ける理由には当たらな
いと主張する。
しかし,前記のとおり,原判決が前訴の蒸し返しであるとして挙げてい
る訴訟は,前記ウないしサの判決に係るものであり,前記イの判決に係る訴
訟はこれに含まれていない。
したがって,控訴人の上記主張は,前提を欠くものであって,採用するこ
とができない。
控訴人は,前記ウないしサの判決は,いずれも給付の原因に対する裁判を
脱漏したものであるから,脱漏した給付の原因に基づく給付の訴えである本
件訴えは,給付の訴えを脱漏した裁判の繰り返しには当たらないと主張す
る。
控訴人の上記主張は,前記ウないしサの判決に係る訴訟において,控訴人
の主張する給付の原因(本件取消決定の違法)について,判断が示されてい
ないことをいうものと解されるが,判決においては,当該請求に対する結論
となる主文を導くについて必要な判断が示されていれば足り,主張された給
付の原因の全てについて判断しなければならないものではないから,前記ウ
ないしサの判決に何らかの瑕疵があるとは認められない。また,控訴人の上
記主張が,前記ウないしサの判決に裁判の脱漏(民事訴訟法258条)があ
るとの趣旨であるとしても,弁論の全趣旨によれば,上記各判決はいずれ
も,請求の一部について判断したものではないから,裁判の脱漏がないこと
は明らかである。
いずれにしても,控訴人の上記主張は採用することができない。
2結論
以上のとおりであるから,本件訴えを却下した原判決は相当であり,本件控
訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官石井忠雄
裁判官西理香
裁判官田中正哉

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