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平成15年6月24日判決言渡平成9年(ワ)第12659号 損害賠償請求事件
(甲事件)平成9年(ワ)第13285号 損害賠償請求事件(乙事件)平成15年
(ワ)第3932号 供託金還付請求権確認請求事件(反訴事件)
判決
主な当事者等の略称
  株式会社ソフトウェアジャパンを
             「ソフトウェアジャパン」又は「破産会社」とする。
  甲事件原告,乙事件被告,反訴被告・株式会社ソフトウェアジャパン
           訴訟承継人破産者株式会社ソフトウェアジャパン
           破産管財人弁護士狐塚鉄世を
  「原告管財人」又は「乙事件被告管財人」又は「反訴被告管財人」とする。
甲事件原告,乙事件被告・Aを
           「原告A」又は「乙事件被告A」とする。
甲事件被告,乙事件原告,反訴原告・カテナ株式会社を
        「被告カテナ」又は「被告会社」又は
          「乙事件原告カテナ」又は「反訴原告カテナ」とする。
甲事件被告,乙事件原告・Bを
              「被告B」又は「乙事件原告B」とする。
甲事件被告,乙事件原告・Cを
          「被告C」又は「乙事件原告C」とする。
主文
 1 甲事件原告らの請求をいずれも棄却する。
 2 反訴原告カテナと反訴被告管財人との間において,別紙1(供託金目録)記
載の各供託金について,反訴原告カテナが還付請求権を有することを確認する。
 3 乙事件被告Aは,乙事件原告カテナに対し,金220万円及びこれに対する
平成9年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 4 乙事件原告カテナのその余の請求,乙事件原告Bの請求及び乙事件原告Cの
請求を,いずれも棄却する。
 5 訴訟費用は,全ての事件を通じてこれを6分し,その1を被告カテナ,被告
B及び被告Cの,その2を原告Aの,その余を原告管財人の,それぞれ負担とす
る。
 6 この判決は,主文第3項及び第5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
(甲事件,反訴事件)
1 甲事件原告管財人の請求
 (1) 被告カテナは,原告管財人に対し,金31億5733万6321円及びこれ
に対する平成11年2月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払
え。
(2) 原告管財人と被告カテナとの間において,別紙1(供託金目録)記載の各供託
金について,原告管財人が還付請求権を有することを確認する。
2 甲事件原告Aの請求
  被告らは,原告Aに対し,連帯して金10億6250万円及びこれに対する平
成8年9月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 反訴原告カテナの反訴請求
  反訴原告カテナと反訴被告管財人との間において,別紙1(供託金目録)記載
の各供託金について,反訴原告カテナが還付請求権を有することを確認する。
(乙事件)
1 東京地方裁判所平成10年(フ)第367号破産事件につき,破産会社に対し,
乙事件原告カテナが金5億4107万円及びこれに対する平成9年7月5日から支
払済みまで年5分の割合による遅延損害金請求権を,乙事件原告Bが金1億110
7万円及びこれに対する平成9年7月5日から支払済みまで年5分の割合による遅
延損害金請求権を,乙事件原告Cが金5657万円及びこれに対する平成9年7月
5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金請求権を,それぞれ破産債権
として有することを確定する。
2 乙事件被告Aは,乙事件原告カテナに対して金5億4107万円及びこれに対
する平成9年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を,乙事件原告
Bに対して金1億1107万円及びこれに対する平成9年7月21日から支払済み
まで年5分の割合による金員を,乙事件原告Cに対して金5657万円及びこれに
対する平成9年7月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ
支払え。
第2 事案の概要
   本件は,平成8年当時コンピューター・ソフトの販売で業界第2位であった
ソフトウェアジャパンが,同じく業界第3位の被告カテナから20億円の融資を受
け,被告カテナとの合併に合意したが,合併準備手続の中でソフトウェアジャパン
の財務状況の評価をめぐって争いになり,被告カテナとの合併を取りやめたことに
よって生じた一連の紛争である。
 甲事件は,ソフトウェアジャパン(破産宣告後に破産管財人が承継)とその社長
であった原告Aが,被告カテナ,同社の社長である被告B及び同社の専務取締役で
あった被告Cに対し,被告らは合併意思がないのに合併を装い不当な資産評価によ
ってソフトウェアジャパンを破産に追い込んだなどとして損害賠償を請求するとと
もに,否認権を行使しして上記融資の担保としてした債権譲渡の効力を争い,回収
分の返還と供託された分について還付請求権の確認とを請求しているものである。
 乙事件は,合併が白紙に戻った後,原告Aが業界関係者に対して被告らが合併詐
欺を行ったなどと記載した文書を配布したりしたことから,被告カテナらが,ソフ
トウェアジャパンと原告Aに対して,これらの行為は信用毀損や名誉毀損であるこ
とや,同旨の本件訴訟は不当訴訟であるなどとして,損害賠償請求をしているもの
である。
 反訴事件は,甲事件で問題となっている供託金について,被告カテナが破産管財
人に対して還付請求権の確認を求めているものである。
1 基本となる事実(証拠を掲記したもの以外は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア ソフトウェアジャパンは,コンピューターのソフトウェア,ハードウェア及び
システムの調査,開発,販売,コンサルタント業務を主たる目的とする株式会社で
あり,平成8年3月期当時の資本金は4億5230万円,発行済株式総数は541
万株,売上高約380億円で,ソフトウェア流通業界において業界第2位のシェア
を有していた(甲11号証,甲17号証(以下「A陳述書」という。),乙55号
証の1)。
 なお,ソフトウェアジャパンは,平成8年10月31日に自己破産の申立てをす
る旨発表したものの,同日,これを撤回して以降任意整理を行っていたが,平成1
0年1月30日に被告カテナほかの債権者による破産申立てがなされ,同年9月7
日午後3時30分,破産宣告を受け,原告管財人がその破産管財人に選任されてい
る(乙70号証と乙122号証(以下両者を併せて「C陳述書」という。),乙1
25号証)。
   イ 原告Aは,昭和58年4月にソフトウェアジャパンの代表取締役に就任
し,以後,同社の代表取締役であったが,平成8年10月15日に一旦,代表取締
役を辞任したものの,同月25日から再び同社の代表取締役に復帰し,以後,同社
の代表取締役であった者である(甲11号証,乙55号証の1)。
ウ 被告カテナは,昭和43年1月19日に設立された株式会社であり,コンピュ
ーター,ソフトウェア,コンピューター関連製品の販売,賃貸,輸出入等を主たる
業務とし,平成3年に東京証券取引所第2部に上場した。
  被告カテナは,平成2年にソフトウェア流通業務を開始し,平成5年9月に株
式会社ソフトウィングと資本提携,平成6年7月に同社と合併するなどして売り上
げを伸ばし,平成8年3月期におけるソフトウェアの販売実績は約256億円で,
被告カテナの売上高の32.7%(ソリューションサービス16.9%,機器販売
50.4%)となり,ソフトウェア流通業界におけるシェアは約20%で,業界第
3位であった。また,同じく平成9年3月期におけるパソコンソフトの販売実績は
約306億円で,売上高の35.7%(ソリューションサービス15.8%,機器
販売48.5%)であった。
  ちなみに,平成8年3月期当時の資本金は約84億円,売上高は約782億
円,総資産額は約610億円であり,平成9年3月期当時の売上高は約857億
円,総資産額は約649億円であった。(甲13号証,乙91号証)
   エ 被告Bは,被告カテナの創業者であり,創業の翌年から現在まで同社の
代表取締役である。また,被告Cは,平成5年に住友銀行から被告カテナに出向
し,平成6年に同社の常務取締役,平成7年に専務取締役,平成10年に副社長に
就任した者であり,平成8年11月18日から平成9年6月3日までの間は,ソフ
トウェアジャパンの取締役も務めていた。
(2) ソフトウェアジャパンの経営状況と本件7月貸付に至る経緯
ア ソフトウェアジャパンは,パーソナル・コンピューターのソフトウェア(以下
「パソコンソフト」という。)の法人向け販売(以下「外販」という。)を主体と
して,平成6年3月期には,売上高約265億0700万円(前期比15%増),
経常利益約1億4700万円(前期比176%増),当期利益約3500万円(前
期比192%増)を計上し,平成7年3月期には,売上高約304億3600万円
(前期比14.8%増),当期利益約3800万円(前期比10.3%増)を計上
するなど,順調に業績を伸ばしていた。そして,平成8年3月期には,Windows
95の発売やインターネット普及により,約380億4100万円の売上げ(前期比
25%増)を上げたものの,商品の低価格化や競争激化の影響を受け,経常利益は
約5000万円(前期比
63%減)にとどまり,さらに,取引先2社が相次いで,平成7年10月に和議を
申し立て,平成8年2月には自己破産の申立てをしたことにより,貸倒損失約2億
0300万円,債権償却特別勘定約7200万円を繰り入れるなど,特別損失約4
億円の特別損失を計上した。また,平成8年2月には,コンピュータシステムにト
ラブルが生じ,出入荷処理が遅れ,取引に混乱が生じる事態となった。
イ これらの事情により,平成8年春ころから,ソフトウェアジャパンの資金繰り
が悪化し始めたため,代表取締役であった原告Aは,他社との提携を検討すること
とし,同年3月末ころ,オリックス株式会社(以下「オリックス」という。)との
間で提携に向けての交渉を開始した(A陳述書,甲18号証ないし甲21号証,乙
49号証,乙55号証の1,乙72号証,乙123号証(以下「D陳述書」とい
う。),原告A供述)。
ウ また,ソフトウェアジャパンは,平成8年6月20日過ぎころ,アメリカの大
手ソフトウェア製造会社であり,ソフトウェアジャパンの最大の仕入先であるマイ
クロソフト株式会社(以下「マイクロソフト社」という。)から,同年7月から取
引の与信枠を20億円から3億円に圧縮することを通告されたため,同社からパソ
コンソフトを仕入れるためには7月初めまでに同社に対して10億円を支払う必要
が生じたが,このような資金需要はソフトウェアジャパンが取引銀行に提出してい
た半期の資金計画にはなく,時間的にも余裕がないことから,取引銀行からの借入
れは困難であると考えられた。
エ そこで,原告Aは,慶応大学の先輩で,平成8年当時ソフトウェア業界第1位
の株式会社ソフトバンク(以下「ソフトバンク社」という。)の元社長で,同業界
内で信頼の厚いE(以下「E元社長」という。)と個人的な交流があり,平成6年
ころにはソフトウェアジャパンとアドバイザリー契約も結んでいたことから,同人
に融資をしてくれる金融機関の紹介を依頼した。原告Aは,E元社長が野村證券勤
務時代に三和銀行で業務研修したことがあり同銀行の役員と親しいと聞いていたこ
とから,同銀行からの融資を引き出せないかとの期待を持っていた。
  しかし,E元社長は,ソフトウェアジャパンの直近3期分(平成6年3月期な
いし平成8年3月期)の決算書を検討したところ,売上額は順調に拡大している
が,利益率が低く,借入額が多いことから,金融機関からの融資が不可能であると
判断し,原告Aに対して,金融機関から融資を得ることは無理なので,経営基盤の
ある企業と資本・業務提携をして融資を得ることを勧めた。そして,E元社長は,
つなぎ融資とはいえ10億円もの融資を実行できる資金力があり,ソフトウェアジ
ャパンとの提携を前提として先行的に融資をするとなると,業界再編に意欲的なオ
ーナー企業しかないと考え,同年7月初め,被告カテナの代表取締役である被告B
を原告Aに引き合わせた。
オ 原告Aと被告Bは,パソコンソフト業界のソフトバンク社による寡占化につい
て危機意識を持ち,業界再編の必要性について思惑が一致したため,被告カテナが
ソフトウェアジャパンに対して金融支援を行い,原告Aが被告カテナに対してソフ
トウェアジャパンの全持株を担保として提供することなどが合意された。
  なお,原告Aは,E元社長及び被告Bに対して,既にオリックスとの提携に向
けて交渉を開始していることを告げていなかった(A陳述書,D陳述書,乙89号
証(以下「E元社長陳述書」という。),E元社長証人,原告A供述)。
カ 被告カテナは,ソフトウェアジャパンに対する融資を実行するため,平成8年
7月5日,同社の直近3期分の決算書及び帝国データバンクによる企業情報(平成
8年6月25日調査,同年7月5日報告,乙55号証の1)を検討し,同社の資金
不足は偶発的で一時的なものであり,また,原告Aが持株すべてを担保として提供
することから,同人がソフトウェアジャパンと被告カテナとの業務提携に積極的で
あると判断し,ソフトウェアジャパンに対して提携を前提に10億円を融資するこ
とを決定した。
キ 融資の実行は,当時,被告カテナの専務取締役であった被告Cが担当すること
になり,同日,ソフトウェアジャパンに出向き,弁済期限を平成9年3月末日,利
率を年2.125%(但し,住友銀行の短期プライムレートにスライド),遅延損
害金を年15%として,被告カテナがソフトウェアジャパンに対して10億円を貸
し付ける金銭消費貸借契約と,これを担保するため,原告Aが所有するソフトウェ
アジャパンの株式25万株と原告Aの持株会社である株式会社Aコーポレーション
が所有するソフトウェアジャパンの株式156万株,合計181万株(発行済株式
総数541万株の33.4%)を被告カテナに譲渡する譲渡担保契約を締結し,被
告カテナからソフトウェアジャパンに対して10億円が貸し付けられた(以下「本
件7月貸付」という
。)。しかし,譲渡担保に供するはずの上記ソフトウェアジャパンの株券は発行さ
れていなかったため,被告カテナはその株券の交付を受けることができず,同株券
が被告カテナに交付されたのは同年9月26日であった。
ク ソフトウェアジャパンは,同日,被告カテナから融資された10億円を原資と
して,マイクロソフト社に対して同額の支払いをした(A陳述書,乙26号証,乙
55号証の2,乙57号証,乙59号証,C陳述書,D陳述書,乙86号証,原告
A,被告C)。
ケ 他方,被告カテナは,ソフトウェアジャパンとの提携について検討し,被告カ
テナあるいは関連会社との合併が最も有効であると考えたが,原告Aが合併に抵抗
感があると思われたため,資金支援を含む業務提携後に合併あるいは資本提携(合
併会社設立または資本参加)することを検討していた(C陳述書)。
(3) ソフトウェアジャパンの経営改革(A陳述書,乙39号証,乙40号証,乙4
9号証,D陳述書)
ア ソフトウェアジャパンは,平成8年春ころには,前記のような経営状況にあ
り,早急に経営改善を図る必要に迫られていたことから,メインバンクの1つであ
る日本長期信用銀行から経営コンサルタントのD(以下「D室長」という。)を紹
介され,同年7月初めから,同人を経営改革室長に任命して,経営改善及び提携交
渉について原告Aをサポートするなどの仕事を担当させた。D室長は,ソフトウェ
ア業界での実績はないものの,自動車部品メーカーや二輪車部品販売業での実績が
あり,その後経営コンサルタント会社を設立したもので,原告Aが以前勤務してい
た商社に勤務していたこともあって,原告Aとも面識があった。
イ D室長は,ソフトウェアジャパンの財務・業務関係資料を検討した結果,約3
0億円程度の不良資産があるとの印象を持ち,販売経費の圧縮と仕入れ・営業・管
理の各部門の仕組みの改善とともに,利益率のとれなくなっているソフトウェア販
売業務については,仕入れ・販売先を選別・縮小して組織としての利益率を高め,
倉庫物流部門及びすでに手がけ始めていた新規事業(輸入商品・マルチメディア事
業,コンピュータ教育事業)を本体から分離するという分社化を実行するしかない
と考え,平成8年8月20日ころ,原告Aにその旨を説明した。
(4) オリックスとの提携交渉(甲3,4号証,A陳述書,D陳述書,原告A供述)
ア ソフトウェアジャパンは,平成8年7月初めの資金ショートの危機を被告カテ
ナからの本件7月貸付によって乗り切ったものの,同年9月後半には再び資金ショ
ートを起こすことが予測されたため,早急に資金を調達する必要があった。原告A
は,オリックスと提携することによりその資金を調達したいとの希望を持っていた
が,交渉が進展しなかったことから,同年7月ころには,①オリックスがソフトウ
ェアジャパンの新株発行後の発行済株式総数の20%相当の新株を引き受けるこ
と,②オリックスがソフトウェアジャパンに対して,ソフトウェアジャパンの同年
9月後半の資金ショートを回避するために10億円を融資すること,③基本合意書
を同年8月末を目途に締結することなどを内容とする確認書案(甲4号証)を作成
したが,オリックスに
対してこれを提示することはできなかった。
イ ソフトウェアジャパンは,平成8年8月,オリックスとの提携交渉を有利に進
めるため,M&Aを多く手がけている株式会社レコフに株価算定書(甲3号証,以
下「本件株価算定書」という。)を作成させ,オリックスに提出した。ソフトウェ
アジャパンが本件株価算定書の作成を依頼するに当たって株式会社レコフに提出し
た資料は,会社案内,定款,商業登記簿謄本,決算報告書(平成6年ないし平成8
年決算期),税務申告書(平成6年ないし平成8年決算期),月次貸借対照表(平
成8年4月ないし6月),月次損益計算書(平成8年4月ないし6月),不動産登
記簿謄本,固定資産課税台帳登録証明書,不動産賃貸借契約書,不良債権・不良在
庫に関する資料(未入金一覧,不良債権回収状況,仕入先別在庫金額等),簿外債
務・偶発債務に関す
る情報,仕入・販売に関する資料(商品別年間販売実績表,仕入実績表,主要取引
先別販売取引実績集計),就業規則・退職年金規定である。
ウ 本件株価算定書においては,ソフトウェアジャパンの株価は1株当たり355
円(額面50円)と算定された(純資産価額方式及び類似会社比準方式の折衷によ
る)ものの,算定の過程で検討された純資産価額方式による算定の過程で,ソフト
ウェアジャパンには約3億2800万円の含み損があり,ソフトウェアジャパンの
再調達時価純資産価額は,約マイナス1289万円と算定されていた。また,その
報告書には,「本株価算定は上記の資料に基づいて行っているが,不良資産,簿外
債務等に関しては適正な監査に基づいた確認をしていない。したがって,今後それ
らの内容が検討されることにより,算定結果に変動が生ずる可能性がある。」と注
記されている。
エ オリックスは,平成8年8月末ころ,公認会計士の資格を有する従業員を派遣
してソフトウェアジャパンを2,3日にわたって調査し,同年9月初め,①オリッ
クスがソフトウェアジャパンの新株発行後の発行済株式総数の20%相当額の新株
を1株50円で引き受けること,②ソフトウェアジャパンが1年以内に転換社債を
発行し,株式転換した場合に①と合わせた株式数が発行済み株式総数の60%とな
るようにすること,③オリックスからソフトウェアジャパンに対して代表取締役副
社長を送り込むこと,という条件での提携案を提示した。
  原告Aは,オリックスに対して,新株引受額を1株250円とすることや平成
8年9月後半の資金ショートを回避するための10億円の融資,さらには原告Aが
ソフトウェアジャパンの増資のためにソフトウェアジャパンから借り入れた5億円
の債務の肩代わりを依頼したものの,オリックスから一蹴された。
オ そこで,ソフトウェアジャパンは,平成8年9月6日,オリックスに対して,
同社が提示した条件で提携するとの意向を伝え,オリックスから同月9日の常務会
でソフトウェアジャパンとの提携を進めることを正式に諮るとの回答を得た。その
席上,オリックスから,同年7月5日に被告カテナから10億円が入金されている
こと(本件7月貸付)を指摘され,原告Aは,これは友情的融資であり,株券を担
保に入れたものの,何の約束もしていないと回答したが,オリックスからは,同年
9月9日の常務会までに被告カテナとの話を断っておくよう求められた。そして,
原告Aは,同月7日,ソフトウェアジャパンの部長クラスの者に対して,オリック
スと提携することになったことを発表した。
(5) 本件提携合意に至る経緯,本件提携合意(甲1号証,A陳述書,D陳述書,E
元社長陳述書,原告A供述)
ア 原告Aは,平成8年9月6日ころ,本件7月貸付を仲介したE元社長に架電し
て,オリックスと提携することになった旨を伝えたが,E元社長は,原告Aからソ
フトウェアジャパンとオリックスとの提携について初めて聞かされ,本件7月貸付
がソフトウェアジャパンと被告カテナの提携を前提としてなされたものと認識して
いたために驚き,ソフトウェアジャパンがオリックスあるいは被告カテナのいずれ
と提携するのかはっきりさせ,被告カテナと提携をしないのであれば本件7月貸付
の10億円の返済をする等しかるべき対処が必要であり,原告Aと被告Bが直接話
し合う必要があると考え,原告Aに対して,同月8日にE元社長の事務所で被告B
と会談するよう求めた。
イ 同年9月8日,E元社長の事務所において,原告Aと被告Bとの会談が行われ
た。E元社長は,午後4時30分ころ最初に到着した原告Aからオリックスとの提
携条件を聞き出し,原告Aに対して,オリックスと提携した場合には,①オリック
スがソフトウェアジャパンの当面の運転資金を融資することはない,②原告Aのソ
フトウェアジャパンにおける立場を維持できない,③原告Aのソフトウェアジャパ
ンに対する債務5億円を返済できる目途が立たない,というデメリットがあり,ソ
フトウェアジャパンの再建と原告Aの個人的利益を守ることは,業界再編に強い意
欲のある被告カテナとの提携でなければ期待できないとの考えを伝えた。
ウ 同日午後6時ころ,E元社長が企業買収などの実務に詳しい者として招いたF
や被告Bも揃ったところで,原告Aがオリックスとの提携条件を説明し,続いて原
告Aに同行してきたD室長がソフトウェアジャパンが行おうとしている分社化など
の経営改善策や下半期に30億円の資金が必要となることなどを説明した。さら
に,原告Aは,ソフトウェアジャパンの増資のためにソフトウェアジャパンから5
億円の借入があることを説明した。これに対し,被告Bは,被告カテナと合併する
ことによって業界再編を図ろうと提案し,またソフトウェアジャパンの経営改善策
や30億円の必要資金や原告Aの5億円の個人債務についても支援するとの条件を
示し,仮に,ソフトウェアジャパンが被告カテナと提携しないのであれば,本件7
月貸付によって融資し
た10億円を返済するよう求めた。
エ 原告AとD室長は,被告Bの条件提示を受け,午後10時ころ,別室で協議
し,①オリックスは当面の資金援助には応じないこと,②オリックスと提携しても
資金が必要な9月後半までに銀行から新規融資を得られるか不安があること,③オ
リックスとの提携では原告Aの身分保障がないのに対して,被告カテナと合併すれ
ば原告Aの代表権は保障されること,④被告カテナと合併すれば原告Aの個人的な
債務についても支援を受けられることから,被告カテナとの合併の方が有利である
との結論に達し,被告Bに対して,年度末までに合計30億円の融資と原告A個人
への支援を条件として被告カテナと合併する意思があることを伝えた。
オ 被告Bは,原告Aらの提示した上記条件を受け入れることとし,原告Aと被告
Bは,ソフトウェアジャパンと被告カテナが合併に向けて業務提携を進めることで
合意した(以下「本件提携合意」という。)。なお,合併期日については,被告B
は1年後を提案したが,原告Aの要望により,翌平成9年4月1日とすることで合
意した。
  そして,本件提携合意の内容が文書化されることとなり,①被告カテナがソフ
トウェアジャパンに対して30億円を限度として金融支援を行うこと,②被告カテ
ナはソフトウェアジャパンが進めているリストラスキームを尊重すること,③被告
カテナとソフトウェアジャパンは両者の合併を前提として業務提携を進めること,
合併は対等とし,合併期日は平成9年4月1日を目標とすること,④被告カテナは
原告Aの個人債務の解消につき,子会社の株式公開その他の方法において支援し,
最終的に責任を持つこと,を内容とする合意書(甲1号証)が作成され,原告A,
被告B,F及びD室長がこれに署名した。
  なお,この合意書にリストラスキームの尊重(②)を入れたのは,ソフトウェ
アジャパンとしては経営状況を改善するため分社化を実行する必要があり,当面の
運転資金の他に分社化の資金が必要であったため,これらについての資金支援も期
待したことによるものである。
カ また,原告Aは,被告Bから,本件7月貸付の際に担保としたソフトウェアジ
ャパン株式の株券が交付されていないことを指摘され,本件7月貸付の10億円も
含めて,ソフトウェアジャパンの取引先に対する売掛金を担保にしてくれるよう依
頼したところ,被告Bはこれを了承した。
  なお,ソフトウェアジャパンは,その時点までに,株式会社ビックカメラ,株
式会社ヨドバシカメラ,株式会社サンキュー高島屋,株式会社ウイングラボ,日興
通信株式会社,株式会社ヤマダ電機,沖電気工業株式会社の計7社に対する売掛金
債権を日本長期信用銀行に,株式会社フリーウエイ,日本電気ホームエレクトロニ
クス株式会社,株式会社亜土電子工業,株式会社エヌジェーケー,株式会社ソフマ
ップの計5社に対する売掛金債権をあさひ銀行に,株式会社ソフトクリエイト,ブ
ラザー販売株式会社,日本ユニシス株式会社,NTTデータ通信株式会社の計4社
に対する売掛金債権をさくら銀行に,それぞれ担保として債権譲渡していた(以下
「16社に対する売掛金債権の債権譲渡」ということがある。)。
キ 原告AとD室長は,上記会談の翌日である同月9日,オリックスに赴き,同社
との提携を断るとともに,ソフトウェアジャパンの取締役らに対して,被告カテナ
と対等合併することを発表した。
(6) 本件提携合意後の経過
ア ソフトウェアジャパンと被告カテナは,本件提携合意後,ソフトウェアジャパ
ンではD室長が,被告カテナでは被告Cが担当責任者となって,打ち合わせを重
ね,平成8年9月18日,本件提携合意と同内容の覚書(甲6号証)を作成し,東
京証券取引所に持参して内容を説明したところ,合併は株価変動要因なので,東京
証券取引所での手続後でなければ合併に関する合意をしてはならないと指摘された
ため,翌19日には,①双方の全国営業拠点において協力体制の構築を図ること,
②各種商材の相互供給を行うこと,③被告カテナはソフトウェアジャパンのリスト
ラ,分社化による経営効率化をサポートすること,④被告カテナがソフトウェアジ
ャパンの情報システム再構築に協力すること,⑤被告カテナがソフトウェアジャパ
ンの当面の資金調達に
ついて金融面で協力すること,⑥その他業務提携に必要な事項は協議して決定する
ことという内容の業務提携に関する覚書(甲5号証)を作成し,合併に向けて業務
提携したことや,合併によりソフトウェア流通業界の再編を目指すとことを記者発
表した(甲5号証,甲6号証,A陳述書,乙1号証,乙33号証,C陳述書,D陳
述書,乙74号証)。
イ 上記アの打ち合わせの中で,D室長は,被告Cに対して,銀行等借入金残高一
覧表(乙103号証)及び第15期(下期)借入金返済表(乙104号証)を示す
などしながら,ソフトウェアジャパンは1か月約8000万円程度の赤字となって
いるが分社化を実行すれば赤字の解消ができると考えていること,①ソフトウェア
ジャパンは平成8年9月20日以降の資金繰りが厳しく,同日までにリストラ資金
を含めて10億円の融資が必要であること,②ソフトウェアジャパンは本件7月貸
付による10億円をマイクロソフトに支払った後も同社からの仕入れができていな
いことを伝えた。
ウ 被告カテナは,この説明や資料などから,被告カテナとの提携・合併によって
ソフトウェアジャパンの経営基盤が落ち着けば,ソフトウェアジャパンの資金不足
は早期に解消できると判断し,①の対策として,同月20日に弁済期限は平成9年
3月末日,利率年2.125%(但し,住友銀行の短期プライムレートにスライ
ド),遅延損害金年15%として10億円の融資を実行され(乙100号証,以下
「本件9月貸付」という。),②の対策として,被告カテナがマイクロソフトから
商品を仕入れ,これをソフトウェアジャパンにマージン等の金額を上乗せしない金
額で供給するという支援(以下「本件商品供給支援」という。)をすることとし
た。なお,本件商品供給支援により,被告カテナがソフトウェアジャパンに対して
引き渡した商品について
の売掛金残高は3億2984万2414円である(A陳述書,C陳述書,D陳述
書,乙87号証,乙100号証,乙103,104号証)。
エ また,ソフトウェアジャパンは被告カテナに対して,平成8年3月31日現在
のソフトウェアジャパン売掛金残高一覧表(乙98号証)及び残高一覧統括表(乙
99号証)を示し,30億円を限度とする金融支援の担保とする売掛金について
は,管理が不十分なため正確な把握はできていないが,すでに銀行3行に担保提供
した16社分を除くと,売掛金は売掛先2476先(部署ごと),債権額合計38
億2070万8567円であり,回収コストやリスクを考えても,30億円に見合
う担保価値があると説明した。
  被告カテナとしては,担保とした売掛金の実質評価は約25億円であるとみた
が,他に適当なものもなかったこともあり,本件7月貸付も含めて被担保債権とし
て株式譲渡担保から担保替えをしたいという原告Aの要望も容れ,ソフトウェアジ
ャパンとの間で,同年9月20日(本件9月貸付と同日),ソフトウェアジャパン
が被告カテナに対して現に負担しかつ将来負担する一切の債務を担保するため,同
月30日現在の上記16社分を除いた全売掛先(第三債務者)に対するソフトウェ
アジャパンの売掛金債権について,次の内容の集合債権譲渡契約(乙27号証,以
下「本件債権譲渡担保契約」といい,この契約に基づく債権譲渡を「本件債権譲
渡」という。)を締結し,同月30日現在の売掛先について住所・電話番号を記載
したリストの提出を要
求した。なお,本件債権譲渡担保契約においては,被告カテナが第三債務者に対し
て担保権実行としての取立ての通知をするまでは,譲渡債権の取立てをソフトウェ
アジャパンに許諾し,ソフトウェアジャパンが取り立てた金銭について被告カテナ
への引き渡しを要しないことが前提とされていた(弁論の全趣旨)。
(ア) 譲渡債権 ソフトウェアジャパンが売掛先(但し,上記16社を除く。)に
対して現に有し,将来取得する債権
(イ) 譲渡債権の総額が,ソフトウェアジャパンの被告カテナに対する債務の総元
本残高の120%を超える場合には,ソフトウェアジャパンと被告カテナとが合意
の上,債権譲渡の一部を解除することができる。
(ウ) ソフトウェアジャパンは,被告カテナに対して,毎月末日現在における債権
の額,内容及び弁済期日を,毎月末日から7日以内に書面により通知する。
(エ) ソフトウェアジャパンは,債権譲渡通知書を,債権額,内容,譲渡年月日等
白地のまま記名捺印し,被告カテナに預託する。ソフトウェアジャパンが(オ)aな
いしhのいずれかに該当したときは,被告カテナは債権譲渡通知書の白地欄を適宜
補充して,ソフトウェアジャパンに代わって債務者に通知する。
(オ) ソフトウェアジャパンが次のaないしh各号のいずれかに該当するときに
は,ソフトウェアジャパンは被告カテナに対する一切の債務について期限の利益を
失う。
a 本債権譲渡契約条項の一つにでも違反したとき
b 被告カテナに対する金銭債務その他の債務の履行を遅滞したとき
c 振出,引受,裏書,保証にかかる手形又は小切手が不渡となったとき
d 他の債務につき仮差押,仮処分,又は強制執行を受けたとき
e 他の債務につき競売,破産,和議,特別清算,会社整理又は会社更生手続の申
立てをなし,又は受け,又は受けるおそれがあるとき
f 国税滞納処分又はその例による差押を受けたとき
g 事業経営が不振で被告カテナが債権保全の必要があるとき
h 被告カテナの債権を侵害するなど不信の行為をしたとき
(カ) 被告カテナが債務者から譲渡債権を取り立てたときは,実際の取立額から取
り立てに要した費用を控除した金額について,法定の順序,方法にかかわらず,任
意にソフトウェアジャパンの債務の弁済に充当することができる。
オ ソフトウェアジャパンと被告カテナは,本件債権譲渡担保契約後,平成8年8
月31日現在の売掛金残高一覧表(乙99号証)をもとに債権譲渡通知書の作成を
始めた。ところが,その後まもなく,ソフトウェアジャパンから,同一覧表は委託
先の作成したものであり,返品・値引・相殺・入金分の差引処理はソフトウェアジ
ャパンで行っているので,同一覧表の残高からこれらが差し引かれていないことを
指摘され,譲渡債権から除外した上記16社に対する将来債権については銀行に譲
渡していなかったため,これらの将来債権を譲渡債権に加えることとなった。
  平成8年9月30日現在の売掛先について住所・電話番号,売掛金残高を記載
した一覧表(乙101号証)は,同年10月1日から10日にかけて,ソフトウェ
アジャパンから被告カテナに交付されたが,上記16社を除くと売掛先2402先
(部署ごと),債権額合計37億5755万2091円となっており,同年8月3
1日現在の債権額から約6300万円減少していた。なお,同一覧表もソフトウェ
アジャパンの委託先が作成したものであり,上記と同じく,返品・値引・相殺・入
金分の差引処理がなされていないものであった(A陳述書,乙27,28号証,乙
41号証ないし乙43号証,乙52号証,C陳述書,D陳述書,乙98,99号
証,乙101,102号証)。
カ ソフトウェアジャパンは,本件9月貸付により得た10億円を運転資金に充て
るとともに,これにより,平成8年9月30日,資本金1000万円で流通業務を
行う株式会社エスジェ物流(以下「エスジェ物流」という。)と,資本金2000
万円でサービス教育事業を行う株式会社ジャパンソリューション(以下「ジャパン
ソリューション」という。)と,資本金3000万円で海外製品や周辺機器を扱う
株式会社ザッツジャパンを設立し,10月以降に合併態様に沿った立ち上げ準備を
行い,同年11月1日以降に業務を開始することを予定していた。
  また,ソフトウェアジャパンは,合併に向けて執行体制の強化を図るため,同
年10月初めころ,G事業統括部長,H事業部長(以下「H事業部長」という。)
及びD室長を取締役に加えることとし,同月11日,株主総会において同人らを取
締役に選任し,さらに引き続いて開催された取締役会においてH事業部長を代表取
締役に選任した(A陳述書,乙41号証ないし乙43号証,乙56号証・ソフトウ
ェアジャパン閉鎖登記簿謄本,D陳述書)。
キ 被告カテナは,平成8年9月24日に,同年10月31日に合併契約書承認取
締役会を開催することを前提として,東京証券取引所と審査に必要な準備・日程に
ついて打合せを行い,東京証券取引所から同月9日までに被告カテナがソフトウェ
アジャパンを合併した場合の営業概況報告書を提出することを指示された。被告カ
テナは,同年10月3日ころ,同年11月29日を合併契約書調印日とし,翌平成
9年4月1日を合併期日とした合併手続日程表案を作成した(A陳述書,乙60号
証・東京証券取引所との打合せ,乙61号証・顔合わせ会,乙73号証・合併手続
日程表案)。
  なお,この間の同年9月28日には,ソフトウェアジャパンと被告カテナの部
長職以上の顔合わせ会が開催された。
(7) 本件財務調査の実施
ア 被告カテナは,同社の会計監査を行っていた中央監査法人と公認会計士I事務
所(以下,両者を併せて「本件調査人」という。)に対して,ソフトウェアジャパ
ンとの合併を決定するため財務内容の調査(財務デュー・デリジェンスともいう
が,以下「本件財務調査」という。)及び監査を依頼した。合併予定期日が平成9
年4月1日とされており,時間的な余裕がなかったことから,財務調査を行うのは
平成8年10月1日から同月9日までとされた。
イ そこで,平成8年9月25日,本件調査人は,ソフトウェアジャパンに赴き,
財務調査の前に打合せを行い,A社長,売掛金管理担当者,在庫管理担当者,経理
担当者,経理担当のJ取締役,D室長らに対して調査方法について説明した上,以
下の要望をした。
(ア) 同年9月末日現在の商品の実地棚卸の実行(10月1日に本件調査人がソフ
トウェアジャパンの商品倉庫に赴き立ち会うため。)。なお,本件調査人は,物販
会社の実地棚卸マニュアルを示しながら,その方法について具体的に説明した。
(イ) 売掛金その他の科目に関して,同年8月31日現在の資産表の数値を基準に
内容を確認するので,各勘定科目ごとに同日までの取引を処理した元帳及び勘定明
細を作成しておくこと。
(ウ) 調査開始と同時に売掛先に売掛金残高照会ができるよう準備しておくこと。
ウ 本件調査人は,同年10月1日,ソフトウェアジャパンの商品倉庫に赴いた
が,ソフトウェアジャパンにおいて所定の準備がなされていなかったため,実地棚
卸立会をすることができなかった。
  その後,同月2日から9日までの財務調査を経て,本件調査人が最終日の9日
に財務諸表を修正すると,ソフトウェアジャパンは最大で50億円を超える債務超
過であるとの結果になった。本件調査人は,原告A,D室長及びソフトウェアジャ
パンの各担当者に対して,調査結果をまとめた手書きのメモ(甲10号証,乙63
号証の1)を交付し,同メモに記載した内容で被告カテナに報告する予定である
が,誤りや異議等があれば訂正も検討するので指摘するよう求めた。ソフトウェア
ジャパンは,商品及び売掛金の評価が帳簿価額と違うのはおかしいと指摘したが,
本件調査人から,時価評価によったので帳簿価額と異なるのは当然であること,ま
た,疑わしきは否定の方向で評価したと説明された。
  これに対して、原告Aは,本件提携合意を仲介したE元社長に対して電話をか
け,本件財務調査の結果について不満をぶつけたが,独自に公認会計士や税理士な
どに対して相談して対策をとったりはしなかった。
エ 本件調査人は,同月11日ころ,被告カテナに対し,仮集計であるとの前提
で,①ソフトウェアジャパンは50億円を超える債務超過であると考えられるこ
と,②その主因は回収不能の売掛金や不良在庫であり,これらで30億円を超える
と思われること,③売掛金や在庫商品の管理がずさんで正確な把握自体が困難であ
ること,④投資や貸付にも回収不能なものがあること,⑤資産の不当計上や未計上
の負債があると考えられることなどを報告した。
オ そして,同月14日,本件調査人は,被告カテナに対し,ソフトウェアジャパ
ンの純資産がマイナス54億2200万円であり,その主な内訳は,①回収不能の
売掛金が10億円,②不良在庫が22億8000万円,③土地の評価減が1億50
00万円,④投資有価証券の評価減が1億9400万円,⑤関係会社の株式の評価
減と保証債務が3億9700万円,⑥回収不能の貸付金が2億1100万円,⑦ゴ
ルフ会員権の評価減が1億1500万円,⑧未払リース料の計上が4億800万
円,⑨従業員に対する賞与や退職給与引当金の計上が1億5800万円,⑩前渡金
の償却が2億7600万円であるなどとした正式な報告書(乙2号証)を提出した
(甲10号証,A陳述書,乙2号証,乙63号証,D陳述書,乙90号証・I陳述
書,原告A,被告C,
I証人)。
  (8) 第二会社方式の検討
   ア 被告カテナは,平成8年10月11日ころ,ソフトウェアジャパンが5
0億円を超える債務超過であるという本件財務調査の仮集計結果を聞き,東京証券
取引所の上場基準に抵触することになるため,ソフトウェアジャパンとの合併は不
可能であると判断した。
 しかし,他方において,被告カテナは,①ソフトウェアジャパンは被告カテナが
支援を継続すれば業績を向上させることができ,分社化により財務状況も好転する
と考えられること,②ソフトウェアジャパンに対する30億円を限度とする金融支
援は既に約束したことでもあり,ソフトウェアジャパンの取引先や債権者もこれを
信頼してソフトウェアジャパンとの取引を継続していることから,合併以外の方法
でソフトウェアジャパンとの提携を実行し,支援を続けていくこととした。
   イ そこで,被告カテナは,支援の具体的な方法を検討し,ソフトウェアジ
ャパンが設立した子会社にソフトウェアの卸売業務に関する営業を譲渡し,被告カ
テナがその子会社と提携(合併あるいは合弁)した上,ソフトウェアジャパンの債
務の返済方法などについて債権者の協力を求める方法(以下「第二会社方式」とい
う。)をとるのが最善であるとの結論に達した(C陳述書,被告C)。そして,同
月13日に被告CがソフトウェアジャパンのD室長と第二会社方式について打合せ
を実施した後,翌14日には,ソフトウェアジャパンからはD室長,被告カテナか
らは被告B,被告C及び各担当責任者,本件調査人の公認会計士,被告カテナの顧
問弁護士,被告カテナの証券業務の主幹事社である野村證券の担当者が出席して,
今後の方針について
会議が行われた。
   ウ この会議では,本件調査人からソフトウェアジャパンが約54億円の債
務超過であることが正式に報告され,合併の可否について検討されたが,ソフトウ
ェアジャパンの約54億円の債務超過を解消するためには,同社の営業権を50億
円以上と評価することが必要となるが,これを5億円以上と評価することは難しい
ことが明らかになり,それでは東京証券取引所での合併審査を通らないので,ソフ
トウェアジャパンと被告カテナとの合併は断念せざるを得ないとの結論に達した。
そして,合併に代わる支援策としては上記の第二会社方式をとるしかないとの話に
なり,この方向で両社の提携を進めていくことになった(A陳述書,乙2号証,D
陳述書,C陳述書)。
   エ これを受けて,ソフトウェアジャパンは,翌15日の取締役会におい
て,ソフトウェアジャパンのソフトウェア,ハードウェア周辺機器の全国における
卸売業務に関する営業をエスジェ物流に対して譲渡すること,同月30日にこれを
承認する株主総会を開催することのほか,原告Aが代表取締役を辞任してH事業部
長が代表取締役に就任することなどを決定し,同月17日には,公正取引委員会に
対して,営業譲渡日を同年11月1日,営業譲渡後にソフトウェアジャパンが解散
する予定であることなどを記載した営業譲受届出書を提出した。そして,同社は,
同年10月16日から18日にかけて金融機関を回り第二会社方式について説明す
る(原告Aは同行していない。)とともに,同月21日,金融機関向けの説明会を
開催し,被告カテナに
対して20億円を返済できれば自主再建も可能であるとして返済資金の新規融資の
可否を打診したが,金融機関から具体的な反応はなかった。その後,被告Cも同席
して,同人から,被告カテナは被告カテナの支援によってソフトウェアジャパンの
再建は十分に可能であると判断していることや,ソフトウェアジャパンの金融機関
からの借入金については被告カテナも責任を持つことを明言して,ソフトウェアジ
ャパンへの新規融資を要請し,ソフトウェアジャパンが各金融機関に対して早急に
追加資料を提出して新規融資を検討してもらうことになった。
オ また,ソフトウェアジャパンの平成8年10月後半の資金の不足額は4億円で
あったので,被告カテナは,同月21日,ソフトウェアジャパンに対して商品代金
の前払いとして4億円を支払い,支援を実施した(A陳述書,乙44号証,乙45
号証,D陳述書,C陳述書,乙119号証,原告A供述,被告C供述)。
  (9) 債権譲渡通知書の発送(乙35号証ないし乙38号証,乙52号証,乙6
5号証,C陳述書,D陳述書,乙108ないし110号証,原告A供述,被告C供
述)
   ア ところが,さくら銀行は,平成8年10月22日付けで,NTTデータ
通信株式会社(債権額627万9887円),日本ユニシス株式会社(債権額27
28万9758円),株式会社ソフトクリエイト(債権額2億5357万5062
円),ブラザー販売株式会社(債権額1380万3058円)に対し,ソフトウェ
アジャパンから債権譲渡を受けていた上記債権合計3億0094万7765円分に
ついて,ソフトウェアジャパンに代理して,「当社が貴社に対して有する売掛債権
は,平成8年10月18日,株式会社さくら銀行に譲渡いたしましたので,通知い
たします。」との債権譲渡の通知(内容証明郵便ではない)をした。
   イ ソフトウェアジャパンは,同月23日,NTTデータ通信から,さくら
銀行による上記通知があったことを知らされ,被告カテナと連絡を取りながら,さ
くら銀行に対して債権譲渡通知の撤回を求めるなどしたが,同行がこれを撤回しな
かったため,翌24日,あさひ銀行及び日本長期信用銀行に対して,さくら銀行か
ら債権譲渡通知が出されたことを伝えた。
   ウ ソフトウェアジャパンは,さくら銀行が上記の債権譲渡通知を出した時
点では支払遅延などを起こしてはいなかったが,被告カテナは,他の金融機関が債
権譲渡通知を出した以上,本件7月貸付や本件9月貸付の債権を保全する必要があ
ると考え,10月24日から,本件債権譲渡担保契約に基づく債権譲渡通知の発送
を開始した。
そして,同月25日ころには,あさひ銀行が,株式会社フリーウェイ,株式会社亜
土電子工業,日本電気ホームエレクトロニクス株式会社,株式会社エヌジェーケ
ー,株式会社ソフマップに対して,同様に債権譲渡の通知をし,日本長期信用銀行
も,株式会社ビックカメラ,株式会社ヨドバシカメラ,株式会社サンキュー高島
屋,株式会社ウィクングラボ,日興通信株式会社,株式会社ヤマダ電機,沖電気工
業株式会社に対して,同様に債権譲渡の通知をした。
エ このような事態に対して,前記の第二会社方式によりソフトウェアジャパンの
代表取締役に就任していたH事業部長は,同月24日,全社員に対して,①仕入先
から商品が入りにくくなっているが,取引先との関係維持の観点から積極的に受注
して対応すること,②仕入先に対しては,実際に支払遅延などを起こしていないこ
とを説明し,今後については早急に安心できる環境を作ろうとしていることを伝え
て取引再開を要請すること,③債権譲渡通知に関する問合せについては,支払期日
に支払口座だけを変えて支払ってもらえればよい旨を伝えることなどを指示し(乙
65号証),社員もこれに従って対応するなどしたことや,被告カテナと提携関係
にあって被告カテナの支援を受けることが公表されていたこともあって,上記の債
権譲渡通知にもかか
わらず,商品の引揚げや取立て騒ぎなどの混乱は生じなかった。
(10) 自己破産申立ての発表と撤回
ア ところで,原告Aは,被告カテナとの提携を嫌って平成8年10月15日にソ
フトウェアジャパンの代表取締役を辞任し,株式会社レコフの仲介により,被告カ
テナ以外との提携に向けた活動を本格的に開始して,同月25日には,D室長及び
H事業部長(当時は社長)を伴って伊藤忠商事と交渉し,D室長らに対して,被告
カテナとの提携を白紙撤回する意向を示した。そして,原告Aは,同日,代表取締
役に復帰し,同月28日には,ソフトウェアジャパンの役員らに対して,被告カテ
ナとの提携を破棄して自主再建を目指すことを発表し,エスジェ物流への営業譲渡
の承認を議題として同月30日に開催が予定されていたソフトウェアジャパンの臨
時株主総会を中止した。
イ 被告カテナは,ソフトウェアジャパンからはこの間の事情を全く知らされてい
なかったが,ソフトウェアジャパンの株主からの問合せで事態を知り,直ちにソフ
トウェアジャパンに対して協議を求めたが,原告Aとは連絡が取れず,話し合いが
できない状況であった。このような状況の中で,ソフトウェアジャパンの取締役会
長であるが経営には直接関わっていなかったK(以下「K会長」という。)が,同
月30日,被告カテナを訪れ,ソフトウェアジャパンが被告カテナとの提携を破棄
して自主再建をすることは実際問題として困難であるから,被告カテナとの提携を
維持する方向で事態を収拾して欲しいと申し入れた(A陳述書,乙56号証,C陳
述書,D陳述書,乙75号証,原告A)。
ウ ところが,ソフトウェアジャパンは,同月30日,一転して自主再建を断念
し,事業を閉鎖して自己破産の申立てをすることを決定し,翌31日には法的な倒
産処理手続に入ることを発表するとともに,同社の売掛先等に対して,先に債権譲
渡通知のあった被告カテナなどに対する支払を留保し,あるいは供託手続をとるよ
う要請した。
エ 被告カテナは,ソフトウェアジャパンから何の連絡も受けていなかったが,こ
のような発表を受けて,ソフトウェアジャパンとの提携を解消することとし,通産
省に事情を説明したところ,同省から,ソフトウェアジャパンの破産により,その
仕入先である中小零細ソフトウェアメーカーに連鎖倒産が生じかねないので,ソフ
トウェアジャパンの破産を回避するための協力を求められた。
  また,被告カテナは,ソフトウェアジャパンのK会長からも協力を要請された
ことから,K会長に対し,救済策として,①被告カテナが資本金1億円で新会社
(仮称「カテナジャパン」)を設立して,新会社がソフトウェアジャパンの営業を
10億円(本来5億円と評価していたが,弁済原資とするため上積みしたもの。)
で買い取ること,②ソフトウェアジャパンはこれを原資として一般債権者,特に小
口債権者に対して優先的に弁済すること(小口債権者に対しては,必要に応じて被
告カテナが前渡金により資金繰りを支援する。),③金融機関に対しては元本の支
払猶予を要請して,金利0.25%を10年間支払うこと,④ソフトウェアジャパ
ンはジャパンソリューションの株式の30%を保有して,株式公開のキャピタルゲ
インを金融機関への返
済原資とすること,⑤原告Aはジャパンソリューションの取締役に就任して株式公
開に全力を尽くすこと,という内容を示した。
オ 原告Aは,K会長から上記の案を示されて説得された上,通産省からも自己破
産を回避するよう指導要請されたことから,同日中に,ソフトウェアジャパンが自
己破産の申立てをするとの発表を撤回して,被告カテナの支援により任意整理を行
うことを公表した。
  そして,同日中に行われたソフトウェアジャパンと被告カテナとの協議におい
て,上記①ないし⑤の点と,仮称「カテナジャパン」がソフトウェアジャパンの従
業員を引き継ぐという内容の合意が成立し,被告カテナの代表者である被告Bと,
ソフトウェアジャパンの代表者である原告Aとが覚書に署名捺印した(乙66号証
の1)。ただし,後日,ソフトウェアジャパンの従業員の要望により,「カテナジ
ャパン」にではなく,直接被告カテナに雇用されることとなったため,「カテナジ
ャパン」は設立されないまま,営業だけエスジェ物流に譲渡されることになった
(A陳述書,乙5,6号証,乙31号証,乙50号証,乙66号証の1,2,C陳
述書,D陳述書,原告A供述,被告C供述)。
(11) 任意整理の経緯(A陳述書,乙7号証,乙9,10号証,乙12ないし15
号証,乙25号証,乙29ないし32号証,乙47号証,乙49号証,乙68号
証,C陳述書,D陳述書,乙117,118号証,原告A供述,被告C供述)
ア 平成8年10月17日,エスジェ物流は,公正取引委員会に対し,ソフトウェ
アジャパンから営業を譲り受ける旨を届け出た(乙45号証)。
  ソフトウェアジャパンは,同月18日に開催した株主総会において,エスジェ
物流に対する営業譲渡を承認し,被告Cを取締役に選任した(乙68号証)上,同
年11月15日,エスジェ物流に対し,譲渡日を同月8日とし,代金10億円を同
年12月15日と平成9年2月15日までに各5億円ずつエスジェ物流が支払うと
の約定で,パソコンソフト販売の営業を譲渡した(乙30号証。なお,ソフトウェ
アジャパンと金融機関との間で,元本支払猶予のうえ年0.25%の金利支払との
債務弁済協定が成立した場合には,同額を追加対価として支払う。)。なお,エス
ジェ物流は,同年12月11日に開催した株主総会において,ソフトウェアジャパ
ンから譲り受けたパソコンソフト販売の営業を被告カテナに賃貸することを承認し
た(乙47号証)。
イ ソフトウェアジャパンの従業員は,平成8年11月7日付で4名を残して全員
解雇され,約2週間後にはうち3名も退社してしまったことから,以後のソフトウ
ェアジャパンの任意整理業務は被告カテナの従業員によって行われた。
ウ ソフトウェアジャパンと被告カテナは,同年11月15日,ソフトウェアジャ
パンから被告カテナに対してなされた債権譲渡が担保権の実行として有効に行われ
たことを確認した上,ソフトウェアジャパンが被告カテナに対して債権の回収に必
要なデータ及び場所を提供するが,債権回収業務に要するその他の費用は被告カテ
ナが負担すること,回収額が被告カテナの債権額を超える場合には,被告カテナ
は,ソフトウェアジャパンに超過額を返還するとともに,未回収分の債権を再譲渡
することなどを合意した(乙32号証)。
 この合意に基づき,ソフトウェアジャパンは,同月18日,各売掛先に対して,
被告カテナへの債権譲渡は有効であり,ソフトウェアジャパンの債務は被告カテナ
の出捐によってエスジェ物流から支払われる営業譲渡代金を原資として支払われる
予定であるから,売掛先は被告カテナに対して売掛金を支払うよう要請した(乙1
2,13号証)。
 なお,被告カテナの口座には同年10月29日から譲り受けた売掛債権の弁済金
が振り込まれるようになっていたが,被告カテナが本格的に譲受債権の回収に着手
したのは同年11月下旬からであり,平成10年7月31日までの間に,別紙2
(被告カテナによる債権回収状況)に記載のとおり,合計27億2255万976
8円を回収した。
   エ また,ソフトウェアジャパンは株式会社ムーブ(以下「ムーブ社」とい
う。)から倉庫を借りて商品を保管していたが,11月下旬ころ,ムーブ社が,ソ
フトウェアジャパンから未払管理料等が支払われない限り,ムーブ社の倉庫からの
商品の出庫を認めないとしたため,ソフトウェアジャパン,被告カテナ及びムーブ
社との間で協議し,同年11月28日,ソフトウェアジャパンがムーブ社に対して
平成8年8月31日から同年10月31日請求分の保管料と人件費等の合計342
2万5366円の支払債務があるほか,未請求の管理料や人件費等の債務を負担し
ていることを確認した上,被告カテナがソフトウェアジャパンに対して支払うべき
商品代金の一部(L工業団地の倉庫に保管されていた商品の代金)のうち合意した
額を,同年12月1
6日限り,直接ムーブ社に支払うこととし,上記期限までに被告カテナが3400
万円を支払ったときは,ムーブ社は残金22万5366円の支払義務を免除するこ
とが合意された(乙117号証)。これに基づき,被告カテナは株式会社ムーブに
対して,同年11月29日に2000万円を支払い(乙118号証),さらに同年
12月16日に1100万円を支払った。
   オ また,ソフトウェアジャパンは,上記のとおり,金融機関から支払猶予
を受け,その分はジャパンソリューションの株式公開によるキャピタルゲインによ
って返済するとの方針であったが,ソフトウェアジャパンが金融機関との交渉開始
前にジャパンソリューションの増資を実行したいと希望したため,被告カテナは,
同年12月13日,ソフトウェアジャパンに対し,株式の引受けや払込みのための
資金として,弁済期限は平成9年3月末日,利率は年2.125%(但し,住友銀
行の短期プライムレートにスライド),遅延損害金は年15%とする約定で,30
00万円を貸し付けた(乙25号証)。
     なお,このジャパンソリューションは,ソフトウェアジャパンと被告カ
テナが30%ずつ出資して設立された会社であったため,翌年の平成9年6月にソ
フトウェアジャパンと原告Aが被告カテナなどに対して本件訴訟(甲事件)を提起
したことにより,折衝中の一連のプロジェクトは中止に追い込まれ,事業活動を停
止するに至った(乙75号証)。
カ 他方,ソフトウェアジャパンは,平成8年11月14日,その取引先に対し
て,同月30日までに債権の届出をするよう要請し(乙9号証),同年12月20
日には,債権を届け出た742名の債権者(債権合計33億0168万2000
円)について第1回目の配当(以下「第1回配当」という。)を実施した。この第
1回配当は,12月15日に被告カテナがエスジェ物流に貸し付けて,エスジェ物
流がソフトウェアジャパンに支払った営業譲渡代金5億円のうちの4億円を原資と
するもので,届出債権額の12%に相当する金員が支払われ,残り1億円について
は,4200万円を社会保険料等公的な支払にあて,5800万円はそれ以後に届
け出られた債権の配当に充てるため留保された(乙15号証の1)。
キ さらに,ソフトウェアジャパンは,平成9年2月20日には,債権の届出がな
された債権合計37億4731万円について,第2回目の配当(以下「第2回配
当」という。)を実施した。第2回配当は,同年2月15日に被告カテナがエスジ
ェ物流に対して貸し付けて,エスジェ物流がソフトウェアジャパンに支払った営業
譲渡残代金5億円と第1回配当の繰越金4903万円のうち,2600万円を留保
した残金で届出債権額の14%に相当する金員が支払われた。なお,ソフトウェア
ジャパンは,この第2回配当の際,これ以降は在庫処分や売掛債権の回収によって
得られた資金を原資として適宜配当を実施することとし,その見通しが立った時点
で一般債権者や金融機関からなる債権処理委員会(仮称)を設立する方針であるこ
とを通知した(乙15
号証の2)。
(12) 本件訴訟に至る経緯
 (乙16号証・取締役会議事録,乙17号証・照会書,乙18号証・回答書,乙
19号証・金銭受領書など,乙20号証・ソフトウェアジャパン資産の回収可能性
他,乙21号証・弁護士解任経緯,乙22号証・解任書,乙24号証・株式会社ザ
イビス会社概要,乙53号証・和解案,C陳述書,D陳述書,乙77,78号証,
乙82号証,乙88号証,乙112号証,乙114号証,乙125号証・破産決
定,原告A供述)
ア 平成9年1月末ころ,原告Aが平成8年11月14日にソフトウェアジャパン
の代理人を変更する際に前代理人から受領した現金1億2999万9279円(乙
18,19号証)のうち5200万円を米国における会社設立資金として知人に渡
していたことが判明し,平成9年2月3日に開催されたソフトウェアジャパンの取
締役会(出席取締役は,原告A,K会長及び被告C)において,この支出が適正な
ものではなく回収の必要があることと,代表取締役の登録印と銀行届出印を任意整
理を担当していた弁護士に預けることが決定された(乙16号証)。
イ さらに,同年2月14日には,公認会計士の調査により,ソフトウェアジャパ
ンが所有していた株式会社ザイビズの株式700株(額面3500万円)が原告A
の婚約者が代表者となっている有限会社に合計10万円で売却されていたことが判
明し,不当廉価売却であると報告された(乙20号証,乙24号証)。
ウ 原告Aは,2月17日には,被告Cに対して,「A殿/平成9年2月20日以
降の貴殿の株式会社ソフトウェアジャパンの整理業務遂行にあたり以下のことを約
束する。/平成9年2月20日までの貴殿の業績を尊重し,功績を認め,その間に
おける諸々の責任を問わない。」と記載された書面に署名するよう求めた(乙70
号証)が,被告Cはこれを断った。
エ このような状況下で,原告Aは,ソフトウェアジャパンの任意整理を担当して
いた弁護士に対し,被告カテナの法的責任を追及して欲しいと再三求めたが,この
弁護士がこれをしなかったため,2月24日,この弁護士に預けられていたソフト
ウェアジャパンの代表取締役登録印と銀行届出印とを勝手に持ち出し,この弁護士
を解任し(乙21,22号証),新たに本件訴訟の原告Aの訴訟代理人らに対して
ソフトウェアジャパンの任意整理業務を委任した(乙23号証)。そして,原告A
は,同日ころ,取締役会を開催せずに臨時株主総会を招集し,同年3月10日の同
総会において,被告CとK会長をソフトウェアジャパンの取締役から解任するとの
決議をしたが,他方,被告Cらは,これに対抗して,同日,取締役会において,原
告Aを代表取締役か
ら解任し,K会長を代表取締役に選任する決議をした。
オ また,原告Aは,同年3月5日,被告Cに対して,これまでの混乱を収拾する
ために3億円を出すよう要求するとともに,翌6日には,被告カテナの社長である
被告Bに対して,条件次第でソフトウェアジャパンの株式を売却したいと申し入れ
た。
カ 被告Cらは,原告Aの上記要求を拒否するとともに,同年3月12日には,被
告カテナとして,解任された弁護士が保管しているソフトウェアジャパンの資産1
億6000万円が散逸することを懸念し,これを原告Aに引き渡さないよう,仮差
押をした(当庁平成9年(ヨ)第1325号債権仮差押申立事件)。
キ これに対して,3月28日には,原告Aの代理人らから,被告カテナの代理人
に対して,「当方は,4月末を目処に,A個人とソフトウェアジャパンを原告とし
て,カテナ,B殿,C殿を被告として,50億円程度(ネット)の損害賠償請求の
訴えを提起すること,および,合併合意以来の一連の不公正取引についての公正取
引委員会へ告発すること等の準備をしておりますが,和解については当方も前向き
に検討する所存です。」として,次の内容の和解案が示された(乙53号証)。
(ア) 被告カテナは,当庁平成9年(ヨ)第1325号債権仮差押申立事件を取り下
げ,ソフトウェアジャパンはこれを一般債権者への最終弁済の原資とする。
(イ) 被告カテナは,ソフトウェアジャパンに対して,回収後の金額で10億円相
当の譲受債権を返還し,ソフトウェアジャパンの金融機関に対する債務の残元本の
約26%を目処とした配当原資とする。なお,東京海上がソフトウェアジャパンの
破産申立てをする可能性が高く,これを回避するためには,被告Cが支払を約束し
た2000万円を同年4月20日までに支払う必要がある。
(ウ) 金融機関に対する債務について,ジャパンソリューションの株式公開による
売却益を弁済原資とし,年0.25%の割合による金利を支払うという弁済スキー
ムを解消する。
(エ) ソフトウェアジャパンは,被告カテナに対して,ソフトウェアジャパン所有
のジャパンソリューション株式を額面額で売却する。
(オ) 被告カテナは,原告A個人に対して,株主対策費,原告A個人の保証債務の
処理費用等として,10億円を支払う。
ク 原告Aの代理人らは,同年4月9日,被告カテナの代理人に対して,東京海上
がソフトウェアジャパンの破産申立てを強行する可能性があるので,手遅れになら
ないよう早急な対応が迫られているという内容の通知をした(乙82号証の1)
が,被告カテナはこれらの要求を拒絶した。
ケ ソフトウェアジャパンは,同年5月ころに開催した金融機関向けの説明会にお
いて,被告カテナに対して50億円くらいを請求する訴えの提起を検討しているこ
となどを説明した。また,原告Aは,縁故者の株主を通じて臨時株主総会を招集
し,同年6月3日の総会において,被告C及びK会長を取締役から解任した。そし
て,ソフトウェアジャパンおよび原告Aは,同月16日,被告カテナ,被告Bおよ
び被告Cに対し,詐欺による損害賠償として,被告らが,ソフトウェアジャパンに
対して64億2055万円と年5分の損害金,原告Aに対して48億円と年5分の
損害金を支払うよう請求した(乙77号証)が,被告らはこれを拒絶した(乙88
号証)。
コ ソフトウェアジャパンと原告Aは,平成9年6月23日,請求額を42億50
00万円とする本件甲事件を提起し,記者発表において被告らの合併詐欺などと説
明したため,翌24日の新聞では,「『虚偽合併話で財産詐取』『カテナ』を損賠
提訴」(東京新聞朝刊)とか,「『合併話で会社財産詐取』ソフト販社が提訴」
(日本経済新聞朝刊)との見出しで,甲事件の提訴が報道された(乙78号証)。
  これと並行して,原告Aは,同月23日ころから同月25日ころまでの間に,
「ソフトウェアジャパンA」あるいは「株式会社ソフトウェアジャパン代表取締役
社長A」の名前で,「カテナ社訴訟の意味」,「平成9年10月20日のサンケイ
会館における一般債権者向け説明会でのKへの反論」,「カテナ事件の系譜」,
「カテナ社報告書の虚偽について」等と題する書面(乙81号証の1ないし6)を
ソフトウェアジャパンの債権者ら多数の者にファクシミリなどで配布した。これら
の文書には,被告らがソフトウェアジャパンと合併する意思がないのにソフトウェ
アジャパンの財産を騙し取るために合併話をもちかけた等という事実が記載されて
いる(争いのない事実)。
サ これに対して,被告カテナ,被告B及び被告Cは,6月30日,ソフトウェア
ジャパン及び原告Aに対して,信用毀損や名誉毀損に基づく損害賠償を請求して乙
事件を提起し,このことは,翌7月1日の新聞紙上において,「合併詐欺提訴にカ
テナが反訴」(東京新聞)とか,「ソフトウェア社をカテナが逆提訴『合併詐欺は
虚偽』」(日本経済新聞朝刊)とか,「カテナが逆提訴,ソフトウェアジャパン」
(日経産業新聞)との見出しで報道された(乙80号証)。
シ ソフトウェアジャパンは,平成9年7月15日付けで債権者らに対して通知を
発し,債務総額115億円で倒産状態に陥っていることや,K会長や被告Cを取締
役から解任し,今後の債務整理を進めていくことを報告した上,ソフトウェアジャ
パンの配当原資としては,①1億6000万円の預金と,②埼玉県越谷市内にある
ソフトウェアジャパン所有の不動産(土地及び建物)と,③売掛金債権合計約55
億円とが考えられるところ,①は被告カテナに仮差押されており当面配当原資とす
ることができず,②も担保割れで配当原資とすることはできず,③は取締役会決議
を経ずに債権譲渡通知書が作成され送付されており,債権譲渡契約の無効確認の訴
えを提起する必要があるので配当原資とすることはできないこと,ただし,被告カ
テナに対して詐欺に
基づく42億5000万円の損害賠償請求訴訟(甲事件)を提起しており,これに
勝訴すれば損害賠償金を原資として配当を行うことが可能となるので,今後は甲事
件の決着が付くまで配当をしないことなどを通知した(乙82号証の2,乙112
号証)。
(13) ソフトウェアジャパンの破産と売掛金の供託
ア このような混乱が続く中で,平成10年1月30日,被告カテナ外4社は,ソ
フトウェアジャパンの破産申立てを当庁に申し立てた。ソフトウェアジャパンは,
これに対して和議の申立てを行った(乙82号証の3)が,債権者の同意を得られ
ずにこれを取り下げた。そして,同年9月7日午後3時30分,ソフトウェアジャ
パンは当庁から破産宣告を受け,原告管財人が破産管財人に選任された(乙125
号証)。
イ 被告カテナ,被告B及び被告Cは,平成10年12月15日,原告管財人に対
し,本件乙事件で請求している損害賠償請求権を破産債権として届け出た(乙12
6号証ないし乙128号証)。これに対して,原告管財人は,平成11年4月21
日に開催された債権調査期日において,同被告らの上記債権全額について異議を述
べた(乙129号証)。
 ウ 被告カテナは,前記のとおり,ソフトウェアジャパンとの間で本件債権譲渡
担保契約を締結し,平成8年10月24日から債権譲渡通知の発送を開始したもの
であるが,別紙1(供託金目録)の「供託者」欄記載の各供託者(以下「本件各供
託者」という。)は,いずれも被告カテナまたはソフトウェアジャパンを被供託者
とし,債権者不確知を供託原因として,同目録の「供託所」欄記載の各法務局等に
おいて,同目録の「供託年月日」欄記載の日に,「供託番号」欄記載の番号をもっ
て,「供託金額」欄記載の金額を供託した(乙130号証)。
2 争点及び当事者の主張
(1) 争点1(被告らによる合併詐欺の成否)
(原告らの主張)
ア 平成8年当時のパソコンソフトの流通業界において,ソフトウェアジャパンは
売上高第2位,被告カテナは第3位の会社であった。そして,ソフトウェアジャパ
ンは外販を主体としていたのに対し,被告カテナは量販店向けの販売を主としてい
て,営業方法を異にしていた。被告カテナが行っていた量販店向けの販売は,店頭
陳列の必要性などから在庫商品が残る可能性が高く,返品も多いのに対して,ソフ
トウェアジャパンが行っていた外販は,注文を受けてから卸すために在庫商品が残
る可能性が低く,返品も少ないことから,被告カテナにとってソフトウェアジャパ
ンの営業権を取得することは,単にスケールメリットの面だけではなく,優良な取
引先を多数取得できるという利点が存在していた。
イ そこで,被告カテナと,その社長である被告B,専務取締役であった被告C
(以下「被告ら」ということがある。)は,このようなソフトウェアジャパンの営
業を不当に取得しようと考え,当初からソフトウェアジャパンと合併する意思がな
かったにもかかわらず,原告Aに対して合併意思があるかのように申し向け,原告
Aをしてその旨誤信させた上,ソフトウェアジャパンを欺罔する手段として合併の
合意を行うとともに,ソフトウェアジャパンをしてオリックスとの業務提携契約を
白紙にさせ,ソフトウェアジャパンの取引先が記載されている売掛金リストを入手
し,譲渡担保名目で,ソフトウェアジャパンの売掛金債権を被告カテナに債権譲渡
させた。
ウ また,被告カテナは,合併のために必要な財務デュー・デリジェンスであると
して,企業清算を前提とする不公正かつ虚偽の方式でソフトウェアジャパンの財務
調査を行い,その結果,ソフトウェアジャパンは50億円を超える債務超過状態で
あるとの虚偽の事実を前提として,合併の合意を一方的に破棄し,ソフトウェアジ
ャパンの商権を取得するため第二会社方式を押し付けた。しかし,ソフトウェアジ
ャパンがこれを受け入れなかったことから,何ら正当な理由もないのに,一方的に
売掛金債権の譲渡通知をソフトウェアジャパンの全売掛先に対して送付し,ソフト
ウェアジャパンの信用を崩壊させて倒産に追い込み,第二会社方式を実行してソフ
トウェアジャパンの商権を取得した。
(被告らの主張)
ア そもそも本件の合併の件は,被告カテナがソフトウェアジャパンに対して持ち
かけたものではない。被告カテナは,ソフトバンク社の元社長でパソコンソフト業
界に顔の広いE元社長からの話で,初めて原告Aがソフトウェアジャパンのために
金融支援を求めていることを知り,被告BがE元社長の仲介で原告Aと話合いをし
た結果,ソフトウェアジャパンを支援することにしたまでで,ソフトウェアジャパ
ンを欺罔するつもりなどは全くなかったものである。
イ しかも,被告カテナ,被告B及び被告Cは,平成8年9月8日に原告Aから説
明を受けるまで,ソフトウェアジャパンがオリックスとの資本提携について交渉を
行っていたことは知らなかったし,被告カテナ側が原告Aに対してオリックスとの
資本提携の断念を働きかけたものでもない。オリックスとの資本提携の断念は,前
記「基本となる事実」(4)及び(5)に記載のとおり,原告Aが,オリックスとの提携
では当面必要となる運転資金を手当することができないだけではなく,原告Aの立
場を維持することができないなどとするE元社長のアドバイスを受けた上,ソフト
ウェアジャパンの経営改革を担当していたD室長と協議し検討した上で決定された
ものであり,被告カテナ側に何ら責任はない。
ウ また,被告カテナは,ソフトウェアジャパンの財務内容が著しく悪化している
ことを知らず,本当に合併を前提とした業務提携が可能であると考えていたため,
ソフトウェアジャパンに対して本件7月貸付及び本件9月貸付を実施し,20億円
も貸し付けたのである。しかし,被告カテナが実施した本件財務調査によって,ソ
フトウェアジャパンが最大で54億円もの債務超過となっていることが報告され,
東京証券取引所の審理をクリアーできないことが判明したため,正式な合併は不可
能であると判断し,ソフトウェアジャパンの了解の下で,第二会社方式による提携
をすることに合意したものである。現に,原告Aは,第二会社方式による業務提携
が最善の方策であるとの認識に立ち,平成8年11月7日に実施された債権者向け
説明会においても,
自らその旨を説明したほどである。
エ また,被告カテナが平成8年10月24日からソフトウェアジャパンの売掛先
に対して債権譲渡通知書を発送し始めたのは,同月22日付けでさくら銀行が債権
譲渡を受けていた売掛先に対して債権譲渡通知書を送付し,売掛先に混乱が生じて
被告カテナの債権が保全されない危険性が生じたためであり,何ら非難されるもの
ではない。
オ そもそもソフトウェアジャパンを破綻させたとしても,被告カテナは,何一つ
得をすることはない。ソフトウェアジャパンや原告Aが強調する同社の営業の価値
も,ソフトウェアジャパンが正常に業務を行っていればこそ保たれるものであっ
て,破綻した会社の営業価値は相応の保全措置が施されない限りほとんど無価値で
あり,ソフトウェアジャパンの破綻が被告カテナにとって利益になることはない。
被告カテナがソフトウェアジャパンと対等合併する意思がないにもかかわらず,こ
れがあるかのように装って同社や原告Aを欺罔した事実は全くないのであって,原
告Aや原告管財人の主張は理由のないものである。
(2) 争点2(合併契約の債務不履行の有無)
(原告管財人の主張)
 被告カテナとソフトウェアジャパンは,前記のとおり,平成8年9月8日に1対
1の対等合併契約を締結したのであるから,被告カテナは,債務の本旨に従い,①
被告カテナの取締役会への付議と合併承認決議,②合併契約書の作成,③臨時株主
総会の招集と総会における合併承認特別決議の取りつけなど,合併に必要な手続を
誠実に実行する義務があったところ,何ら正当な理由もないのにこれを履行せず,
一方的に合併合意を破棄したものであるから,ソフトウェアジャパンに対して債務
不履行責任を負うべきであり,また,ソフトウェアジャパンの債務を連帯保証して
いた原告Aに対しても損害賠償責任を負うべきである。
(被告カテナの主張)
ア まず,被告カテナとソフトウェアジャパンとの間に成立したのは,法律的には
正式な「合併合意」ではなく,合併を前提とした業務提携契約である。しかも,両
社間の合併による業務提携が不可能となったのは,本件財務調査によりソフトウェ
アジャパンが50億円を超える債務超過状態であることが判明したからであり,や
むを得ない理由によるものである。
イ また,ソフトウェアジャパンは,平成8年10月28日に被告カテナとの業務
提携を破棄して自主再建を目指すとして,同月30日に予定されていた株主総会の
開催を中止し,同月31日には自己破産を申し立てる方針であることを一方的に発
表するなどして,自ら被告カテナとの業務提携を破棄したのである。被告カテナ
は,ソフトウェアジャパンがそのような勝手な行動に出るまで,ソフトウェアジャ
パンと提携する意思を有していた。
ウ ソフトウェアジャパンと原告Aは,自ら誤った見通しのもとに被告カテナとの
業務提携を破棄したものであるから,その結果は自ら負担すべきである。
(3) 争点3(ソフトウェアジャパン及び原告Aの損害)
(原告らの主張)
ア ソフトウェアジャパンの損害額は,以下のとおり,合計64億0805万円で
ある。
 (ア) 被告らによる不法行為が行われた平成8年9月8日当時,ソフトウェアジ
ャパンの株式の評価額は1株355円(額面50円)であった。ソフトウェアジャ
パンは,会社自体の評価損害として,これに発行済株式総数541万株を乗じた1
9億2055万円の損害を被った。
 (イ) また,ソフトウェアジャパンは,被告カテナらに騙取された売掛金債 権
合計43億円の損害を被った。
 (ウ) ソフトウェアジャパンは,被告らの本件不法行為によって甲事件を提起せ
ざるをえなくなり,原告訴訟代理人に対して,弁護士費用として1億8750万円
を支払うことを約した。
 (エ) 原告管財人は,上記ソフトウェアジャパンの損害のうち,(ア)について5
億円,(イ)について25億円から供託分を控除した24億6983万6321円,
(ウ)の全額,合計31億5733万6321円を請求する。
イ 原告Aの損害額は,以下のとおり,合計48億6250万円である。
 (ア) 原告Aは,ソフトウェアジャパンの債務の一部を連帯保証していたとこ
ろ,被告らの本件不法行為により同社が破産したため,同社に対する求償権を侵害
され,48億円の損害を被った。
 (イ) また,原告Aは,被告らの本件不法行為によって甲事件を提起せざるをえ
なくなり,原告訴訟代理人に対して,弁護士費用として6250万円を支払うこと
を約した。
(ウ) 原告Aは,上記求償権侵害に基づく損害のうち10億円と,弁護士費用62
50万円の合計10億6250万円を請求する。
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
(4) 争点4(錯誤無効による不当利得返還請求の可否)
(原告管財人の主張)
ア 被告カテナは,平成8年9月8日,ソフトウェアジャパンとの間で,①1対1
の対等合併をすること,②被告カテナがソフトウェアジャパンに対して30億円を
限度とする金融支援を行うこと,③原告Aのソフトウェアジャパンに対する個人負
債の解消について被告カテナが最終的に責任を持つこと,を合意した。
イ しかし,この合意のとき,被告カテナは,上記①及び③の意思はなく,上記②
については10億円のみを融資する意思であった。原告らは,被告カテナが上記①
ないし③の合意を履行することを必要不可欠の前提として本件売掛金債権について
譲渡担保契約を締結したのであり,仮に,被告カテナが①ないし③の合意を履行す
る意思がないことを知っていたならば,本件譲渡担保契約を締結することはなかっ
た。
   ウ よって,本件譲渡担保契約を締結するにあたり,ソフトウェアジャパン
には動機の錯誤が存在し,これが被告カテナに対して表示されていたことは明らか
であるから,ソフトウェアジャパンは,平成10年5月11日の本件口頭弁期日に
本件債権譲渡担保契約の錯誤無効を主張し,被告カテナが不当に利得した譲渡債権
(相当額)の返還を請求する。
(被告カテナの主張)
 被告カテナは,本件業務提携合意の際,原告ら主張の上記①ないし③の点を実行
する意思があり,現に実行しつつあった。本件業務提携合意を破棄したのは,これ
までにも述べたとおり,原告らである。
(5) 争点5(破産法72条1項1号による故意否認の可否)
(原告管財人の主張)
ア 債権譲渡の時期
 (ア) ソフトウェアジャパンが被告カテナに対して本件売掛金債権を一括して債
権譲渡したのは,ソフトウェアジャパンが被告カテナから受ける融資を担保するた
めであり,いわゆる譲渡担保である。
 (イ) このような譲渡担保としての集合債権譲渡については,債権譲渡契約の締
結時に完全な債権譲渡がなされたわけではなく,債権譲渡通知を発送する段階で現
実の債権譲渡がなされたものと解されるのであって,被担保債権の弁済期日が到来
するか,借主であるソフトウェアジャパンが期限の利益を失わない限り,第三債務
者に対する債権譲渡通知はなされず,かつ,その間に譲渡債権の弁済期が到来すれ
ばソフトウェアジャパンに弁済受領権限があるものと解されるのである。
 (ウ) したがって,本件では,平成8年10月24日以降に被告カテナによって
なされた各売掛先に対する債権譲渡通知の発送によって,現実の債権譲渡がなされ
たものというべきである。
イ 債権者を害する行為
 (ア) 本件債権譲渡によって,被告カテナは少なくとも27億2255万976
8円を回収したが,被告カテナの被担保債権額は元本で27億1600万円余りで
あるから,これに利息及び損害金が付加されるとしても,被告カテナは,ほぼ10
0%近い金員を回収したことになる。
 (イ) これに対して,ソフトウェアジャパンがした任意整理手続によって他の一
般債権者に配当されたのは合計9億円余りで,配当率にして26%にすぎない。よ
って,本件債権譲渡により,ソフトウェアジャパンの一般財産が減少して全債権者
への分配額が減少し,被告カテナと他の一般債権者との間に極めて重大な不平等が
生じたことは明らかである。
 (ウ) 被告カテナに対する債権譲渡が行われた平成8年10月24日時点で,ソ
フトウェアジャパンが既に財政的危機状態に追い込まれていて,被告らがそのこと
を熟知していたことは,被告ら自身が,本件訴訟において,本件9月貸付「当時ソ
フトウェアジャパンは予定されていた売掛金の回収によってこれら資金をまかなう
ことができず,他に資金を得られる途が皆無の状況であって,かつ,融資元金融機
関やその他の債権者から弁済猶予を得られる見込みもついていなかったのであるか
ら,被告らからの各融資金の有用性すなわち被告からの融資が得られなければ,直
ちに支払停止に陥り事業継続がはかられなかったことについて多言を要しない。」
などと繰り返し主張しているところから明らかである。
ウ 相当性
 (ア) 本件債権譲渡は,被告カテナの本件7月貸付及び本件9月貸付に伴うもの
ではなく,平成8年10月24日時点で、既に実行済みの融資に基づく既存債務
と,既に無担保を前提に合意されていた融資について,ソフトウェアジャパンが被
告カテナに対し,他の一般債権者に優先する担保提供を行ったものである。このよ
うな既存債務への担保設定行為は,基本的に否認の対象である。
 (イ) また,本件債権譲渡は,既になされていた本件7月貸付を除き,最大でも
20億円の融資を担保する目的であったが,被告カテナに対して譲渡された債権の
価額は,被告カテナによって実際に回収された金額だけでも27億円を超えるもの
であり,担保物の価額が被担保債権額を超えるものであって,担保提供行為として
の合理的な限度を超えていることが明らかであるから,相当性も認められない。
 (ウ) そして,本件債権譲渡担保契約が締結された時点で既に銀行3社に対して
譲渡されていて,譲渡の対象から除外された16社に対する売掛金債権について
は,それ以後にこれらを対象とする別個の合意が成立したことになるから,これに
ついては本件7月貸付だけでなく本件9月貸付との関係でも既存債務のための担保
設定であり,よりいっそう相当性を欠くものである。
エ ソフトウェアジャパン(破産会社)の詐害意思
 (ア) 破産者の詐害意思は,①破産者が対象行為当時に財政的危機状態にあるこ
と,②当該行為により債権者の共同担保となる一般財産が減少することの認識があ
れば認められる。
 (イ) ソフトウェアジャパンは,平成8年7月5日には10億円をマイクロソフ
ト社に対して支払わなければならない状況にありながら,取引銀行から融資を受け
られない状況にあったため,急きょE元社長を通じて融資をしてくれるところを探
していた。
 (ウ) また,本件財務調査の結果によれば,同年8月31日現在でソフトウェア
ジャパンは約54億円あまりの債務超過状態にあったことからして,本件債権譲渡
担保契約が締結された時点で,ソフトウェアジャパンが資金繰りに追われる状態で
あったことは明らかである。
 (エ) そして,ソフトウェアジャパンが自己破産の申立てを決定した同年10月
31日の直前である同月24日以降の時点では,ソフトウェアジャパンが危機的状
態に追い込まれていたことはいうまでもない。
 (オ) このような状況の下で,ソフトウェアジャパンに残存していた全財産とも
いうべき売掛金債権のすべてを被告カテナに譲渡してしまえば,他の債権者に対す
る引当財産が減少して他の債権者を害する結果となることは自明のことであり,ソ
フトウェアジャパンは,十分にこのことを認識していたから,ソフトウェアジャパ
ンに詐害意思が認められることは明らかである。
オ 被告カテナの害意
  被告カテナは,ソフトウェアジャパンが危機的状況にあったことは,既に本件
7月貸付の時点で認識していただけではなく,本件9月貸付の時点ではソフトウェ
アジャパンが30億円の融資を必要とする状態にあったことを十分に認識していた
ものであるから,被告カテナには,他の一般債権者を害する意思があったというべ
きである。
カ 価額償還請求
被告カテナに譲渡された売掛金の総額は43億円と評価することができるところ,
原告管財人は,このうち31億5733万6321円及びこれに対する本件否認権
行使の日の後である平成11年2月18日から支払済みまで年6分の割合による遅
延損害金の支払を求める。
(被告カテナの主張)
ア 債権譲渡の時期
 (ア) 平成8年9月20日に締結された本件債権譲渡担保契約は,ソフトウェア
ジャパンが被告カテナに対して負担する現在及び将来の一切の債務を担保する目的
で,ソフトウェアジャパンの現在及び将来の商品代金売掛金を一体として担保提供
する(ソフトウェアジャパンが第三債務者から債権を取得する都度担保提供の効力
が及ぶ)という非典型担保設定契約である。
 (イ) そして,その対象となる債権は,「基本となる事実」の(6)エに記載のとお
り,それぞれ識別が可能なものであるから,債権譲渡の効力に問題はなく,同日を
もって被告カテナが同債権を取得したことは明らかである。
イ 債権者を害する行為
(ア) 本件では,ソフトウェアジャパンのオーナーである原告Aが同年10月28
日に被告カテナとの提携破棄を決意し,同月30日ソフトウェアジャパンの経営継
続についての意欲を失い,翌31日に事業閉鎖するまで,正常な状態で業務を継続
し,原告Aを含むソフトウェアジャパン関係者全員がソフトウェアジャパンの継続
について意欲を持っていたことは明らかである。
(イ) また,被告カテナは,「基本となる事実」の(8)ないし(10)に記載のとおり,
原告Aの無責任な自己破産申立ての発表やその撤回による混乱にもかかわらず,第
二会社方式を前提としたソフトウェアジャパンに対する支援を続けたように,ソフ
トウェアジャパンは,被告カテナとの提携により資金繰りの目途を有していたので
ある。ソフトウェアジャパンは,平成8年9月20日当時はもちろん,同年10月
24日時点においても,財政的危機時期には至っていなかったのである。
(ウ) また,被告カテナとの間で本件債権譲渡担保契約を締結した平成8年9月2
0日当時,ソフトウェアジャパンは,人件費や買掛金その他の支払及び金融機関か
らの借入金の返済資金に窮し,かつ,翌平成9年3月31日までの運転資金として
合計30億円を必要としていた。
(エ) ソフトウェアジャパンは,本件債権譲渡担保契約によって,被告カテナか
ら,銀行借入よりも低利ないし無利息で10億円の融資を受けるとともに残り20
億円についても金融支援の約束を得られたのであるが,金融機関から新たな融資を
受けられる見込みもなく,他に運転資金調達の方途はなかったのであるから,被告
カテナと本件債権譲渡担保契約を締結して被告カテナから融資を受けることは,ソ
フトウェアジャパン及びその債権者にとって経済的合理性のある有利な行為であ
る。
(オ) なお,被告カテナがソフトウェアジャパンの任意整理業務遂行のため支出し
た費用(立替金,ソフトウェアジャパンに貸し付けたジャパンソリューションへの
出資金)は,被告カテナが拠出しなければソフトウェアジャパンの一般財産から支
払われたはずであるから,この意味でも債権者の共同担保となるべきソフトウェア
ジャパンの一般財産は減少していないのであって,全債権者共通の利益となるもの
であった。
ウ 相当性
(ア) 本件債権譲渡担保契約は,本件提携合意を実現するための30億円を限度と
する金融支援の担保であるから,金融支援と一体として相当性を判断すべきであ
り,上記の点から考えれば,本件債権譲渡担保契約には相当性があるというべきで
ある。
(イ) また,原告管財人は,被告カテナに対して譲渡する債権として,当初銀行3
社に対して債権譲渡された16社に対する将来債権を追加したことをもって,既存
債務への新たな担保供与であると主張するが,この追加によりみるべき価値の増加
はなく,本件債権譲渡担保契約の一部変更にすぎないから,問題とすべきものでは
ない。
エ ソフトウェアジャパン(破産会社)の詐害意思
(ア)原告管財人は,本件7月貸付当時から,ソフトウェアジャパンは財政的危機
状態にあり,代表取締役であった原告Aもそのような状況であることを認識してい
たと主張する。
(イ)しかし,ソフトウェアジャパンがマイクロソフト社から与信枠の圧縮を告げ
られた平成8年6月21日ころ,ソフトウェアジャパンの社内外に緊迫した事態は
一切なく,原告AはE元社長に融資してくれそうな先を依頼した以外に積極的な資
金調達活動をしていない上,6月末には日本長期信用銀行の推薦によって経営コン
サルタントであるD室長を新たに雇い入れて経営改善の検討を始めたばかりで,同
年7月末と同年8月末ともに実際の資金不足は生じていないのであって,会社の運
営ができないほど財政的危機状態にあったわけではない。
(ウ) 原告Aは,平成8年9月20日以降も,被告カテナ以外の提携先を探してお
り,被告カテナより有利な条件でソフトウェアジャパンと提携してくれる会社があ
ると考えていたことや,新たな提携先が見つかりさえすれば,被告カテナからの金
融支援による20億円の負債も返済可能であると考えていたことが明らかである。
(エ) もっとも,原告A以外のソフトウェアジャパンの役員らは,被告カテナより
有利な提携先はないと考えていたが,会社の業績自体は決して悪いものではなかっ
たので,被告カテナとの提携によってソフトウェアジャパンの一時的な資金ショー
トが回避され,経営基盤が維持されれば,会社の経営も順調に回復するであろうと
考えていた。
(オ) 確かに,平成8年7月から9月当時,ソフトウェアジャパンは債務超過状態
にあり,原告Aは,会社がある程度の債務超過状態にあることは認識していたもの
と思われる。しかし,貸借対照表上の債務超過とは,一時点における会社の財産状
態を指すもので,会社の収益力そのものの良否を示すものではない。相応の売上げ
が見込める会社においては,会社の運営に必要な当面の資金を調達でき,収益性を
高めることさえできれば,形式的には債務超過状態であっても,会社の事業継続に
は何ら支障はないのである。
  当時のソフトウェアジャパンは,多くの人々から,被告カテナとの提携によっ
て一時的な資金ショートを回避すれば,その事業継続に何ら問題はないと考えられ
ており,前記のとおり,原告Aも,ソフトウェアジャパンがどうにもならない財政
的危機状態にあるなどとは考えていなかったはずである。
オ 被告カテナの害意
 被告カテナは,一貫してソフトウェアジャパンのもつ潜在的収益力を高く評価
し,ソフトウェアジャパンが倒産することなど全く予想しておらず,同社との提
携・合併が双方の利益をもたらすと考えたからこそ,20億円にも上る多額の金融
支援を行ったものであり,ソフトウェアジャパンを助けようとの意思はあっても,
ソフトウェアジャパンを倒産に追い込もうとするような意思は全くなかったもので
ある。
(6) 争点6(債権の過剰回収による不当利得返還請求の可否)
(原告管財人の主張)
 被告カテナは,ソフトウェアジャパンから,同社に対して融資した20億円を大
幅に上回る債権を譲り受け,現在までに総額27億2255万9768円を回収し
た。そこで,原告管財人は,この差額である7億2255万9768円について,
不当利得として返還を請求する。
(被告カテナの主張)
ア 被告カテナがソフトウェアジャパンから譲り受けたのは,同社が被告カテナに
対して負担する現在及び将来の一切の債務を担保するためであり,その被担保債権
は,別紙3(被担保債権目録)に記載のとおりであり,貸付金元本が20億300
0万円,売掛金が3億2956万7326円,前払い未収金が3億1673万60
07円,立替金が984万7060円であり,その合計額は26億8615万03
93円である。
イ 被告カテナは,別紙2(株式会社ソフトウェアジャパン譲受債権回収状況)の
「回収日」欄記載の年月日に,「回収額」欄記載の金額を回収し,これらを別紙4
(充当関係目録)の別表①に記載のとおりに充当した。そして,現在も未充当残債
権として,①本件9月貸付の遅延損害金残額1981万6698円,②平成8年1
2月13日付貸付金3000万円及びこれに対する未払利息金110万5582
円,合計5092万2280円がある。
ウ 被告カテナは,ソフトウェアジャパンから譲り受けた売掛金債権の回収金は全
額,被告カテナのソフトウェアジャパンに対する債権の弁済に充当しており,被告
カテナに不当利得は存在しない。
(7) 争点7(乙事件-被告らに対する信用毀損,名誉毀損の成否と損害)
(被告らの主張)
ア 被告らに対する信用毀損,名誉毀損
  原告A及びソフトウェアジャパンは,平成9年6月23日ころから同月25日
ころまでの間,「被告らがソフトウェアジャパンと合併する意思がないのに,ソフ
トウェアジャパンの財産を騙し取るために合併話を持ちかけた」等という虚偽の事
実を記載した文書を,ソフトウェアジャパンの債権者ら多数の者に配布し,また,
新聞等に掲載させる目的で同趣旨の記者発表をしたほか,本件訴訟の口頭弁論期日
においても同趣旨の主張・供述を繰り返し,被告カテナの信用と被告B及び被告C
の名誉とを毀損してその社会的評価を低下させた。
イ 違法な不当訴訟の提起
 (ア) 原告らは,被告らがいわゆる合併詐欺を行ったとして本件甲事件を提起
し,42億5000万円もの請求をしているのであるが,その損害額の算定根拠が
明確ではない。
 (イ) また,東京証券取引所に上場している会社が訴訟を提起されて事業年度末
日における総資産額の5%以上に相当する金額の支払を請求された場合には,敗訴
の場合に会社業績に生ずる影響などを東京証券取引所に報告しなければならないと
ころ,平成9年3月末日の被告カテナの総資産額は649億9008万円余であ
り,その5%は32億4950万円であって,上記請求額はこれを大幅に上回る額
であるため,被告カテナは原告らから訴えられたことを東京証券取引所に報告しな
ければならない。原告らは,東京証券取引所に報告され,結果的に訴訟提起が公表
されることを目的として上記損害額を算定したことは明らかである。
 (ウ) さらに,本件訴訟において,原告ら主張の合併詐欺を裏付ける証拠として
原告らから提出されているのは,原告A自身の推測を内容とする供述だけであり,
客観的な証拠は一切提出されていない。
 (エ) しかも,基本となる事実で述べられているような本件提携合意後の原告A
及びソフトウェアジャパンの一連の行動や,内容証明郵便による64億円の支払請
求を経て本訴提起に至った経緯や,訴訟提起前の信用・名誉毀損行為の態様からす
ると,原告A及びソフトウェアジャパンが,被告らに社会的経済的苦痛を味あわせ
て会社から多額の金銭を不正に取得しようとする「積極的害意」に基づいて,専ら
これを実現するために甲事件を提起したことは明らかである。
 (オ) これらの点に照らせば,原告及びソフトウェアジャパンは,被告らによる
合併詐欺が何ら根拠に基づくものではないことを熟知しながら,甲事件の提起によ
ってさらに被告らを困惑させ,多額の根拠のない金員を取得しようとの不正な意図
をもって,その実現手段として甲事件を提起したものであり,極めて不当性,違法
性の高い行為であり,このような訴訟の提起自体が不法行為に該当する。
ウ 被告カテナの損害
 (ア) 被告カテナは,昭和43年1月の創業以来,順調にその業績を向上させ,
平成3年には東京証券取引所第2部に上場し,法秩序及び商道徳を遵守してきた会
社であり,一般社会においてもそのような信用を築いてきた。今回,原告A及びソ
フトウェアジャパンが主張している合併詐欺というのは,単なる取引上のトラブル
ではなく,被告カテナが「犯罪行為を犯した」ということを意味する。しかも,被
告カテナは,前記のとおり,本件甲事件を提起されたことを毎期東京証券取引所に
報告して有価証券報告書に記載せざるを得なくなっており,被告カテナの社会的信
用は著しく害されている。
 (イ) 実際に,原告A及びソフトウェアジャパンが合併詐欺を理由として被告カ
テナに対し訴訟を提起すると公言し始めた平成9年6月ころから,被告カテナの流
通部門の売上額は著しく低下し,株価も低落するなどして,その回復に2年以上を
要したことからも,その影響の大きさが明らかであり,被告カテナの経営規模や経
営内容等,諸般の事情を勘案すれば,原告らの上記不法行為によって被告カテナが
被った損害額は5億円を下らないというべきである。
エ 被告Bの損害
 (ア) 被告Bは,被告カテナの創業者であり,創業翌年からその代表取締役の地
位にあり,業界においても重要な役職に就いており,被告カテナの代表者としてだ
けではなく,B個人としても高い社会的信用や名誉を築いてきている。
    (イ) また,被告Bは,原告Aの苦境を助けるべく熱意を持ってソフトウ
ェアジャパンとの合併を推進し,その希望に応えて援助してきたにもかかわらず,
その原告Aから「合併詐欺」という汚辱の言辞を与えられ,その信用と名誉を著し
く傷つけられた上,法廷の場に被告として訴えられ,その苦痛は計り知れない。被
告Bの社会的地位や前記の諸般の事情を勘案すれば,原告らの上記不法行為によっ
て被告Bが被った損害額は1億円を下らないというべきである。
オ 被告Cの損害
 (ア) 被告Cは,前記のとおり,ソフトウェアジャパンとの提携・合併の担当役
員として,その実現に向けて誠意を持って職務を遂行してきた。特に,ソフトウェ
アジャパンの資金繰りや業務運営に支障が生じることのないよう,社内管理体制が
整っていないソフトウェアジャパンの従業員らから実情や希望を聞き,被告カテナ
内部や金融機関との調整に忙殺されながら,ソフトウェアジャパンの希望する日時
までに希望の金額が融資できるよう大変な努力をした。しかも,平成8年11月か
らは,原告らの要請により,ソフトウェアジャパンの取締役に就任し,誠実にソフ
トウェアジャパンの整理業務を遂行してきた。
 (イ) それにもかかわらず,被告Cは,原告及びソフトウェアジャパンから感謝
されるどころか,「合併詐欺」という最大の汚辱の言辞を浴びせられるとともに,
損害賠償請求訴訟を提起され,その信用と名誉を著しく傷つけられ,計り知れない
苦痛を被った。被告Cの社会的地位や前記の諸般の事情を勘案すれば,原告らの上
記不法行為によって被告Cが被った損害額は5000万円を下らないというべきで
ある。
カ 弁護士費用
  被告らは,原告らの不法行為によって被った損害の賠償を求めて本件乙事件を
提起せざるをえず,被告らの訴訟代理人にその手続を依頼し,弁護士費用として,
各自次のとおり支払うことを約した。
(ア) 被告カテナ4107万円(着手金1369万円,報酬2738万円)
(イ) 被告B 1107万円(着手金369万円,報酬738万円)
(ウ) 被告C 657万円(着手金219万円,報酬438万円)
(原告らの主張)
ア 原告らは,前記のとおり,被告らがソフトウェアジャパンの会社財産を騙取す
ることを目的として「合併詐欺」を行ったことを確信して,取引先に対してその旨
の報告をしたほか本件甲事件を提起したものであって,全く正当なものであり,被
告らに対する不当な害意は一切ない。
イ 本件甲事件を提起する前に,原告らが被告らに対して,ソフトウェアジャパン
に対し10億円,原告Aに対し10億円を支払うことを提示したのは,本件甲事件
の提起を考慮していたときに被告らの弁護士から一応考えている和解金額を提示し
てもらいたいとの要請があったからであり,何ら根拠のない不正な金額を取得しよ
うとしたものではない。
 ウ 原告らの上記行為によって被告らが損害を被ったとの点については否認し,
原告らが弁護士に対して原告ら主張の弁護士費用を支払うことを約束したとの点は
不知。 
第3 当裁判所の判断
1 争点1(被告らによる合併詐欺の成否)について
(1) 本件の事件経過は,前記「第2事案の概要」の「1基本となる事実」で詳細に
記述したとおりである。以下では,この「基本となる事実」で述べた事実を前提と
して判断する。
(2) まず,原告らは,被告らが当初からソフトウェアジャパンと合併する意思がな
かったのに,これがあるかのように装って合併に合意し,ソフトウェアジャパンが
進めていたオリックスとの業務提携契約を白紙にさせ,また,ソフトウェアジャパ
ンの売掛金債権を半ば強制的に譲り受けて売掛金リストを入手した上,不公正かつ
虚偽の財務調査を行って合併の合意を一方的に破棄し,ソフトウェアジャパンの商
権を強引に取得するため第二会社方式を強要したが,同社がこれを受け入れないこ
とから,何らの正当理由もないのに,一方的に債権譲渡通知を全売掛先に送付して
ソフトウェアジャパンを倒産させて,目的どおり同社の商権を取得するとともに,
同社に損害を与えたと主張している。
(3) しかし,当裁判所は,以下の理由により,このような原告らの主張を採用する
ことはできない。
 ア 第1に,被告カテナが今回のソフトウェアジャパンの支援問題に関係を持つ
に至ったのは,ソフトウェアジャパンが平成8年6月20日過ぎころ最大の仕入先
であるマイクロソフト社から与信枠を20億円から3億円に削減され,同社からパ
ソコンソフトを仕入れるには同年7月初めまでに10億円を支払う必要が生じたた
め,代表取締役である原告Aが大学の先輩で業界に顔の広いE元社長に対して融資
先を紹介してほしいと依頼したところ,E元社長が金融機関からの新たな融資が難
しいと判断して,原告Aに対して被告カテナのオーナー社長である被告Bを紹介し
たことがきっかけであり(基本となる事実(2)エ),被告カテナや被告Bの側(「被
告カテナ側」ということがある。)から,何らかの目的をもってソフトウェアジャ
パンや原告A(「ソ
フトウェアジャパン側」ということがある。)に接触を求めたものではない。
 イ 第2に,ソフトウェアジャパン側は,平成8年春ころには資金繰りが悪化し
始めていたことを認識していて,原告Aは,同年3月にはオリックスとの提携交渉
を開始していたが(基本となる事実(2)イ),交渉がななか進展しないうちにマイク
ロソフト社から与信枠を削減されたため,上記の10億円の緊急融資が必要となっ
たものであるが,ソフトウェアジャパン側は,被告カテナからこの10億円の融資
を受ける際にも,被告カテナ側に対して,既にオリックスと提携交渉に入っている
ことを知らせていなかった(基本となる事実(2)オ)。
 ウ 第3に,被告カテナ側は,平成8年7月5日当時,ソフトウェアジャパンの
直近3期分の決算書などを検討し,資金不足は一時的なものと判断して,原告A及
びその持株会社が保有するソフトウェアジャパンの株式合計181万株を譲渡担保
とすることで,速やかに上記10億円の融資を実行したにもかかわらず,譲渡担保
に提供するはずの株券は発行されていなかったため,被告カテナがソフトウェアジ
ャパンの株券の交付を受けたのは同年9月26日のことであった(基本となる事
実(2)カ,キ)。
 エ 第4に,ソフトウェアジャパンは,平成8年9月にも資金ショートをきたす
ことが予測されたため,原告Aは,オリックスとの提携交渉の成立を急いでいて,
9月6日にはオリックスの提示した内容でソフトウェアジャパンとオリックスとの
提携交渉が成立するかにみえたが,その内容は,原告Aが希望していた①1株25
0円での新株引受や②9月後半の資金ショート回避のための10億円の融資や③ソ
フトウェアジャパンに対する原告A個人の5億円の債務の肩代わりなどの点がすべ
て拒否されたものであったため,E元社長のアドバイスを受けて,急きょ同月8日
に原告Aが被告Bと会談することになったもので,この段階でも被告カテナ側は受
け身であった(基本となる事実(4),(5)ア)。
 オ 第5に,平成8年9月8日のE元社長の下での原告Aと被告Bとの会談にお
いても,被告カテナ側から合併を求めたものではなく,E元社長から原告Aに対し
て当面のオリックスとの提携では新たな10億円の融資が得られないことや原告A
の身分保障がないことなどのデメリットや,オリックスと提携するのであれば被告
カテナに対して7月に融資を受けた10億円を返済するのが筋ではないかなどと指
摘され,原告AがD室長と別室で協議し検討した上で,オリックスとの提携は利益
が薄いことを認め,被告カテナとの合併を目指して業務提携を図るべきだと結論に
達して,甲1号証の合意書が作成されたものであり(基本となる事実(5)),被告カ
テナ側が業務提携を求めたものではない。
 カ 第6に,被告カテナは,上記9月8日の本件提携合意後,ソフトウェアジャ
パンと打合せを重ねて同月18日には正式に覚書(甲6号証)を作成し,東京証券
取引所に報告して必要な準備や日程について打合せをするとともに,ソフトウェア
ジャパンと合併を前提とする業務提携をしたことを記者発表したほか,同月20日
には本件提携合意において合意した30億円を限度とする金融支援のうち10億円
の融資(本件9月貸付)を実施した。また,ソフトウェアジャパンは,前記のとお
りマイクロソフト社から与信枠が大幅に削減されたため7月に支払った10億円で
はまだ債務を解消することができず,依然としてマイクロソフト社から直接商品を
仕入れることができない状況であったため,被告カテナがソフトウェアジャパンの
必要とする商品をマ
イクロソフト社から仕入れて,これをマージン等を上乗せしない金額でソフトウェ
アジャパンに供給するという本件商品供給支援をも行っている(基本となる事実(6)
ア,イ,ウ)。
 キ 第7に,被告カテナがソフトウェアジャパンとの合併が難しいと判断した理
由は,合併のための財務デュー・デリジェンスとして平成8年10月1日から同月
9日にかけて実施された本件財務調査において,ソフトウェアジャパンが50億円
に上る債務超過状態に陥っているとの調査結果が報告されたためであり(その当否
は後に判断する。),原告らが主張するように,何らの理由もないままなされたも
のではない。しかも,被告カテナは,合併が難しいと判断された後も,合併以外の
方法でソフトウェアジャパンとの提携を実行するために具体的な支援策を検討し,
ソフトウェアジャパンのD室長などとも協議を重ねた結果,10月14日には,ソ
フトウェアジャパンの営業を分社化して,いわゆる第二会社方式を採用することが
最善であるとの結論
に達した。そして,被告カテナは,同年10月21日には,商品の前払いとして,
さらに4億円の融資を実施した(基本となる事実(7)オ,(8))。
ク 第8に,このように,被告カテナによるソフトウェアジャパンに対する支援
は続いていたが,原告Aは,本件財務調査の結果と第二会社方式への不満から,同
年10月15日にはソフトウェアジャパンの代表取締役を辞任し(基本となる事
実(8)エ),独自に被告カテナ以外の会社との提携の道を探っていたが,同月25日
になされた伊藤忠商事との交渉が思わしくなかったことから,被告カテナとの提携
を白紙に戻して自主再建を図ろうと考えて,再びソフトウェアジャパンの代表取締
役に復帰し,同月28日には被告カテナとの提携を破棄して自主再建を目指すこと
を正式に記者発表し,同月30日に予定されていた分社化のために必要なエスジェ
物流に対する営業譲渡を承認するための臨時株主総会を中止した。それにもかかわ
らず,原告Aは,同月
30日には,被告カテナや関係者に事前に連絡することもないまま,その自主再建
を断念して自己破産の申立てをすると記者発表したものの,K会長から説得され,
自己破産の申立てをすることを同日中に撤回するなどして混乱状態を招いた(基本
となる事実(10))。
 ケ 第9に,被告カテナは,このような混乱後も事態の収拾に努力し,いわゆる
第二会社となるエスジェ物流の運営を支援した上,同年12月13日にはソフトウ
ェアジャパンのジャパンソリューションに対する増資の資金として3000万円を
貸し付け,また,同月16日までにソフトウェアジャパンが負担していた倉庫の未
払管理料など3100万円を立替払いするなどの負担を続けたほか,ソフトウェア
ジャパンの従業員は同年11月下旬までに1名を残していなくなったため,ソフト
ウェアジャパンの任意整理手続もすべて被告カテナの従業員によって処理されたの
が実情である(基本となる事実(11))。
 コ このような本件合併問題に関する一連の事実経過にかんがみれば,被告カテ
ナにはソフトウェアジャパンと合併を前提として業務提携を実施する意思があり,
実際に,そのための手順を1つずつ着実に実施していったものと評価することがで
きる。それにもかかわらず,本件において著しい混乱状態が生じ,当初予定した円
滑な処理ができなかった理由は,ソフトウェアジャパンに被告カテナの予想をはる
かに超える膨大な債務超過があったことと,代表取締役である原告Aが確実な見通
しもないまま態度を二転三転させたためであり,このことは,本件訴訟において,
原告A以外の関係者が等しく認めるところである。したがって,被告カテナ側にお
いて,当初からソフトウェアジャパンと合併することを前提とした業務提携の意思
がなかったなどとす
る原告らの主張を採用することはできない。
(4) 合併詐欺であるとの原告らの主張を採用することができないことは上記のとお
りであるが,原告らは,本件財務調査の適否や債権譲渡の詐欺性や第二会社方式の
不当性について言及しているので,以下,これらの点について判断しておく。
 ア 本件財務調査の適否について
  (ア) 原告らが本件財務調査の不当性の根拠としているのは,公認会計士M
(以下「M会計士」という。)の作成した報告書(甲ア1号証,甲ア3号証,以下
「M報告書」という。)であり,M会計士は,①本件財務調査は,正味財産価値の
算定に走りすぎて,慎重さを欠いた性急な処理をしており,「ある特定の目的に著
しく目的整合的であるように見え」,「公表財務諸表の妥当性を検討する調査の域
をはるかに超え」ており,「ある種の意図を持つ者に悪用されかねない報告書」で
あって,本件財務調査の報告で挙げられた56億0500万円の評価損のうち51
億6800万円は妥当でないとしている(甲ア1号証,甲ア3号証,M証人)。
(イ) ところで,本件財務調査は,被告カテナが相手方であるソフトウェアジャパ
ンとの合併のリスクや合併条件や合併後の方針などを検討するために実施したもの
で,ソフトウェアジャパンのいわゆる時価を算定したものと認められるが(乙2号
証,乙90号証),合併のための財務調査に関しては,適用すべき手法や会計基準
が確立しているわけではない上(乙95号証),ソフトウェアジャパンが非公開会
社であって,証券取引法193条の2に基づく監査を受けていなかったため,ソフ
トウェアジャパンから提出された財務諸表をそのまま前提とすることができない状
況にあったことなどの事情を考慮すると,被告カテナが時価評価をベースとしてソ
フトウェアジャパンの財務内容を評価したことが直ちに不当なものであるというこ
とはできない。
(ウ) 次に,本件財務調査が違法不当な態様で実施されたか否かであるが,本件調
査人は,本件財務調査を実施するに先立って,原告Aをはじめソフトウェアジャパ
ンの経理担当者,在庫管理担当者,売掛金管理担当者などと打ち合わせを行い,調
査内容及び調査方法を説明して協力を求めた(基本となる事実(7))。そして,調査
期間中は,D室長が立ち会ったほか,各担当者が調査人の求めに応じて説明をし,
調査最終日には,本件調査人からD室長や担当者に対して調査結果の概要を説明し
て意見を求めたが,ソフトウェアジャパン側から特に異論が出なかった(乙90号
証,D陳述書)。したがって,本件財務調査が違法不当な態様で実施されたという
ことはできない。
(エ) また,経営コンサルタントとしてソフトウェアジャパンで経営改善に当たっ
ていたD室長は,ソフトウェアジャパンの実情とそれまでの同人の経験に照らし
て,平成8年8月から9月当時,ソフトウェアジャパンは約30億程度の債務超過
状態にあると感じていたこと(D陳述書)が認められるほか,当時,ソフトウェア
ジャパンはマイクロソフト社から新たな商品の供給を停止されていた状態であり,
在庫商品の多くは1年以上出し入れ形跡がない不良在庫商品であったこと(乙90
号証,I陳述書)などからすれば,平成8年10月当時にソフトウェアジャパンが
約50億円の債務超過状態にあるとの本件財務調査の結果が同社の実情を全く反映
していない不当なものとまでは認められない。
(オ) このように,本件財務調査は,合併や業務提携のための財務調査として通常
実施される方法,態様及び範囲で行われたものと評価することができるから,これ
に反する立場を前提とするM報告書の見解を採用することはできない。なお,M報
告書は調査手続の慎重性について指摘するが,本件財務調査は平成9年4月1日の
合併に向けて平成8年10月1日から9日までの短期間に限られた情報と環境の中
で実施されたものであり,その報告書の中にも,「棚卸の立会,売掛金の確認等,
重要ないくつかの手続が実施できず,期間的な制約もありましたので,可能な範囲
での調査報告書であり,何らかの数値を証明するものではありません。」と明記さ
れていることからすれば,この点をもって本件財務調査を不当なものであるとまで
いうことはできない

(カ) しかも,本件財務調査が原告らの主張するように合併詐欺の一環として違法
不当な目的の下で行われたというためには,被告カテナが本件調査人に対して予め
そのような目的を告げて調査を依頼し,これに沿う調査結果が得られるように不正
な方法で調査を実施することなどが必要であるが,本件にあらわれた全証拠をもっ
てしても,そのような事実を認めることはできない。したがって,本件財務調査
は,被告カテナがソフトウェアジャパンとの合併を不可能とする目的で実施した不
公正かつ虚偽の調査であるとの原告らの主張は,理由がない。
 イ 本件債権譲渡通知の相当性について
  (ア) 原告らは,被告カテナがソフトウェアジャパンの商権を取得するために
金融支援の担保として本件債権譲渡担保契約を締結し,ソフトウェアジャパンの売
掛金リストを提出させ,ソフトウェアジャパンが第二会社方式を受け入れないこと
から債権譲渡通知書を全売掛先に送付して,ソフトウェアジャパンを倒産させたと
主張する。
(イ) しかし,そもそも合併を前提とした業務提携をしたからといって,当然に無
担保で30億円もの金額を融資をすることは一般に考えられないところであり,本
件においても,ソフトウェアジャパンのリストラや分社化の費用として30億円の
資金が必要であると被告Bに説明したのはソフトウェアジャパンのD室長であり,
被告カテナによる30億円を限度とする金融支援の担保に売掛金を充てることを提
案したのは原告Aであること,原告Aは,本件7月貸付の担保とするはずであった
ソフトウェアジャパンの株券が発行されておらず,未だ被告カテナに担保として提
供されていないことを指摘され,平成8年9月8日の合意時点において,本件売掛
金のほかに担保に適当な財産がなかったこと(基本となる事実(5)ウないしカ)が認
められる。
(ウ) また,被告カテナが同年10月24日以降全売掛先に対して債権譲渡通知を
送付したのは,ソフトウェアジャパンが第二会社方式を受け入れなかったからでは
なく,ソフトウェアジャパンから先に債権譲渡を受けていたさくら銀行が同月22
日付けで債権譲渡通知を送付したことを知り,自社の債権保全のために対抗要件を
具備しておく必要があったこと,さくら銀行はソフトウェアジャパンからの要請に
もかかわらず,債権譲渡通知を撤回しなかったこと(基本となる事実(9))によるも
のである。
(エ) さらに,被告カテナは,債権譲渡通知を送付する直前の10月21日に,ソ
フトウェアジャパンの開催した金融機関向けの説明会に出席し,ソフトウェアジャ
パンを支援していくと説明し,同日,商品代金の前払いとして4億円の支援を実施
していたこと(基本となる事実(8)エ,オ)が認められる。
(オ) これらの事実に照らし考えるならば,被告カテナが,原告らが主張するよう
な不正な意図をもって本件債権譲渡担保契約を締結し,債権譲渡通知書を送付した
ものと認めることはできない。
 ウ 第二会社方式の相当性
  (ア) 原告らは,被告カテナがソフトウェアジャパンの商権を取得するため同
社に第二会社方式の採用を強要したと主張している。
  (イ) しかし,ソフトウェアジャパンを分社化し利益率を高めて生き残りを図
るという発想は,被告カテナ側から出たものではなく,もともとソフトウェアジャ
パンのD室長の考えによるもので,D室長は平成8年8月20日ころには原告Aに
対してその旨の説明をしていた(基本となる事実(3)イ)。
  (ウ) しかも,ソフトウェアジャパンを分社化して第二会社方式を採用するこ
とが正式になったのは,本件財務調査の結果によってソフトウェアジャパンが50
億円を超す膨大な債務超過状態に陥っていることが判明したためであり,ソフトウ
ェアジャパンが実質的に生き残るためにはやむを得ない選択であった(基本となる
事実(8))。
  (エ) したがって,本件で第二会社方式が採用されたことをもって,被告カテ
ナがソフトウェアジャパンの商権を取得するために画策した不当なものであるとい
うことはできない。ちなみに,被告カテナがソフトウェアジャパンの外販ルートを
獲得するには,ソフトウェアジャパンと合併して円滑にこれを引き継ぐのが最善で
あって,原告らが主張するように故意にソフトウェアジャパンを破産させて引き継
ぐのでは,信用が低下するだけではなく,混乱が生じて正常な状態で引き継ぐこと
ができず,メリットが著しく減少してしまうことを考えると,原告らの上記主張
は,合理的な理由のないものである。
(5) 以上のとおりであるから,被告らがいわゆる合併詐欺を画策してソフトウェア
ジャパンを破産に追い込み,違法不当な利益を取得したとする原告らの主張は,理
由のないものであるといわなければならない。
2 争点2(合併契約の債務不履行)について
(1) 原告らは,被告カテナとソフトウェアジャパンは,平成8年9月8日,1対1
の対等合併契約を締結したから,被告カテナは,債務の本旨に従い,①被告カテナ
の取締役会への付議と合併承認決議,②合併契約書の作成,③臨時株主総会の招集
と総会における合併承認特別決議の取付等,合併に必要な手続を誠実に実行する義
務があったところ,なんらの正当理由なく,これを履行しなかったと主張する。
(2) しかしながら,前記の「基本となる事実」で記載した本件事件の経緯や,争
点(1)の判断で認定し説示したところによれば,被告カテナはソフトウェアジャパン
との合併に向けて様々な準備を整えていたが,それにもかかわらず,合併問題が円
滑に進展せず,結果的に最悪の結末を迎えることになったのは,本件財務調査の結
果によってソフトウェアジャパンが50億円を超える債務超過であると報告された
ことのほか,原告Aが明確な見通しもないまま態度を二転三転させて自ら混乱状態
を招き,ソフトウェアジャパンの社会的信用を失い,ソフトウェアジャパンを再建
不能の状態に追いやったためであることが明らかであるから,上記の原告らの主張
を採用することはできない(したがって,争点3の損害については判断しな
い。)。
3 争点4(錯誤無効による不当利得返還請求の可否)について
 (1) 原告らは,本件提携合意では,①ソフトウェアジャパンと被告カテナとの対
等合併,②被告カテナのソフトウェアジャパンに対する30億円を限度とする金融
支援,③被告カテナによる原告Aのソフトウェアジャパンに対する個人負債の解消
が合意されていたところ,被告カテナは,そもそもこれらの合意を実行する意思が
なかったところ,原告らは,上記①ないし③の履行が必要不可欠の前提であること
を明示し,被告カテナにおいてもこれを知りつつ,これと一体のものとして本件債
権譲渡担保契約を締結したのであり,仮に,被告カテナが①ないし③の合意を履行
する意思がないことを知っていたならば,本件譲渡担保契約を締結することはなか
ったから,本件債権譲渡担保契約は錯誤により無効であると主張している。
 (2) しかしながら,本件提携合意時,被告カテナが上記の合意に対応する意思を
有し,実行に着手していたことは,これまでにも認定し説示したとおりであるか
ら,本件債権譲渡担保契約が錯誤により無効であるとする原告らの主張は,その前
提を欠くもので,失当なものである。
4 争点5(破産法72条1項1号による故意否認の可否)について
(1) 原告管財人は,故意否認の前提として,本件債権譲渡担保契約においては,譲
渡債権の価額,弁済期,債権発生の始期と終期も記載されていないだけでなく,対
象となる第三債務者名すら特定されていない(譲渡対象外とする債権の第三債務者
名が記載されているのみである。)から,集合債権譲渡契約の基本的要素を欠いて
おり,そもそも有効な債権譲渡でないと主張しているので,まず,この点について
検討する。
 ア 本件で問題となっているソフトウェアジャパンの被告カテナに対する債権譲
渡担保契約の内容は,前記「基本となる事実」の(5)カ及び(6)エに記載のとおり
で,いわゆる集合債権譲渡担保契約というべきものであり,その目的とされた売掛
金債権は新たに発生したり消滅したりすることによって増減を繰り返し,また,契
約時に未発生の将来債権も譲渡の対象となりうるという特性を有するものである
が,そのような集合債権譲渡担保契約も当事者間で自由意思に基づいて締結された
ものであれば,例えば公序良俗に反するような態様でなされたなど他に特段の事情
がない限り,法的に有効なものであることは他言を要しないところである。
 イ そして,ソフトウェアジャパンと被告カテナは,前記「基本となる事実」
の(5)カ及び(6)エに記載のとおり,それぞれ自由意思に基づいて本件債権譲渡担保
契約を締結したもので,しかも,その契約においては,第三債務者を平成8年9月
30日現在の全売掛先(ただし,既にさくら銀行ほか銀行3社に対して担保提供し
た16社分を除く。)とし,その特定については,同日現在の売掛先について,そ
の名称,住所,電話番号を記載したリストを交付してなされていることが認められ
るのであって,社会通念上,第三債務者の識別,特定として必要最小限の事項は満
足されているものと考えることができる。
 ウ そうすると,ソフトウェアジャパンと被告カテナとの間で取り交わされた本
件債権譲渡担保契約は,その債権の特定に欠けるところはなく,有効であるといわ
なければならない。
(2) 次に,原告管財人は,本件債権譲渡の時期は,被告カテナが破産会社を代理し
て売掛先に対して債権譲渡の通知を送付した時点であると主張しているので,この
点について検討する。
ア 前記のとおり,平成8年9月20日(本件9月貸付の日)に,ソフトウェアジ
ャパンが,被告カテナに対して,現に負担しかつ将来負担する一切の債務の担保と
して,同年9月30日現在の上記16社分を除いた全売掛先(第三債務者)に対し
てソフトウェアジャパンが現に有し,または将来取得する債権を一括して被告カテ
ナに譲渡するとの本件債権譲渡担保契約を締結したこと自体は当事者間に争いがな
い。
イ 原告管財人は,本件債権譲渡契約では,被告カテナが第三債務者に対して担保
権実行としての取立ての通知をするまでは,ソフトウェアジャパンが被告カテナに
譲渡された債権を取り立てることができ,ソフトウェアジャパンが取り立てた金銭
は被告カテナへの引渡しを要しないことになっているので(基本となる事実(6)
エ),本件債権譲渡の効力発生時期は,被告カテナが売掛先に対して債権譲渡の通
知を送付した時点だと主張するものである。
ウ 確かに,本件債権譲渡担保契約では原告管財人の主張するような条項が定めら
れてはいる(基本となる事実(6)エ)が,このような条項は,まさに債権譲渡通知が
ない段階では第三債務者の混乱を回避するために当然に必要となる措置であるとと
もに,ソフトウェアジャパンに有利な特約ではあるが,そもそも債権譲渡の通知
は,いわゆる対抗要件であって,債権譲渡の効力要件ではないとするのが確立した
民法上の原則であることや,このような特約は,第三債務者の混乱を回避するのに
必要な限度でソフトウェアジャパンに債権取立ての権限を付与したものにすぎない
と解されることに照らし考えれば,本件債権譲渡担保契約に基づく当事者間での債
権譲渡の効力は,その契約が締結された平成8年9月20日の時点において生じる
と解するのが相当であ
る。
エ ただし,当初除外されていた上記16社について将来発生する売掛金債権の譲
渡については,平成8年9月20日の本件債権譲渡担保契約では除外されていて,
その後,同月30日ころまでの間に債権譲渡する旨の合意がなされたものと認めら
れるから,これらの債権については,ソフトウェアジャパンから被告カテナに対す
る債権譲渡の時期は,同月20日ころから同月30日ころまでの間と認めるのが相
当である。
(3) さらに,本件債権譲渡担保契約によってソフトウェアジャパンの売掛金債権に
譲渡担保を設定したことが破産法72条1項1号の故意否認事由に該当するか否か
について検討する。
ア まず,本件債権譲渡担保契約が締結された平成8年9月20日から16社分が
追加して債権譲渡された同月30日ころまでの間におけるソフトウェアジャパンの
経営状態について検討すると,A陳述書,乙2号証,C陳述書,D陳述書及び乙1
05号証によれば,ソフトウェアジャパンは,多額の債務超過状態にあり,かつ,
同月の所要運転資金として10億円(当期所要運転資金として合計30億円)を必
要としていたが,資金調達あるいは金融機関からの弁済猶予を得られる見込みはな
く,資金繰り悪化の窮状にあり,将来的には,いずれかの時点で事業継続が困難と
なる可能性は高かったものと認められるから,ソフトウェアジャパンが被告カテナ
に対して負担する現在及び将来の一切の債務を担保するため全売掛先に対する売掛
金債権を譲渡するこ
とは,特段の事情がない限り,他の一般債権者を害する可能性が高いと考えられ
る。
イ しかしながら,本件において,本件債権譲渡担保契約は,本件7月貸付及び被
告カテナのソフトウェアジャパンに対する30億円を限度とする金融支援に基づく
債務を担保するために締結されたものであるところ,30億円はソフトウェアジャ
パンの当期所用運転資金であり,実際に本件9月貸付による10億円も,運転資金
及びソフトウェアジャパンが進めていた経営改革の一環である分社化のための費用
に使われたこと,本件商品供給支援も,ソフトウェアジャパンがその最大の仕入先
であるマイクロソフトからの仕入れができない状態にあったことから行われたもの
であることなど,前記認定の諸事実(基本となる事実(6))に照らし考えると,被告
カテナがソフトウェアジャパンに対してした30億円を限度とする金融支援は,平
成8年9月20日当
時,ソフトウェアジャパンの事業継続のためにやむを得ずになされたものであると
認めるのが相当である。
ウ そして,上限30億円という被担保債権に対して,担保に提供された売掛金債
権の計算上の合計額は37億5755万2091円相当であり,均衡を失していて
相当ではないのではないかとも考えられるが,担保に提供された売掛金債権が実質
的にどれくらい回収可能であるのか,また,その回収に要するコストはどれくらい
であるのかなどの点については,債権管理自体が適切になされていないためソフト
ウェアジャパンの担当者においても正確には把握しておらず(なお,本件財務調査
の報告においては,平成8年8月31日現在のソフトウェアジャパンの資産表に計
上されていた50億8453万円余の売掛金のうち10億円が回収不能売掛金であ
るとされている。),実際問題として,債権譲渡を受けるにあたって売掛先の数が
膨大であり,多額の
回収コストや大きな回収不能のリスクが生じることが考えられたことなどの諸事情
を考慮すると,本件債権譲渡担保契約は,形式的には約7億円の過剰担保であるよ
うにみえても,その実質においては,ソフトウェアジャパンが円滑に営業を継続す
るために必要な金融支援を得るための必要不可欠な担保設定行為として合理的均衡
があり,相当性があると評価することができる。
エ なお,原告管財人は,30億円を限度とする金融支援は無担保で行われる予定
であったと主張するが,前記認定のとおり,採用することはできない。また,本件
7月貸付による10億円の債務は,9月20日の債権譲渡の時点から形式的にみれ
ば既存債務といえないわけではないが,これまで認定し説示した一連の経過に照ら
し考えるならば,ソフトウェアジャパンの営業の継続に必要不可欠なものとして,
本件7月貸付と本件9月貸付とは連続した一体のものと評価することができるか
ら,本件債権譲渡担保契約の被担保債権に本件7月貸付による債権を加えたことを
もって,本件債権譲渡担保契約の相当性が失われるものではないというべきであ
る。
オ したがって,本件債権譲渡担保設定契約によってソフトウェアジャパン(破産
会社)が被告カテナに対し売掛金債権につき譲渡担保を設定したことは,破産法7
2条1項1号の定める故意否認の事由に該当しないというべきであり,本件債権譲
渡はいずれも有効であることになるから,原告管財人の請求には理由がなく,反訴
原告カテナの反訴請求に理由があることとなる。
5 争点6(債権の過剰回収による不当利得返還請求の可否)について
(1) 原告管財人は,被告カテナは,ソフトウェアジャパンに対して融資した20億
円を大幅に上回る債権を譲り受け,総額27億2255万9768円を回収したか
ら,20億円を超える回収額7億2255万9768円について,不当利得をして
いると主張する。
(2) これに対して,被告カテナは,被担保債権は,別紙3(被担保債権目録)記載
のとおりであり,被告カテナが,別紙2(株式会社ソフトウェアジャパン譲受債権
回収状況)の「回収日」欄記載の各回収日に,「回収額」欄記載の各金額を回収
し,これを別紙4(充当関係目録)の別表①(回収金充当明細)に記載のとおり充
当したので,現在も,未充当残債権として,①本件9月貸付の遅延損害金残額19
81万6698円,②平成8年12月13日付貸付金3000万円及びこれに対す
る未払利息金・遅延損害金が存在するから,被告カテナに不当利得はないと主張し
ている。
(3) そこで,この点について判断する。
 ア まず,本件債権譲渡担保設定契約の契約書(乙27号証)には,「ソフトウ
ェアジャパンは,被告カテナに対して現に負担し,かつ将来負担する一切の債務を
担保するために」と記載されており,ソフトウェアジャパンの被告カテナに対する
一切の債務が被担保債務に含まれることになるから,以下で,被告カテナが被担保
債権として主張している別紙3(被担保債権目録)記載の各債権について,それぞ
れ被担保債権となるものか否かについて検討する。
イ 別紙3(被担保債権目録)記載の「貸付金」のうち,①,②は,本件7月貸付
及び本件9月貸付であり,③は,ソフトウェアジャパンが子会社であるジャパンソ
リューションの株式公開益をもって金融機関に対する債務の返済原資とするとのス
キームを前提として同社の増資を実行するために必要とした資金を,被告カテナが
ソフトウェアジャパンに貸し付けたものであるから,被担保債権と認められる。
  ちなみに,この各貸付金に対する未払利息や遅延損害金の額は,別紙4(充当
関係目録)の別表①ないし別表③に記載のとおりであり,①の本件7月貸付分10
億円に対する未払利息及び遅延損害金は2962万3939円であり,②本件9月
貸付分10億円に対する未払利息及び遅延損害金は5660万2134円,③平成
8年12月13日貸付分3000万円に対する利息64万5600円(遅延損害金
については平成9年3月31日以降の回収の詳細が明らかでなく,どの時点で30
00万円の貸金についての充当が終わったか不明である。)であり,これらの合計
額は21億1687万1673円である。
ウ 次に,別紙3(被担保債権目録)記載の「売掛金」であるが,これは,本件商
品供給支援に基づき被告カテナがソフトウェアジャパンに対して取得した売掛金債
権を指すもので,被担保債権に含まれるものである。その額は3億2984万24
14円(消費税込み)である(乙87号証)。もっとも,被告カテナ主張の金額は
3億2956万7326円(消費税込み)であり,上記乙87号証の記載とは金額
や日付で一致しない点も認められるが,本件提携合意に基づき本件商品供給支援が
行われたことは争いのない事実であるから,本件では,3億2956万7326円
の範囲内で被担保債権と認めるのが相当である。
エ 同目録3記載の「前払い未収金」のうち,別表②の買掛金欄の10月に記載さ
れた4億円は,平成8年10月21日にソフトウェアジャパンの同月後半の不足資
金にあてるため被告カテナが金融支援の一環として商品代金の前払い名目で支払っ
た金員であると認められる。
  また,11月分に記載された2000万円,12月分に記載された1100万
円は,ソフトウェアジャパンがムーブ社から借りていた倉庫から商品を出庫するた
めにムーブ社に対して支払わなければならなかった額を,被告カテナが前払い商品
代金の形で直接倉庫業者に支払った金員であるから,これらは,被担保債権に該当
する。
  ただし,被告カテナは,ソフトウェアジャパンが被告カテナに売り渡した商品
代金は1億1426万3993円であり,これを上記「前払い未払金」から控除す
べきとしているので,弁論の全趣旨によりこれを考慮すると,同目録3記載の「前
払い未収金」は3億1673万6007円となる。
オ 被告カテナは,同目録記載の「立替金」については,被告カテナは,ソフトウ
ェアジャパンのために立替払いした合併準備費用,債権回収費用及び任意整理費用
であると主張し,その内訳として同目録の別表③「株式会社ソフトウェアジャパン
立替金明細」において,内容証明(債権管理室),データ作成作業料(債権管理
室),文具購入(総務グループ),運搬費(会計グループ,資金グループ),ファ
クシミリ宛先自在同報サービス,ファクシミリ送信(債権管理室,総務グルー
プ),郵便物受取人払い(債権管理室),登記印紙代(債権管理室),印紙代等
(債権管理室),会議室等使用料(債権管理室),出張費(トップマネージメン
ト),中央監査法人報酬,廃棄料という支出項目が記載されている(かっこ内は起
票部門)。
 (ア) いずれの支出項目が合併準備費用や債権回収費用や任意整理費用に該当す
るのか明らかではないが,合併準備費用として記載されていると考えられるもの
は,ソフトウェアジャパンが平成8年10月31日に自己破産の申立て方針を公表
したことからすると同年11月1日までの支出分及び本件財務調査を実施した中央
監査法人に対する報酬がこれにあたるものと考えられるところ,同年10月11
日,15日,31日に被告カテナが内容証明郵便代金を立替払いをすることが必要
となる事情や,同年11月1日にデータ作成作業料を立替払いすることが必要とな
る事情は,本訴訟において全くあらわれておらず,これを被担保債権とすることは
できない。
 (イ) また,中央監査法人報酬は本件財務調査についての報酬であると考えられ
るが(他に同監査法人に報酬を支払うべき事情は見当たらない。),本件財務調査
は,被告カテナが被告カテナのために合併のリスクなどを検討する資料として依頼
したものであり,ソフトウェアジャパンの利益のために依頼したものではないか
ら,この報酬は,ソフトウェアジャパンが支払うべきものであるとはいえない。し
たがって,本件の被担保債権とするのは相当でない。
 (ウ) また,債権回収費用は,本件債権譲渡担保契約では,被告カテナが債務者
から譲渡債権を取り立てたときは,実際の取立額から取立てに要した費用を控除し
た金額を弁済充当することとされているが,平成8年11月15日に,ソフトウェ
アジャパンから被告カテナに対する債権譲渡が担保権の実行として有効に行われた
ことを確認した上で,被告カテナが回収業務に要する費用を負担することが合意さ
れているから,これをソフトウェアジャパンに請求することはできないと解すべき
である。したがって,本件の被担保債権とすることはできない。
 (エ) 任意整理費用については,被告カテナが支出したものであれば,ソフトウ
ェアジャパンに対して請求しうる余地があるが,前記オの本文部分に記載された支
出項目のうち,いずれが被告カテナから任意整理の費用として支出されたものか不
明であり,本件の被担保債権に属することの立証がないから,これを本件被担保債
権とすることはできない。
カ そうすると,本件債権譲渡担保契約の被担保債権となるものは,前記被担保債
権目録1ないし3記載の合計額27億6317万5006円であると認められると
ころ,これは,被告カテナが本件債権譲渡によって譲り受けた売掛金債権の回収に
よって取得した金額である27億2255万9768円を上回るから,結局,被告
カテナが本件債権譲渡によって不当利得したとは認められない。したがって,原告
管財人の上記主張を採用することはできない。
6 争点7(被告らに対する信用毀損,名誉毀損の成否と損害)について
(1) 信用毀損,名誉毀損の不法行為について
 ア 被告カテナ(乙事件原告カテナ)は,ソフトウェアジャパン及び原告A(乙
事件被告A)が,平成9年6月23日ころから同月25日ころまでの間,被告ら
(乙事件原告ら)がソフトウェアジャパンと合併する意思がないのにソフトウェア
ジャパンの財産を騙し取るために合併話をもちかけた等という事実を記載した文書
をソフトウェアジャパンの債権者ら多数の者に配布し,同趣旨の内容を記者発表し
たことによって,被告カテナの信用や,被告B及び被告C(乙事件原告B及び同
C)の名誉を毀損したなどと主張している。
 イ これに対し,原告ら(乙事件被告ら)は,上記被告らの主張を前提として,
原告らの主張は,公共性を有し,公益目的を持って行われていることが明らかであ
り,内容は真実であり,そうでないとしても真実と信じるについて相当な理由があ
るので名誉毀損等にはあたらないと主張する。
 ウ そこで,判断するに,被告らが,原告A及びソフトウェアジャパンが配布し
たと主張する文書(乙81号証の1ないし6)には,作成者が記載されておらず,
しかも,その多くはファクシミリで配布されたと認められるが,その際には,ソフ
トウェアジャパンのファックスシートが使用されており,そのシートに記載された
送付者の氏名は,「A」(乙81号証の4),「株式会社ソフトウェアジャパン 
代表取締役A」(乙81号証の2),「ソフトウェアジャパン(これは,不動文字
で印刷されていたものと認められる。)A」(乙81号証の1)であること,ま
た,原告Aは,同人の持株会社を含めてソフトウェアジャパンの株式の約3割を保
有しているオーナーであること,平成9年6月3日に開催されたソフトウェアジャ
パンの株主総会で,ソ
フトウェアジャパンの3名の取締役のうちK会長と被告Cは解任されていたこと
(C陳述書),上記文書が配布された頃は任意整理の第2回配当も終わり,ソフト
ウェアジャパンは会社としては実際上稼働していなかったことなどの事実(基本と
なる事実(11))を併せ考慮すれば,上記文書の配布は,ソフトウェアジャパンの名
称が使用されていたとしても,ソフトウェアジャパンがこれを配布したと評価する
のは相当ではなく,原告Aがソフトウェアジャパンの名称を用いて単独で行ったも
のと認めるのが相当である。したがって,その法的責任は,原告Aのみが負うべき
ものというべきである。
 エ 次に,上記文書の記載内容が被告らの信用や名誉を毀損するものであるか否
かを検討する。
  (ア) 上記文書には,「最初から合併する意志が無かったことを物語る。」,
「この行動は,仕組まれたシナリオにある後ろめたさを感じていたから採られたも
のと推察される。」,「カテナの収益力の低さにも原因があるが,債権者達がB及
びCを信用していないことによる。」(乙81号証の1,6,「カテナ社訴訟の意
味」と題する文書),「Bに明快な「ウソ」をつかれた。」,「合併の約束はその
時ばかりで,その後の経過は第二会社清算方式に落とし込む手練手管そのもの
で」,「本訴の最重要ポイントは,合併の約束をしながら,SJや債権者を落とし
込んでいった第二会社清算方式を糾弾することにあります。」(乙81号証の3,
「カテナ事件のとらえ方」と題する文書),「(本件財務調査の報告は)いわばS
Jの幹部や金融機関を「
錯誤」に落としいれるためのもの」,「すべてが合併の約束を無視して極めて恣意
的に仕組まれた出来事であった」,「かくして支払いの遅延を一度もせず,会社の
存続が約束された会社が罠に落とし込まれた。」(乙81号証の4,「カテナ事件
の系譜」と題する文書),「合併の約束をしていて実際キチンと合併しようと思え
ばできたのに,デッチアゲの「ウソ」の債務超過をつくりあげ,合併できないと称
し」,「ウソで騙されている債権者」,「基本的に合併を語った会社の破壊であっ
た。会社の乗っ取りというような生易しいものではない。暴力的にソフトウェアジ
ャパンという会社を壊し,その中の蜜だけを吸い上げようとした」(乙81号証の
5,「カテナ社報告書の虚偽について」と題する文書)などと記載されている(な
お,乙81号証の2
は,K会長への非難であり,被告らへの言及はない。)。
  (イ) これらによれば,上記文書は,被告カテナが,ソフトウェアジャパンと
合併する意思がないにもかかわらず,同社に対して合併話を持ちかけ,計画的にソ
フトウェアジャパンという会社を潰したとの事実を記載しているものと理解するこ
とができる。
  (ウ) なお,これらの文書には被告Cの言動についての言及はない(乙81号
証の3には,冒頭に「C専務殿」と記載されているが,文中では被告Cについて言
及はない。)。また,被告Bについては,乙81号証の3で「Bに明快な「ウソ」
をつかれた」とあるが,これに続き「カテナ社は1:1の合併の約束を交わしまし
た。ところが合併の約束はその時ばかりで,その後の経過は第二会社清算方式に落
とし込む手練手管そのもの」とあり,Bの「ウソ」の具体的中身については言及は
なく,これらを全体として考えれば,上記文書は被告カテナに対する非難を記載し
たものと認めるのが相当である。
 (エ) ところで,原告Aが上記文書を送付した相手方は,ソフトウェアジャパン
の債権者ら取引関係者であり,これらの者を基準に被告らの信用あるいは名誉が毀
損されたか否かを判断すべきところ,被告カテナ及びソフトウェアジャパンは,こ
れらの者に対して,ソフトウェアジャパンの自己破産申立ての方針公表や任意整理
の際に,適宜,その経緯や今後の方針等について説明するなどしていたことが認め
られるのであって,これらの者は,被告カテナとソフトウェアジャパンとの間に生
じた本件紛争の経緯について,ある程度の情報を有していたものと推認され,上記
文書に記載されたところをそのまますべて真実であると信じたものとは考えられな
い。
   しかし,そのことを考慮したとしても,被告カテナがソフトウェアジャパン
と合併する意思がないのにソフトウェアジャパンの営業財産を騙し取るために合併
話を持ちかけたという事実の摘示は,取引関係者に対して,被告カテナが他社の会
社財産を乗っ取るために自ら働きかけて詐欺行為を行ったという悪印象を与えるも
のであることを否定することはできず,被告カテナの社会的評価を低下させるもの
であるから,原告Aの上記行為は,被告カテナの信用を毀損するものであると認め
られる。
オ 次に,原告Aによる上記文書の配布が公共の利害に関する事実について公益目
的をもってなされたものであるか否かについて検討する。
 (ア) まず,本件では,前記認定のとおり,被告カテナは東証2部上場の企業
で,平成8年当時,パソコンソフトの流通業界で第3位のシェアを有していたこ
と,これに対して,ソフトウェアジャパンは非公開会社ではあったが,同じく業界
第2位のシェアを有していたこと,被告カテナとソフトウェアジャパンの本件合併
をめぐる経過や状況は多くの新聞紙上で報道され,世間の注目を集めていたことな
どの事実が認められるから,被告カテナとソフトウェアジャパンの合併をめぐる顛
末は,公共の利害に関する事実であると認められる。
(イ) しかし,その内容は,上記認定のとおり,特に根拠や証拠を指摘せず一方的
に被告カテナを非難するものであり,また,配布方法もファクシミリでソフトウェ
アジャパンの取引先に配布するというものであることに照らすならば,原告Aの上
記文書の配布行為が専ら公益を図る目的に出たものであると認めることはできな
い。したがって,この点の原告Aの主張を採用することはできない。
 カ なお,被告らが問題としている記者発表は,本件甲事件を提起したことを発
表したものであり,それ自体で被告らの名誉を毀損するものとまでいうことはでき
ない。
キ したがって,本件においては,原告Aだけが,上記文書の送付による信用毀損
により,被告カテナに対し,被告カテナが被った損害を賠償すべき義務があるとい
うべきである。
(2) 甲事件提起の不法行為性について
 ア 被告らは,原告らが甲事件を提起したこと自体も不法行為であると主張して
いるので,この点について判断する。
 イ そもそも民事訴訟は,利害が対立する私人間の法律的紛争について,自力救
済を禁止するとともに,裁判所での適正な法的手続によって紛争の解決を図ること
を目的とするものであるところ,民事訴訟を提起したことが容易に不当訴訟として
違法性が認められ,損害賠償の責任が生じるとするならば,萎縮効果を生じて訴訟
の提起を躊躇するようになり,結果的に国民が「訴訟による紛争解決」を図る道が
制限されてしまうことになって妥当ではないから,民事訴訟の提起が不当訴訟とし
て違法性を帯びるのは,当該訴訟を提起した原告の主張した権利又は法律関係(以
下「権利等」という。)が事実的,法律的な根拠を欠くものである上,当該原告が
そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるの
に,あえて訴えを提起
したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと
認められる場合に限られると解するのが相当である。
 ウ そこで,これを本件についてみると,原告A及びソフトウェアジャパンの甲
事件における中心的な主張は,被告らにおいて当初から合併意思がなかったという
点にあるところ,ソフトウェアジャパンが平成8年8月にしたソフトウェアジャパ
ンの株価の算定の際には,ソフトウェアジャパンには約3億2800万円の含み損
があり,再調達時価純資産評価額ではマイナス1289万円であると評価されたも
のの,被告カテナによる本件財務調査のような膨大な債務超過とはされていなかっ
たこと,原告Aは,この当時,ソフトウェアジャパンの財務状況が悪いことは認識
していたものの,オリックスや被告カテナとの提携により立て直すことができると
考えていたこと,このような状況の下で,被告カテナが実施した本件財務調査の結
果,ソフトウェアジ
ャパンは54億円もの債務超過の状態にあることを指摘され,対等合併の話が白紙
になった上,エスジェ物流を受け皿とする第二会社清算方式を提案され,ソフトウ
ェアジャパンの会社としての実質がなくなってしまうとの事態に直面したことや,
この間に,ソフトウェアジャパンの有していたすべての売掛金債権を融資を受ける
担保として被告カテナに債権譲渡することになってしまったことなどの事実が認め
られるのであって,このような一連の急激な事実経過に照らし考えるならば,本件
財務調査や本件債権譲渡が違法不当なものでないことはこれまでに判示したとおり
であるとしても,オーナー社長として信頼できるスタッフを持たなかった原告Aと
しては,このような事態の急変に対して冷静に対応することができず,混乱状態の
まま態度を二転三転
させ,ますます事態を悪化させてしまい,これらすべての経緯を被告カテナによっ
て当初から仕組まれたものと考えることによって同人なりの合理的説明を得ようと
した結果であると考えることができるのであって,同人が,甲事件の提起にあたっ
て,甲事件が事実上も法律上も全く根拠を欠くものであることを認識しながら,又
は容易に認識することができる状況にありながら,被告らを困惑させる目的であえ
て甲事件を提起したものとまで認めることはできない。
 エ したがって,本件においては,原告A及びソフトウェアジャパンによる甲事
件の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠いた違法なものとまで
断ずることはできず,不法行為が成立するとはいえないから,この点に関する被告
らの主張を採用することはできない。
 (3) 被告カテナの損害額について
  ア 上記のように,原告Aは,上記文書を配布した行為等につき,被告カテナ
に対してのみ,信用毀損に基づく損害賠償責任を負う。そこで,この原告Aの不法
行為によって被告カテナに生じた損害について検討する。
   イ 原告Aによる信用毀損行為の内容は,被告カテナがソフトウェアジャパ
ンと合併する意思がないのにこれがあるように装ってソフトウェアジャパンの営業
財産等を乗っ取ったというものであり,被告カテナの社会的信用を低下させるもの
であることは前記のとおりである。
     そして,上記文書は,ソフトウェアジャパンの取引先を中心として,全
部で約1000社に対して配布されたものと認められるが(乙81の1ないし6,
弁論の全趣旨),この文書配布によって,被告カテナに具体的に経済的な信用不安
が生じたり,営業活動に支障が出たことを認めるに足りる証拠はない。
   ウ もっとも,被告カテナは,原告Aが合併詐欺を理由として訴えを提起す
ると公言し始めたころから売上が低下したと主張しているが,乙116号証によれ
ば,被告カテナは,経常利益は減少しているものの,売上高自体は増加しているこ
とが認められるのであって,両者の間の因果関係は明らかではないといわざるをえ
ない。しかも,原告らが甲事件を提起した後,被告カテナが,原告らの主張は虚偽
であり信用毀損であるなどとして乙事件を提起したことも,広く新聞紙上で取り上
げられて報道されていることが認められる(基本となる事実(12)コ,サ)。
   エ 上記認定のところに加えて,本件に現れた一切の事情を斟酌するなら
ば,原告Aの前記信用毀損により被告カテナの被った損害は200万円,これにと
もなう弁護士費用は20万円,合計220万円と認めるのが相当である。
第4 結論
以上に判断したところをまとめると,次のような結論になる。
  1 甲事件については,原告らの請求は,いずれも理由がないので棄却する。
  2 反訴事件については,反訴原告カテナの反訴請求は,全て理由があるの
で,これを認容する。
  3 乙事件については,乙事件原告カテナの乙事件被告Aに対する請求は金2
20万円及びこれに対する不法行為後である平成9年7月21日から支払済みまで
民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,
この限度で認容し,乙事件原告カテナのその余の請求及びその余の乙事件原告らの
請求は,いずれも理由がないからこれを棄却する。
  4 訴訟費用の負担については,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項
本文を適用して,全事件に要した訴訟費用を6分し,その1を被告カテナ,被告B
及び被告Cの3名が等しい割合で,その2を原告Aが,その3を原告管財人が,そ
れぞれ負担することを命じる。
5 仮執行の宣言については,民事訴訟法259条1項を適用して,乙事件原告カ
テナの勝訴部分と訴訟費用の負担を命じた部分について,これを付する。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第48部
裁判長裁判官須藤典明
裁判官鳥居俊一
裁判官高橋純子は,差し支えのため署名押印することができない。
裁判長裁判官須藤典明

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