弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大竹武七郎、平松勇、中松澗之助上告趣意第一点論旨(イ)について。
 原判決が判示冒頭事実に関する証拠中被告人Aが判示代行商社の増資に関する事
務を分担していた点を、同人の第一審公判廷における供述中から除外して採証して
いることは所論のとおりである。しかし原判決説示に明らかなように相被告人B関
係の贈収賄の証拠として第一審公判調書中証人Cの供述記載及び証明書写(記録第
四冊一四七丁)を挙示してこれを補充しているのであり、その趣旨は冒頭事実に関
する点についても補充されたものと認められるのであるから、所論のように証拠が
なくなり理由不備となることはない、即ち被告人は貿易庁輸入局第一課事務官であ
ることは、第一審公判廷における被告人の判示同旨の供述記載で認められ、第一課
の事務官が所論増資事務を分担していたことは、前掲補充証拠で認められるのであ
るから所論のような違法はない。
 同論旨(ロ)について。
 所論昭和二一、六、一〇附輸入第一課職員事務分担表(記録二冊九三丁)によつ
ては必ずしも被告人が所論のように「その係」でなかつたことは明らかとはいえな
いし、所論Cの供述は雑品輸入協会設立前には、第一課事務官が所論事務を行う旨
の判示に副う供述であるから、原判決には所論のような違法はない。
 同論旨(ハ)について。
 原判決が所論証明書写を証拠として採用していることは所論のとおりである、し
かし右写は貿易庁長官の証明文書の写であつて原審公判廷において、証拠調が適法
になされこれに対し被告人は意見弁解なく、又作成者の尋問を求あることもしてい
ない、それ故原審は右写を原本と相違ないものと認めたものというべく、そして自
由心証に基いて判示事実認定の証拠としたものであるから、所論のような違法はな
いものといわねばならない。
 同第二点について。
 しかし原審記録の表紙に「昭和二四年押第一一五六号」という表示があるので所
論のように判示押号が記録上根拠のないものとはいえない、そして原審第五回公判
において、押収証拠物件全部を示した記載(記録四九二丁)があるので所論没収に
かかる証拠品の証拠調も適法になされたものといわねばならない、のみならず公判
において証拠調をしない押収品について、没収の言渡をすることは何等違法ではな
いから論旨は理由がない。 (昭和二三年(れ)第四三九号同年七月二九日第二小
法廷判決参照)
 同第三点について。
 しかし原審は第一審各公判調書の証拠調を遂げ、原判決判示においては、これら
公判調書における夫々の供述を供述記載として証拠に引用しているのであるから論
旨は理由がない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 平出禾関与
  昭和二六年一一月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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