弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を左のとおり変更する。
     天草税務署長が被控訴人の昭和二十八年度分法人税に関してなした被控
訴人の同年度の所得額を金七十四万五千百円とする再更正決定のうち金五十七万九
千六百円を超える部分及び同二十九年度分法人税に関してなした被控訴人の同年度
の所得額を金九十六万七千四百円とする更正決定のうち金九十万九千六百五十円を
超える部分を取消す。
     被控訴人その余の請求を棄却する。
     第一、二審の訴訟費用はこれを五分し、その一を被控訴人、その余を控
訴人の各負担とする。
         事    実
 当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用及び認否は被控訴代理人において
 (一) 訴外Aが本件係争年度において使用人兼務役員であり、被控訴会社が同
人に支給した給与が使用人給料及び賞与であつたという控訴人の主張事実は、甲号
各証を綜合して認められる次の事実に徴しても明白である。
 (イ) 重役には毎月定額の報酬が支給されているのに、右訴外人には基本給の
外に時間外勤務手当が支結されている。
 (ロ) 同訴外人には会社利益の有無に拘らず賞与が支給されている。
 (ハ) 同人の昇給は他の使用人と同時に略同率で定期的に行われている。
 (ニ) 役員賞与としては第一期(昭和二十四年度)及び第四期(同二十七年
度)において平取締役なみの報酬だけを第二・三期(同二十五、六年度)において
平取締役なみの賞与だけを夫々支給しているが、その後株主総会において同人に対
しては使用人給与として給料及び賞与を支給しているのであるから、これに対し役
員報酬及び賞与又はそのいづれかを支給することは給与の二重支給となるとの意見
があつたので、天草税務署長から更正を受けた第五期(昭和二十八年度)及び第六
期(同二十九年度)以降は全く支給を打切つている。
 (二) Aは被控訴会社に入社当時からゴム製品の仕入販売等に関する事務全
般、荷受、出荷等の業務に従事しているものであるが、これらの業務内容は業務担
当取締役の資格においてこれをなしているのではなく、代表取締役に従属する補助
者として、すなわち使用人として事務を処理したものにすぎない。
 元来部長とか工場長とかが同時に常務取締役であるような場合には、使用人たる
地位において業務に当つていると見るべきで、常務取締役というのは文字通り儀礼
的名称にすぎない。
 Aは支配人的立場で代表取締役を補助する使用人として事務を処理したものであ
るから、同人に支給された本件給料及び賞与は当然会社の損金として計上さるべき
ものである(大阪高裁昭和三一年(ネ)第九九八号事件判決)。
 (三) Aがしばしば重役会議に出席していたことは事実であるけれども、同人
は単なる書記係として会議に列席し、議事録の作成等の事務を処理していたもの
で、職員賞与支給額決定等の場合には常に退席を命ぜられていたものであつて、そ
の出席率の多少をもつて直ちに同人の会社における比重を量ることは早計である。
 (四) Aが被控訴会社に入社したのは同人の経験を買われ、使用人として入社
したものであり、ただその優遇策として三十株を所有させ、儀礼的に取締役の名称
を与えたもので、同人の実兄Bの持株二十株とは何等の関係もなく、また実兄の代
りに経営参加を求められたものでもない。 と陳述し、証拠として甲第八号証を提
出し、乙第四号証ないし第八号証の各成立を認め、控訴代理人において
 (一) 被控訴会社は昭和二十四年十月設立せられ、Aの兄Bはその発起人の一
人であつたが、たまたま役員にゴム製品販売の経験者がいなかつたので、Aがその
経験を買われ、経営参加を求められたので、Bが自ら参加する代りに弟Aに会社の
株を所有させ、被控訴会社の取締役としたのである。
 それ以来Aは会社の販売責任者として着々その成績をあげたので、経営手腕を認
められて昭和二十六年八月常務取締役に、昭和二十九年七月には専務取締役に選任
され、また翌三十年二月には会社債務の担保として私財を提供している。
 (二) 原判決によれば、現行商法の下では、具体的な会社業務の執行に従事す
ることは代表取締役以外の一般の取締役の任務外のことであり、Aは係争年度にお
いて業務執行権を有していなかつたから、同人は使用人兼務役員であつたと認める
のが当然である、というのである。
 しかしながら、Aが取締役として業務執行の権限を有していなかつたとは、しか
く簡単には断定することができない。Aは係争事業年度において代表取締役の資格
を有していなかつた。しかしながら株式会社の対内的業務執行の権限は、ひとり代
表取締役に限らず一般の取締役でも常務担当取締役として取締役会から包括的に事
務処理の指定を受け、または個々的に事務処理の指定を受けた場合には、みな斉し
く業務執行の権限を有することとなるのである。Aは昭和二十四年八月から取締役
の地位にあつたのであるが、当時の旧商法では、取締役はみな業務執行の権限を有
するのであるから、同人は新法施行までは取締役の資格において会社の業務執行と
して販売業務を担当していたのである。その後現行商法が施行されたのであるが、
その前後を通じ同人の業務内容、職制等において何等の変化もなかつた。すなわ
ち、あらためて取締役である同人に支配人、部長等の使用人としての職名を兼務さ
せたり、補助者として代表取締役の業務執行の補助をさせることを明確にしたよう
な事実もない。そうだとすれば同人は取締役会において特に包括的に従前の仕事を
担当業務として指定され、従つて同人はこれまでどおり取締役の資格において販売
業務を担当しているものといわざるをえない。
 このように考えることが、株式会社ことに被控訴会社のような小規模の会社の実
態に副う所以でもある。
 もつともAは荷受、出荷等の些細な仕事をも担当していたようであるが、被控訴
会社のような小規模な会社で使用人の少い会社では当然ありうることがらであつ
て、このことをもつて前記結論を左右することはできない。
 (三) Aは昭和二十九年七月専務取締役に選任せられると同時に昇給している
のであるが、この時昇給したのは代表取締役Cだけであつて、使用人は一人も昇給
していない。これもAが使用人でない証拠である。
 (四) 被控訴会社は係争事業年度の翌年度からAに役員報酬を支給している。
 と陳述し、証拠として乙第四号証の一ないし六、第五号証の一ないし五、第六号
証の一ないし七、第七号証の一ないし四、第八号証を提出し、甲第八号証の成立を
認めた外、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
         理    由
 当裁判所の判断は左記のとおり補充訂正する外、原判決理由の記載と同一であ
る。
 改正(昭和二十五年法律第百六十七号同二十六年七月一日より施行)前の商法で
は、株式会社の業務執行は定款に別段の定がないときは取締役の過半数をもつて決
せられ(第二六〇条)、定款又は株主総会の決議若くは定款の規定に基く取締役の
互選で代表取締役を定めた場合を除き取締役は各自会社を代表する権限(従つてま
た業務執行権)をもつていた(第二六一条)のであるが、実際上は多く定款や慣習
で取締役会又は重役会の制度を認めると同時に社長、専務取締役、常務取締役等の
代表取締役を選定して(もつとも社長だけ、或は社長と専務取締役だけが代表権を
もつ場合も少くない)これに日常的な業務の専決権(ただし数人の取締役が日常の
業務執行に当る場合、その権限は必ずしも同一ではない場合が多い)を与える事例
が多く、このような制度をもつた会社に於ける、いわゆる業務担当役員以外の取締
役は、原則として取締役会又は重役会の構成員として決議又は決定に参加する以外
には実際上の会社業務にたずさわることがないのが通例である。
 前記商法の改正によつて会社の業務執行制度は、株主総会の権限縮少、業務執行
機関としての取締役会の地位の確立(第二六〇条)取締役の各自代表規定の廃止と
取締役会の決議による代表取締役選任の強制(第二六一条)等立法上は相当ぎわだ
つた変革を見たけれども、前叙のような重役会や代表取締役制度をもつた会社では
商法改正後においても日常の業務は代表取締役と、場合によりこれを補佐する取締
総会の明示又は黙示の指定によつて業務執行権を与えられた代表権限のない業務担
当取締役とがこれを執行するというやりかたで商法改正前と殆んど変らぬ態勢の執
行機関をもつている事例が少くない。
 而して成立に争のない甲第七号証の一ないし六、甲第八号証、乙第一、二号証に
口頭弁論の全趣旨を綜合すれば、被控訴会社では設立以来監査役等を含めた重役会
(これに関する定款の定めがあるかどうかは不明)において会社の重要な業務につ
いて協議決定をなし、日常業務の執行は代表取締役たる社長(昭和二十九年七月ま
でD、それ以後はC)とこれを補佐する一人の常務取締役又は専務取締役(設立よ
り昭和二十七年三月まではCが常務取締役、同年四月より同二十九年七月まで同人
が専務取締役、同年七月以降Aが専務取締役、ただしC常務には一時中断があり、
また原審認定のとおりAが常務に選任されたことがあるが実行されなかつた。なお
Aが実際業務担当重役であつたかどうかは後述する)がこれに当り、他の取締役は
非常勤で、そのうち一、二名が常務取締役として仕入や資金関係等で臨時に社長を
補佐していたことが認められる・ ところでAは会社設立以来被控訴会社の取締役
であつたが、右認定に供した各資料と原審証人Aの証言、原審における被控訴会社
代表者本人の供述を綜合すれば同人は昭和二十九年六月までは控訴人のいうところ
の使用人兼務役員であつたと認めるのが相当であるところ、会社の業務執行に関与
せず名目上取締役の肩書を有するに止り、実際は商業使用人として会社業務を担当
しているいわゆる使用人兼務役員に対する給与を損金として計上すべきは当然であ
るから、昭和二十八年四月以降昭和二十九年六月までの間に被控訴会社が同人に支
給した給料及び賞与を損金に計上すべきであるという被控訴人の主張は正当であ
り、これに反する控訴人の主張を是認するに足る資料はない。ところで、昭和二十
九年七月代表取締役社長Dは辞任して専務取締役Cがこれに代り、またAがCの後
任として専務取締役に就任したことば前叙のと<要旨>おりであり、被控訴会社にお
ける前示のような業務執行機構の慣行から推せば、Aは反証がない限り専務
取締役就任以来前任のC専務同様、社長を佐けて日常の業務執行に当つていたと見
るべきであるところ、原審における証人A、同Eの各証言、被控訴会社代表者本人
の供述によればAは専務取締役に就任の前後を通じ荷受、出荷、その他雑用を含め
て会社の業務一般にたずさわつていたことが認められるけれども、株式会社の業務
執行の概念から末端の事務を除外しなければならぬ道理はなく、ことに甲第七号証
の一ないし六によつて認められるように従業員の極めて少い被控訴会社のような会
社で代表取締役を補佐する業務担当役員が場合によつては通常使用人に委せること
ができるような仕事にも従事することがあつても、別段異とするに足らないから、
右証人及び本人の証言及び供述によつてはAが会社の業務執行にたずさわつていた
という推定を覆すことができず、その他これを左右しうる証拠がない。そうだとす
れば昭和二十九年七月以降同人に支給した給料及び賞与の税法上の取扱は被控訴人
の主張するようにこれを直ちに損金に計上しえないと解するのが相当である。
 すなわち、昭和二十九年度におけるA以外の役員報酬金三十五万四千円と同年七
月以降Aに支給した給料名義の報酬金二十一万二千六百円の合計額金五十六万六千
六百円から役員報酬に関する株主総会承認額金五十万円を控除した残額金六万六千
六百円と昭和二十九年七月以降Aに対し支給した賞与金六万八千円(甲第七号証の
六)との合計額金十三万四千六百円は被控訴会社の昭和二十九年度における利益処
分による賞与の支給と認むべきであり、従つて同年度の被控訴会社の所得額は同会
社が所得と認めた金七十七万五千五十円に右金十三万四千六百円を加算した金九十
万九千六百五十円とすべきであつて、所轄税務署長がなした更正決定額金九十六万
七千四百円中右金額を超ゆる部分は違法な処分として取消を免れない。以上のとお
り昭和二十八年度分所得の更正に関する被控訴人の本訴請求は正当であり、控訴人
の控訴は理由がないが、昭和二十九年度分所得の更正については控訴人の本件控訴
は一部理由ありと認むべきである。よつてこれと異る原判決を主文のとおり変更
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十六条、第九十二条を適用し、主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 林善助 裁判官 丹生義孝 裁判官 佐藤秀)

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