弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告人を懲役6年に処する。
2未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,A(当時46歳)を強いて姦淫しようと企て,平成18年5月7日午
後7時20分ころ,青森県下北郡内において,同女を仰向けに押し倒して馬乗りに
なり「いいべな,やらせろ」などと申し向けて脅迫した上,両手で同女の頚部を,。
絞め付けるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫しようとした
が,同女が抵抗したためその目的を遂げず,その際,上記暴行により,同女に加療
約2週間を要する頚部挫傷,胸部挫傷,両肘・両手関節挫傷の傷害を負わせたもの
である。
(証拠の標目)省略
(累犯前科)省略
(法令の適用)省略
(量刑の理由)
被告人は,本件犯行当日,自己の所属する地元の消防分団の観閲式及びその打ち
上げの懇親会に出席したが,その席上,分団長を務める被害者の夫から,行事に参
加した若者が少なかったことなどについて文句や愚痴を聞かされたことから,帰宅
して布団に入った後も被害者の夫に対するいらいらした気持ちが収まらないまま寝
付けずにいたところ,無性にセックスがしたくなったことから,被害者を強姦する
ことを決意したものであって,犯行動機は単に自己の性的欲求を満足させるためと
いう自己中心的かつ身勝手なものであって,酌量の余地は全くない。被告人は,強
姦する際に被害者が抵抗した場合に備えて,手足を縛るためのガムテープを持ち出
した上で,被害者に対し,被害者の夫から酒を買ってくるよう頼まれたと嘘をつい
て被害者を誘い出し,酒店から戻る途中,強姦に適した場所を探すため,大便がし
たいなどと嘘をついて被害者が運転する車から降り,人気のない砂利道の林道の奥
に向かい,周囲を見回して強姦場所を決めた上で車に戻り,気持ちが悪いので背中
をさするよう被害者に頼んで同女を車から下車させるなどし,同女が車内に戻るた
め背中を向けた一瞬の隙を狙って背後から被害者を抱きかかえるようにして押さえ
付けて林道に連れ込み,犯行場所まで約80メートルも被害者を引っ張っていった
ものであって,周到に準備した計画的かつ狡猾な犯行である。被告人は,被害者を
仰向けに押し倒して馬乗りになり「いいべな,やらせろ」などと脅迫し,抵抗す,。
る同女の首を右手で絞め,一度は逃げようとした同女を捕まえて再度馬乗りになり,
両手で同女の首を呼吸が困難になり失神しかけるほどの力で絞め付けるなどの暴行
を加えたものであって,被害直後の被害者の頚部及び手首部分が赤くなり,内出血
,していることから,被告人が相当強い力で被害者の首を絞め付けたことが窺われ
一歩間違えば被害者の生命にも影響を及ぼしかねない危険かつ執拗な犯行態様で極
めて悪質である。被害者は,被告人が生まれた時から近所づきあいをしてきたもの
であって,被告人の前刑出所後も変わりなく被告人に接してきたものであり,被害
者に落ち度は全くなく,被告人の頼みに応じて車を運転したり,背中をさするなど,
被告人の邪な意図も知らずに親切な対応をしたにもかかわらず,突如被告人に襲い
かかられ,夜間,人気の全くない場所で助けを求めても叶わぬ状況の下,被告人の
胸部ほぼ全面に擦過傷が生じるほどの抵抗を試みたものの,前記のとおり,頚部に
内出血が生じるほどの強い力で首を絞め付けられ,強姦されるばかりか殺されるの
ではないかと感じた被害者の恐怖は想像するに余りあるのであって,被害者は被害
後外出すること自体苦痛となり,また,被害者の夫もショックで寝付けなくなるな
ど被害者及びその家族に与えた精神的苦痛は甚大であり,また,被害者は判示の傷
害を負ったのみならず,被害直後の被害者の顔色はどす黒く変色し,息をするのも
水を飲むのも苦痛を感じる状況にあったもので,その肉体的苦痛も大きく,被害者
の処罰感情が厳しいのも当然である。しかるに,被告人は,慰謝の措置を講じてい
ない。被告人は,前記のとおりの同種前科及び同種前歴があるにもかかわらず,本
件犯行を敢行していることからすると,被告人のこの種の犯罪に対する規範意識は
相当程度低下しているものと言わざるを得ず,本件犯行前の被告人の生活状況をも
鑑みれば,再犯のおそれが憂慮される。
以上によれば,被告人の刑事責任は重く,被告人の本件行為は厳しく非難される
べきである。
他方で,姦淫行為は未遂に終わっていること,被告人は,当公判廷において,被
害者に対して精神的苦痛を与えて申し訳ない,今後は被害者宅の向かい側にある実
家には戻らずに姉宅で生活し,酒も断ち,今後二度と同様の犯行を行わない旨述べ
るなど本件について反省の情を示していること,将来的な弁償の意思は有している
こと,前刑出所後本件までは真面目に稼働し,フォークリフト等の資格も取得する
など被告人なりに更生の途を歩む努力をしてきたこと,被告人の今後を心配し,被
告人に励ましの手紙を送付している母親や姉妹がいることなど被告人にとって有利
な事情も認められる。
そこで,これらの諸事情を総合考慮した上で,主文掲記のとおりの刑を科すのが
相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役7年)
青森地方裁判所刑事部
裁判長裁判官渡邊英敬
裁判官室橋雅仁
裁判官香川礼子

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