弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告が被告アメリカ合衆国ジョージア州に対し雇用契約上の権利を有する地位にあ
ることを確認する。
2被告アメリカ合衆国ジョージア州は、原告に対し、平成12年9月15日から本判
決確定の日まで、毎月末日限り、62万4205円を支払え。
3原告の請求のうち、被告アメリカ合衆国ジョージア州に対して本判決確定の日の翌
日から毎月62万4205円の支払を求める部分は、訴えを却下する。
4原告の被告Aに対する請求及び被告ジョージア州港湾局に対する請求をいずれも棄
却する。
5訴訟費用は、これを3分し、その1を被告アメリカ合衆国ジョージア州の、その余
を原告の負担とする。
6この判決は2項に限り、仮に執行することができる。
事実
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
(1)主文1項と同旨
(2)被告アメリカ合衆国ジョージア州は、原告に対し、平成12年9月15日以降
毎月62万4205円を支払え。
(3)被告Aは、原告に対し、平成12年9月15日以降毎月62万4205円を支
払え。
(4)原告が被告ジョージア州港湾局に対し雇用契約上の権利を有する地位にあるこ
とを確認する。
(5)被告ジョージア州港湾局は、原告に対し、平成12年9月15日以降毎月62
万4205円を支払え。
(6)訴訟費用は被告の負担とする。
(7)(2)項(3)項及び(5)項につき仮執行宣言。、
2請求の趣旨に対する答弁
(1)被告アメリカ合衆国ジョージア州
ア被告アメリカ合衆国ジョージア州に対する訴えを却下する。
イ訴訟費用は原告の負担とする。
(2)被告A
ア(本案前の答弁)
被告Aに対する訴えを却下する。
イ(本案の答弁)
原告の被告Aに対する請求をいずれも棄却する。
ウ訴訟費用は原告の負担とする。
(3)被告ジョージア州港湾局
ア被告ジョージア州港湾局に対する訴えを却下する。
イ訴訟費用は原告の負担とする。
第2当事者の主張
1原告の主張(請求原因)
(1)被告アメリカ合衆国ジョージア州(以下「被告ジョージア州」という)に対。
する請求関係
ア被告ジョージア州は、昭和20(1945)年、州議会の立法により、その一
部局である被告ジョージア州港湾局(以下「被告州港湾局」という)を設立し。
た。被告州港湾局は、東京に極東代表部を設置して事務所を設けていた。
イ被告ジョージア州は、平成7年6月、原告を、極東代表部の業務に従事する職
員として、給与(基本給)月額62万4205円で、雇い入れた。
ウ被告ジョージア州は、平成12年9月12日、原告に対し、同月15日付けで
解雇する旨通知した(以下「本件解雇」という。。)
エ異法地域における当事者間の契約の効力に関する準拠法は、法例7条1項によ
って、当事者の意思により定まるとされているが、原告は、極東代表部における
現地職員として雇用され、一貫して日本国内で稼働していたのだから、その準拠
法は日本法とするのが、当事者の黙示的な意思である。現に、原告は、採用に際
し、被告ジョージア州から正式な任用通知等を受けておらず、厚生年金、健康保
険及び労災保険も日本のものに加入していたため、自分が被告ジョージア州の公
務員であり、ジョージア州法が適用される身分にあるとの意識もなかった。
、、、仮に当事者の意思が不明であるとしても法例7条2項及び9条2項により
法律行為の成立及び効力については、行為地法が準拠法とされ、異法地域間の意
思表示については、契約の成立及び効力に関するものは、申込の通知を発した地
が行為地とみなされるから、本件においては、原告が雇用契約を申し込んだ地で
ある日本法が行為地法として準拠法となる。
オ被告州港湾局の貨物取扱量は年々増加し、利益をもたらし、経費削減を求めら
れたことはなかったから、被告ジョージア州には被告州港湾局の人員を削減し、
原告を整理解雇する必要性はなかった。また、被告ジョージア州が解雇回避義務
を尽くした事実はないし、原告に対し、被解雇者の選定について客観的で合理的
な基準も示さず、整理解雇の必要性と時期・規模・方法等について事前の説明や
折衝もしないまま、突然、原告を解雇した。したがって、本件解雇には正当な理
由がなく、解雇権の濫用であって、無効である。
カよって、原告は、被告ジョージア州に対し、雇用契約上の権利を有する地位に
あることの確認及び雇用契約に基づき平成12年9月15日以降毎月62万42
05円ずつの給与の支払を求める。
(2)被告Aに対する請求関係
ア(1)アないしオ(又は(3)アないしエ)と同じ
、()、イ被告Aは被告ジョージア州又は被告州港湾局の無効な解雇通告に基づき
平成12年9月15日以降、原告を実力行使によりロックアウトし続けて、原告
の就労を妨害した。また、被告Aは、同月1日及び同月4日、即時の退社や預け
ている鍵の返還を原告に要求するなどしたほか、本件解雇が問題となって以降、
被告州港湾局の東京事務所の存在を隠蔽するため、同月12日「米国ジョージ、
」、、ア州港湾局日本代表部A名義の銀行口座を被告A個人名義に変更し同月5日
原告代理人からの被告州港湾局日本代表部宛ての通知書を返送し、その後も訴状
の受領を拒むなどして、原告に精神的苦痛を与えた。
ウ被告Aの上記各行為は、雇用者である被告ジョージア州(又は被告ジョージア
州港湾局)の指示に基づく従業員の行為を超えて、原告に対する解雇を強行した
ものであり、悪性は極めて高く、不法行為が成立する。
エ被告Aの行為により受けた原告の精神的苦痛は甚大であり、慰謝料は平成12
年9月15日以降毎月62万4205円が相当である。
オよって、原告は、被告Aに対し、不法行為に基づき、平成12年9月15日以
降毎月62万4205円ずつの損害賠償金の支払を求める。
(3)被告州港湾局に対する請求関係
ア(1)アと同じ
イ被告州港湾局は、平成7年6月、原告を、極東代表部の業務に従事する職員と
して、給与(基本給)月額62万4205円で、雇い入れた。
ウ被告州港湾局は、平成12年9月12日、原告に対し、同月15日付けで解雇
する旨通知した。
エ(1)エ、オと同じ(ただし「被告ジョージア州」を「被告州港湾局」に読、
み替える)。
オよって、原告は、被告州港湾局に対し、雇用契約上の権利を有する地位にある
ことの確認及び雇用契約に基づき平成12年9月15日以降毎月62万4205
円ずつの給与の支払を求める。
2被告らの主張
(1)被告ジョージア州の主張
ア本案前の主張
中間判決「事実」第2の2記載のとおり。
イ本案の主張
被告ジョージア州は、請求原因に対する認否を含め本案の主張をしない。
ただし、本案前の主張をするに際し、①被告州港湾局が存在し極東代表部を設
置して事務所を設けていたこと(請求原因(1)アに関係、②原告は同事務所)
で雇用され被告ジョージア州の正式公務員であったこと(同(1)イに関係、)
③原告との雇用契約は終了していること(同(1)ウに関係、④原告との雇用)
契約は期間の定めがなく、ジョージア州法によれば、制約なく裁量に基づき自由
に終了できること(同(1)エに関係、⑤仮に日本の労働基準法が適用される)
(())としても被告州港湾局の米国における事情を考慮すべきこと同1オに関係
を、それぞれ主張している。
(2)被告Aの主張
ア本案前の主張
原告の被告Aに対する請求は、被告ジョージア州に対する請求と、審理・判断
されるべき事項がほぼ共通している。そして、被告ジョージア州が主権免除を享
受するにもかかわらず、被告Aにつき判断するという名目で本件について審理・
判断をすることは、被告ジョージア州に対する請求の審理を行うのと等しく、許
。、。されるものではないしたがって被告Aに対して裁判権を及ぼすべきではない
イ請求原因に対する認否
請求原因(2)アが引用する請求原因(1)アは、認める。同(1)イについ
て、原告が被告州港湾局極東代表部で雇用された事実はある。同(1)ウについ
て、原告が解雇通知を受けた事実は、認める。同(1)エ、オは、争う。
請求原因(2)イのうち、被告Aが平成12年9月15日以降、原告を事務所
、、、に立ち入らせなかったこと同月1日以降鍵の返還や即時の帰宅を求めたこと
原告代理人からの日本代表部宛ての通知書を返送したこと、被告ジョージア州に
対する訴状を受領しなかったこと、日本代表部の銀行口座の名義を個人名義に変
、。()、()、。更したことは認めその余はいずれも否認する同2ウ2エは争う
ウ準拠法について
原告は被告ジョージア州の公務員として雇用されたのであるから、その準拠法
は、ジョージア州法となるというのが当事者の通常の意思解釈である。また、日
本の公務員には解雇権濫用の法理が当然に適用されるわけではないのに、外国の
公務員の場合には、日本の公務員よりも一層労働者の保護を徹底し、外国政府に
その雇用を義務付けるというのは、労働政策・公務員の人事政策が国家の重要な
主権機能のひとつであることを考えれば、主権侵害も甚だしく、許されるもので
はない。したがって、原告と被告ジョージア州との間の雇用契約の準拠法は、日
本法ではなく、ジョージア州法とされるべきである。
ジョージア州法によれば、期間の定めのない雇用契約は、いつでも解除ができ
るとされており、その解雇を制限する法理もないから、本件解雇は有効である。
エ被告Aの不法行為について
被告ジョージア州は、平成12年6月30日をもって、従前の極東代表部を閉
鎖し、翌日以降、名称を日本代表部として、従前の業務を被告Aに委託した。す
なわち、同日以降、原告が稼働していた極東代表部は存在せず、以後の日本代表
部は、被告Aが受けた業務委託契約を遂行する個人事務所となっていた。
したがって、被告Aは、原告の解雇を巡る紛争に関する日本代表部宛ての通知
書や被告ジョージア州に対する訴状を当然に受領する権限は有していない。被告
Aが、同年9月15日以降、原告を事務所に立ち入らせなかったのは、原告が被
告ジョージア州から解雇され、日本代表部に立ち入る権限を失っていたからに過
ぎない。また、被告Aが銀行口座の名義を個人名義に変更したのも、東京事務所
の存在を隠蔽するためではなく、被告州港湾局の事務担当者から指示されたから
に過ぎない。
また、一般的に、労働者には就労請求権はなく、原告も被告ジョージア州に対
して就労請求権を有するものではないから、被告Aが原告の要保護利益を害した
ともいえない。
(3)被告州港湾局の主張
ア本案前の主張
被告州港湾局は、被告ジョージア州の政治的下部組織であり、被告ジョージア
州と同様に主権免除を享受し、裁判権が及ばない。その理由は(1)ア(被告、
ジョージア州の本案前の主張)と同じである。
イ本案の主張
被告州港湾局は、請求原因に対する認否を含め本案の主張をしない。
ただし、本案前の主張をするに際し、被告州港湾局は被告ジョージア州の政府
機関であり、独立して雇用契約を締結する権限を与えられていないこと(請求原
因(3)イに関係)を主張している。
理由
第1被告らの本案前の答弁、主張について
1被告ジョージア州に対する訴えについては、中間判決「理由」欄第1に記載のとお
りである。
2被告Aに対する訴えについては、被告ジョージア州は主権免除を受けないと解され
るから、被告Aの本案前の主張は、その前提を欠き、理由がない。
3被告州港湾局に対する訴えについては、中間判決「理由」欄第1に記載と同様の理
由により、被告州港湾局の本案前の主張は理由がない。
第2被告ジョージア州に対する請求について
1請求原因(1)アは、証拠(甲ア1、13、甲イ14。なお、以下に示す証拠番号
は、いずれも平成13年(ワ)第1230号事件の証拠番号である)及び弁論の全趣。
旨により、認められる。
2同(1)イは、被告ジョージア州が自ら原告を雇用していたと主張するところであ
り、証拠(甲ア23の1ないし3、26)を併せると、認めることができる。
3同(1)ウは、証拠(甲ア3、8、17)及び弁論の全趣旨により、認められる。
4そこで、同(1)エ(契約の効力に関する準拠法)について検討する。
(1)本件は、被告ジョージア州に雇用された日本人の解雇を巡る紛争であり、異法
地域における当事者間でされた解雇の効力が問題となる事案であるところ、法例7
条1項は「法律行為ノ成立及ヒ効力ニ付テハ当事者ノ意思ニ従ヒ其何レノ国ノ法、
律ニ依ルヘキカヲ定ム」とし、法律行為の成立及び効力についての準拠法につき、
当事者自治の原則を定めている。
(2)本件において、原告と被告ジョージア州が、準拠法の合意を明示的にしたと認
めるに足りる証拠はないので、準拠法について当事者間の黙示的な合意があったと
認められるかどうかを検討する。
証拠(甲ア1、26、乙1の1・2、原告本人)によれば、①被告ジョージア州
は、原告を、被告ジョージア州所有の施設の運営、州、アメリカ合衆国又はその他
の姉妹州の内外取引を育成・促進する目的で設立された被告州港湾局極東代表部の
期間の定めのない現地職員として雇用したこと、②その採用手続は、当時の極東代
表部の代表者であったBにより、すべて日本において口頭で行われたこと、③原告
の業務は、国内外の船舶会社、海運・港湾・流通関係業者、各種企業に対して被告
ジョージア州の港を宣伝するなどの業務に限定され、被告ジョージア州の主権的行
為に関連する業務は行っていなかったこと、④原告の労務供給地は日本国内に限定
、、されていたこと⑤原告は被告ジョージア州との間で雇用契約書は交わしておらず
任用通知も送付されなかったため、自分が被告ジョージア州の公務員であるとの意
識を持っていなかったこと、⑥被告ジョージア州は、被告Aとの間ではその契約を
巡る準拠法をジョージア州法とする合意をしたが、原告との間ではそのような合意
をしなかったこと、⑦極東代表部は、厚生年金、健康保険、雇用保険及び労災保険
の適用事業所であり、原告もその社会保険料を負担していたこと、以上の各事実が
認められる。
以上のとおり、原告と被告ジョージア州との間の雇用関係は、現実に契約締結に
関与した者、契約締結の経緯、契約締結をした場所、原告が労務を提供する場所、
原告の職務の内容、極東代表部を日本の厚生年金、健康保険、雇用保険及び労災保
、、険の適用事業所としていたこと等すべてが日本に密接に関係しているのに対して
雇用者が被告ジョージア州であることのほかには、契約締結の方式を含め被告ジョ
ージア州に関係する要素はない。こうした事情に照らせば、原告と被告ジョージア
州とが雇用契約を締結するに際して、雇用契約との関係が希薄な被告ジョージア州
の法律の適用を想定していたとは考えられず、その雇用関係に密接に関係している
日本の法を雇用関係を巡る紛争についての準拠法とする黙示的な合意があったと認
めるのが相当である。
これに対し、被告ジョージア州は、原告は被告ジョージア州の正式の公務員であ
ったと主張し、ジョージア州法を適用すべきと考えているようである。しかし、原
告の雇用に関しては、その募集、採用決定、契約締結等において、被告ジョージア
州の一般の公務員と同様の方式、手続が取られたとは認めがたく、その雇用関係を
巡る準拠法をジョージア州法とすることが合理的であるとは解されないし、日本法
の適用をおよそ予定していないといえるものでもない。
(3)以上によれば、本件における準拠法は日本法と解される。
したがって、本件解雇が濫用であると認められる場合には、解雇は無効である。
なお、前記認定の原告の職務内容や地位に照らして、本件解雇が濫用であると認め
られる場合に解雇を無効とすることは、被告ジョージア州に対する主権侵害となる
とは解されない。
5次いで、同(1)オ(解雇権の濫用)について検討する。
(1)証拠(乙5)によれば、被告州港湾局の損益計算書及び運営予算表上、総売上
額が、1998年の約9400万ドルから2000年の約8800万ドルと、純営
業利益が、1998年の約1200万ドルが、2000年の約775万ドルと下落
している一方で、営業総費用と営業外費用の合計額が、いずれも年間6500万ド
ルとなっていることや、被告州港湾局が1999年及び2000年において、代理
職員や正規職員の削減や超過勤務削減等の経営努力により、約560万ドルの支出
削減をしていることが認められる。しかし、他方で、証拠(甲ア24の1・2、2
7の1・2、28の1・2、乙5)によれば、被告州港湾局の貨物取扱量は199
9年7月から2000年6月の2000年会計年度において、13期連続で成長し
ており、その収支も、1998年には618万ドルの赤字を計上していたのが、1
999年、2000年と2年連続して黒字を計上するに至っていることが認められ
る。また、極東代表部における収支が悪化していたと認めるに足りる証拠はなく、
現に、証拠(甲ア9、乙1の1・2、原告本人、被告A本人)によれば、被告ジョ
、、、ージア州は平成12年6月30日付けの極東代表部の閉鎖に伴い原告を解雇し
極東代表部の代表者であったBとの間でもその雇用関係を終了させている一方で、
被告Aとの間で年13万ドルの報酬で通商代表業務委託契約を締結し(その報酬は
原告の賃金より高額である、さらにはBとの間でも、従前の報酬体系を維持す。)
る内容の顧問契約を締結しているほか、約700万円の費用をかけて事務所の移転
等を行っていることが認められ、被告ジョージア州において、極東代表部(日本代
表部)における人件費を抑制するために原告を解雇する経営上の必要性があったと
は認められないし、被告ジョージア州が解雇回避のための努力義務を果たしたとも
認められない。また、本件全証拠によっても、被告ジョージア州が、原告に対し、
極東代表部を閉鎖し、原告を解雇すると決定した経緯やその経営上の必要性につき
説明した事実は認められない。
(2)これに対して、被告ジョージア州は、本案の主張を全く行わず、原告に対す
る解雇が濫用に当たらないこと及びその前提となる具体的な事情に関する積極的な
主張や、解雇が濫用であるとする原告の主張に対する反論をいっさいしない。
(3)そうすると、被告ジョージア州が、本件解雇の通告の約9か月以上前から原
告に解雇を予告した上、契約社員となることを打診していること、当初6月末日と
予定されていた解雇日を、原告が年金受給資格を取得できる9月15日まで延長し
た上、日本代表部で稼働できるよう配慮していること、退職にあたり5か月分の給
(、、、、与に相当する退職手当を支給すると提案していること甲ア368原告本人
被告A本人)を考慮しても、なお、本件解雇は、濫用であるというほかない。よっ
て、本件解雇は無効である。
6以上によれば、原告の請求は、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、
及び平成12年9月15日から本判決確定の日まで毎月末日限り(原告の請求は毎月
末日の支払を求めていると解される)月62万4205円の賃金の支払を求める限。
度において理由がある。これに対し、本判決確定の日以降の賃金の支払を求める部分
は、将来給付の請求をするものであるが、本件において、あらかじめそのような請求
を必要とする事情は認められないから、当該請求部分は不適法なものとして却下を免
れない。
第3被告Aに対する請求について
1請求原因(2)アが引用する請求原因(1)アは争いがなく、同(1)イのうち、
原告が被告州港湾局極東代表部で雇用された事実、同(1)ウのうち、原告が解雇通
知を受けた事実は争いがなく、同(1)イ、ウのその他の事実及び同(1)エ、オが
認められることは、第2の2ないし5のとおりである。
2請求原因(2)イ、ウ(被告Aの不法行為の成立)について、検討する。
被告Aが、本件解雇を受け、平成12年9月1日及び4日に、原告に鍵の返還と即
時の退社を求めたほか、同月15日以降の事務室内への入室を拒否し、その就労を拒
否したことや、被告ジョージア州宛の訴状等を受領しなかったことは当事者間に争い
がない。
しかし、被告Aは、対外的にはBの後任として紹介されていたとしても、対内的に
は被告州港湾局の通商業務の代行者に過ぎないのであって、極東代表部の閉鎖後も原
告を日本代表部の事務所で稼働させていたのは、当初極東代表部の閉鎖とともに解雇
される予定であった原告の雇用期間が9月まで延長されたことを受けた被告ジョージ
ア州から依頼されたからに過ぎない(甲ア9、10、乙1の1・2、被告A本人。)
同月15日以降の就労拒否は、原告が被告ジョージア州から解雇通告を受けたため、
被告Aが、この解雇通告に従ったからである。また、被告Aが、原告に、同月1日及
び4日に、即時の退社を求めたとしても、実際には、原告は、その解雇日まで日本代
表部での稼働を妨害されていないのであるし、被告Aが銀行口座の名義を個人名義に
変更したのも、被告州港湾局の担当者から指示を受けたからに過ぎず、被告ジョージ
ア州宛の訴状等を受領しなかったのも、契約上、被告Aにはその代理人としての権限
がなかったからに過ぎない(乙1の1・2、被告A本人。)
以上によれば、被告Aが原告に対して採った行動、措置が、被告Aが個人として損
害賠償責任を負わなければならないような社会的な相当性を逸脱する違法な行為であ
ったとは認められない。
3よって、被告Aについて原告に対する不法行為が成立するとは認められないから、
原告の被告Aに対する請求は理由がない。
なお、上記結論は、原告申立ての文書提出命令申立事件(当庁平成13年(モ)第6
915号)の対象文書の内容に左右されるものではないから、同申立ては採用の必要
がない。
第4被告州港湾局に対する請求について
1第2の2のとおり、原告は被告ジョージア州に雇用された現地職員であり、原告が
被告州港湾局に雇用されたと認めるに足りる証拠はないから、原告の被告州港湾局に
対する請求はその前提を欠く。
2よって、原告の被告州港湾局に対する請求は理由がない。
第5結論
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
裁判長裁判官中西茂
裁判官千葉俊之
裁判官本多幸嗣

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