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       主   文
原判決を左のとおり変更する。
被控訴人が、昭和四七年道委不第一二号不当労働行為救済申立事件について、昭和
四八年五月二五日付でした命令中、主文第一項の部分を取消す。
控訴人のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は、第一、二審を通じて、控訴人と被控訴人との間に生じた分及び参加に
よつて生じた分をいずれも二分し、その各一を控訴人の負担とし、その余は、控訴
人と被控訴人との間に生じた分を被控訴人、参加によつて生じた分を被控訴人補助
参加人の各負担とする。
       事   実
 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が、被控訴人補助参加人と控訴人と
の間の昭和四七年道委不第一二号不当労働行為救済申立事件について昭和四八年五
月二五日にした命令のうち、主文第三項を除き、その余の命令を取り消す。訴訟費
用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人
は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め
た。
 当事者双方の主張と証拠関係は、控訴代理人において当審証人Aの証言を新たに
援用したほか、原判決の事実摘示(但し引用の原判決添付別紙命令書については、
原審裁判所の昭和五二年一月一九日付更正決定による更正後のもの)と同一である
から、これをここに引用する。
       理   由
一 当裁判所も、控訴人会社において、被控訴人補助参加人組合所属の組合員に関
する職制上の昇格につき被控訴人主張のような不当労働行為をしたと判断するもの
であつて、その理由は、次に訂正、付加するほかは、原判決の理由欄一及び二(但
し、原判決五枚目裏一一行目から同一二枚目表一三行目まで)に記載の理由説示と
同一であるからこれをここに引用する。
1 原判決六枚目表三行目の「タクシー業」の次に、「(但し、昭和三六年頃まで
は主としてハイヤー業)」と加える。
2 原判決六枚目表一三行目の次に行を改めて、「別紙命令書第1の2「これまで
の労使紛争」の項記載の事実は当事者間に争いがなく、これに弁論の全趣旨を総合
すると次の事実が認められる。他に、これを左右する証拠はない。」と付加し、同
七枚目表六行目から七行目にかけて、「、以上の事実はいずれも当事者間に争いが
ない」とあるのを削る。
3 原判決八枚目裏一〇行目から一一行目にかけて、「班長」とあるのを「指導運
転手」と改める。
4 原判決八枚目裏一一行目の「参加組合」を「参加人組合」と改める。
5 当審証人Aの証言も、以上のとおり訂正、付加して引用する原審の認定判断を
左右するに足りない。
二 そこで、次に、本件不当労働行為に対する救済措置の適否について判断する。
 不当労働行為救済制度は、使用者が行なつた違法行為を是正し、このような違法
行為のない状態を作り出すことを目的とし、そのため必要とされる具体的妥当な救
済措置を講ずることを予定しているものであるから、労働委員会は過去の違法行為
の単なる排除にとどまらず、現に具体的に予想される将来の同種類似の違法行為を
あらかじめ禁止する救済命令を発することも可能であり、事案によつては、使用者
の人事権を多少は制約するような結果となる救済措置を命ずることを容認せざるを
えない場合もありうるものというべく、その具体的な選択は労働委員会に委ねられ
た裁量の範囲に属することがらであるが、このような裁量にも救済制度の目的と使
用者の有する経営管理上の人事権との比較考量の上から当然に合理的な限界がある
ものといわなければならない。
 ところで、控訴人が従来被控訴人補助参加人組合を嫌悪し、同組合からの公平人
事の要求をも無視して班長職または班長相当職とみるべき指導運転手への昇格人事
につき、被控訴人補助参加人組合所属組合員であることを理由として同組合員を昇
格させないという不当労働行為を行つてきたものであることは前記認定のとおりで
あり、この事実と、すでに認定した控訴人と被控訴人補助参加人間の従来の労使紛
争の経緯とを併せ考えると、控訴人は今後とも班長または班長相当職への昇格人事
において従来同様の不当労働行為を反覆する具体的なおそれが現存すると認めるの
が相当である。したがつて、被控訴人が救済命令を発して、将来の同種の不当労働
行為をあらかじめ禁止するための措置を命ずることは当然である。しかし、本件救
済命令第一項において被控訴人が命じた具体的救済措置の内容は、従業員総数に対
する被控訴人補助参加人組合所属組合数に比例する限度で同組合員を優先的に班長
または班長相当職に登用すべきことを命じているものである。一般に昇格人事にお
ける昇格適格性の判断に当つては、該当者の人格、識見、能力等を総合的に判断
し、その職に最も適切妥当と評価し得る者を選定するのが当然の事理であつて、控
訴人会社においても、班長または班長相当職への昇格人事に際しては、勤続年数、
欠勤率、事故の有無態様、勤務成績、協調性、指導力等を総合的に勘案してその適
格性を判断する建前をとつているものであることは前記認定のとおりであるから、
本件救済命令主文第一項がこれらの適格性判断の基準を度外視して、従業員総数に
占める組合員数の比率を唯一の基準として被控訴人補助参加人組合所属の組合員を
優先的に昇格させなければならない旨を命じたことは、昇格人事の本質にかんが
み、著しく不当に控訴人会社の人事権を制約し、これに介入するものといわなけれ
ばならない。控訴人会社内での班長職または班長相当職への昇格人事における被控
訴人補助参加人組合所属組合員の処遇の公平を確保するためには、控訴人に対し、
班長職または班長相当職への従業員の登用に当り、被控訴人補助参加人組合所属組
合員であることを理由としてその組合員を他組合員より不利益に取り扱つてはなら
ない旨命ずれば足りたことである。したがつて、本件救済命令主文第一項は、被控
訴人に与えられた裁量の限界を逸脱し、不当に控訴人会社の人事権に制約を加えた
違法あるものとして、取消を免れないといわざるをえない。
 なお、本件救済命令は、その主文第二項において陳謝文の手交を命じているが、
前記認定判断に照らすと、同項記載の救済措置は相当として是認すべきものであ
り、これに裁量権の逸脱ないし濫用があるとは認められない。
三 以上のとおりであるから、本件救済命令中主文第一、二項の取消を求める控訴
人の請求は、主文第一項に関する限度で理由があるが、その余は失当として棄却す
べきものである。しかるに、これと判断を異にし、控訴人の請求をすべて棄却すべ
きものとした原判決は、本件救済命令主文第一項に関する限り不当であつて、本件
控訴はその限度で理由があり、他は理由なしとすべきである。
 よつて、右摘示の趣旨で原判決を取捨変更することとし、訴訟費用の負担につい
て民訴法第九六条、第九二条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石沢健 山田博 永吉盛雄)

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