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平成25年10月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官上原啓司
平成23年(ワ)第21126号損害賠償請求事件
(口頭弁論の終結の日平成25年8月29日)
判決
大韓民国ソウル特別市龍山区〈以下略〉
原告株式会社ジーピーシーコリア
同訴訟代理人弁護士岩瀬吉和
同石井昭仁
同訴訟復代理人弁護士地康文
同訴訟代理人弁理士金山賢教
大阪市北区〈以下略〉
被告株式会社千趣会
同訴訟代理人弁護士片山英二
同飯島歩
同生沼寿彦
同江幡奈歩
同藤田知美
同岩間智女
同訴訟代理人弁理士加藤志麻子
同横井知理
同鎌田直也
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成23年7月13日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「Web-POS方式」とする特許権の専用実施権者
である原告が,被告の提供するサービスに係るシステムが上記特許権を侵害し
ている旨主張して,被告に対し,民法709条及び特許法102条3項に基づ
く損害賠償(一部請求)並びにこれに対する不法行為日以降の日である平成2
3年7月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いがないか,各項目掲記の証拠(枝番号の記載は省
略する。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事
実)
(1)当事者
ア原告は,ソフトウェア事業,特許の管理・行使,電子商取引の構築及び
運営,決済端末機販売,インターネットを利用した決済代行等を業とする
大韓民国の株式会社である。
イ被告は,書籍,カード,雑誌,レコード類の製造出版及び販売,衣料品
の販売等を業とする株式会社である。
(2)原告の特許権
ア原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許出願の願書
に添付された明細書を「本件明細書」という。)について,特許権者であ
る訴外ジーピーシーアジアパシフィックアソシエイツインク(米国法
人)から,地域を日本国内全域,期間を本件特許権の存続期間中とする専
用実施権の設定を受け,平成23年1月17日付けでその登録を受けた
(甲1,2)。
特許番号特許第4579336号
発明の名称Web-POS方式
出願番号特願2010-43641
出願日平成22年2月28日
分割の表示特願2000-331569の分割
原出願日平成10年1月9日
登録日平成22年9月3日
イ本件特許権に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりであ
る(以下,当該発明を「本件発明」といい,本件発明に係る特許を「本件
特許」という。)。
「ハイパーテキスト転送プロトコルを用いてハイパーテキストマークアッ
プ言語で記述された初期フレーム表示制御クライアント・プログラム,カ
テゴリーリスト表示制御クライアント・プログラム及びPLUリスト表示
制御クライアント・プログラムを含むHTMLリソースを供給するWeb
-POSサーバ装置を備えた,販売時点情報管理を行うためのWeb-P
OSネットワーク・システムの制御方法であって,
該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対
して送信された,初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが,該
Web-POSクライアント装置において実行されることにより,少なく
とも,
1)該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ
装置に対して,カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダ
ウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程,
2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体か
らカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し,上記
Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対し
て,上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信され
る過程,
3)上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサー
バ装置に対して,PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示
するHTTPメッセージが送信されると,上記Web-POSサーバ装置
が,PLU表示サーバ・プログラムを起動して,PLUリスト表示制御ク
ライアント・プログラムを生成し,上記Web-POSクライアント装置
に対して,PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過
程,
4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記We
b-POSサーバ装置に問い合わされる過程,
からなり,
前記Web-POSサーバ装置のPLUマスタDB内の商品カテゴリー
に対応するレコード情報に基づくPLUリスト及び同PLUマスタDB内
の商品情報に対応するレコード情報に基づくPLUリストが,それぞれ,
前記Web-POSクライアント装置における商品カテゴリーが変更され
る毎に,また前記Web-POSクライアント装置における商品識別情報
が入力(選択)される毎に,前記Web-POSサーバ装置から前記We
b-POSクライアント装置にダウンロードされると共に,
該Web-POSクライアント装置においては,前記Web-POSサ
ーバ装置から受信した商品基礎情報をタッチパネル,キーボード,または
マウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,該入力手段により上
記表示された商品を特定する商品に関する識別情報である商品識別情報を
入力(選択)し,前記Web-POSサーバ装置から受信した商品基礎情
報から上記入力(選択)した商品識別情報に対応する商品基礎情報のレコ
ードを取得して,該商品基礎情報と上記入力(選択)した商品識別情報と
に基づいて注文商品明細情報を上記表示画面に出力する,汎用のコンピュ
ータとインターネットを用い,ハイパーテキスト転送プロトコルに基づい
て通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザ
のみでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,
商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が記
憶されている前記PLUマスタDBが前記Web-POSサーバ装置のみ
に設けられて,前記すべての商品基礎情報が前記Web-POSサーバ装
置のみによって管理されると共に,前記タッチパネル,キーボード,また
はマウスからなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーに
対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と,該
カテゴリー内の商品名が表示される,商品情報に対応したPLUリストを
表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基礎情報と前記入
力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表
示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,前記Web-POSクラ
イアント装置における上記注文商品明細情報が該Web-POSクライア
ント装置から前記Web-POSサーバ装置に送信されることで,販売時
点情報管理が行われることを特徴とするWeb-POSネットワーク・シ
ステムの制御方法。」
ウ本件発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,各構成要
件を「構成要件A」などという。)。ただし,以下,構成要件中の次の左
欄記載の用語については,括弧中において引用する場合も含め,右欄記載
の略称を用いる。
構成要件中の用語略称
ハイパーテキスト転送プロトコルHTTP
ハイパーテキストマークアップ言語HTML
Web-POSサーバ装置サーバ装置
Web-POSクライアント装置クライアント装置
初期フレーム表示制御クライアント・プ
ログラム
初期フレームプログラム
カテゴリーリスト表示制御クライアント
・プログラム
カテゴリーリストプログラム
PLUリスト表示制御クライアント・プ
ログラム
PLUリストプログラム
PLUリスト表示制御サーバ・プログラム,
PLU表示サーバ・プログラム
PLUリストサーバプログラム
商品カテゴリーに対応するレコード情報
に基づくPLUリスト
カテゴリー対応レコードリスト
商品情報に対応するレコード情報に基づ
くPLUリスト
商品情報対応レコードリスト
商品カテゴリーに対応するPLUリスト商品カテゴリーリスト
商品情報に対応したPLUリスト商品PLUリスト
AHTTPを用いてHTMLで記述された初期フレームプログラム,カ
テゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムを含むHTML
リソースを供給するサーバ装置を備えた,
B販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システ
ムの制御方法であって,
C該サーバ装置からクライアント装置に対して送信された,初期フレー
ムプログラムが,該クライアント装置において実行されることにより,
少なくとも,
1)該クライアント装置から上記サーバ装置に対して,カテゴリーリス
トプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信さ
れる過程,
2)該要求に基づき,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体か
らカテゴリーリストプログラムを読み出し,上記サーバ装置から該ク
ライアント装置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信さ
れる過程,
3)上記クライアント装置から上記サーバ装置に対して,PLUリスト
サーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信される
と,上記サーバ装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,
PLUリストプログラムを生成し,上記クライアント装置に対して,
PLUリストプログラムが送信される過程,
4)及び,商品情報の入力毎に,それに対応するPLU情報が上記サー
バ装置に問い合わされる過程,
からなり,
D前記サーバ装置のPLUマスタDB内のカテゴリー対応レコードリス
ト及び同PLUマスタDB内の商品情報対応レコードリストが,それぞ
れ,前記クライアント装置における商品カテゴリーが変更される毎に,
また前記クライアント装置における商品識別情報が入力(選択)される
毎に,前記サーバ装置から前記クライアント装置にダウンロードされる
と共に,
E該クライアント装置においては,前記サーバ装置から受信した商品基
礎情報をタッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を
有する表示画面に表示し,該入力手段により上記表示された商品を特定
する商品に関する識別情報である商品識別情報を入力(選択)し,前記
サーバ装置から受信した商品基礎情報から上記入力(選択)した商品識
別情報に対応する商品基礎情報のレコードを取得して,該商品基礎情報
と上記入力(選択)した商品識別情報とに基づいて注文商品明細情報を
上記表示画面に出力する,
F汎用のコンピュータとインターネットを用い,HTTPに基づいて通
信を行うWebサーバ・クライアント・システム上でWebブラウザの
みでPOS機能が実現されるWeb-POSシステムにおいて,
G商品カテゴリー,メーカー,商品名及び価格からなる商品基礎情報が
記憶されている前記PLUマスタDBが前記サーバ装置のみに設けられ
て,
H前記すべての商品基礎情報が前記サーバ装置のみによって管理される
と共に,
I前記タッチパネル,キーボード,またはマウスからなる入力手段を有
する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分(第1フ
レーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示される,商品P
LUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と,前記商品基
礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の
注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て,
J前記クライアント装置における上記注文商品明細情報が該クライアン
ト装置から前記サーバ装置に送信されることで,販売時点情報管理が行
われることを特徴とする
KWeb-POSネットワーク・システムの制御方法。
(3)被告の行為(甲3,5,8,13,乙24,25,27)
ア被告サービス及び被告システム
被告は,業として,インターネット上において「ベルメゾンネット」と
称するショッピングモール(以下「被告サービス」という。)を提供して
いる。
イ別紙1の第1画面ないし第7画面について
別紙1の第1画面ないし第7画面(以下,別紙1中の画面又はソースコ
ードを,その表題に従い「第1画面」,「第2画面ソース」などとい
う。)は,被告が被告サービスにおいて採用しているシステムの挙動の一
例であり,原告は,このシステム(以下「被告システム」という。)の制
御方法が本件発明の構成要件を充足する旨主張している。
被告システムにおける商品の表示及び購入の流れは,次のとおりである。
第1画面は,被告システムのトップページである。その上部には,被告
サービスにおいて取り扱われている商品が,ファッション,妊娠出産・ベ
ビー・キッズ,ディズニー,ナースアイテム,インテリア・雑貨,ビュー
ティ,グルメ・スイーツ及びギフトの8つのカテゴリー(以下「大カテゴ
リー」という。)に区分され,例えば,ファッションであれば,その中に,
レディースファッション,女性下着・インナー,靴・バッグ・アクセサリ
ー,スポーツウエア・スニーカー,大きいサイズ,メンズファッション及
びインポートブランドのサブカテゴリー(以下「中カテゴリー」とい
う。)が表示されている。このうち,「レディースファッション」をクリ
ックすると,第2画面に移行する。
第2画面は,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリーの
表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれている。カテゴリーの表
示領域(第2画面の赤枠部分)のトップには,「レディースファッショ
ン」と表示され,その下に,コート,ジャケット・ブルゾン,ワンピー
ス・チュニック,カーディガン・ボレロ・ベスト,ニット,カットソー・
Tシャツ,ブラウス・シャツ,アンサンブル・セット商品,パーカー・ト
レーナー,キャミソール・タンクトップ,スカート,パンツ,レディース
スーツ,フォーマルウェア,浴衣・着物及びレディースファッション福袋
のサブカテゴリー(以下「小カテゴリー」という。)が表示されている。
他方,右側の個別商品の表示領域(第2画面の青枠部分)には,「毎週更
新!新入荷&イチオシ商品」として,「袖口が折り返せる7分袖のシンプ
ルカットソー」等10件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されて
いる。これらのうち,小カテゴリーの「コート」をクリックすると,第3
画面に移行し,他方,上記の「袖口が折り返せる7分袖のシンプルカット
ソー」を選択すると,第6画面に移行する。第2画面のソースコードが,
第2画面ソースである。
第3画面も,広告等の表示領域を除くと,大きく,左側のカテゴリーの
表示領域と右側の個別商品の表示領域とに分かれている。カテゴリーの表
示領域(第3画面の赤枠部分)のトップには,「レディースファッショ
ン」及び「コート」が表示され,その下に,トレンチコート,ステンカラ
ーコート,ノーカラー・スタンドカラーコート,Pコート(ピーコート),
ダッフルコート,モッズコート,中綿・キルティングコート,ダウンジャ
ケット・ダウンコート及びその他のコート商品一覧のサブカテゴリー(以
下「最小カテゴリー」という。)が表示されている。他方,右側の個別商
品の表示領域(第3画面の青枠部分)には,「コート」のカテゴリーで抽
出された商品として,「カラーコート【ネット限定サイズあり】」等40
件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている。この「コート」
のカテゴリーには,合計126件の商品が登録されており,41件目以降
の商品を表示するためには,「2」,「3」,「4」又は「次の40件」
というリンクをクリックする。上記の40件の商品のうち,「カラーコー
ト【ネット限定サイズあり】」をクリックすると,第4画面に移行する。
第3画面のソースコードが,第3画面ソースである。
第4画面には,「カラーコート【ネット限定サイズあり】」という商品
のイメージ及び説明があり,右側にある「カートに入れる」というボタン
をクリックした後,「カートを見る」のボタンをクリックすると,第5画
面に移行する。また,第6画面には,前記の「袖口が折り返せる7分袖の
シンプルカットソー」という商品のイメージ及び説明があり,右側にある
「カートに入れる」というボタンをクリックした後,「カートを見る」の
ボタンをクリックすると,第7画面に移行する。
第5画面及び第7画面は,いずれもこのような過程を経てカートに入れ
られた商品の最終的な注文確認画面であり,商品のイメージ,注文番号,
単価,購入予定数量,商品小計等が記載され,中程にある「ご注文手続
へ」というボタンをクリックすると,注文手続の画面に移行する。
ウ被告システムの構成及び処理フローの概要
被告システムの構成及び処理フローの概要は,次のとおりである。
(ア)サーバ構成
被告システムのサーバ構成は,別紙2のシステム俯瞰図記載のとおり
である(以下,同別紙に記載されたサーバを併せて「被告サーバ群」と
いうことがある。)。なお,同別紙に表示される個々のサーバは,シス
テム上の機能単位からみた論理的なサーバであり,ほとんどの場合,シ
ステム俯瞰図の一つのサーバに対し,物理的なサーバ装置が複数割り当
てられている。
被告サーバ群は,被告サービス固有のサーバ群とそれ以外の汎用サー
バ群とに大別される。
被告サービス固有のサーバ群(別紙2中の橙色表示サーバ)は,①セ
キュリティー等を制御するファイアウォール(OUT)及びファイアウ
ォール(IN),②利用者のパソコン,携帯電話,スマートフォン等の
端末(以下「利用者端末」という。)で動作するブラウザを操作するこ
とによって利用者から送信されるページ要求や,外部システム(「商品
検索システム」等)からのページ要求を受け付け,処理するWebサー
バ,③Webサーバ等の負荷分散を行うディスパッチャー,④プログラ
ムを稼動させるアプリケーションサーバ,⑤定期的に商品情報を読み出
し,商品詳細ページのHTML文書の作成等を行うSEOサーバ,⑥混
雑画面やメンテナンス中に表示する画面を表示するソーリーサーバ,⑦
画像の拡大・縮小,携帯電話用に画像変換を行う画像変換サーバ,⑧コ
ンテンツを各携帯キャリア(docomo,KDDI,ソフトバンク)
に対応したコンテンツに変換する携帯コンテンツ変換サーバ並びに⑨外
部のクレジットカード決済システムとの通信を行うオーソリサーバから
構成されている。
また,それ以外のサーバ群(別紙2中の青色表示サーバ)は,被告サ
ービス固有のサーバよりも汎用性の高い機能を有し,被告サービス固有
のサーバ群からネットワークを介して利用されており,①メールシステ
ムをつかさどるメールサーバ,②コンテンツを保存するためのストレー
ジ(記憶装置)であるNAS-OUT,③コンテンツを保存するための
ストレージ(記憶装置)であるNAS-IN,④主に顧客との取引に利
用するデータベースであるホストシステムデータベース,⑤大量のデー
タ処理を実行するバッチサーバ等から構成されている。
(イ)被告システムの処理フロー
被告システムの処理フローは,次のとおりである。
被告システムは,利用者端末において一つの単独のHTML文書を実
行することで画面全体を一括的に表示する形式であり,画面上のいずれ
かのリンクをクリックして次画面のWebリソースに移行するときには,
新たにリンク先の単独のHTML文書がWebサーバから読み出され,
利用者端末上で同HTML文書が実行されることで,画面全体が更新さ
れるようにして切り替わる動作が繰り返される。
利用者端末のブラウザにおいて,被告サービスのトップページである
第1画面を表示するよう指示する要求が送信されると,Webサーバは,
これを受け付けて一つのHTML文書を送信し,その結果,利用者端末
のブラウザ画面には,第1画面が表示される。その際,フレームによっ
て分割された画面に個別のファイルが各々呼び出されるということはな
く,上記一つのHTML文書の記載事項のみにより利用者端末のブラウ
ザ画面の全体が一括表示される。
利用者により第1画面の「レディースファッション」がクリックされ
ると,Webサーバに対し,「レディースファッション」のページのH
TML文書の要求が送信され,これを受け付けたWebサーバは,一つ
のHTML文書をNAS-OUTから読み出して送信し,これにより第
2画面が表示される。なお,第2画面を表示するためのHTML文書は,
2時間に1回の頻度で自動的に生成されてNAS-OUTに保存される
ものであり,利用者からの要求に基づいて動的に生成されるものではな
い。また,SEOサーバは,第2画面を生成する際,ホストシステムデ
ータベースを参照して在庫の有無を確認し,その結果,ホストシステム
データベース上在庫がない商品は「レディースファッション」ページか
ら除外されるが,このページは2時間に1度しか更新されないことから,
その在庫情報は,参照時点における実在庫の数量を必ずしも正確に反映
していない。
第2画面において「コート」をクリックすると,WebサーバはHT
ML文書をアプリケーションサーバから受領して利用者に送信し,その
結果,利用者端末のブラウザ画面は,第3画面の内容に全画面が置き換
わる。第3画面のHTML文書は,利用者からページの要求を受ける都
度作成されるが,このページの基礎となる情報は,「商品詳細ページ」
のHTMLデータに基づいて,あらかじめ作成されている。すなわち,
そのHTMLデータは,2時間に1度更新されつつ,NAS-OUTに
保存されており,このデータを,被告サービスの外部にある商品検索シ
ステム(外部ASP)が,Webサーバを介して検索し,「コート」の
ページのHTML文書作成の基礎となる情報を作成する。具体的には,
Webサーバでは,「商品詳細ページ」のHTMLデータのみならず,
種々のHTMLデータが参照可能となっているが,これらのデータの中
から,URLの中に「商品詳細ページ」に該当する情報を含み,かつ,
HTMLデータの中に「コート」の情報を含むもののみが抽出される。
この抽出処理は,「商品詳細ページ」のHTMLデータのリンクをたど
りながら情報を収集する処理(クローリング)であるため,1回当たり
の抽出処理には4時間近くかかり,その処理が終了すると,商品検索シ
ステム(外部ASP)は,新たな抽出処理を開始し,情報を更新する。
利用者が「コート」のページの表示を要求すると,アプリケーションサ
ーバが,商品検索システム(外部ASP)に対して,上記基礎データの
送信を要求し,当該基礎情報を受領すると,これをHTML文書に変換
し,Webサーバに送信する。これを受信したWebサーバは,これを
システム内に保存することなく利用者に送信し,これを受信した利用者
端末のブラウザ画面には第3画面が表示される。
利用者が第2画面又は第3画面から任意に一つの商品をクリックする
と,その商品の詳細ページの要求が送信される。Webサーバは,この
要求を受信すると,一つのHTML文書をNAS-OUTから取得して
利用者に送信し,その結果,利用者端末のブラウザ画面には第4画面又
は第6画面が表示される。ここでも,一つのHTML文書のみによって,
画面全体が一括更新されている。なお,商品詳細ページのHTML文書
は,SEOサーバが2時間に1回の頻度でホストシステムデータベース
を参照して生成し,NAS-OUTに保存されるものであり,利用者か
らの商品詳細ページの要求に基づいて動的に生成されるものではない。
利用者が,第4画面又は第6画面で「カートに入れる」のボタンをク
リックした後,「カートを見る」のボタンをクリックすると,アプリケ
ーションサーバが生成した一つのHTML文書をWebサーバが送信し,
利用者端末のブラウザ画面には第5画面又は第7画面が表示される。
第5画面又は第7画面から,「ご注文手続へ」というボタンをクリッ
クすると,注文手続に移行する。ここでは,利用者のクリックを契機と
して,順次,ログオンページ,お届け先選択ページ,配達オプション選
択ページ,注文確認ページを経て,最終的に注文が確定されると,注文
完了ページが表示される。これらのページのHTML文書は,いずれも,
ページ要求を受信したWebサーバがアプリケーションサーバに更にペ
ージ要求し,アプリケーションサーバがホストシステムデータベースか
ら当該注文に関する情報を取得してHTML文書に変換することによっ
て生成される。生成されたHTML文書は,Webサーバに送信され,
Webサーバから利用者に送信されることによって,利用者端末のブラ
ウザ画面上に表示される。
被告システムにおいて,ホストシステムデータベースの在庫情報に何
らかの変更が最初に加えられるのは,配達オプション選択ページから注
文確認ページに移行する時点であり,このときにホストシステムデータ
ベースにおいて仮引当てがなされ,その後,注文が確定されるか,注文
が確定されないまま30分経過するまで維持される。そして,その間に
注文が確定された場合には本引当てがなされ,他方,注文が確定されな
いまま30分経過した場合には,仮引当ては取り消される。
2争点
(充足論)
被告は,まず,被告システムが「Web-POS」に関するものであること
を争っている。そして,被告システムの制御方法が本件発明の各構成要件を充
足するか否かについては,上記(3)イ及びウの事実を前提とすると,次のように
解することができる。
(A)被告システムは,HTTPを用いてHTMLで記述されたプログラムを含
むHTMLリソースを供給するサーバ装置を備えているから,その限りで構
成要件Aを充足する。これに対し,被告システムにおいて初期フレームプロ
グラム,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムが供給さ
れるか否かについては,争いがある。
(B)被告システムが販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワー
ク・システムの制御方法に当たるか否か(構成要件B)については争いがあ
る。
(C)被告システムにおいては,第2画面及び第3画面が,大きく,カテゴリー
リストを表示する領域と個別商品を表示する領域とに分かれていること,こ
れらの画面を表示するHTML文書は,被告サーバ群を構成するWebサー
バから利用者端末に送信され,そのブラウザ画面に表示されること,カテゴ
リーリストに表示された特定のカテゴリーをクリックすると,これに該当す
る個別商品の一覧が表示されること,第3画面のHTML文書は,利用者か
らページの要求を受ける都度生成されること,利用者が第2画面又は第3画
面から任意に一つの商品をクリックすると,その商品の詳細ページの要求が
送信され,Webサーバは,この要求を受信すると,一つのHTML文書を
NAS-OUTから取得して利用者に送信し,その結果,利用者端末のブラ
ウザ画面には第4画面又は第6画面が表示されることから,その限りで構成
要件Cを充足するが,これらの過程が構成要件Cの柱書及び1)ないし4)
に記載されたとおりに実行されるものであるか否か,初期フレームプログラ
ムがその実行中に構成要件Cの1)ないし4)を順次実行するような処理を
含むプログラムであることを要するか否かについては争いがある。
(D)被告システムにおいては,第3画面のHTML文書(特定のカテゴリーに
分類される個別商品を表示した文書)が,利用者により商品カテゴリーの選
択が変更される都度,生成され,個別商品に対応するイメージ及び説明も,
利用者が特定の商品を選択する都度,商品の詳細ページのHTML文書が送
信されることよって表示されることから,その限りで構成要件Dを充足する
が,被告システムが「サーバ装置のPLUマスタDB」の要件を充足するか
否かについては争いがある。
(E)利用者端末においては,被告のサーバ装置から受信した商品情報をタッチ
パネル,キーボード又はマウスからなる入力手段を有する表示画面に表示し,
その入力手段により特定の商品に関する情報を選択し,サーバ装置から受信
した個別商品の情報から選択した特定の商品情報に対応するイメージ及び説
明を上記表示画面に出力することができることから,その限りで構成要件E
を充足する。
(F)被告システムにおいては,汎用のコンピュータとインターネットを用い,
HTTPに基づいて通信を行うWebサーバ・クライアント・システム上で
Webブラウザを用いて取引をすることができることから,その限りで構成
要件Fを充足するが,被告システムにおいて「WebブラウザのみでPOS
機能が実現され」ているか否か,これを「Web-POSシステム」と称し
得るか否かについては争いがある。
(G)被告システムにおいては,商品カテゴリー,商品名及び価格からなる商品
情報が被告のサーバ装置に記憶されていることから,その限りで構成要件G
を充足するが,メーカーに関する商品情報がサーバ装置に記憶されているか
否か,商品情報がサーバ装置のみに設けられているか否かについては争いが
ある。
(H)被告システムにおいて,全ての商品情報が被告のサーバ装置のみによって
管理されているか否か(構成要件H)については争いがある。
(I)被告システムにおいては,タッチパネル,キーボード又はマウスからなる
入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示する部分
(第1フレーム)の表示過程と,そのカテゴリー内の商品名及び説明を表示
する部分(第2フレーム)の表示過程と,特定の商品の情報に基づいて出力
される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程
があることから,その限りで構成要件Iを充足するが,本件発明にいう「フ
レーム」の意義及び第1ないし第3フレームが同一のWebページ内に表示
されることが要件とされているか否かについては,争いがある。
(J)被告システムにおいては,注文商品明細情報が利用者端末から被告のサー
バ装置に送信されることから,その限りで構成要件Jを充足するが,被告シ
ステムにおいて販売時点情報管理が行われているか否かについては争いがあ
る。
(K)被告システムがWeb-POSネットワーク・システムの制御方法といえ
るか否か(構成要件K)については争いがある。
そうすると,充足論に関する争点は,次のように整理することができる。
(1)構成要件B,F,J及びKの「販売時点情報管理」,「Web-POSシ
ステム」又は「Web-POSネットワーク・システム」の充足性等(構成
要件A,C,D,E,G,H及びJのサーバ装置及びクライアント装置が
「Web-POS」に関するものであるかを含む。)
(2)構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容
並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性
ア各プログラムの実行手順・実行内容について
イ第1ないし第3フレームの表示過程について
(ア)文言侵害
(イ)均等侵害
(3)構成要件A及びCの「初期フレームプログラム」並びに構成要件Iの各フ
レームの充足性
(4)構成要件A及びCの「カテゴリーリストプログラム」及び「PLUリスト
プログラム」の充足性
(5)構成要件D及びGの「PLUマスタDB」並びに構成要件Hの商品基礎情
報の管理方法の充足性
(6)構成要件Fの「Webブラウザのみ」の充足性
(7)構成要件Gの「メーカー」の充足性
ア文言侵害
イ均等侵害
(損害論)
(8)損害額
3争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(構成要件B,F,J及びKの「販売時点情報管理」,「Web
-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・システム」の充足
性等)について
(原告の主張)
POSシステムにおいて,クライアントの端末を操作する主体は,小売業
者に限られるものではなく,本件発明は,インターネット技術と共に発達し
たネットショッピングシステム,オンラインショッピングシステムなどと称
されるECサイトシステムを排除するものではない。被告システムは,PO
S技術を,専用回線を用いずに,汎用のパソコン及びインターネットを用い
て実現するWeb-POSネットワーク・システムの制御方法に関するもの
であるから,Web-POS(ネットワーク・)システムに該当する。なお,
被告システムに係るプログラムを生成,発信し,クライアント装置上に表示
されるWebページの内容を管理ないし支配しているのは,被告であるから,
被告がWeb-POS(ネットワーク・)システムを制御し,本件発明の実
施主体であることを否定することはできない。
また,被告システムにおいては,前記1(3)イ及びウのとおり,利用者が第
5画面又は第7画面に表示された「ご注文手続へ」というボタンをクリック
し,注文確認ページから注文することで,ホストシステムデータベースで仮
引当てがされ,注文が確定されれば本引当てがされるから,リアルタイムの
販売時点情報管理がされていることとなる。
よって,被告システムは,構成要件B,F,J及びKの「販売時点情報管
理」,「Web-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・シ
ステム」を充足する。
(被告の主張)
POSシステムは,一般的に,「小売業において,どの商品がいつ,何個
売れたかを把握するために,販売した時に1品単位で情報を収集し,コンピ
ュータで管理するシステム」と定義されており,本件明細書にも,「POS
システム(中略)は,商品が小売店で売れたその時点でその商品に関する情
報を取得し,リアルタイムな管理を可能とすることを目的として構築される
システムであり,小売業を中心として広く普及している。」と記載されてい
る。
これに対し,被告システムは,ECサイトシステムの一つであり,利用者
である消費者の端末によって利用され,小売業者の端末によって利用される
ものではないから,POSシステムに当たらない。なお,仮に,利用者端末
がクライアント装置に当たるとしても,そもそも被告は利用者端末を管理支
配することができないから,本件発明の実施主体となり得ない。
また,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,「商品詳細ペー
ジ」のリンクをたどりながら情報を収集する処理におよそ4時間程度の時間
を要し,また,抽出対象となる「商品詳細ページ」のHTMLデータは,2
時間に1度更新されることから,「商品詳細ページ」のデータ自体が,最大
で6時間前の在庫情報を表していることもある。このようなシステムを,商
品に関する情報をリアルタイムで取得し,販売時点情報管理をするシステム
ということはできないから,この観点からも,被告システムはPOSシステ
ムに当たらない。
したがって,被告システムは,構成要件B,F,J及びKの「販売時点情
報管理」,「Web-POSシステム」又は「Web-POSネットワーク・シ
ステム」を充足しない。
(2)争点(2)(構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及
び実行内容並びに第1ないし第3フレームの表示過程に関する充足性)につ
いて
(原告の主張)
ア各プログラムの実行手順及び実行内容について
(ア)特許請求の範囲の解釈
構成要件Cは,初期フレームプログラムがクライアント装置において
「実行されることにより」という文言を含むが,この文言は,構成要件
Cの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるから,
初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラムのダウ
ンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,前者が後者
に先行しなければならないものではない。また,上記の文言は,因果関
係を示すものでもなく,構成要件Cの1)ないし4)の過程が初期フレ
ームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示すもの
にすぎないと解すべきである。
なお,構成要件Cの柱書に「少なくとも」と記載されていることなど
に鑑みると,構成要件Cの1)ないし4)に相当する過程の前後又は間
に,これに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付加
にすぎず,これによって,本件発明の構成要件Cの充足が妨げられるも
のではない。
したがって,被告システムにおいて,構成要件Cの1)ないし4)の
過程の一部が初期フレームプログラムの実行開始に先行したとしても,
これらの過程全体は,初期フレームプログラムが「実行されることによ
り」行われているものと解される。
(イ)実施態様1
被告システムにおいては,利用者端末において,第2画面ソースの桃
色表示部分のプログラム(初期フレームプログラム)が実行されること
により,第2画面の赤枠部分の表示領域(第1フレーム)が確保される
とともに,赤枠部分に「コート」というリンクが表示され,また,青枠
内部に個別商品リストのリンクが表示される。
利用者が,第2画面の「コート」のリンクをクリックすると,利用者
端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの橙色表示部分のプロ
グラム(カテゴリーリストプログラム)を含むHTMLソースコードの
ダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される。これに基づ
き,アプリケーションサーバが,上記のプログラムを含むHTMLソー
スコードを作成し,これが,Webサーバから利用者端末に送信されて
実行されることで,第3画面の赤枠部分のカテゴリーリスト(商品カテ
ゴリーリスト)が表示される。
また,利用者が,第2画面の「コート」のリンクをクリックすると,
利用者端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの水色表示部分
のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTMLソースコード
のダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,アプリケー
ションサーバにおいて,商品検索システムから受領した「コート」のペ
ージのHTMLソースコード作成の基礎となる情報に基づき,これをH
TMLソースコードに変換するプログラム(PLUリストサーバプログ
ラム)を起動して,上記のプログラム(PLUリストプログラム)を含
むHTMLソースコードを生成し,これが,利用者端末に送信され,実
行されることで,第3画面の青枠部分の個別商品リスト(商品PLUリ
スト)が表示される。
なお,利用者が,第2画面の青枠部分の「袖口が折り返せる7分袖の
シンプルカットソー」というリンクをクリックすると,利用者端末から
Webサーバに対しその商品の詳細ページの要求が送信され,利用者端
末には第6画面(商品の明細情報)が表示されることから,被告システ
ムは,商品情報の入力ごとに,これに対応するPLU情報がWebサー
バに問い合わされる過程を備えている。
そして,利用者が,第3画面の青枠部分の「カラーコート【ネット限
定サイズあり】」というリンクをクリックすると,第4画面を経て第5
画面の商品明細情報が表示される。
したがって,被告システムの実施態様1は,構成要件A,C及びIに
記載された各プログラムの実行手順及び実行内容並びに第1ないし第3
フレームの表示過程を充足する。
(ウ)実施態様2
被告システムにおいては,利用者端末において第3画面ソースの紫色
表示部分のプログラム(初期フレームプログラム)が実行されることに
より,第3画面の赤枠部分及び青枠部分の表示領域が確保される。
利用者が第2画面の赤枠部分に表示されているカテゴリーのうち「コ
ート」のリンクをクリックすると,利用者端末からWebサーバに対し
て,第3画面ソースの橙色表示部分のプログラム(カテゴリーリストプ
ログラム)を含むHTMLソースコードのダウンロードを要求するHT
TPメッセージが送信される。これに基づき,アプリケーションサーバ
が,上記のプログラムを含むHTMLソースコードを作成し,これが,
Webサーバから利用者端末に送信されて実行されることで,第3画面
の赤枠部分のカテゴリーリスト(商品カテゴリーリスト)が表示される。
また,利用者が,第2画面の「コート」のリンクをクリックすると,
利用者端末からWebサーバに対して,第3画面ソースの水色表示部分
のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTMLソースコード
のダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され,アプリケー
ションサーバにおいて,商品検索システムから受領した「コート」のペ
ージのHTMLソースコード作成の基礎となる情報に基づき,これをH
TML文書に変換するプログラム(PLUリストサーバプログラム)を
起動して,上記のプログラム(PLUリストプログラム)を含むHTM
L文書を生成し,これが,Webサーバから利用者端末に送信され,実
行されることで,第3画面の青枠部分の個別商品リスト(商品PLUリ
スト)が表示される。
なお,利用者が,第3画面の青枠部分の「カラーコート【ネット限定
サイズあり】」というリンクをクリックすると,利用者端末からWeb
サーバに対しその商品の詳細ページの要求が送信され,利用者端末には
第4画面(商品の明細情報)が表示されることから,被告システムは,
商品情報の入力ごとに,これに対応するPLU情報がWebサーバに問
い合わされる過程を備えている。
そして,利用者が,第4画面の「カートに入れる」というボタンをク
リックすることで,第5画面の商品明細情報が表示される。
したがって,被告システムの実施態様2は,構成要件A,C及びIに
記載された各プログラムの実行手順及び実行内容並びに第1ないし第3
フレームの表示過程を充足する。
イ各フレームの表示過程について
(ア)文言侵害
本件発明の構成要件Iにおいては,第1ないし第3フレームの各表示
という流れが記載されているにとどまり,これらの各フレームがブラウ
ザの一つのウィンドウを分割して同時に表示されることは記載されてお
らず,本件明細書においても,そのようなことは示唆されていない。
したがって,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウ
を分割して同時に表示されないものであっても,構成要件A,C及びI
を充足し得るというべきである。
(イ)均等侵害
仮に,第1ないし第3フレームがブラウザの一つのウィンドウを分割
して同時に表示されるものであると解された場合であっても,①これら
が異なるウィンドウに表示されても,Webサーバ・クライアントシス
テム上においてPOS機能を実現することに影響はないこと,②Web
ブラウザ上に表示する情報を,同一ウィンドウの内部を区切って表示す
るか,異なるウィンドウとして表示するかは,デザイン上の問題でしか
ないこと,③これらの表示態様は,本件発明の効果の実現とは関係がな
く,その課題やその解決手段とも無関係であることなどに照らせば,被
告システムは,これらが同一のウィンドウに表示される場合と均等な構
成を有しているから,被告システムの制御方法は,本件特許の侵害を構
成する。
(被告の主張)
ア各プログラムの実行手順及び実行内容について
原告の前記解釈(原告の主張ア(ア))を前提としても,構成要件Cによ
れば,1)ないし4)の過程が,初期フレームプログラムの実行により初
めて実現されることとなるから,これらの過程の実現の前に,初期フレー
ムプログラムの実行開始がされると理解すべきこととなる。そして,「…
…することにより」は,その語義から,明確な因果関係を示すものと解さ
れるから,初期フレームプログラムの実行開始が先行し,カテゴリーリス
トプログラム及びPLUリストプログラムの実行の過程がそれに続くとい
う前後関係がなければならない。したがって,初期フレームプログラムは,
少なくとも,その実行開始に続いて,構成要件Cの1)ないし4)の過程
の処理が実行され,かつ,その前提として,クライアント装置に対する初
期フレームプログラムの送信が,1)ないし4)の過程に含まれるプログ
ラムの送信に先立ってされるという,処理の時系列性の要件を備えていな
ければならないと解される。
しかるに,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,実施態様1
の場合,第2画面の赤枠部分の領域の確保に関与するとされる第2画面ソ
ース中の桃色表示部分及びレディースファッションの項目の表示に関する
部分(原告は,21及び23頁の桃色表示部分で挟まれている部分を指す
との立場に立つと解される。)のプログラムは,いずれも第2画面ソース
で示される一つのプログラムに含まれており,これらの部分は同時に利用
者端末に送信されている。したがって,初期フレームプログラムとカテゴ
リーリストプログラムの送信のみに着目した場合であっても,処理の時系
列性の要件を充足しないことになる。また,実施態様2についても,原告
が初期フレームプログラムに対応すると述べる第3画面ソースの紫色表示
部分とカテゴリーリストプログラムに対応すると述べる橙色表示部分は,
同時に利用者端末に送信されているから,同様に,処理の時系列性の要件
を充足しない。
したがって,被告システムは,構成要件A及びCに記載された各プログ
ラムの実行手順及び実行内容を充足しない。
イ各フレームの表示過程について
(ア)文言侵害
構成要件Iにおいては,「商品カテゴリーに対応するPLUリストを
表示する部分(第1フレーム)」,「商品情報に対応したPLUリスト
を表示する部分(第2フレーム)」及び「注文商品明細を表示する部分
(第3フレーム)」の表示過程を経るという構成が含まれている。「フ
レーム」とは,Webブラウザの一つのウィンドウをいくつかに区切り,
それぞれに別々の内容を表示させるWebページの表現技法を意味する
ところ,本件明細書においても,第1ないし第3フレームについて,そ
れぞれ20%程度,30%程度及び50%程度の表示面積を確保する例
が挙げられており,これらがそれぞれ,カテゴリーリスト,PLUリス
ト及び注文商品明細を表示するものとされている。
また,本件明細書に引用されているチャート図においても,初期フレ
ームプログラムの実行開始によって,構成要件Cの1)ないし4)の過
程に関連するプログラムの実行が自動的にされることが想定されている。
したがって,初期フレームプログラムは,少なくとも,第1ないし第
3フレームを一つのブラウザ画面に表示するという,表示の一覧性の要
件を備えていなければならないと解される。
しかるに,被告システムにおいては,原告の主張を前提としたとして
も,前記1(3)イ及びウのとおり,実施態様1の場合,カテゴリーリスト
が表示される第2画面の赤枠部分の領域,PLUリストが表示される第
3画面の青枠部分の領域及び明細フォームが表示される第5画面の緑枠
部分の領域は,それぞれ別の画面に表示されている。また,実施態様2
の場合も,カテゴリーリスト及びPLUリストが表示される第3画面の
それぞれ赤枠部分の領域及び青枠部分の領域並びに明細フォームが表示
される第5画面の緑枠部分の領域は,それぞれ別の画面に表示されてい
る。
したがって,被告システムは,構成要件A,C及びIに記載された各
フレームの表示過程を充足しない。
(イ)均等侵害
第1ないし第3フレームを一つの表示画面で一覧することができるこ
とは,発明の本質部分であり,それが別の画面に表示される場合と作用
効果を同じくすると解することはできない。
したがって,被告システムについて均等侵害は成立しない。
(3)争点(3)(構成要件A及びCの「初期フレームプログラム」並びに構成要
件Iの各フレームの充足性)について
(原告の主張)
本件明細書中に,というコードを使用すべきことを示す記述は,存
在しないから,構成要件A,C及びIの「フレーム」は,HTMLのFRA
MEタグを指すものに限定されない。
第2画面,第3画面,第5画面及び第7画面の赤枠部分,青枠部分及び緑
枠部分の内容は,いずれも「 に挟まれたHTMLソースコードによって表示されているところ,上記の各
タグは,これにより挟まれた部分を一つの段落としてその表示領域を決定す
るものであるから,第1ないし第3フレームに該当する。
(被告の主張)
本件明細書の記載等からすれば,初期フレームプログラムは,HTMLで
記述された,FRAMEタグを用いてフレームの表示を制御するプログラム
と解すべきところ,被告システムは,HTML仕様書4.01に準拠し,
要素(で宣言され,で閉じるまでの一連の命令をい
う。)を用いてプログラムを記述しており,タグを使用していないか
ら,構成要件A及びCの「初期フレームプログラム」並びに構成要件Iの各
フレームの要件を充足しない。
(4)争点(4)(構成要件A及びCの「カテゴリーリストプログラム」及び「P
LUリストプログラム」の充足性)について
(原告の主張)
被告システムがカテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラム
を充足することは,前記(2)の原告の主張のとおりである。これに対し,被告
は,これらのプログラムの意義を後記のとおり限定的に解釈しようとするが,
この主張は争う。
(被告の主張)
本件明細書の記載等からすれば,カテゴリーリストプログラムは,少なく
とも,カテゴリーリストの選択内容の変化に応じて第1フレームのカテゴリ
ーリストの選択項目を変更し,第2フレームのPLUリストの選択項目を変
更することができるプログラムであると解され,また,PLUリストプログ
ラムは,これを実行すると,PLUリストの選択状態と数量入力フィールド
の入力状態の監視,スキャナ装置の入力状態の監視,それらの監視結果に基
づく第3フレームの明細フォームの記入状態の制御処理が実行されるような
プログラムであると解される。
しかるに,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,第1画面のカ
テゴリーから「レディースファッション」をクリックすると,あらかじめ用
意されたHTML文書を利用者に送信し,また,第2画面のカテゴリーから
「コート」をクリックした場合においても,所定のHTML文書をクライア
ント端末に送信するにすぎないから,被告システムは,構成要件A及びCの
「カテゴリーリストプログラム」及び「PLUリストプログラム」を充足し
ない。
(5)争点(5)(構成要件D及びGの「PLUマスタDB」並びに構成要件Hの
商品基礎情報の管理方法の充足性)について
(原告の主張)
被告システムのホストシステムデータベース及びNAS-OUTは,第3
画面,第4画面及び第6画面に表示されるPLUリストを生成する際に参照
されるデータベースであり,本件発明における「PLUマスタDB」に該当
する。PLUマスタDBがWebページを主に管理するサーバとは別のサー
バに保存されているとしても,被告システムにおいてPLUマスタDBに記
憶された商品基礎情報が表示されていることから明らかなとおり,Webサ
ーバとPLUマスタDBを保存するサーバとは,連動して被告システムの一
部を構成しているから,両者は一体となって本件発明の「サーバ装置」に該
当する。具体的には,前記1(3)ウのとおり,SEOサーバがホストシステム
データベースを参照することで,商品詳細ページが生成され,NAS-OU
Tに保存される。そして,NAS-OUTに保存された商品詳細ページは,
「商品検索システム」によるクローリングの対象となり,その結果,第3画
面の「コート」のページの基礎となるデータが抽出される。
したがって,被告システムは,構成要件D及びGの「PLUマスタDB」
並びに構成要件Hの商品基礎情報の管理方法を充足する。
(被告の主張)
構成要件Dには「サーバ装置のPLUマスタDB」とあり,構成要件Gに
は「PLUマスタDBが前記サーバ装置のみに設けられていて」とあり,構
成要件Hには「前記すべての商品基礎情報が前記サーバ装置のみによって管
理される」とあるところ,被告システムにおいては,前記1(3)ウのとおり,
商品に関する基礎情報は,Webサーバとは別のサーバに保存されているか
ら,PLUマスタDBはWebサーバ装置において管理されておらず,これ
らの構成要件を充足しない。
(6)争点(6)(構成要件Fの「Webブラウザのみ」の充足性)について
(原告の主張)
被告システムにおいては,利用者が商品を購入するに当たり,利用者端末
に特殊な装置は必要ではなく,Webブラウザがあれば足りることから,
「Webブラウザのみで」POS機能が実現されており,構成要件Fを充足
する。
(被告の主張)
被告システムにおいては,利用者へのメール送信及び到着によって手続が
完了し,この時点で,被告システムを経由せずに在庫情報が確定的に更新さ
れることから,構成要件Fの「WebブラウザのみでPOS機能が実現され
るWeb-POSシステム」を充足しない。
(7)争点(7)(構成要件Gの「メーカー」の充足性)について
(原告の主張)
ア文言侵害
被告は,被告システムにおいて管理される商品の基礎情報にメーカー名
が含まれていないと主張するが,構成要件Gの記載からも,PLUマスタ
DB中の商品基礎情報にメーカー名が含まれていれば足りると解すべきと
ころ,被告は,商品名の一部としてメーカー名が入力されることを認めて
いる。また,第2画面及び第3画面の左側に「ブランドを絞り込む」との
記載があることから,被告システムにおいては,「メーカー」に関する商
品の情報が商品基礎情報として管理されているというべきである。
さらに,構成要件Gの「メーカー」は,商品の製造元としてのメーカー
名というように狭く解されるべきではなく,各商品の供給元(卸問屋,メ
ーカー等)と広く解されるべきものであり,被告システムにおいても,こ
の程度の情報は各商品について管理されているから,構成要件Gの「メー
カー」を充足する。
イ均等侵害
仮に,構成要件Gの「メーカー」が商品の製造元としてのメーカー名と
解されたとしても,被告システムがこれに代えて商品の供給元をPLUマ
スタDBに記憶している場合に,POS機能を実現する上で支障があるも
のではなく,また,そのような置換は容易であり,かつ,本件発明の本質
的部分を構成するものともいえない。したがって,被告システムは,製造
元としてのメーカー名が商品基礎情報としてPLUマスタDBに記憶され
ていることと均等な構成を有しているから,被告システムの制御方法は,
本件特許の侵害を構成する。
(被告の主張)
ア文言侵害
被告システムにおいては,一部の商品を除き,取扱商品の基礎情報にメ
ーカー名は含まれておらず,それが入力されている商品も,利用者が商品
を参照した際の利便のために入力されるものにすぎないから,データ項目
としての「メーカー」情報が管理されているということはできず,構成要
件Gの「メーカー」を充足しない。
イ均等侵害
原告の均等侵害の主張は争う。
(8)争点(8)(損害額)について
(原告の主張)
原告は,平成23年1月17日以降,日本国内において本件特許権に係る
専用実施権を有しており,被告システムの使用により専用実施権を侵害され
ている。被告は,被告システムを使用した被告サービスにより,平成22年
に436億円の売上を計上しており,平成23年に入ってからも,同額ない
しそれ以上の売上を計上しているものと考えられる。したがって,原告の損
害は,同年1月17日以降,本件提訴日までの158日間に得られた売上の
3%に相当する実施料相当額である5億6620万円(計算式:436億円
×3%÷365日×158日)を下らない。
また,原告は,本件訴訟追行に当たって弁護士費用150万円を支出した。
したがって,原告の損害額は,5億6770万円を下らず,その一部とし
て,1億円を請求する。
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1争点(2)ア(構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び
実行内容に関する充足性)について
まず,争点(2)アから判断する。
(1)特許請求の範囲の解釈
ア本件発明の構成要件Cの柱書及び1)ないし3)においては,カテゴリ
ーリストプログラム及びPLUリストプログラムの送信及び実行が,①サ
ーバ装置からクライアント装置に対して初期フレームプログラムが送信さ
れる(構成要件Cの柱書き前段),②送信された初期フレームプログラム
がクライアント装置において実行される(同後段),③クライアント装置
からサーバ装置に対して,カテゴリーリストプログラムのダウンロードを
要求するHTTPメッセージが送信される(同1)),④この要求に基づ
き,Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリスト
プログラムを読み出す(同2)前段),⑤サーバ装置からクライアント装
置に対して,上記カテゴリーリストプログラムが送信される(同2)後
段),⑥クライアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバ
プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると,サーバ
装置が,PLUリストサーバプログラムを起動して,PLUリストプログ
ラムを生成する(同3)前段),⑦クライアント装置に対して,PLUリ
ストプログラムが送信される(同3)後段)ことが記載されている。そし
て,上記①及び②の過程と,③ないし⑦の過程とが,「ことにより」とい
う語により結び付けられている。
また,構成要件Iには,「タッチパネル,キーボード,またはマウスか
らなる入力手段を有する表示装置において,商品カテゴリーリストを表示
する部分(第1フレーム)の表示過程と,該カテゴリー内の商品名が表示
される,商品PLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程」
と記載されているところ,ここには,「初期フレームプログラム」に用い
られているのと同じ「フレーム」という語が用いられていることから,商
品カテゴリーリストを表示する第1フレームは,カテゴリーリストが上記
③ないし⑤の過程を経て利用者端末の表示装置に表示されるようにするた
めのフレームであり,また,商品PLUリストを表示する第2フレームは,
PLUリストが上記⑥及び⑦の過程を経て利用者端末の表示装置に表示さ
れるようにするためのフレームであると解される。そうすると,初期フレ
ームプログラムは,このようなカテゴリーリスト及びPLUリストを表示
する枠ないし領域としてのフレームを表示するために初期の段階で作動す
るプログラムであるということができる。
さらに,ブラウザの機能の一つである「フレーム」は,一般的には,ウ
ィンドウをいくつかの領域に分割し,それぞれに別の内容を表示させるW
ebページの表現技法であるところ(乙20,21),フレームの中に文
字等の情報を表示するためには,このフレームをターゲットとして,文字
等の情報を表示するためのプログラムを実行する必要があることが認めら
れる。
これらのことに,日本語において,「ことにより」という語は,一般的
に,物事の間に時間的な前後関係のみならず因果関係があることを意味す
る語として用いられていることを併せ考慮すれば,構成要件Iにいう商品
カテゴリーリスト及び商品PLUリストについては,それぞれ次のような
手順を経て表示されたカテゴリーリスト及びPLUリストを意味し,また,
構成要件Cにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログラム
及びPLUリストプログラムも,このような手順を経てカテゴリーリスト
及びPLUリストを表示させるようなプログラムを意味するものと解する
のが相当である。
すなわち,商品カテゴリーリストについては,上記①及び②のとおりの
手順で初期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装
置に第1フレームの表示領域が確保され,この第1フレームの表示領域を
ターゲットとして,③ないし⑤のとおりの手順でカテゴリーリストプログ
ラムが実行されることにより,第1フレーム内に表示されたカテゴリーリ
ストを意味するものと解するのが相当である。
また,商品PLUリストについては,上記①及び②のとおりの手順で初
期フレームプログラムが実行されることにより,クライアント装置に第2
フレームの表示領域が確保され,この第2フレームの表示領域をターゲッ
トとして,⑥及び⑦のとおりの手順でPLUリストプログラムが実行され
ることにより,第2フレーム内に表示されたPLUリストを意味するもの
と解するのが相当である。
イ上記の解釈は,本件明細書及び図面を検討することによっても裏付けら
れる。
(ア)すなわち,本件明細書及び図面には,本件発明を実施するための最
良の形態として,次のとおりの記載がある(引用に当たり,記載を一部
省略し,又は表現を改めた部分がある。)。
(初期フレームプログラムの動作)
【0042】
まず,利用者が,クライアント装置において,表示装置の表示画面に
表示されている所定のアイコンの位置でタッチパネルにタッチすること
によりWebブラウザプログラムを起動すると,サーバ装置のネットワ
ークアドレスを示すURLが自動的に指定され,CPUからネットワー
クインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等を介してサ
ーバ装置に,後述する図3の動作フローチャートで示される初期フレー
ムプログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され
る。
【0043】
サーバ装置のCPUが実行する周知のWebサーバプログラムは,ネ
ットワークインタフェース部を介して上記要求メッセージを受信すると,
HDDからHTML形式の初期フレームプログラムを読み出し,それを
ネットワークインタフェース部及びそれに接続されるインターネット等
を介してクライアント装置に送信する。
【0044】
クライアント装置のCPUが実行する周知のWebブラウザプログラ
ムは,ネットワークインタフェース部を介して上記初期フレームプログ
ラムを受信すると,それを実行する。
【0045】
図3は,初期フレームプログラムの動作を示す動作フローチャートで
ある。
まず,図3のステップ301において,表示装置に表示される表示画
面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下
方向に例えば20%程度の表示面積を有する最上段の第1フレームが確
保されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示さ
図3
れるカテゴリーリストプログラムのダウンロードを要求するHTTPメ
ッセージが送信される。
【0046】
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記要求メッセージを受信
すると,HDDからHTML形式のカテゴリーリストプログラムを読み
出し,それをクライアント装置に送信する。
【0047】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記カテゴリーリ
ストプログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第1フレ
ームをターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,
表示画面の第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリー
リストが表示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応
答して後述する第2フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実
図17
行される。
【0048】
次に,図3のステップ302において,表示装置に表示される表示画
面内のWebブラウザウィンドウ上で,図17に示されるように,上下
方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレームが確保
されるとともに,サーバ装置に,後述する動作フローチャートで示され
るPLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージ
が送信される。
【0049】
サーバ装置のWebサーバプログラムは,上記指示メッセージを受信
すると,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読み出し,
それを実行する。このプログラムは,HDDに記憶されているPLUマ
スタDB上の全レコードを読み出して,それらのレコード情報が含まれ
図18
るPLUリストプログラムを生成し,それをクライアント装置に送信す
る。
【0050】
クライアント装置のWebブラウザプログラムは,上記PLUリスト
プログラムを受信すると,このプログラムを,表示画面の第2フレーム
をターゲットとして実行する。この結果,図18に示されるように,表
示画面の第2フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見
出し“数量”と,数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリ
ストの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装
置の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく後述する第3フレー
ムの明細フォームの記入状態の制御処理が実行される。
(カテゴリーリストプログラムの動作)
【0053】
図4(省略)は,前述した図3のステップ301において,サーバ装
置からダウンロードされクライアント装置において第1フレームをター
ゲットとして実行されるカテゴリーリストプログラムの動作を示す動作
フローチャートである。
【0054】
このプログラムの実行により,図18に示されるように,表示画面の
第1フレームに,見出し“商品カテゴリー”と,カテゴリーリストが表
示されるとともに,カテゴリーリストの選択状態の変化に応答して第2
フレームのPLUリストの表示状態の制御処理が実行される。
(PLUリストプログラムの動作)
【0072】
図6(省略)は,上述の送信処理に基づいて,サーバ装置からダウン
ロードされクライアント装置において実行されるPLUリストプログラ
ムの動作を示す動作フローチャートである。
【0073】
図3のステップ302の説明で前述したように,このプログラムは,
表示画面のWebブラウザウィンドウ上の第2フレームをターゲットと
して実行される。この結果,図18に示されるように,表示画面の第2
フレームに,見出し“注文商品”と,PLUリストと,見出し“数量”
と,それに続く数量入力フィールドが表示されるとともに,PLUリス
トの選択状態と数量入力フィールドの入力状態の監視と,スキャナ装置
の入力状態の監視と,それらの監視結果に基づく第3フレームの明細フ
ォームの記入状態の制御処理が実行される。
(イ)以上によれば,本件明細書に記載されている実施の形態の構成の下
では,前記アに説示したとおりの手順で各プログラムが実行され,その
結果,第1及び第2フレームにそれぞれ商品カテゴリーリスト及び商品
PLUリストが表示されることが明らかである。
すなわち,まず,クライアント装置からサーバ装置に初期フレームプ
ログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され
(【0042】),これを受けたサーバ装置は,HTML形式の初期フ
レームプログラムを読み出し,これをクライアント装置に送信し(【0
043】,前記アの①の過程),クライアント装置においてこれを実行
する(【0044】,同②の過程)。この時点でクライアントの表示装
置に表示されるのは,上下方向に例えば20%程度の表示面積を有する
最上段の第1フレームの枠のみであり,その内容はブランクの状態とな
っている(【0045】,図17)。
そして,クライアント装置からサーバ装置に,カテゴリーリストプロ
グラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信され(【0
045】,同③の過程),これを受信したサーバ装置は,HDDからH
TML形式のカテゴリーリストプログラムを読み出し(同④の過程),
これをクライアント装置に送信する(【0046】,同⑤の過程)。ク
ライアント装置のWebブラウザプログラムは,受信したカテゴリーリ
ストプログラムを,表示画面の第1フレームをターゲットとして実行し,
その結果,表示画面の第1フレームに商品カテゴリーリストが表示され
る(【0047】,【0053】,【0054】,図18)。
他方,表示装置に表示される表示画面内のWebブラウザウィンドウ
上で,上下方向に例えば30%程度の表示面積を有する中段の第2フレ
ームが確保されるが,この時点では,その内容はブランクの状態となっ
ている(【0048】,図17)。そして,クライアント装置からサー
バ装置に,PLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメ
ッセージが送信されると(【0048】),サーバ装置のWebサーバ
プログラムは,HDDからメモリにPLUリストサーバプログラムを読
み出し,これを実行し,HDDに記憶されているPLUマスタDB上の
全レコードを読み出して,これらのレコード情報が含まれるPLUリス
トプログラムを生成し(【0049】,同⑥の過程),これをクライア
ント装置に送信する(【0049】,同⑦の過程)。クライアント装置
のWebブラウザプログラムは,受信したPLUリストプログラムを,
表示画面の第2フレームをターゲットとして実行し,その結果,表示画
面の第2フレームに商品PLUリストが表示される(【0050】,
【0073】,図18)。
ウ以上のとおり,本件発明にいう商品カテゴリーリスト及び商品PLU
リストは,前記アに説示したとおりの意味に解するのが相当である。
したがって,クライアント装置の表示画面に,形の上でカテゴリーリ
ストや個別商品のPLUリストが表示されるものであっても,上記ア及
びイの過程を経て表示されたとはいえないものは,本件発明にいう商品
カテゴリーリスト又は商品PLUリストには当たらず,また,このよう
なカテゴリーリストやPLUリストを表示するためのプログラムを構成
要件A及びCにいう初期フレームプログラム,カテゴリーリストプログ
ラム又はPLUリストプログラムに当たるということもできないものと
解される。
(2)被告システムの実施態様1について
以上の検討を踏まえ,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C及び
Iに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するか否かにつ
いて検討する。
アまず,初期フレームプログラムとカテゴリーリストプログラムの実行過
程について検討する。
前記第2の1(3)イによれば,被告システムのトップページである第1画
面には,ファッション,妊娠出産・ベビー・キッズ,ディズニー等の大カ
テゴリーのカテゴリーリストが表示されており,この大カテゴリーの下に
は,例えば,ファッションであれば,レディースファッション,女性下
着・インナー,靴・バッグ・アクセサリー等の中カテゴリーが表示されて
いる。そして,このうち,「レディースファッション」をクリックすると,
第2画面に移行する。
第2画面のカテゴリー領域のトップには,中カテゴリーである「レディ
ースファッション」という表示がされ,その下に,コート,ジャケット・
ブルゾン,ワンピース・チュニック等の小カテゴリーが表示されている
(第2画面の赤枠部分)。このカテゴリーリストを表示するソースコード
は,第2画面ソースの21頁のから23頁の
までの部分(赤色表示部分)に相当する。なお,「」と
」というタグは,これにより挟まれた部分をひとまとまりの段落
として表示するものである(乙30)。このひとまとまりの段落が表示さ
れる領域の位置及び幅がどのようなプログラムにより指定されているかは,
定かではないものの,第2画面ソース中にはという
スタイルシートファイルを参照するプログラムが多用されていることから
(例えば,1頁の14行目以下参照),第2画面ソースのプログラムの実
行過程において,被告サーバ群中のスタイルシートファイルが参照され,
上記の領域の位置及び幅が確保されるとともにカテゴリーリストが表示さ
れるものと推認される(甲14参照)。
第2画面において,小カテゴリーの「コート」をクリックすると,第3
画面に移行する。その左側のカテゴリー領域のトップには,「レディース
ファッション」及び「コート」が表示され,その下に,最小カテゴリーの
トレンチコート,ステンカラーコート,ノーカラー・スタンドカラーコー
ト等が表示されている(第3画面の赤枠部分)。このカテゴリーリストを
表示するソースコードは,第3画面ソースの59頁の class="categorynav01">から60頁のまでの部分(紫色及び橙色表
示部分)に相当する。また,上記と同様に(例えば,3頁の末尾から4行
目以下のプログラムを参照),第3画面ソースのプログラムの実行過程に
おいても,被告サーバ群中のスタイルシートファイルが参照され,上記の
領域の位置及び幅が確保されるとともにカテゴリーリストが表示されるも
のと推認される。
これらの第2画面及び第3画面を表示するHTML文書は,前記第2の
1(3)ウのとおり,いずれも,被告システムにおけるWebサーバが,利用
者からの送信要求を受け,上記のカテゴリーに係るソースコードを含む一
つのHTML文書をNAS-OUTから読み出して送信し,これらが利用
者端末のブラウザによりその表示画面に表示されるものである。そして,
これらの各一つのHTML文書の実行過程において,利用者端末の表示装
置にカテゴリー領域が確保されるとともに,この領域をターゲットとして,
それぞれのカテゴリーリストが表示されるものと認められる。
すなわち,第2画面のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第2画
面のカテゴリーリストを表示するためのプログラムであって,第3画面の
カテゴリーリストを表示するためのプログラムではない。また,第3画面
のカテゴリー領域を確保するプログラムは,第3画面のカテゴリーリスト
を表示するためのプログラムであって,第2画面のカテゴリー領域を確保
するプログラムを使用しているものではない。
そうすると,被告システムにおいては,第2画面のカテゴリーリストの
表示領域を確保するプログラムと,これにより確保された領域をターゲッ
トとして上記カテゴリーリストを表示するプログラムが,一つのHTML
文書の表示過程において,論理的な前後関係はあり得るとしても,同時に
実行されているということができる。第3画面のカテゴリーリストにおい
ても,これと同様である。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フ
レームプログラムがクライアント装置において実行されて,カテゴリーリ
ストの表示領域が表示装置に第1フレームとして表示された上で,引き続
き,クライアント装置からサーバ装置に対し,第1フレームをターゲット
としてカテゴリーリストを表示するためのカテゴリーリストプログラムを
送信するよう要求するHTTPメッセージが送信され(同③),これを受
けてサーバ装置が読み出したカテゴリーリストプログラムがクライアント
装置に送信され(同④及び⑤),これが実行された結果,カテゴリーリス
トがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品カテゴリーリスト
が表示されるというものである。被告システムは,上記のとおり,これに
対応する過程を欠くものであるから,被告システムにおいて利用者端末に
表示される第2画面及び第3画面のカテゴリーリストは,いずれも,構成
要件A,C及びIに記載されたプログラムの実行手順及び実行内容とは異
なる手順を経て表示されたといわざるを得ないものである。
したがって,第2画面及び第3画面の赤枠部分に表示された各カテゴリ
ーリストが,構成要件Iにいう商品カテゴリーリストに当たるということ
はできず,被告システムにおいて,構成要件A及びCにいう初期フレーム
プログラム及びカテゴリーリストプログラムが実行されたということもで
きないと解される。
イ次に,初期フレームプログラムとPLUリストプログラムの実行過程に
ついて検討する。
実施態様1においては,第2画面の右側の領域(青枠部分)には,「毎
週更新!新入荷&イチオシ商品」として,「袖口が折り返せる7分袖のシ
ンプルカットソー」等10件の商品イメージ及びその説明リンクが表示さ
れている(第2画面の青枠部分)。この商品リストを表示するソースコー
ドは,第2画面ソースの4頁の id="newarrival">から6頁のまでの部分(赤色表示部分)に相当す
る。個別商品リストの表示領域の位置及び幅は,上記アと同様に,被告サ
ーバ群中のスタイルシートファイルと関連付けられて指定されているもの
と推認される。
また,第3画面の右側領域(青枠部分)には,「コート」のカテゴリー
で選択された商品として,「カラーコート【ネット限定サイズあり】」等
40件の商品イメージ及びその説明リンクが表示されている。この商品リ
ストを表示するソースコードは,第3画面ソースの8頁の clearmt20">から55頁のまでの部分(紫色及び青色表示部分)に
相当する。個別商品リストの表示領域の位置及び幅は,上記と同様に,被
告サーバ群中のスタイルシートファイルと関連付けられて指定されている
ものと推認される。
これらの第2画面及び第3画面を表示するHTML文書は,上記アにお
いて検討した各HTML文書と同一の文書であるから,上記アと同様,い
ずれも,被告システムにおけるWebサーバが,利用者による送信要求を
受け,上記のカテゴリーに係るソースコードを含む一つのHTML文書を
NAS-OUTから読み出して送信し,これが利用者端末のブラウザによ
りその表示画面に表示されるものである。
したがって,上記アと同様に,第2画面及び第3画面の個別商品表示領
域は,いずれも,それぞれ,これらの画面を表示する一つのHTML文書
の実行過程において確保されるとともに,この領域をターゲットとして,
それぞれの個別商品リストが表示されるものである。
すなわち,第2画面の個別商品領域を確保するプログラムは,第3画面
の個別商品リストを表示するためのプログラムではなく,第3画面の個別
商品領域を確保するプログラムは第2画面の個別商品領域を確保するプロ
グラムを使用しているものではない。
これに対し,本件発明においては,まず,前記(1)アの①及び②の初期フ
レームプログラムがクライアント装置において実行されて,個別商品の表
示領域が表示装置に第2フレームとして表示された上で,引き続き,クラ
イアント装置からサーバ装置に対して,PLUリストサーバプログラムの
実行を指示するHTTPメッセージが送信され(同⑥),上記サーバ装置
がPLUリストサーバプログラムを起動して生成したPLUリストプログ
ラムがクライアント装置に対し送信され(同⑦),これが実行された結果,
個別商品リストがWebブラウザに表示されるという過程を経て商品PL
Uリストが表示されるというものであるから,被告システムにおける個別
商品リストの表示過程は,これとは異なるものといわざるを得ない。
したがって,第2画面及び第3画面の青枠部分に表示された各個別商品
リストが,構成要件Iにいう商品PLUリストに当たるということはでき
ず,被告システムにおいて,構成要件A及びCにいう初期フレームプログ
ラム及びPLUリストプログラムが実行されたということもできないと解
される。
ウよって,被告システムの実施態様1は,構成要件A,C及びIに記載さ
れた各プログラムの実行手順及び実行内容を充足するとはいえないものと
解するのが相当である。
エこれに対し,原告は,構成要件Cの「実行されることにより」という文
言は,構成要件Cの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべ
きであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプロ
グラムのダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,
また,上記の文言は,因果関係を示すものでもなく,構成要件Cの1)な
いし4)の過程が初期フレームプログラムの実行なしには行われないとい
う程度の関係を示すものにすぎないと解すべきであると主張する。
しかしながら,構成要件Cにいう「より」は,因果関係等を意味する自
動詞「よる」の連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられる
ものであるから,構成要件Cの「ことにより」が,構成要件Cの1)ない
し3)の「送信される」及び4)の「問い合わされる」の各動詞にそれぞ
れ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根
拠は見当たらない。
また,仮に,構成要件Cの「実行されることにより」を原告の主張のよ
うに解したとしても,前記ア及びイのとおり,被告システムにおいては,
カテゴリーリスト及び個別商品リストの表示領域を確保するプログラムと,
その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプロ
グラムの実行過程において同時に実行されており,構成要件Cに記載され
た手順を順次実行するという形では実行されていないのであるから,いず
れにせよ,上記ウの結論を左右するには足りないというべきである。
オまた,原告は,構成要件Cの柱書に「少なくとも」と記載されているこ
となどに鑑みると,構成要件Cの1)ないし4)に相当する過程の前後又
は間に,これに対応しない過程が存在したとしても,それは,いわゆる付
加にすぎず,これによって,本件発明の構成要件Cの充足が妨げられるも
のではないとも主張する。この主張は,第2画面の赤枠部分及び青枠部分
が,初期フレームプログラムによって確保された,それぞれ第1フレーム
及び第2フレームであり,これをターゲットとしてカテゴリーリストプロ
グラム又はPLUリストプログラムが実行された結果,第3画面のそれぞ
れ赤枠部分のカテゴリーリスト及び青枠部分の個別商品リストが表示され
たのであって,第2画面の赤枠部分に表示されているカテゴリーリスト及
び青枠部分に表示されている個別商品リストは,いずれも,本件発明との
関係では無意味な付加的記載にすぎないことをいうものと解し得る。
そこで判断すると,前記ア及びイのとおり,第2画面のカテゴリー領域
又は個別商品領域を確保するプログラムは,第2画面のカテゴリーリスト
又は個別商品リストを表示するためのプログラムであって,第3画面のカ
テゴリーリスト又は個別商品リストを表示するためのプログラムではない。
また,第3画面のカテゴリー領域又は個別商品領域を確保するプログラム
は,第3画面のカテゴリーリスト又は個別商品リストを表示するためのプ
ログラムであって,第2画面のカテゴリー領域又は個別商品領域を確保す
るプログラムを使用しているものではない。したがって,第3画面のカテ
ゴリーリスト又は個別商品リストは,第2画面において確保されたカテゴ
リー領域又は個別商品領域をターゲットとして,構成要件Cに記載された
手順どおりに表示されたものということはできないと解される。
原告の主張は,第2画面及び第3画面を表示させているプログラムの意
味及び内容を考慮することなく,構成要件Cに表面上適合するよう,その
記載を恣意的に結び付けたものにすぎず,失当である。
カよって,原告の主張はいずれも理由がなく,被告システムの実施態様1
が,構成要件A,C及びIに記載された各プログラムの実行手順及び実行
内容を充足すると認めることはできない。
(3)被告システムの実施態様2について
原告は,被告システムにおいては,初期フレームプログラムの実行により
第3画面においてカテゴリーの表示領域及び個別商品の表示領域を確保した
上で,いったん第2画面に戻り,この赤枠部分の「コート」のリンクをクリ
ックすると,再び第3画面が表示され,ここに商品カテゴリーリスト及び商
品PLUリストが表示されるという過程をもって,構成要件A,C及びIに
記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると主張する。
しかしながら,前記(2)ア及びイに説示したとおり,第3画面に表示されて
いるカテゴリーリスト及び個別商品リスト並びにこれらの表示領域は,第3
画面ソースという一つのHTML文書の実行過程において同時に表示される
ものであるから,いったん第2画面に戻り,再度第3画面を表示させたとこ
ろで,同様のプログラムの実行過程が繰り返されることになるにすぎず,初
期フレームプログラムによってこれらの表示領域が確保された上で,これを
ターゲットとして,構成要件Cに記載された手順どおりに上記の各リストが
表示されたことになるものではない。
原告の主張は,第2画面及び第3画面のうち,表面上自己の主張に沿う部
分を恣意的に結び付けたものにすぎず,失当である。
したがって,被告システムの実施態様2が,構成要件A,C及びIに記載
された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはでき
ない。
2結論
以上によれば,被告システムがそもそもWeb-POSシステムに関するも
のであるかなどその余の争点につき判断するまでもなく,本件請求は理由がな
いから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用
して主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官長谷川浩二
裁判官清野正彦
裁判官植田裕紀久



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