弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人山田思郎の上告理由について。
 原判決は、本件手形債務につき被上告銀行が民事上の保証をした旨の上告会社の
主張につき、甲第二号証(融資保証書)、同第四号証(融資証明書)の記載によれ
ば、被上告銀行が訴外Dに対して融資を請合つただけのことであり、該契約は被上
告銀行と同訴外人との間の関係にすぎないもので、上告会社とは法律上の関連を有
するものでなく、同訴外人が右融資保証書及び同証明書を本件手形二通にそれぞれ
添付して上告会社に交付したとしても、被上告銀行と上告会社との間に直接何等の
法律上の関係を生ずるものではないとし、第一、二審証人Eの証言並びに原審にお
ける上告会社代表者Fの供述中に上告会社の主張に副うかのような証言や供述部分
があるが、原判示証言と対比して措信し難く、爾余の上告会社の全立証によつても、
上告会社の主張事実は認められないとして、上告会社の請求を排斥している。
 しかし、甲第二号証は訴外Dから被上告銀行G支店長に宛てた本件甲第一号証手
形金額の融資支払保証願に対する同支店長Hの融資保証を記載した文書であり、同
第四号証は同じく本件甲第三号証手形金額の融資支払保証願に対する融資保証を記
載した文書であるから、同訴外人が右手形二通に右保証書等をそれぞれ添付して上
告会社に交付したものとすれば、特段の事情の存しない限り、右交付は本件手形金
の支払を確保するために被上告銀行の保証を得ようとした上告会社の要求に基いた
ものと解すべき筋合のものであり、かかる場合、右保証書等が原判示のごとく上告
会社に対する契約でなく単に被上告銀行からDに対する契約を記載したものにすぎ
ないとすれば、これを交付された上告会社としては、右文書を上告会社に対する保
証契約書と誤解したとか、そうでないとすればDに対する契約だけで満足するに至
つたとかいうような特段の事情の存しない限り、右文書の外、被上告銀行から本件
手形金の支払につき保証の約諾を得るためになんらかの手段を講ずる筋合のもので
ある。しかるに原判決は、この点につき上告会社の主張に副うような証言及び供述
部分の存することを認めながら、単に右保証書等の記載自体からは被上告銀行と上
告会社との間に直接の法律関係を生じないとした外、叙上の点につき特に首肯する
に足る説明を加えることなく、たやすく右証言及び供述部分を措信しがたいとし、
ひいて上告会社の全立証によつても上告会社の主張事実は認められないと判断した
のは、ひつきょう取引の実状、経験則に基かずにみだりに証拠を俳斥した違法があ
るに帰するものであつて、論旨は結局理由があり、原判決は破棄を免れない。
 よつて、その他の論旨に対する判断を省略し民訴四〇七条一項により裁判官全員
の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   橋       潔
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
 裁判官小林俊三は退官につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    高   橋       潔

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