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平成15年6月27日 判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(ハ)第5096号 賃金等請求事件
平成15年6月17日 口頭弁論終結
         判     決
         主     文
1 被告は,原告Aに対し,金26万1868円並びに内金13万円に対する平成15年1月
11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員及び内金13万1868
円に対する平成14年12月21日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員
を支払え。
2 被告は,原告Bに対し,金32万6125円並びに内金16万1290円に対する平成15
年1月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員及び内金16万4
835円に対する平成14年12月21日から支払済みまで年5パーセントの割合による
金員を支払え。
3 原告らのその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
         事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 被告は,原告Aに対し,金33万1868円並びに内金20万円に対する平成15年1
月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員及び内金13万1
868円に対する平成14年12月21日から支払済みまで年5パーセントの割合によ
る金員を支払え。
 2 被告は,原告Bに対し,金41万4835円並びに内金25万円に対する平成15年1
月11日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員及び内金16万4
835円に対する平成14年12月21日から支払済みまで年5パーセントの割合によ
る金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 原告Aの請求原因の要旨
(1) 賃金請求について
 ア 原告Aは,平成13年10月20日,被告との間で,基本給,月給最低保障20
万円,支払日,毎月末日締め翌月10日払の約定で労働する契約を締結し
た。
イ 原告Aは,上記労務に服したが,被告は,平成14年12月1日から同月20日
までの賃金20万円を支払わない。
ウ 原告Aは,平成14年12月20日,被告を退職した。
(2) 解雇予告手当請求について
ア 第2,1,(1),アのとおり
イ 被告は,平成14年12月10日,原告Aに対し,同月20日で解雇する旨の意
思表示をした。
ウ 原告Aの解雇前3か月間(平成14年9月1日から同年11月30日までの91
日間)の賃金の合計額は60万円であるから,被告は,原告Aに対し,予告期
間の不足する20日分の平均賃金に相当する13万1868円の解雇予告手当
を支払う義務がある。
2原告Bの請求原因の要旨
(1) 賃金請求について
 ア 原告Bは,平成14年4月1日,被告との間で,基本給,月給最低保障25万
円,支払日,毎月末日締め翌月10日払の約定で労働する契約を締結した。
イ 原告Bは,上記労務に服したが,被告は,平成14年12月1日から同月20日
までの賃金25万円を支払わない。
ウ 原告Bは,平成14年12月20日,被告を退職した。
(2) 解雇予告手当請求について
ア 第2,2,(1),アのとおり
イ 被告は,平成14年12月10日,原告Bに対し,同月20日で解雇する旨の意
思表示をした。
ウ 原告Bの解雇前3か月間(平成14年9月1日から同年11月30日までの91
日間)の賃金の合計額は,75万円であるから,被告は,原告Bに対し,予告
期間の不足する20日分の平均賃金に相当する16万4835円の解雇予告手
当を支払う義務がある。
3 被告の主張
被告と原告らは,雇用関係にはない。原告らは,マッサージ師という個人事業主
であり,被告は場所を提供しているに過ぎない。客がマッサージ師である原告らに
料金を支払い,原告らは,その中から,場所代として,歩合制により一定割合を被
告に支払うシステムである。原告らに支払う報酬も税込みで支払っており,源泉徴
収をしていない。したがって,被告は,原告らに対し,解雇予告手当を支払う義務
はない。
4 争点
 (1) 原告らと被告との契約は,雇用契約であったか,それとも個人事業者としての
契約であったか。
(2)被告の原告らに対する未払報酬の額はいくらか。
(3) 原告らは,被告に対し,解雇予告手当を請求することができるか。
第3 争点に対する判断
1争点(1)について
 (1) 証拠によれば,次の事実が認められる。
ア 被告は,マッサージ師等を募集するに当たって,「医道の日本」に求人広告
を出したが,その紙面には,給与面について「給与:歩合制,固定給+歩合制
等有,最低保障25万~40万/月,待遇:昇給制有」等と掲載されているこ
と。
イ 原告らの勤務時間は,それぞれ特定の時間帯が約定されていること。
ウ 勤務の場所は,東京都新宿区甲a丁目b番c号乙ハイツ5階で,原告らは出
勤すると同所で待機し,客がくる都度,原則としてローテーションで接客に当た
ったこと。
エ 客が支払った料金は,歩合制により原告らが6割を,被告が4割をそれぞれ取
得したこと。
オ 来客がなかった場合は,勤務形態により月単位,日単位又は時間単位によ
る最低保障額が約束されていたこと。
カ 原告らは,客の求めによっては,鍼を使用することもあったが,その鍼は被
告が用意していたこと。
キ 原告らの所得に対しては,被告による源泉徴収は行われず,原告らが個人で
税務申告をしていたこと。
(2) 上記のアないしカの事実によれば,原告らは,被告の管理のもとに業務を遂行
していたのであり,被告と原告ら間には,使用従属関係があったと認められるか
ら,原告らは,労働者として,被告に雇用されたと認めるのが相当である。
なお,報酬が歩合制であったことは,雇用契約と認定することの妨げとはなら
ない。また,原告らの所得に対して被告による源泉徴収が行われず,原告らが
個人で税務申告をしていた事実は,被告の個人事業者であるとの主張に有利に
働く事実ではあるが,被告が源泉徴収を行わなかったために,原告らが個人とし
て税務申告をしたと推認できるから,この事実があるからといって,上記認定を
妨げるものではない。
2争点(2)について
(1) 原告Aの請求について
 原告Aは,平成14年12月分の未払賃金について,出勤日は12月20日まで
であったが,出勤日数は前月と変わらないから1か月の最低保証額である20万
円(争いがない。)を請求する旨主張するが,出勤日数が前月と変わらない事実
を認めるに足りる証拠はない。
そうすると,1か月の最低保証額である20万円を日割計算することになるが,
被告は13万円の限度で支払義務があることを認めており,この額は日割計算
の額を超えるから,被告の原告Aに対する未払賃金の額は13万円となる。
(2) 原告Bの請求について
原告Bは,平成14年12月分の未払賃金として,1か月の最低保証額である25
万円(争いがない。)を請求する旨主張するが,弁論の全趣旨によれば,同人
は,12月は20日までしか稼働していないことが認められるから,日割計算をす
ることとなり,その額は16万1290円(25万円×20日÷31日)となる。したがっ
て,被告は,原告Bに対し,賃料として上記金額を支払う義務がある。
3 争点(3)について
(1) 証拠によれば,次の事実が認められる。
被告は,原告らが所属していた丙事業部の業績が上がらないため,平成14
年12月20日をもって同事業部を閉鎖することとし,同年12月10日に,原告ら
に対し,その旨告知したことが認められる。
(2) 被告と原告らの契約が雇用契約であり,原告らが労働者と認められることは上
記のとおりであるから,被告による上記丙事業部閉鎖の告知は,解雇の予告と
認めるのが相当であり,原告らは,被告に対し,予告期間の不足する20日分の
解雇予告手当を請求することができるというべきである。
(3) 原告Aの請求について
原告Aの解雇前3か月間の報酬の総額が60万円であることは当事者間に争
いがないから,その期間の総日数である91日で除した平均賃金の20日分の額
は,13万1868円となる(60万円÷91×(30-10))。
したがって,被告は,原告Aに対し,解雇予告手当として上記金額を支払う義
務がある。
(4) 原告Bの請求について
原告Bの解雇前3か月間の報酬の総額が75万円であることは当事者間に争
いがないから,その期間の総日数である91日で除した平均賃金の20日分の額
は,16万4835円となる(75万円÷91×(30-10))。
したがって,被告は,原告Bに対し,解雇予告手当として上記金額を支払う義
務がある。
4 以上によれば,被告は,原告Aに対しては,賃金の未払分13万円及び解雇予告
手当13万1868円の合計26万1868円並びに遅延損害金を,原告Bに対して
は,賃金の未払分16万1290円及び解雇予告手当16万4835円の合計32万6
125円並びに遅延損害金をそれぞれ支払う義務がある。
  よって,原告らの請求は,主文1項及び2項の限度で理由があるから,主文のとお
り判決する。
    東京簡易裁判所民事第1室
        裁 判 官 若  生  朋  美

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