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平成19年(行ケ)第10318号審決取消請求事件
平成20年7月23日判決言渡,平成20年6月18日口頭弁論終結
判決
原告ユニ・チャーム株式会社
訴訟代理人弁理士白浜吉治,白浜秀二
訴訟復代理人弁理士吉田博子
被告特許庁長官鈴木隆史
指定代理人寺本光生,村山禎恒,高木彰,森山啓
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2005−3508号事件について平成19年7月23日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が特許出願をして拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をし
たところ,請求が成り立たないとの審決がされたのでその取消しを求める事案であ
る。
1特許庁における手続の経緯(争いのない事実)
原告は,発明の名称を「使い捨て着用物品」とする発明について,平成13年9
月6日,特許出願(以下「本件出願」という)をしたが,平成17年1月28日。
付けで拒絶査定を受けたので,同年2月28日,同拒絶査定に対する不服審判を請
求し,平成19年3月26日,手続補正(以下「本件補正」という)をした。。
特許庁は,上記請求を不服2005−3508号事件として審理し,平成19年
7月23日「本件審判の請求は成り立たない」との審決をし,その謄本は同年8,。
月7日原告に送達された。
2発明の要旨
本件出願に係る発明は,本件補正後の明細書(甲第6号証。以下「本願明細書」
という)における特許請求の範囲の請求項1に記載されたものであり,その要旨。
は次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。なお,請求項の数は
4個である)。
「請求項1】トップシートと,バックシートと,これら両シートの間に介在す【
る吸液性コアと,これら両シートの前後区域間に位置する股下区域の両側に円弧状
に凹欠する脚周り部と,前記脚周り部を囲むための,両側部及びこれら間の中央部
を有する各々一連の第1及び第2弾性部材と第3及び第4弾性部材とを含む使い捨
て着用物品において,
前記第1弾性部材の前記中央部が前記股下区域を横切るとともに該第1弾性部材
の前記両側部が前記脚周り部の各々のほぼ前半分における該脚周り部の縁近傍に沿
い弧状に延びて伸縮可能に位置し,前記第2弾性部材の前記中央部が前記第1弾性
部材の前記中央部と並列し前記物品の縦方向に離間して前記股下区域を横切るとと
もに該第2弾性部材の前記両側部が前記脚周り部の各々のほぼ後半分における該脚
周り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可能に位置し,前記第3及び第4弾性部材
が前記股下区域の両側部において前記物品の縦方向に直状に延び伸縮可能に位置し
て前記第1及び第2弾性部材の前記両側部と交差しており,
前記交差によって前記股下区域の両側部に生じた前記第1及び第2弾性部材の前
記両側部と前記第3及び第4弾性部材との交点の間における前記第1及び第2弾性
部材の前記中央部が切断されていることを特徴とする前記物品」。
3審決の理由の要点
審決は,本願発明は,特開昭57−117602号公報(甲第1号証。以下「刊
行物1」という)に記載された発明(以下「刊行物1記載の発明」という,特。。)
開平4−166150号公報(甲第2号証。以下「刊行物2」という)に記載さ。
れた発明(以下「刊行物2記載の発明」という)及び特開昭62−231005。
号公報(甲第3号証。以下「刊行物3」という)並びに周知技術に基づいて,当。
業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に
より特許を受けることができないとした。
審決が上記結論に至った理由は,以下のとおりである。なお,審決は本願発明を
「本願発明1」と記載しているが,審決の引用部分では「本願発明1」を「本願,
発明」と変更して記載する。
(1)刊行物1記載の発明の内容
刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「,,,湿気を通す内側の表面布と外側のシーツ材とそれらの間に介在する吸湿性の当て布と
表面布とシーツ材の前後区域間に位置する股下区域の両側に凹状の弧状部(23a)と凸状の
弧状部(23b)とからなる足開口部(23)と,足開口部23を囲むための,弧状部(21
a,22a)及びこれらの間の直線状部(21b,22c)を有する各々一連のゴムひも(2
1,22)を含む使い捨ておしめブリーフにおいて,
ゴムひも(21)の直線状部(21b)が股下区域を横切るとともにゴムひも(21)の
弧状部(21a)が足開口部(23)のほぼ前半分における足開口部23の縁近傍に沿って伸
縮可能に位置し,ゴムひも(22)の直線状部(22c)が股下区域を横切るとともにゴムひ
も(22)の弧状部(22a)が足開口部(23)のほぼ後半分における足開口部(23)の
縁近傍に沿って伸縮可能に位置し,両ゴムひも(21,22)の直線状部(21b,22c)
が切断されている使い捨ておしめブリーフ」。
(2)刊行物2記載の発明
刊行物2には,次の発明が記載されているものと認められる。
「トップシートとバックシートと,両シート間に配置される吸収体と,両シートの前後区域
間に位置する股下区域の両側に円弧状に形成されたレッグ部と,レッグ部により構成されるレ
ッグ開口部の周縁部全周に亘って,実質的に連続したギヤザーを形成する弾性部材とを含む使
い捨ておむつにおいて,円弧状の弾性部材11aがレッグ部の縁近傍に沿って縦方向に伸縮可
能に設けられ,レッグ部のほぼ前半分及び後半分の縁近傍に沿って直線状の弾性部材11bが
伸縮可能に設けられ,円弧状の弾性部材11aと交差している,使い捨ておむつ」。
(3)刊行物3記載の発明
刊行物3には,次の発明が記載されているものと認められる。
「トップシートとバックシートと,両シートの間に介在する吸収性コアと,前記両シートの
前後の区域の間に位置する股下区域の両側の円弧状の凹欠部からなるレッグホールと,レッグ
ホールを囲むように取り付けられた伸縮部材とを含む使い捨て吸収性パンツにおいて,
伸縮部材は,凹欠部のほぼ前半分及び後半分における凹欠部の縁近傍に沿って伸縮可能に
取り付けられた横方向へ延びる第1部材と,凹欠部の横方向内側に縦方向に直状に延び伸縮可
能に取り付けられて,横方向へ延びる第1部材と接続する第2部材とからなる,使い捨て吸収
性パンツ」。
(4)本願発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点の認定
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「表面布「シーツ」,
材「吸収性の当て布「足開口部(23「弧状部(21a,22a「直線状部(21」,」,)」,)」,
,)」,「()」,「()」「」,b22cゴムひも21ゴムひも22及び使い捨ておしめブリーフは
「」,「」,「」,「」,「」,それぞれ本願発明のトップシートバックシート吸液性コア脚周り部両側部
「中央部「第1弾性部材「第2弾性部材」及び「使い捨て着用物品」に相当するから,両」,」,
者は,
「トップシートと,バックシートと,これら両シートの間に介在する吸液性コアと,これら
両シートの前後区域間に位置する股下区域の両側に円弧状をなす脚周り部と,前記脚周り部を
囲むための,両側部及びこれら間の中央部を有する各々一連の第1及び第2弾性部材とを含む
使い捨て着用物品において,
前記第1弾性部材の前記中央部が前記股下区域を横切るとともに該第1弾性部材の前記両側
部が前記脚周り部の各々のほぼ前半分における該脚周り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可
能に位置し,前記第2弾性部材の前記中央部が前記第1弾性部材の前記中央部と並列し前記物
品の縦方向に離間して前記股下区域を横切るとともに該第2弾性部材の前記両側部が前記脚周
り部の各々のほぼ後半分における該脚周り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可能に位置し,
前記第1及び第2弾性部材の前記中央部が切断されている前記物品」
である点で一致し,次の点で相違する。
ア相違点1
「本願発明では,脚周り部は円弧状に凹欠するのに対して,刊行物1記載の発明では,脚周
り部は凹状の弧状部(23a)と凸状の弧状部(23b)とからなる点」。
イ相違点2
「本願発明は,脚周り部を囲むための第3及び第4弾性部材を含み,第3及び第4弾性部材
が股下区域の両側部において物品の縦方向に直状に延び伸縮可能に位置して第1及び第2弾性
部材の両側部と交差しているのに対し,刊行物1記載の発明は,第3及び第4弾性部材を含ま
ない点」。
ウ相違点3
「本願発明では,前記交差によって前記股下区域の両側部に生じた前記第1及び第2弾性部
材の前記両側部と前記第3及び第4弾性部材との交点の間における前記第1及び第2弾性部材
の前記中央部が切断されているのに対して,刊行物1記載の発明では,そのような構成を備え
ていない点」。
(5)相違点についての判断
ア相違点1について
「,,使い捨ておむつのような使い捨て着用物品において脚周り部を円弧状に凹欠することは
本願の出願前に周知の技術的事項(例えば,刊行物1の第4図,特開平4−354948号公
報参照)であり,刊行物1記載の発明において,本願発明のように脚周り部を円弧状に凹欠。
することは,当業者が設計上適宜なし得た事項にすぎない」。
イ相違点2について
刊行物2及び刊行物3には,上記(2)及び(3)発明が記載されている。
「ここで,刊行物2記載の発明の「使い捨ておむつ」は本願発明の「使い捨て着用物品」に
相当し以下同様に吸収体は吸液性コアにレッグ開口部は脚周り部に弾,,「」「」,「」「」,「
性部材11b」は「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に「弾性部材11a」は「第3弾,
性部材」及び「第4弾性部材」に相当する。また,刊行物3記載の発明の「使い捨て吸収性パ
ンツ」は本願発明の「使い捨て着用物品」に相当し,以下同様に「吸収性コア」は「吸液性,
コア」に「レッグホール」は「脚周り部」に「第1部材」は「第1弾性部材」及び「第2弾,,
性部材」に「第2部材」は「第3弾性部材」及び「第4弾性部材」に相当するので,刊行物,
,,,2及び刊行物3にはトップシートとバックシートと両シート間に配置される吸液性コアと
両シートの前後区域間に位置する股下区域の両側に円弧状に形成された脚周り部と,脚周り部
の周縁部全周に亘って設けられた弾性部材を有する使い捨ておむつにおいて,脚周り部のほぼ
前半分の縁近傍に沿って第1弾性部材が伸縮可能に設けられ,脚周り部のほぼ後半分の縁近傍
に沿って第2弾性部材が伸縮可能に設けられ,第3及び第4弾性部材が脚周り部の縁近傍に沿
って縦方向に,又は縦方向に直状に延び伸縮可能に設けられ,第1及び第2弾性部材と交差又
は接続している,これら複数本の弾性部材が脚周り部の周縁部全周に亘って,脚周り部を囲む
ように連続して設けられた使い捨ておむつが記載されているといえる。
そして,刊行物2及び刊行物3には,複数本の弾性部材が脚周り部の周縁部全周に亘って,
脚周り部を囲むように連続して設けられることにより,おむつと着用者との間に隙間が形成さ
れることなく,排泄物の漏れを確実に防止すること(上記記載d参照,使い捨て吸収性パン。)
ツのレッグホールを脚回りに完全に密着させ,排泄物の漏れを防止すること・・・が記載され
ているから,刊行物1記載の発明において,脚周り部からの排泄物の漏れを確実に防止できる
ように,刊行物2及び刊行物3に記載されたような第3及び第4の弾性部材を採用し,相違点
2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである」。
ウ相違点3について
「相違点3における「交差によって前記股下区域の両側部に生じた前記第1及び第2弾性部
材の前記両側部と前記第3及び第4弾性部材との交点の間における前記第1及び第2弾性部材
の前記中央部が切断されている」との構成は,刊行物1記載の発明において上記「相違点2に
ついて」で述べた第3及び第4の弾性部材を採用したことにより当然にもたらされる事項にす
ぎない。
しかも,本願発明が奏する効果も,刊行物1ないし刊行物3記載の発明及び周知の技術的事
項から当業者が予測し得たものであって,格別顕著なものとはいえない。
したがって,本願発明は,刊行物1ないし刊行物3記載の発明及び周知の技術的事項に基い
て,当業者が容易に発明をすることができたものである」。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点
審決は,相違点2及び相違点3についての判断を誤った(取消事由1及び2)も
のであり,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,
違法なものとして取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点2についての判断の誤り)
(1)審決は,刊行物2記載の発明の「弾性部材11b」は本願発明の「第1弾性
部材」及び「第2弾性部材」に「弾性部材11a」は「第3弾性部材」及び「第,
4弾性部材」に相当し,また,刊行物3記載の発明の「第1部材」は「第1弾性部
材」及び「第2弾性部材」に「第2部材」は「第3弾性部材」及び「第4弾性部,
材」に相当するとの判断を前提として,刊行物2及び刊行物3には「脚周り部の,
ほぼ前半分の縁近傍に沿って第1弾性部材が伸縮可能に設けられ,脚周り部のほぼ
後半分の縁近傍に沿って第2弾性部材が伸縮可能に設けられ,第3及び第4弾性部
材が脚周り部の縁近傍に沿って縦方向に,又は縦方向に直状に延び伸縮可能に設け
られ,第1及び第2弾性部材と交差又は接続している,これら複数本の弾性部材が
脚周り部の周縁部全周に亘って,脚周り部を囲むように連続して設けられた使い捨
ておむつが記載されている」と認定し,刊行物2及び刊行物3には「複数本の弾,
性部材が脚周り部の周縁部全周に亘って,脚周り部を囲むように連続して設けられ
ることにより,おむつと着用者との間に隙間が形成されることなく,排泄物の漏れ
を確実に防止すること」及び「使い捨て吸収性パンツのレッグホールを脚回りに完
全に密着させ,排泄物の漏れを防止すること」が記載されているから「刊行物1,
記載の発明において,脚周り部からの排泄物の漏れを確実に防止できるように,刊
行物2及び刊行物3に記載されたような第3及び第4の弾性部材を採用し,相違点
2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである」と。
判断した。
しかしながら,刊行物2記載の発明の弾性部材11b及び弾性部材11aと本願
発明の第1,第2弾性部材及び第3,第4弾性部材とは,また,刊行物3記載の発
明の第1部材及び第2部材と本願発明の第1,第2弾部材及び第3,第4弾性部材
とは,それぞれ技術的意義を全く異にするものであり,審決の上記判断はその前提
において誤りがあるから,その結論も誤りである。
(2)刊行物2記載の発明の脚周り弾性部材は,馬蹄形のレッグ部10a,10b
(以下,10bについては省略して述べる)の上下縁の一部に沿って横方向へ延。
びる一対の直線状の比較的短い弾性部材11bと,該上下縁の間の該馬蹄形の円弧
状縁に沿って延びる比較的長い円弧状の弾性部材11aとからなり,弾性部材11
aは弾性部材11bよりもかなり長く,レッグ部10aの円弧状縁の大部分に沿っ
て延びるように形成されている。このように,おむつの股下区域の主要部に位置す
る円弧状の比較的長い弾性部材11aは,排泄物の漏れを防止するため着用者の脚
周りを囲んでこれに密接するように機能する弾性部材として重要かつ不可欠であ
り,レッグ部10aの大部分に沿う弾性部材11aを欠いては,すなわち,レッグ
部10aのごく一部に沿うにすぎない直線状の比較的短い弾性部材11bだけで
は,脚周りを囲む弾性部材として全く機能しない,と理解すべきものである。
また,刊行物3記載の発明の脚周り弾性部材は,吸収性パンツの股下区域に位置
する凹欠部12の上下縁において横方向へ延びる一対の直状の弾性部材6a,6b
と,凹欠部12の内側縁に沿って縦方向へ延びて弾性部材6a,6bと連結する直
状の弾性部材6cとからなり,弾性部材6cは弾性部材6a,6bよりも若干長く
形成されている。このように,吸収性パンツの股下区域の主要部に位置する弾性部
材6cは,排泄物の漏れを防止するため着用者の大腿内側に密接するように機能す
る弾性部材として重要であり,それを欠いては,すなわち,弾性部材6a,6bだ
けでは,脚周りを囲む弾性部材として全く機能しない,と理解すべきものである。
したがって,刊行物2記載の発明においては弾性部材11aが,刊行物3記載の
発明においては弾性部材6cが,排泄物の漏れ防止のための脚周り弾性部材として
主要部材を形成するものといえ,刊行物2記載の発明における弾性部材11b及び
刊行物3記載の発明における弾性部材6a,6bは,脚周り弾性部材として補助的
部材を形成するものといえる。そうすると,刊行物2記載の発明の脚周り弾性部材
は,主要部材である弾性部材11aの長さ方向両端部に補助的部材としての弾性部
,,材11bを交差させてつなぐことによって形成されているものでありまた同様に
刊行物3記載の発明の脚周り弾性部材は,主要部材である弾性部材6cの長さ方向
両端部に補助的部材としての弾性部材6a,6bを交差させてつなぐことによって
配置されているものといえる。
これに対し,本願発明においては,その構成から,第1及び第2弾性部材の中央
部が離間するそれら弾性部材の配置だけでも,脚周り弾性部材としての機能を一応
備えることができるが,それにもかかわらず,第3及び第4弾性部材を配置してあ
る理由は,第1及び第2弾性部材の中央部の離間部から生じる排泄物の漏れ防止機
(,)。能をより向上するためである本願明細書段落0002∼00070021参照
すなわち,脚周り弾性部材としては,第1及び第2弾性部材が主要手段であり,第
3及び第4弾性部材は,前記離間部をつなぐための補助手段である。
(3)以上のとおりであるから,刊行物2記載の発明の「弾性部材11b」が本願
発明の「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に「弾性部材11a」が「第3弾,
性部材」及び「第4弾性部材」に相当するとした審決の判断,及び刊行物3記載の
発明の「第1部材」が本願発明の「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に「第,
2部材」が本願発明の「第3弾性部材」及び「第4弾性部材」に相当するとした審
決の判断はいずれも誤りであるから,これを前提として,刊行物1記載の発明にお
いて,脚周り部からの排泄物の漏れを確実に防止できるように,刊行物2及び刊行
物3に記載されたような第3及び第4の弾性部材を採用し,相違点2に係る本願発
明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことであると判断したことは誤り
である。
2取消事由2(相違点3についての判断の誤り)
(1)審決は,相違点3について「刊行物1記載の発明において上記「相違点2,
について」で述べた第3及び第4弾性部材を採用したことにより当然にもたらされ
る事項にすぎない。」と判断したが,誤りである。
(2)刊行物1記載の発明においては,そもそも「ゴムひもを切除した領域,す,」
なわち,ゴムひもの「直線状部(21b(22c」の切除によって生じた離間),)
,,部からの排泄物の漏れ防止を図るため他の弾性部材でつなぐという技術的思想は
示唆すらなく,皆無である。
一方,刊行物2記載の発明の「弾性部材11a」及び刊行物3記載の発明の「弾
性部材6c」は,本願発明の「第3及び第4弾性部材」に相当するものではないこ
とは,取消事由1に記載したとおりである。
したがって,刊行物1記載の発明の前記離間部をつなぐため,刊行物2記載の発
明の「弾性部材11a」又は刊行物3記載の発明の「弾性部材6c」を刊行物1記
載の発明に適用するという技術的思想それ自体が発想されず,その動機付けも得ら
れない。
また,本願発明の「前記交差によって前記股下区域の両側部に生じた前記第1及
び第2弾性部材の前記両側部と前記第3及び第4弾性部材との交点の間における前
記第1及び第2弾性部材の前記中央部が切断されている」との構成は,脚周り弾性
部材の配置方法を含むものではあるが,本願発明の構成を限定しているところ,刊
行物1記載の発明は,本願発明の上記構成を採用するものではないから,審決の前
記判断を導くのは論理的に無理であり,同判断は誤りである。
第4被告の反論の要点
1取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
(1)本願発明の基本的な技術思想は,第1弾性部材と第2弾性部材が離隔してい
るから,脚周りに密着しにくく,そこから体液が漏れ易いという問題があるため,
伸縮可能な第3,第4弾性部材を脚周り部の前半分と後半分に沿う第1弾性部材及
び第2弾性部材と交差するように取り付けることにより,体液漏れを防止するとい
うものである。
そして,審決は,本願発明の従来技術に当たる,第1及び第2弾性部材が離隔し
ているものを刊行物1記載の発明として示し,さらに,複数本の弾性部材が脚周り
部の周縁部全周に亘って,脚周り部を囲むように連続して設けられることにより,
おむつと着用者との間に隙間が形成されることなく,排泄物の漏れを確実に防止す
ることや,使い捨て吸収性パンツのレッグホールを脚回りに完全に密着させ排泄物
の漏れを防止することは,刊行物2記載の発明あるいは刊行物3記載の発明に記載
されているのであるから,刊行物1記載の発明においても,体液漏れ防止のために
離隔した部分に他の弾性体を取り付けることは当業者が容易になし得ることである
と判断したものである。
(2)原告は,刊行物2記載の発明及び刊行物3記載の発明でいう弾性部材と,本
願発明の弾性部材との対応関係に関する審決の判断が誤っていると主張するが,審
決が上記(1)の判断において刊行物2及び3から主として把握している技術は,複
数本の弾性部材が脚周り部の周縁部全周に亘って,脚周り部を囲むように連続して
設けられることにより,おむつと着用者との間に隙間が形成されることなく,排泄
物の漏れを確実に防止することや,使い捨て吸収性パンツのレッグホールを脚回り
に完全に密着させ,排泄物の漏れを防止するという技術である。
そして,本願発明と刊行物2及び3に記載の発明の弾性部材の対応関係について
も,審決が「刊行物2記載の発明の「使い捨ておむつ」は本願発明の「使い捨て着
用物品」に相当し,以下同様に「吸収体」は「吸液性コア」に「レッグ開口部」,,
は「脚周り部」に「弾性部材11b」は「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」,
に「弾性部材11a」は「第3弾性部材」及び「第4弾性部材」に相当する。ま,
た,刊行物3記載の発明の「使い捨て吸収性パンツ」は本願発明の「使い捨て着用
」,,「」「」,「」物品に相当し以下同様に吸収性コアは吸液性コアにレッグホール
は「脚周り部」に「第1部材」は「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に「第,,
」「」「」」,2部材は第3弾性部材及び第4弾性部材に相当すると判断したことは
刊行物2及び3の明細書やその図面を参照すれば,明らかな事項であって何ら誤り
はない。
また,原告は,本願発明において,脚周り弾性部材としては,第1及び第2弾性
部材が主要手段であり,第3及び第4弾性部材は,前記離間部をつなぐための補助
手段であると主張するが,両方の弾性部材が脚周り部の全周に存在することにより
漏れが防止されるのであるから,いずれが主でいずれが従であるかは本質的な相違
ではない。
したがって,審決の判断に誤りはない。
2取消事由2(相違点3についての判断の誤り)について
原告は,刊行物1記載の発明のゴムひもの「直線状部(21b(22c」の),)
,「」切除によって生じた離間部をつなぐため刊行物2記載の発明の弾性部材11a
又は刊行物3記載の発明の「弾性部材6c」を刊行物1記載の発明に適用するとい
う技術的思想それ自体が発想されず,その動機付けも得られないと主張する。
しかしながら,おむつの技術分野において,漏れを防止するというのは最も必要
とされる基本的な機能であるし,刊行物1記載の発明は弾性部材が離間しているの
であるから,その部分から漏れが生じる可能性があることは明らかであり,その漏
れを防止するために刊行物2あるいは3に記載の技術を適用する動機付けは十分あ
る。
また,本願発明においては,第1及び第2弾性部材の前記中央部が切断されてい
るが,当該部分を切断することは,刊行物1の明細書に記載されている(甲第1号
証5頁右上欄15行∼右下欄1行)から,そのような構成とすることは当業者が容
易になし得ることである。しかも,この点に関しては,本願明細書の段落【001
9】に「第1及び第2弾性部材15,16は,図3に例示のように,股下区域8を
左から右へと横断することを必須の条件とするものではなく,股下区域8で切断さ
れた状態・・・にあってもよく,またそこに存在していなくてもよい」と記載()。
されているように,第1及び第2弾性部材の前記中央部が切断されているという事
項は,本来任意の技術事項であったものが審査経過の中で補正されて特許請求の範
,。囲に加えられたものでありその限定に格別の技術的意義があるものともいえない
したがって,審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(相違点2についての判断の誤り)について
原告は,刊行物2記載の発明の弾性部材11b及び弾性部材11aと本願発明の
第1,第2弾性部材及び第3,第4弾性部材,並びに,刊行物3記載の発明の第1
部材及び第2部材と本願発明の第1,第2弾部材及び第3,第4弾性部材,とはそ
れぞれ技術的意義を全く異にするものであり,審決が,刊行物2記載の発明の「弾
性部材11b」は本願発明の「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に「弾性部,
材11a」は「第3弾性部材」及び「第4弾性部材」に,また,刊行物3記載の発
明の第1部材は第1弾性部材及び第2弾性部材に第2部材は第「」「」「」,「」「
3弾性部材」及び「第4弾性部材」にそれぞれ相当すると判断したことは誤りであ
るから,これを前提として「刊行物1記載の発明において,脚周り部からの排泄,
物の漏れを確実に防止できるように,刊行物2及び刊行物3に記載されたような第
3及び第4の弾性部材を採用し,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当
業者が容易になし得たことである」とした審決の判断は誤りであると主張するの。
で,以下,検討する。
(1)本願発明の意義
ア本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2の2のとおりで
あり,また,本願明細書の【発明の詳細な説明】欄には,次の記載がある。
(ア)【0002】
「産業上の利用分野】【
この発明は,使い捨ておむつやトレニングパンツなどの使い捨て着用物品に関す
る」。
(イ)【0005】
「発明が解決しようとする課題】【
図4の裏面シート12を有するおむつは,前区域6と後区域7とを重ね合わせる
と,第1及び第2弾性部材15,16が実質的なループを形成し,着用者の脚周り
に密着可能になる。しかし,第1及び第2弾性部材15,16は,股下区域8の中
央部で離隔しているから,該部近傍が脚周りに密着しにくく,そこから体液が漏れ
。,,易いという問題がある股下区域8は体液の排泄が特に集中するところであって
その問題を軽視できない」。
(ウ)【0007】
「この発明は,着用物品の前後方向に伸縮可能な第3及び第4弾性部材を脚周り
部の前半分と後半分に沿う第1弾性部材と第2弾性部材とに交差するように取付
け,これら第1,第2,第3及び第4弾性部材で脚周り部を囲むことにより前記問
題を解決することを課題にしている」。
(エ)【0012】
「作用】【
このように構成した着用物品では,着用物品の前後方向に伸縮可能な第3及び第
4弾性部材を股下区域の中央部において第1及び第2弾性部材と交差させ,これら
第1,第2,第3及び第4弾性部材とで脚周り部を囲むから,股下区域で第1及び
第2弾性部材が離隔していても着用物品の脚周り部を着用者に密着させることが可
能になる」。
(オ)【0021】
「発明の効果】【
この発明に係る着用物品においては,脚周り部の前半分と後半分とに円弧を描く
ように取付けた第1及び第2弾性部材各々に縦方向に伸長した第3及び第4弾性部
材を交差させて脚周り部を囲み,脚周り方向への伸縮性をもたせたから,それら第
1及び第2弾性部材の内端部が股下区域で互いに離隔していても,当該部からの体
液漏れを防止することができる」。
イ以上の記載によれば,本願発明は,股下区域の両側に円弧状に凹欠する脚周
り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可能に位置する第1及び第2弾性部材が股下
区域で離隔しているため,該部近傍が脚周りに密着しにくく,そこから体液が漏れ
易いという従来の使い捨て着用物品の問題点を解決するため,着用物品の縦方向に
直状に延び,伸縮可能な第3及び第4弾性部材を第1及び第2弾性部材の両側部と
交差させて設け,これらの第1,第2,第3及び第4弾性部材で脚周り部を囲むこ
とにより,股下区域で第1及び第2弾性部材が離隔していても着用物品の脚周り部
を着用者に密着させるようにした発明であり,これにより当該部からの体液漏れを
防止するものであると認められる。
(2)刊行物2の記載
ア刊行物2(甲第2号証)は,使い捨ておむつに関するものであるが,第1図
及び第2図とともに,次の記載がある。
(ア)特許請求の範囲
「(1)液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これら両シー
ト間に配置される吸収体とを有する本体を備え,該本体は着用時に着用者の腹側に
位置する腹側部と,背側に位置する背側部とに区分されており,前記腹側部と背側
部との夫々の両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部を形成
したパンツ型の使い捨ておむつにおいて,
上記ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部には,夫々その周縁部全周に亘って
実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材が設けられていることを特徴とする
使い捨ておむつ」。
(イ)〔発明が解決しようとする課題〕
「本発明の目的は,漏れを確実に防止でき,且つコストの低減を図ることができ
る使い捨ておむつを提供することにある(3頁左上欄3行∼5行)。」
(ウ)〔課題を解決するための手段〕
「本発明は,液透過性のトップシートと,液不透過性のバックシートと,これら
両シート間に配置される吸収体とを有する本体を備え,該本体は着用時に着用者の
腹側に位置する腹側部と,背側に位置する背側部とに区分されており,前記腹側部
と背側部との夫々の両側縁部を接合固定してウェスト開口部と一対のレッグ開口部
を形成したパンツ型の使い捨ておむつにおいて,上記ウエスト開口部及び一対のレ
ッグ開口部には,夫々その周縁部全周に亘って実質的に連続したギヤザーを形成す
る弾性部材が設けられていることを特徴とする使い捨ておむつを提供することによ
り,上記目的を達成したものである(3頁左上欄7行∼19行)。」
(エ)〔作用〕
「本発明の使い捨ておむつの着用時には,本体に一体的に形成された連続したギ
ヤザーが,ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部に連続的に作用し,おむつと着
用者との間に隙間が形成されることなく,おむつからの排泄物の漏れを確実に防止
する(3頁右上欄1行∼6行)。」
(オ)実施例
a「一方,サイドフラップの弾性部材11a,11bは円弧状の弾性部材11
aと直線状の弾性部材11bとから構成されており,円弧状の弾性部材11aは,
サイドフラップ9a,9bにおいて,レッグ部10a,10bの馬蹄形に沿って円
弧状に形成されている。更に,サイドフラップにおける馬蹄形の凹部には,直線状
の弾性部材11bがサイドフラップ9a,9bから直線状に延出され,円弧状の弾
性部材11aと交差して設けられている。このサイドフラップの弾性部材11a,
11bは上記一対のレッグ部の縁に隣接して,即ち,股下区域のサイドフラップ9
a,9bの側縁に隣接して配置され,該側縁からサイドフラップの弾性部材11
a,llbの最外縁までの距離は好ましくは0∼50mm,より好ましくは0∼2
0mmであり,吸収体の外縁から弾性部材11a,llbの最内縁までの距離は好
ましくは0∼50mm,より好ましくは0∼20mmである(3頁右下欄20行。」
∼4頁左上欄17行)
b「サイドフラップの弾性部材11a,llbは一般に伸長した状態でパンツ
型使い捨ておむつ1の本体5に超音波溶着,熱溶着,接着剤などの業界公知の手段
を用いて接合される。糸ゴム,平ゴム,フィルムタイプのゴムあるいはテープ状の
発泡ポリウレタンなど,業界公知のものであれば,何でも用いることができ,1本
,,あるいは複数本であってもよいが一般に左右のサイドフラップの弾性部材11a
11bの配置は対称形である(4頁左上欄18行∼右上欄6行)。」
c「本実施例のパンツ型の使い捨ておむつ1は,本体に一体的に形成された連
続したギャザーがウエスト開口部13とレッグ開口部14a,14bとに連続的に
作用し,着用者へのフィット性を向上させるとともに,おむつからの排泄物の漏れ
が確実に防止される(5頁左上欄19行∼右上欄4行)。」
(カ)図面
第1図には,おむつの縦方向において,弾性部材11aがレッグ部10a,10
bの縁に隣接して円弧状に設けられ,おむつの横方向において,直線状の弾性部材
11bが弾性部材11aと交差して設けられた態様が図示されている。
イ上記記載によれば,刊行物2には,おむつと着用者との間に形成される隙間
からの排泄物の漏れを防止するため,股下区域の両側に円弧状に形成されたレッグ
部の縁近傍に沿って縦方向に円弧状の弾性部材11aを伸縮可能に設け,当該レッ
グ部のほぼ前半分及び後半分の縁近傍に沿って直線状の弾性部材11bを伸縮可能
に設けて,当該直線状の弾性部材11bと円弧状の弾性部材11aとを交差させ,
これらの弾性部材11a,11bによりレッグ開口部の周縁部全周に亘って実質的
に連続したギャザーを形成し,おむつと着用者との間に隙間が形成されないように
おむつのレッグ部を着用者に密着させるようにした使い捨ておむつの発明が記載さ
れているものと認められる。
(3)本願発明と刊行物2記載の発明との対比
ア本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると,刊行物2記載の発明のレッ
グ部は,本願発明の脚周り部に相当するものと認められるところ,本願発明におい
ては,第1弾性部材は,中央部が股下区域を横切るとともに両側部が脚周り部の各
々のほぼ前半分における該脚周り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可能に位置
し,第2弾性部材は,中央部が第1弾性部材の中央部と並列し物品の縦方向に離間
して股下区域を横切るとともに,両側部が脚周り部の各々のほぼ後半分における該
脚周り部の縁近傍に沿い弧状に延びて伸縮可能に位置している。また,第3及び第
4弾性部材は,股下区域の両側部において物品の縦方向に直状に延び伸縮可能に位
置して第1及び第2弾性部材の両側部と交差している。
これに対し,刊行物2記載の発明においては,弾性部材11bは,レッグ部の各
々のほぼ前半分及び後半分の縁近傍に沿って直線状に伸縮可能に設けられており,
レッグ部間の股下区域にはなく,また,弾性部材11aは,股下区域の両側部にお
いておむつの縦方向にレッグ部の馬蹄形に沿って円弧状に設けられ,その両端部で
弾性部材11bと交差して設けられている。
イこのように,本願発明の第1及び第2弾性部材は,脚周り部の縁近傍に弧状
に設けられているのに対して,刊行物2記載の発明の弾性部材11bは,レッグ部
の縁近傍に直線状に設けられており,両者は弧状であるか直線状であるかといった
形状において相違しており,さらに,本願発明の第1及び第2弾性部材は,それら
の中央部が互いに並列し物品の縦方向に離間して股下区域を横切っているのに対し
て,刊行物2記載の発明の弾性部材11bは,このような中央部を有していない点
でも相違している。
また,本願発明の第3及び第4弾性部材は,股下区域の両側部において直線状に
設けられているのに対して,刊行物2記載の発明の弾性部材11aは,股下区域の
両側部において円弧状に設けられており,両者は直線状であるか円弧状であるかと
いう形状において相違している。
ウところで,本願発明は,前記(1)のとおり,第1,第2,第3及び第4弾性
部材で脚周り部を囲むことにより物品の脚周り部を着用者に密着させるようにし,
体液の漏れを防止するものであり,第1及び第2弾性部材の技術的意義は,股下区
域の両側部に縦方向に設けられた第3及び第4弾性部材と連続して脚周り部を囲
み,その伸縮性によって着用物品の脚周り部を着用者に密着させることにあるもの
と解される。また,刊行物2記載の発明も,前記(2)のとおり,弾性部材11a,
11bによりレッグ開口部の周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成
し,おむつのレッグ部を着用者に密着させるようにし,排泄物の漏れを防止するも
のであり,弾性部材11bの技術的意義は,股下区域の両側部に縦方向に設けられ
た弾性部材11aと連続してレッグ開口部の周縁部の全周にわたるギャザーを形成
,。しその伸縮性によってレッグ部を着用者に密着させることにあるものと解される
そうすると,本願発明の第1及び第2弾性部材も刊行物2記載の発明の弾性部材
11bも,いずれも股下区域の両側部に縦方向に設けられた弾性部材と連続して脚
周り部(レッグ部)を囲み,その伸縮性によって脚周り部(レッグ部)を着用者に
密着させるものであるから,その技術的意義は等しいといえ,両者は前記のとおり
弧状であるか直線状であるかといった形状の相違はあるものの,刊行物2に「本発
明は上述した一実施例に限定されることなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲で種
々変形可能である・・・サイドフラップの弾性部材11bは直線状に配置される。
ことに限らず曲線状に配置されていてもよい(甲第2号証6頁左下欄2行∼11。」
行)と記載されているとおり,その形状の相違は,上記技術的意義に照らし,同一
の構成における設計事項の範囲内に属する相違に過ぎないものと評価することがで
きる。
また,本願明細書の段落【0019】において「第1及び第2弾性部材15,,
16は,図3に例示のように,股下区域8を左から右へと横断することを必須の条
件とするものではなく,股下区域8で切断された状態,すなわち,交点22Aと2
2Bとの間及び23Aと23Bとの間で中央部15B,16Bが切断されていても
,。」()よいしまたそこに存在していなくてもよい甲第6号証4頁49行∼5頁3行
と記載されていることからすれば,第1及び第2弾性部材の中央部の有無は,第1
及び第2弾性部材の有する上記技術的意義に影響するものではないと認められるか
ら,第1及び第2弾性部材の中央部に相当するものが刊行物2記載の発明の弾性部
材11bには存在しないという相違についても,同一の構成における設計事項の範
囲内に属する相違に過ぎないといえる。
エ以上に検討したところによれば,審決が,刊行物2記載の発明の「弾性部材
11b」は本願発明の「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に相当すると判断し
たことに誤りはないというべきである。
オまた,前記ウと同様に,本願発明の第3及び第4弾性部材の技術的意義は,
第1及び第2弾性部材と連続して脚周り部を囲み,その伸縮性によって着用物品の
脚周り部を着用者に密着させることにあるものと解され,刊行物2記載の発明の弾
性部材11aの技術的意義は,弾性部材11bと連続してレッグ開口部の周縁部の
全周にわたるギャザーを形成し,その伸縮性によってレッグ部を着用者に密着させ
ることにあるものと解される。
そして,前記ウ,エに説示したとおり,刊行物2記載の発明の弾性部材11bは
本願発明の第1及び第2弾性部材に相当するものであるから,これと連続して脚周
り部(レッグ部)を囲み,その伸縮性によって脚周り部(レッグ部)を着用者に密
着させる刊行物2記載の発明の弾性部材11aと,本願発明の第3及び第4弾性部
材とは,その技術的意義が等しいといえ,両者は前記のとおり直線状であるか弧状
であるかといった形状の相違があるが,その形状の相違は,上記技術的意義に照ら
し,同一の構成における設計事項の範囲内に属する相違に過ぎないものといえる。
カ以上に検討したところによれば,審決が,刊行物2記載の発明の「弾性部材
11a」は本願発明の「第3弾性部材」及び「第4弾性部材」に相当すると判断し
たことに誤りはないというべきである。
(4)刊行物3の記載
(),,。ア刊行物3甲第3号証には第1図及び第2図とともに次の記載がある
(ア)特許請求の範囲
「(1)着用者の肌に接する透水性トップシートと,該トップシートと反対側に
位置する不透水性バックシートと,該両シートの間に介在する吸収性コアとからな
るパンツ本体と;ウェストバンドと,一対のレッグホールとにそれぞれ伸縮ギャ
ザーを作る伸縮部材とを含み;次の事項を備えることを特徴とする使い捨て吸収性
パンツ。
a.前記一対のレッグホールは,前記パンツ本体の展開状態において,股下領域に
おける横方向対向側に有する凹欠部により形成されていること。
b.前記各伸縮部材は前記ウェストバンドと前記一対のレッグホールとを形成する
前記トップシートと前記バックシートの各部分間に接着されていること。
c.前記レッグホールの前記伸縮部材は,前記パンツ本体の展開状態において,前
記凹欠部の縦方向対向端にあって横方向へ延びる第1部材と,前記凹欠部の横方向
内側にあって縦方向へ延び前記対向第1部材と接続する第2部材とからなり,よっ
て,前記凹欠部は,前記パンツ本体の展開状態において,前記伸縮部材により該凹
欠部の外側を除いて囲まれていること。
.,,d前記パンツ本体はこれを二分する横方向中心線を介して縦方向に折り返され
その横方向対向側縁に沿ってこれらが接合されることにより組み立てられているこ
と」。
(イ)(産業上の利用分野)
「本発明は,乳幼児用のおむつ・いわゆるトレーニングパンツ,失禁者用おむつ
等として供するための,予め完全なパンツ型に形成された使い捨て吸収性パンツに
関する(2頁左上欄3行∼6行)。」
(ウ)(問題点を解決するための手段)
「本発明は,前記問題点を解決するため,着用者の肌に接する透水性トップシー
トと,該トップシートと反対側に位置する不透水性バックシートと,該両シートの
間に介在する吸収性コアとからなるパンツ本体と;ウエストバンドと,一対のレッ
グホールとにそれぞれ伸縮ギヤザーを作る伸縮部材とを含む使い捨て吸収性パンツ
であって;前記一対のレッグホールは,前記パンツ本体の展開状態において,股下
領域の横方向対向側に有する凹欠部により形成され;前記各伸縮部材は前記ウエス
トバンドと前記一対のレッグホールとを形成する前記トップシートと前記バック
シートの各部分間に接着され;前記レッグホールの前記伸縮部材は,前記パンツ本
体の展開状態において,前記凹欠部の縦方向対向端にあって横方向へ延びる第1部
材と,前記凹欠部の横方向内側にあって縦方向へ延び前記対向第1部材と接続する
,,,,第2部材とからなりよって前記凹欠部は前記パンツ本体の展開状態において
前記伸縮部材により該凹欠部の外側を除いて囲まれていること;前記パンツ本体
は,これを二分する横方向を中心線を介して縦方向に折り返され,その横方向対向
側縁に沿ってこれらが接合されることにより組み立てられていることを特徴とする
ものである(2頁左下欄6行∼右下欄9行)。」
(エ)実施例
「,,。a第1図第2図においてパンツ本体1はその全体を符号1で示してある
パンツ本体1は,透水性トップシート2と,同大の不透水性バックシート3と,該
両シートよりも小さい吸収性コア4とからなる。また,パンツ本体は,ウエストバ
,,ンドにギャザーを作る伸縮部材5とレッグホールにギャザーを作る伸縮部材6a
6b,6cとを有する(2頁右下欄20行∼3頁左上欄7行)。」
b「トップシート7とバックシート8の凹欠部12の縦方向対向端間には,伸
縮部材5と平行に横方向へ延びる伸縮部材6a,6bが介在し接着されている。ト
ップシート7とバッグシート8の凹欠部12の縦方向対向内側間には,互いに平行
に縦方向へ延び伸縮部材6a,6bと接続する伸縮部材6cが介在し接着されてい
る(3頁右上欄11行∼17行)。」
(オ)発明の効果
「パンツ本体の展開状態において,股下領域の横方向対向側にレッグホールを形
成するための凹欠部を有し,しかも,該凹欠部には,該レッグホールが完全に形成
された状態において,該レッグホールが囲まれるように伸縮部材を設けられている
ので,該レッグホールが脚回りに完全に密着し,そこから排泄物が漏れるおそれが
ない(4頁左上欄2行∼9行)。」
(カ)図面
第2図には,レッグホールをなす各凹欠部12の縁部に,横方向に直線状に延び
る各一対の伸縮部材(第1部材)6a,6bが設けられるとともに,一対の伸縮部
材に接続して縦方向に直線状に延びる伸縮部材(第2部材)6cが設けられた態様
が図示されている。
イ以上の記載によれば,刊行物3には,使い捨ておむつのレッグホール縁部に
縦方向に直線状の伸縮部材6cを設けるとともに,当該レッグホールのほぼ前半分
及び後半分の縁部に直線状の伸縮部材6a,6bを設け,当該伸縮部材6cと伸縮
部材6a,6bとを接続させて,レッグホールが囲まれるように伸縮部材6a,6
b,6cを設けることによりレッグホール縁部に全周にわたりギャザーを作り,該
レッグホールが脚回りに完全に密着して,そこから排泄物が漏れるおそれをなくし
た使い捨て吸収性パンツの発明が記載されているものと認められる。
(5)本願発明と刊行物3記載の発明との対比
ア本願発明と刊行物3記載の発明とを対比すると,刊行物3記載の発明のレッ
グホールをなす各凹欠部12は,本願発明の脚周り部に相当するものと認められる
ところ,本願発明における第1及び第2弾性部材の構成は,前記(3)アのとおりで
あるのに対し刊行物3記載の発明においては第1部材6a6bはレッグホー,,,,
ルの前半分及び後半分の縁部に直線状に伸縮部材として設けられ,レッグホール間
の股下区域にはなく,また,第2部材6cは,股下区域の両側部においてパンツの
縦方向にレッグホールに沿って直線状に設けられ,その両端部で第1部材6a,6
bと接続して設けられている。
イこのように,本願発明の第1及び第2弾性部材は,脚周り部の縁近傍に弧状
に設けられているのに対して,刊行物3記載の発明の第1部材6a,6bは,レッ
グホールの縁部に直線状に設けられており,両者は弧状であるか直線状であるかと
いった形状において相違しており,さらに,本願発明の第1及び第2弾性部材は,
それらの中央部が互いに並列し物品の縦方向に離間して股下区域を横切っているの
に対して,刊行物3記載の発明の第1部材6a,6bは,このような中央部を有し
ていない点でも相違している。
他方,本願発明の第3及び第4弾性部材と刊行物3記載の発明の第2部材6cに
ついては,脚周り部を囲んで弾性部材を設ける場合に,他の弾性部材と交差させる
か接続させるかは,その伸縮性により脚回り部を着用者に密着させるという本願発
明の第3及び第4弾性部材並びに刊行物3記載の発明の第2部材6cの技術的意義
に実質的な相違を生じさせるものではないと認められるうえ,両者は配置位置及び
形状においても類似している。
ウところで,本願発明の目的,作用効果,第1及び第2弾性部材の技術的意義
は前記(3)ウのとおりであるところ,刊行物3記載の発明も,前記(4)のとおり,伸
縮部材6a,6b,6cによりレッグホール縁部に全周にわたりギャザーを作り,
パンツのレッグホールを着用者の脚回りに密着させるようにし,排泄物の漏れを防
止するものであり,第1部材6a,6bの技術的意義は,レッグホールの両側部に
縦方向に設けられた第2部材6cと連続してレッグホール縁部の全周にわたるギャ
ザーを形成し,その伸縮性によってレッグホールを着用者の脚回りに密着させるこ
とにあるものと解される。
そうすると,本願発明の第1及び第2弾性部材も刊行物3記載の発明の第1部材
6a,6bも,いずれも股下区域の両側部に縦方向に設けられた弾性部材と連続し
(),()て脚周り部レッグホールを囲みその伸縮性によって脚周り部レッグホール
を着用者に密着させるものであるから,その技術的意義は等しいといえ,両者は前
記のとおり弧状であるか直線状であるかといった形状の相違はあるものの前記(3),
ウで説示したのと同様に,その形状の相違は,上記技術的意義に照らし,同一の構
成における設計事項の範囲内に属する相違に過ぎないものといえる。また,本願発
明において,第1及び第2弾性部材の中央部の有無は,第1及び第2弾性部材の有
する上記技術的意義に影響するものではないことは前記(3)ウに説示したところで
あるから,第1及び第2弾性部材の中央部に相当するものが刊行物3記載の発明の
第1部材6a,6bには存在しないという相違についても,同一の構成における設
計事項の範囲内に属する相違に過ぎないといえる。
,,「」エ以上に検討したところによれば審決が刊行物3記載の発明の第1部材
は本願発明の「第1弾性部材」及び「第2弾性部材」に相当すると判断したことに
誤りはないというべきである。
オまた,上記のとおり,刊行物3記載の発明の第1部材6a,6bは本願発明
の第1及び第2弾性部材に相当するものであるから,これと連続して脚周り部(レ
ッグ部)を囲み,その伸縮性によって脚周り部(レッグ部)を着用者に密着させる
刊行物3記載の発明の第2部材6cと本願発明の第3及び第4弾性部材とは,その
技術的意義が等しいといえ,両者は配置位置及び形状において類似し,他の弾性部
材との接合態様においてもその技術的意義に照らし実質的に相違はないことから,
審決が,刊行物2記載の発明の「第2部材6c」は本願発明の「第3弾性部材」及
び「第4弾性部材」に相当すると判断したことに誤りはないというべきである。
(6)これに対し,原告は,本願発明においては,脚周り弾性部材として第1及び
第2弾性部材が主要手段であり,第3及び第4弾性部材は離間部をつなぐための補
助手段であるのに対し,刊行物2記載の発明においては,脚周り弾性部材として弾
性部材11aが主要部材であり,弾性部材11bは補助的部材であり,刊行物3記
載の発明においては,脚周り弾性部材として弾性部材6cが主要部材であり,弾性
部材6a,6bは補助的部材であるから,刊行物2記載の発明の弾性部材11b及
び刊行物3記載の発明の弾性部材6a,6bと本願発明の第1,第2弾性部材とは
技術的意義を全く異にし,また,刊行物2記載の発明の弾性部材11a及び刊行物
3記載の弾性部材6cと本願発明の第3及び第4弾性部材とは技術的意義を全く異
にするものであると主張する。
しかしながら,本願発明,刊行物2記載の発明及び刊行物3記載の発明は,いず
れも使い捨ておむつ等において,脚回り部の隙間から体液が漏れることを解決すべ
き課題とし,その解決手段として脚周り部に形成された伸縮性をもったギャザーに
より脚周り部を着用者の脚に密着させることにより体液の漏れを防止しようとする
ものであるところ,いずれの発明においても,脚周り部の縁部において縦方向の弾
性部材と横方向の弾性部材とを交差させて設けることにより,着用物品を組み立て
た状態で,脚周り部が全周に亘って連続した弾性部材によって囲まれるようにし,
その伸縮性により,脚周り部を着用者に密着させるようにしている点で共通してい
る。
そうすると,上記各発明においては,縦方向の弾性部材と横方向の弾性部材が一
体になることによって脚周り部の全周に亘って伸縮性が与えられるのであるから,
漏れ防止のための機能という観点からすれば,縦方向の弾性部材と横方向の弾性部
材の果すべき機能は同等であり,両者の間に主・従の関係があるとはいえない。
したがって,刊行物2記載の発明の弾性部材11b及び刊行物3記載の発明の弾
性部材6a,6bと本願発明の第1,第2弾性部材とは技術的意義を全く異にし,
また,刊行物2記載の発明の弾性部材11a及び刊行物3記載の弾性部材6cと本
願発明の第3及び第4弾性部材とは技術的意義を全く異にするとは認められないか
ら,原告の主張は採用できない。
(7)以上に説示したところによれば,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点3についての判断の誤り)について
原告は,審決が,相違点3について「刊行物1記載の発明において上記「相違,
点2について」で述べた第3及び第4弾性部材を採用したことにより当然にもたら
される事項にすぎない。」と判断したことは後記の理由により誤りであると主張す
るので,以下,検討する。
(1)まず,原告は,刊行物1記載の発明においては,そもそもゴムひもの「直線
状部(21b(22c」の切除によって生じた離間部を,そこからの排泄物の),)
,,漏れ防止を図るため他の弾性部材でつなぐという技術的思想が示唆されておらず
一方,刊行物2記載の発明の「弾性部材11a」及び刊行物3記載の発明の「弾性
部材6c」が,本願発明の「第3及び第4弾性部材」に相当するものではないこと
は取消事由1に関して述べたとおりであるから,刊行物1記載の発明の前記離間部
をつなぐため,刊行物2記載の発明の「弾性部材11a」又は刊行物3記載の発明
の「弾性部材6c」を刊行物1記載の発明に適用するという技術的思想それ自体が
発想されず,その動機付けも得られないと主張する。
ア前記1(6)のとおり,本願発明,刊行物2記載の発明及び刊行物3記載の発
明は,いずれも使い捨ておむつ等において,脚回り部の隙間から体液が漏れること
を解決すべき課題とし,その解決手段として脚周り部を全周にわたり弾性部材で囲
み,その伸縮性により脚周り部を着用者の脚に密着させ,体液の漏れを防止しよう
とするものである。
,(,)(,イ刊行物1記載の発明においてゴムひも2122の直線状部21b
21c)の切除によって生じた離間部は,脚周り部縁部のゴムひも(弾性部材)が
存在しない部分と解することができる(後記(2)ア(エ),(オ))ところ,同発明は使
い捨ておしめブリーフであるから,体液の漏れを防止することは基本的な機能とし
て求められるものであり,また,上記のとおり,刊行物1記載の発明では脚回り縁
部のゴムひもが上記離間部において存在しないため,当該部分において脚回り部の
隙間が生じ,体液が漏れるおそれがあることは当業者が容易に認識し得ることであ
るから,これを防止するため,刊行物1記載の発明において,脚周り部を囲んで弾
性部材を設けることで当該離間部からの漏れを防止するようにした刊行物2記載の
発明又は刊行物3記載の発明を適用すること,すなわち,刊行物1記載の発明にお
いて,ゴムひもの直線状部(21b,22c)の切除によって生じた離間部からの
体液の漏れを防止するため,刊行物2記載の発明又は刊行物3記載の発明を適用し
て,当該離間部を他の弾性部材でつなぐことは,当業者が容易に想到し得たことで
あると認められる。
また,刊行物2記載の発明「弾性部材11a」及び刊行物3記載の発明の「弾性
部材6c」が本願発明の「第3及び第4弾性部材」に相当することは,前記1で説
示したとおりである。
ウしたがって,刊行物1記載の発明の前記離間部をつなぐため,刊行物2記載
の発明の「弾性部材11a」又は刊行物3記載の発明の「弾性部材6c」を刊行物
1記載の発明に適用することは,当業者が容易に想到し得たものというべきである
から,原告の主張は採用できない。
(2)また,原告は,本願発明の「前記交差によって前記股下区域の両側部に生じ
た前記第1及び第2弾性部材の前記両側部と前記第3及び第4弾性部材との交点の
」,間における前記第1及び第2弾性部材の前記中央部が切断されているとの構成は
脚周り弾性部材の配置方法を含むものではあるが,本願発明の構成を限定している
,,,ところ刊行物1記載の発明は本願発明の上記構成を採用するものではないから
審決の前記判断を導くのは論理的に無理であるとも主張する。
ア刊行物1(甲第1号証)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「本発明は足を挿通する足開口部の湾曲した外周部の少なくとも一部に沿っ
てゴムひものような弾性部材が付設されこれにより足開口部においても大腿部に緊
密に被着可能な使い捨ておしめブリーフを製造する方法に関する(2頁右上欄2。」
行∼6行)
(イ)「しかしながら足開口部に湾曲した周部を具備させる場合,充分な締付け力
を得るには足開口部の湾曲した周部に沿って弾性部材を付設する必要があり・・,
・(2頁左下欄6行∼9行)」
(ウ)「更に詳述するに,ゴムひも(21)は開口部となるべき部分の直近に位置
せしめられる弧状部(21a)と直線状部(21b)を持つようにシーツ材(2)
に装着される(5頁左上欄16行∼19行)。」
(エ)「次いで接着剤が塗布されていない直線状部(21b(22c)が切断に),
より除去又は単に収縮せしめられこのゴムひもを切除した領域に矩形の当て布1,(
5)が本実施例の場合2対称線(18)間において長手軸線X−Xに対し直角にす
なわちシーツ材(2)の巾方向に付設される(5頁右上欄15行∼20行)。」
(オ)第5図FIG5及び第6図FIG6にはゴムひも212(.)(.),()(
)()()2が開口部となるべき部分の直近に位置せしめられる弧状部21a22a
と直線状部(21b(22c)を持つようにシーツ材(2)に装着され,弧状部)
(21a(22a)間の直線状部(21b(22c)が切断された態様が図示さ))
れている。
イ以上の記載によれば,刊行物1には,着用者の脚に緊密に被着させるために
使い捨ておしめ(おむつ)の足開口部の縁部に設けられるゴムひもに関して,足開
口部の少なくとも一部の縁部に沿ってゴムひも(21)の弧状部(21a(22)
a)を設け,これら左右の足開口部に設けられた弧状部(21a(22a)間に)
あって股下区域を横切るゴムひも(21(22)の直線状部(21b(22c)))
が切断された発明が記載されているものと認められる。
このように,刊行物1には,脚周り部の縁部に円弧状の弾性部材(第1及び第2
弾性部材の両側部)を設け,左右の脚周り部の両側部の間の直線状の弾性部材(第
1及び第2弾性部材の中央部)を切断する事項は記載されている。
ウそうすると,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明又は刊行物3記載の
発明を適用して,各脚周り部の円弧状の弾性部材に交差させて他の弾性部材(第3
及び第4弾性部材)を設けた場合に,左右の脚周り部の両側部の間の直線状の弾性
部材を切断することは,円弧状の弾性部材と他の弾性部材とが交差する交点の間に
おいて,直線状の弾性部材を切断するということであるから,審決が「交差によ,
って前記股下区域の両側部に生じた前記第1及び第2弾性部材の前記両側部と前記
第3及び第4弾性部材との交点の間における前記第1及び第2弾性部材の前記中央
部が切断されている」との構成は,刊行物2記載の発明又は刊行物3記載の発明の
第3及び第4弾性部材を採用したことにより当然もたらされる事項にすぎないと判
断したことに誤りはないというべきである。原告の主張は失当である。
なお,原告は,本願発明は弾性部材の交差部が股下区域に位置することが必然で
あり,それにより格別の効果を奏するものであるが,刊行物1記載の発明に刊行物
2記載の発明及び刊行物3記載の発明を組み合わせても,弾性部材の交差部が必ず
しも股下区域に位置するとはいえないとも主張する。しかしながら,刊行物1記載
の発明は,上記のとおり,ゴムひもが足開口部の周囲に弧状部として設けられてお
り,これらの弧状部はその端部が股下区域まで回り込んで位置していることは明ら
かであるから,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明及び刊行物3記載の発明
を適用して,股下区域まで回り込んでいる弧状部の端部に直線状の他の弾性部材を
交差させて設ければ,その交差部が股下区域に位置することは明らかである。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用できない。
(3)以上のとおりであるから,取消事由2は理由がない。
3以上の次第であるから,審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を誤
りとする事由もないから,審決は適法であり,本件請求は理由がない。
第6結論
よって,本件請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田中信義
裁判官
榎戸道也
裁判官
浅井憲

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