弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人弁護士小林哲郎の上告理由について。
 所論の点に関し原判決の判示するところは次のとおりである。すなわち、
 Dの母親であるEはパチンコ屋経営の資金とすべく、金融業者である上告人に金
員借用方を申込み、その結果、昭和二九年一月二九日上告人はDに金二〇万円を弁
済期同年二月二八日利息一ケ月九分天引の約束で貸与し、且つDは右債務の履行を
担保するため、上告人に対し自己の所有に係る東京都江戸川区ab丁目c番地宅地
二八四坪三合八勺及び同所同番地dの地上建物につき抵当権を設定するとともに、
右債務の支払を怠つたときはその支払に代えて右抵当物件の所有権を取得すること
のできる旨の代物弁済の予約を締結し、且つ右抵当権の実行と代物弁済の予約の完
結権行使の選択は上告人に委ねられていたこと、そして以上の取引はすべて右Eが
右Dの諒解の下になしたものであるが、右担保物件の価額は契約当時において少く
とも八〇万円を下らないものであるところ、このように被担保債権額の四倍にも当
る物件を右代物弁済予約の目的物とした所以のものは、右Eの軽卒無経験に乗じら
れたものであつて、ひつきよう右代物弁済の予約は公序良俗に反し無効のものであ
るというのである。
 しかしながら、思うに、右のような場合金融業者は初めから担保物件を処分する
ことを目途として金融をなすものとは限らないのであり、金融業者の中には、元本
から生ずる定期の利息を以て利殖を計ることに専ら重点をおき、いわゆる担保はね
せたままで利息を稼ぐ業者もないわけではなく、このような金融取引は債務者側か
らしても比較的安全であり、債務者としては金利を支払いつつやがて担保物を回収
することができるわけである。さればかような金融取引において担保物の価額が被
担保債権を多少オーバァーすることは問題ではないのであつて、問題は金融業者が
巨利を博すべく債務者の窮迫に乗じ、そのような担保物を初めから処分する目途の
下に提供させたかどうかという点である。これを本件についてみるに、成る程被担
保債権額二〇万円と担保物の価額八〇万円との間にはいささかバランスのとれない
観がないでもないが、上告人が右のような担保物を提供させるについて巨利を博す
べく前示Eの窮迫に乗じ右物件を初めから処分する意図であつたということについ
ては原判決は何ら言及しておらず(むしろ原判決認定の本件取引成立前後の事情よ
り判断すればEは窮迫に乗じられるような環境にいたものではなかつたことが窺わ
れる)ただ単に本件代物弁済の予約はEの無経験軽卒に乗じられたものだと判示す
るのである。しかし原判決によればEは従来弱年の息Dの所有する不動産を担保と
して、しばしば他から金銭を借入れ或は土地を分筆処分する等一切をDに代つて取
り運んでいたというのであるから、この事実に鑑みればEにおいて本件物件を担保
物として提供したことがその無経験且軽卒に乗じられたものとはたやすく断定でき
ないばかりでなく、むしろ右事実に原判決の認定するようにEにおいて本件物件を
担保に供した後これを分筆してその一部を他に譲渡したという事実を併せて考うれ
ば、Eは本件のような金融取引についてはすでに経験があり、本件取引は計画的に
なされたものではないかと考え得ないわけのものでもないのである。更に原判決は
本件取引の弁済期が極めて短期間であることを云々する。しかし、原判決によれば
Eはパチンコ屋の儲は大きいものと思い本件借入金程度の資金の回収はたちどころ
に得られるものと期待していたというのであり、そのように期待することはパチン
コ屋を経営する者としてあながちあり得ないことを期待したものとも断定し難く、
従つて本件弁済期が短期間だという理由によつてEが軽卒に本件取引を敢えてした
ものとも断定し難い。
 以上を要するに、原判決認定のような事情だけでは、本件代物弁済の予約は無効
のもとは解し難く、しかく解するには更に何らかの事情が附け加えられることを要
するものと解するを相当と考える。すなわち原判決は叙上の点において審理不尽、
理由不備の欠陥を蔵するものと云うの外なく、従つて原判決にそのような欠陥ある
ことを主張する趣旨と解される所論は結局理由あるに帰し、原判決は到底破棄を免
れないものと認める。
 よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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