弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事橋本友明提出の東京地方検察庁検察官検
事高瀬禮二および弁護人篠田暉三作成名義の各控訴趣意書ならびに検事橋本友明作
成名義の控訴趣意補足書に記載されたとおりであるから、これらをここに引用し、
これに対して、当裁判所は、次のとおり判断する。
 検察官の控訴趣意中における法令違反の主張について。
 所論は、原判決が本件公訴事実中制限速度超過の点につき公訴棄却の判決を言い
渡したのは、道路交通法第一二八条第二項の解釈適用を誤つた違法があり、その誤
りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れないという
のである。
 そこで、記録を調査し当審における事実取調の結果を勘案して検討するに、被告
人に対する本件昭和四六年一二月二三日付起訴状記載の公訴事実は、「被告人は、
第一、公安委員会の運転免許を受けないで(運転免許の効力停止中)昭和四六年八
月二四日午後四時三〇分ころ、東京都江東区a町b丁目c番先道路において、普通
乗用自動車を運転し、第二、前記日時ころ、東京都公安委員会が道路標識によつて
最高速度を四〇キロメートル毎時と定めた前記場所において、右最高速度を二二キ
ロメートルこえる六二キロメートル毎時の速度で前記自動車を運転し、第三、公安
委員会の運転免許を受けないで(運転免許の効力停止中)同年一一月一二日午後零
時五七分ころ、同都台東区de丁目f番g号道路において、普通乗用自動車を運転
したものである。」というにあるところ、原審第一回公判において被告人および弁
護人は右の公訴事実はすべてこれを認めて少しも争わず、(尤も、弁護人は弁論で
は公訴事実第二は免訴さるべきであると主張している。)これらの事実を立証する
ための検察官請求の書証は同意のうえ取り調べられているのであるが、原審は、前
記公訴事実第一および第三の各無免許運転の点については有罪と認めたものの同第
二の速度超過の点については、「審理の結果によると、右の事件については、被告
人は、速度超過二二キロメートル毎時の指定速度違反を理由として、警視総監から
反則金および送付費用として八、一八五円を納付するよう通告を受け、期限までに
これを納付した(後になつて、これを還付しているけれども)ことが明らかである
から、道路交通法第一二八条第二項により当該事件について公訴を提起されないと
の理由により、公訴棄却の言渡しをしている。
 ところで、原判決が公訴事実第一に対応する罪となるべき事実第一の証拠として
掲げる昭和四六年一一月一三日付捜査報告書、運転免許停止処分通知書謄体、証拠
品写(交通事件原票および道路交通法違反現認・認知報告書)、被告人の司法警察
員および検察官に対する各供述調書のほか、原審で適法に証拠として取り調べられ
た、交通反則告知是正通知書謄本、昭和四五年四月一日付運転免許証再交付申請書
謄本、昭和四五年三月三一日付遺失届出証明願謄本、昭和四六年七月九日付運転免
許証再交付申請書謄本、昭和四六年七月六日付遺失届出証明願謄本、昭和四六年一
一月一八日付および同年一二月七日付各捜査報告書ならびに当審で取り調べた道路
交通法違反事件捜査経過一覧表によると、次の事実を窺うことができる。すなわ
ち、被告人は昭和三二年に普通自動車の、同三四年に自動二輪車の運転免許を取得
していたが、昭和四五年三月二〇日頃運転免許証を遺失して免許証(末尾番号1の
分)の再交付を受け、その後昭和四六年六月二〇日頃またもこれを遺失して更に再
交付の申請をし三通目の運転免許証(末尾番号2の分)を得たけれども、被告人は
同年三月に酒酔い運転を犯して同年八月二三日から九〇日間(同年一一月二〇日ま
で)免許の効力停止の処分を受けて右免許証(末尾番号2の分)を公安委員会に提
出した。被告人は、その翌日である原判示第一の八月二四日午後四時三〇分頃東京
都江東区a町b丁目c番地先の道路において、指定速度四〇キロメートル毎時を二
二キロメートル超える速度で普通乗用自動車を運転中、警視庁第三交通機動隊所属
の警察官Aに現認検挙されたが、免許の効力停止中であることを秘して、同年八月
頃先にその遺失届出をした前記の免許証(末尾番号1の分)を発見し折柄これを携
帯していたところから、同免許証を提示したために、同警察官は被告人が無免許
(免許の効力停止中)で運転したものであることを察知し得ず、これを道路交通法
第一二五条第二項の反則者と誤認し、ただ指定速度違反の反則者として同法第一二
六条第一項により告知し、続いて報告を受けた警視総監は同様被告人を反則者と誤
認して同年九月二〇日に同月二五日付で通告し、被告人もまたこの通告に従つて同
月二二日反則金および送付費用として金八、一八五円を納付した。ところが、その
ころ、先に被告人が警察官に提示した免許証(末尾番号1の分)は遺失届出により
新免許証(末尾番号2の分)が再交付されて、その効力停止中であることが判明し
た結果、被告人の前記速度違反の所為は免許の効力停止中のいわゆる非反則者の反
則行為であることが明らかとなつて、同年一一月一五日警視総監は、被告人に対し
反則告知是正通知をし、被告人は先に納付した金八、一八五円の還付を受けたので
ある。
 しかるところ、原判決は、前記のとおり被告人は右の指定速度二二キロメートル
毎時超過の反則行為については既に通告を受け反則金を納付しているから、道路交
通法第一二八条第二項により公訴を提起されないと説示している。
 <要旨>しかしながら、道路交通法第九章所定のいわゆる交通反則通告制度は、同
法第一二五条第一項にいう反則行為をした同条第二項各号該当以外の者すな
わち同項にいう反則者に対して適用処理されるものであつて、同法第一二八条第二
項により反則金を納付した者は当該通告の理由となつた行為に係る事件について公
訴を提起されないとの効果を受け得るものも右第一二五条第二項の反則者に限られ
るべきであることは、文理上当然の帰結でなければならない。これを実質的にみて
も、本制度は激増する道路交通法違反事件を迅速かつ合理的に処理するため、危険
性も少い比較的軽微な違反を刑罰手続から除外して、道路交通法違反事件の迅速公
正な処理によつて違反者の権益をも擁護し、道路交通秩序の早期回復を図るために
設けられたものである。したがつて、無免許(免許の効力停止中の者を含む。)や
酒気を帯びていたり、交通事故を惹き起した者など道路交通法第一二五条第二項各
号に列挙されている者を反則者から除外して本制度の適用を受けないものと定めた
のは、理由のあることであつて、右条項の反則者であることは、交通反則通告制度
によつて処理される基本的要件である。この要件を充さない非反則者に対してなさ
れた告知、通告の処分は、もとよりこれを無効と解する余地もないわけではない
が、少くとも道路交通法第一二七条第二項が、通告前に告知の誤りであることを発
見した場合には、これを是正して刑事手続に従うべきものは、同手続により処理す
るものと規定していることと対応して、通告後反則金納付済の場合にも、これを取
り消し是正して本来の刑事手続により処理することを是認しなければならないもの
というべきである。因みに、当審証人Bの供述によると、昭和四六年における反則
通告処理の件数は約五二〇万件に達し、そのうち通告後非反則者であることが判明
して是正措置をとつたものは約四〇〇件であつて、もしこれを通告前に完全な調査
をして誤りのないようにしようとすれば数箇月の日時を要し、結局一万分の一にも
満たない過誤をなくすためにすべての反則事件の処理が延引し、かえつて大多数の
反則者を不確定な状態に陥れるという結果になるというのであつて、このようなこ
とはもとより制度の本旨にもとることである。更に、非反則者はもともと交通反則
通告制度による不起訴の利益を享有する資格のないものであるから、たとえ反則金
を納付した後といえども、非反則者が自己の不正手段により仮現的に取得した不起
訴の利益を更めて喪失するようなことになつても正義公平の観点からはまことに致
し方ないこととして承認されなければならず、これによつて法秩序を混乱させ法的
安定を阻害するおそれがあるということはできない(なお、名古屋高等裁判所昭和
四七年(う)第三二五号同年一一月二〇日刑事第一部判決も瑕疵ある通告の取消を
認めていることを参照。)。これを本件についてみるに、被告人は、免許の効力停
止中であつて、道路交通法第一二五条第二項第一号に該当し、同項にいう反則者に
は当らないのであるから、その指定速度超過の所為は同条第一項の反則行為に当る
としても、同法第一二六条以下の規定は適用されず、警察官に無効の免許証を提示
して反則者と誤認させ告知、通告を受けて反則金を納付したにせよ、その効果は警
視総監の是正通知によつて取り消され、法第一二八条第二項の不起訴の利益を受け
得ないものであるといわなければならない。したがつて、検察官の本件速度違反の
公訴提起は適法であつて、これを違法として公訴を棄却した原判決は、法令の解釈
適用を誤つたもので、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は
理由がある。
 それで、検察官のその余の論旨および弁護人の控訴趣意(いずれも量刑不当の主
張)についての判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第一項・第三八〇条・第三七
八条第二号により、原判決を破棄したうえ、更に十分の審理を尽くさせるため、同
法第三九八条に従い、本件を東京地方裁判所に差し戻すこととする。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 龍岡資久 判事 宮脇辰雄 判事 桑田連平)

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