弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人北村巖、同北村春江、同酒井圭次の上告理由第一点について。
 論旨は、本件買収処分が訴外亡D宛になされたものであることを前提とするもの
であるところ、原判決は、右買収処分は実質上上告人に対するものと看做しうると
しているのである。したがつて、論旨は、その前提を欠くものであり、採用するこ
とができない。
 同第二点について。
 原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、本件買収処分当時、
その対象となつた各農地は、公簿上は元の所有者である訴外亡D名義となつていた
けれども、その家督相続人訴外亡Eからの家督相続により、すでに上告人の所有と
なつていたところ、本件買収処分は、うち一筆に関するものは買収計画書の所有者
氏名欄にA(D)と、その余の一三筆に関するものは同欄にDと、各記載して樹立
した買収計画に基づき、いずれもD名義の買収令書を上告人に交付してなされたも
のであるが、a地区農地委員会は、Dがすでに死亡し、上告人が右各農地の所有者
であることを知つていたので、前記一三筆に関する買収計画書、買収令書には、い
ずれもその摘要欄にAと記載しており、右農地委員会も被上告人大阪府知事も、と
もに真の所有者である上告人を相手方とする意思で手続を進めたものであり、一方、
上告人は、当時右買収令書を受領したのであるから、自己の所有に属する本件各農
地について買収計画が樹立され、買収処分がなされたことを知り、若しくは知りう
べき状態にあつた等の事実を確定し、この事実関係から、実質上上告人を相手方と
する農地買収処分があつたものと看做しうるとしているのである。所論の点に関す
る原審の事実の認定は、当事者間に争いのない事実関係および原判決挙示の証拠関
係に照らして首肯することができ、また、これに基づく原審の判断も正当として是
認することができる。原判決には所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の
専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するか、独自の見解に立つて原判決を
非難するものであつて、採用することができない。
 同第三点について。
 原判決および記録を精査するも、所論の違法は見当らない。論旨は採用すること
ができない。
 よつて民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    関   根   小   郷

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