弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決が、家屋保存の必要上その修繕のため、その家屋の賃貸借を解約
し得ると判断したのは、民法六〇六条、借家法一条の二の解釈を誤つたもので、違
法であると主張する。
 しかし賃貸家屋の破損腐朽の程度が甚しく朽廃の時期の迫れる場合、賃貸人たる
家屋の所有者は、その家屋の効用が全く尽き果てるに先立ち、大修繕、改築等によ
り、できる限りその効用期間の延長をはかることも亦、もとより所有者としてなし
得る所であり、そのため家屋の自然朽廃による賃貸借の終了以前に、意思表示によ
りこれを終了せしめる必要があり、その必要が賃借人の有する利益に比較衡量して
もこれにまさる場合には、その必要を以つて家屋賃貸借解約申入の正当事由となし
得るものと解すべきを相当とするのであつて、かかる場合にまで常に無制限に賃貸
借の存続を前提とする賃貸人の修繕義務を肯定して賃借人の利益のみを一方的に保
護しなければならないものではない。
 本件についてみるに、原審認定の事実関係によれば、本件家屋は、原判示の如く
腐朽破損が甚しいため姑息な部分的修繕のみで放置するときは、天災地変の際倒壊
の危険すら予想せられ、改築にも等しい原判示程度の大修繕を施さない限り早晩朽
廃を免れないものとせざるを得ない。而して本件家屋賃貸借の実状殊にその賃料の
額に徴し、また前記の如き大修繕の必要と被上告人が解約を申入れるに至つた原判
示経過とをも併せて考慮するときは、上告人が本件家屋賃貸借により有する利益と
比較衡量しても、被上告人が上告人に対し本件家屋賃貸借の解約を申入れるにつき
正当事由のあることを肯定すべきものとするのが相当である。(昭二八年(オ)第
一四〇八号同二九年七月九日第二小法廷判決、民集八巻七号一三三八頁、昭和三二
年(オ)一一八〇号同三三年七月一七日第一小法廷判決参照)
 されば、これと同趣旨の判断をした原判決は正当であつて、所論の違法がない。
 論旨は、これを採用し得ない。
 同第二乃至第四点及び第六点一、二について。
 論旨は要するに、原判決に、証拠によらずして事実を認定した違法、採証法則並
に経験則違反、審理不尽による理由不備並に理由齟齬の違法があると主張する。
 しかし、原判決挙示の証拠によれは、本件家屋が建築後約三〇年を経過し、原判
示程度の腐朽破損状態にあり、速かに原判示の如き大修繕を必要とし、これをしな
いまゝ放置すれば天災地変の際倒壊する等の危険を招く虞れがあり、かつ早晩朽廃
を免れない旨の原審事実認定は、妥当として是認するに難くない。而して、天災地
変が惨害をもたらす様相は、時と所とにより甚しく異るものであつて、予めこれを
完全に測定することは、未だ人のよくする所ではない。天災地変の際或る建造物が
一見脆弱の如くにしてよくこれに克ちながら、或るものは、一見強固の如くなるに
拘らず大破或は倒壊を免れなかつた特別の事例もあるべく、また腐朽破損のまゝ形
態を保ち続けたる建造物にして、僅かの衝撃により平穏時に突然崩壊することも人
のよく知る所である。所論の如き特別の事例あればとて、前記事実認定を左右する
ものではない。原判決に所論の違法がない。
 論旨はすべて、結局原審の裁量権に属する証拠の取捨判断、事実認定を独自の見
解に立つて非難するに帰するのであつて、これを採用し得ない。
 同第五点について。
 論旨は、原審に、民訴一八七条、三九五条違反があると主張する。
 本件記録中の所論口頭弁論調書によれば、同口頭弁論期日において、当事者双方
の各代理人が従前の口頭弁論の結果を陳述することにより、弁論更新の手続が履践
せられたこと明かであるから、原審に所論の違法がない。
 論旨は採用の限りでない。
 同第六点三について。
 論旨は、原審に訴訟法上の公平の原則を欠いた違法があると主張する。
 本件記録中の所論口頭弁論調書によるも、上告人が所論の理由により所論の申立
をした事迹を認め得ない。
 その申立のあつたことを前提とする論旨は、採用の限りでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛