弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、被告人及びその弁護人岡崎源一提出の各控訴趣意書に記載さ
れたとおりであるから、ここにこれを引用する。
 被告人の控訴趣意一及び弁護人の控訴趣意第一点について。
 商人その他の営業者がその業務に関し誇大の形容、表現を用いてその商品又は業
務を吹聴するは、日常これを観るところであつて、かくの如きは必ずしも違法な行
為であるとするには足りないが、斯かる取引上においても商品又は業務に関する具
体的事実を虚構し、人をして物品の価値判断を誤まらしめ買受の決意を為さしめる
が如きは、もとより違法な欺罔手段であるというべきであつて、これを違法性のな
い商略的言辞と同一視す<要旨>ることはできない。記録によれば、被告人は衣料品
行商を業とするものであるところ、単独で又は他人と共謀して、Aほか多数
の者に対し、合成繊維製生地の製造販売を業とする会社の宣伝部員で会社からナイ
ロン生地の宣伝に来たもののように申し詐り且つ携行の生地は化学繊維製品でナイ
ロンは含まれておらないのに拘らずナイロン生地であるように装い又、注文を受け
ても後日洋服を仕立てて送付する意思がないのにも拘らずこれあるもののように装
い右生地はナイロン四割、毛三割、綿三割を含む会社の新製品で未だ市販されてい
ないものであるが特に安価に販売する旨並びに、洋服仕立を左文すれば後日右生地
で仕立てて送付する旨虚構の事実を申し向け、よつて右A等をしてその旨誤信させ
て右生地を買い受けさせ又は右生地による洋服等の仕立方を注文させ、即時同所で
同人等から生地買受代金又は、仕立洋服代金前金名義の下に金員を交付させて受領
した事実が認められるからその行為は叙上説明の趣旨に照し違法な欺罔行為により
金員を騙取したものであつて詐欺罪を構成することはいうまでもなく、これをもつ
て違法性なき商取引上のかけ引き又は商人としての業務上正当の行為であるとする
ことはできない。また、民事上いわゆる過失相殺の観念はこれを刑事上の責任につ
き適用すべき限りではないから仮りに所論の如く、本件事案の経過において、A等
被害者側に本件商品の価値判断を誤り又は被告人の真意を誤信するにつき過失の認
むべきものがあつたとしても、右の錯誤が叙上の如く被告人等の欺罔行為によつて
誘発されたものである以上、被告人等の詐欺の罪責には、何等の消長をも来さな
い。
 次に、原判決は被告人等の各騙取金全額をもつて、原判示各詐欺罪(共同正犯に
よる分をも含めて)による損害額なりと認定していることは所論のとおりである
が、詐欺罪の保護法益は、被害者が錯誤に基ずいて交付した金員その他の財産自体
であつてたとえ犯人がこれに対し相当の対価を交付したため被害者の全体財産には
減少を来さなかつたとしても詐欺罪の成立を妨げないと解すべきであるし、また数
人共同して犯罪を実行したときは各自が正犯としてその犯行の結果全体につき責を
負うものと解すべきであるから仮りに所論の如く被告人が右A等から叙上金員を騙
取するに当り、その対価又は、約旨履行の担保名義の下に同人等に対しその価額に
おいて騙取金額の半額乃至三分の一に相当する生地を交付したとするも、右犯行に
よる被害者の損害額は各騙取金の全額であつてこれと右生地の価額との差額をもつ
て損害額とみるべきではなく、また各犯行中他人との共同実行にかかるものについ
てもその騙取金全額につき詐欺の罪責を負わなければならないものであることは多
言を要しない。而して原判決挙示の証拠によれば原判示第一の詐欺の事実中被告人
の関係部分は優にこれを認めるに足り事実誤認の廉はないばかりでなく、これに対
する法令の適用もまた正当であつて何等の過誤もない。
 論旨はいずれも事実認定及び法令の解釈、適用に関する独自の見解に立脚するも
りであつて採用し難い。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 遠藤吉彦)

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