弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求は、いずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四十二年九月十一日、同庁昭和三八年審
判第二、八七三号事件、同年審判第三、〇四〇号事件、昭和四一年審判第四、五六
九号事件について各審決ならびに昭和四十二年十月十三日昭和四〇年審判第四、四
〇八号事件についてした審決は、いずれも、取り消す。訴訟費用は被告らの負担と
する。」との判決を求めた。
二 被告内田車輛株式会社および同フランスベツド株式会社訴訟代理人ならびに被
告飛騨産業株式会社訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
第二 請求の原因
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯
 原告は、昭和三十三年三月三十一日出願、昭和三十八年二月十一日登録の実用新
案第五八一、五七〇号「二段ベツド」の登録実用新案権者であるところ、被告飛騨
産業株式会社(以下「被告飛騨産業」という。)および同久保木工株式会社(以下
「被告久保木工」という。)は、昭和三十八年七月十一日、被告内田車輛株式会社
(以下「被告内田車輛」という。)は昭和四十一年六月二十日、被告フランスベツ
ド株式会社(以下「被告フランスベツド」という。)は昭和四十年七月十六日、本
件登録実用新案につき登録無効の審判を請求し、被告飛騨産業請求のものは昭和三
八年審判第二、八七三号事件として、被告久保木工請求のものは昭和三八年審判第
三、〇四〇号事件として、被告内田車輛請求のものは昭和四一年審判第四、五六九
号事件として、被告フランスベツド請求のものは昭和四〇年審判第四、四〇八号事
件として審理された結果、前三者については昭和四十二年九月十一日、被告フラン
スベツド関係事件については昭和四十二年十月十三日、いずれも、「登録第五八
一、五七〇号実用新案の登録を無効とする。」旨の審決があり、その謄本は、前三
者については昭和四十二年十月四日、被告フランスベツド関係事件については昭和
四十二年十一月十八日、それぞれ原告に送達された。
二 本件登録実用新案の要旨
 台枠1の四隅に鉤状の●2、2を突設し、高さの異なる脚枠3、4のそれぞれに
●孔5を穿設し、その各々に横杆6、6を貫設して、●2、2を横杆6、6の係合
により着脱可能に台枠1と脚枠3、4を連結してベツドを構成し、脚枠3、3の上
端に●7、7を突設し、脚枠4、4の下端8、8に●7、7へそれぞれ嵌合する●
孔を設け、かくしたベツドを二台一組とした二段ベツドの構造(別紙第一掲記の図
面参照)
三 本件各審決理由の要点
 本件各審決は、本件登録実用新案の要旨は、前項掲記のとおり認定したうえ、本
件登録実用新案の登録出願前公知の刊行物である米国特許第二、三六三、五九九号
明細書(以下、「引用例」という。)には、「高さの異なる前後脚枠15、21の
うち、高い方の脚枠15の上端面に板状起体18を固定し、低い方の脚枠21の下
端面に凹溝20を穿ち、台枠23、25と前後脚枠15、21とをボルト29によ
つて自由に着脱できるように連結したベツド二台を一組とし、高い脚枠15と低い
脚枠21とを交換して、前記の突起体18と凹溝20を嵌合して二段に組み立てた
構造を有する二段ベツド」(別紙第二掲記の図面参照)が記載されているところ、
両者を比較すると、本件登録実用新案は、引用例の考案において、その突起体と凹
溝との嵌合構造を●と●孔との嵌合構造に代えるとともに、ボルト締めによる脚枠
と台枠との結合構造を鉤状の●と●孔に貫設した横杆とによる結合構造にした点に
おいて、相違するのみであるが、およそ家具類を上下二段に組み立てるのに●と●
孔の嵌合構造とすることは本件登録実用新案の登録出願前における周知技術であ
り、二段ベツドの脚枠の連結および台枠と脚枠との連結構造は、いずれも、本件登
録実用新案の出願前国内に頒布された刊行物(詳細省略)に当業者が容易に実施で
きる程度に記載されているから、本件登録実用新案は、引用例およびこれら刊行物
の記歳事項を総合して当業者が容易にできる程度のものであり、旧実用新案法(大
正十年法律第九十七号)第一条の考案を構成せず、したがつて、その登録は、同条
の規定に違反してされたものというべく、同法第十六条第一項第一号の規定によ
り、これを無効にすべきものである。
四 本件各審決を取り消すべき事由
 本件各審決は、次の点において違法であり、取り消さるべきである(その他の点
についての違法は、本訴においては主張しない)。すなわち、
(一) 実用新案登録無効審判事件の係属中に、その登録実用新案について訂正審
判の請求がされた場合、その訂正審判の申立が実用新案法(昭和三十四年法律第百
二十三号)第三十九条に規定する要件を具備し、その訂正が許されるべきものであ
るときは、特許庁は、まず、その訂正審判の請求について訂正許可の審決をし、し
かるのちその訂正された明細書又は図面に基づき、その登録実用新案に関する無効
審判の請求について審決をすべきである。けだし、登録実用新案について一部に、
瑕疵があるときにはその瑕疵のある部分を自発的に取り除く機会を与え、そのため
に登録実用新案が無効となるのを防ぎ、もつて、その考案の保護を図るのが、法の
立法趣旨に沿うゆえんだからである。
(二) 原告は、本件登録実用新案について、昭和四十二年七月六日訂正審判を請
求した(昭和四二年審判第五、一〇三号事件)。すなわち、その訂正により、「更
に台枠1の長手方向の側枠9の中間上部に適当な長さの切欠部を設け該切欠部11
に転落防止枠11の支柱12、12を取付け」るものとし、側枠の幅を相当広く
し、側枠の端部に取付ける鉤状の●2、2の間隔を充分にして、ベツドの組立のと
きのベツド全体の安定を保ち、かつ、切欠部に手を差し入れるだけでベツド作りを
容易簡明にすることができ、さらに就寝者の転落および毛布の落下の防止という作
用効果を有せしめようとした。
 したがつて、右訂正審判の申立は、実用新案法第三十九条第一項第一号および第
三号に規定する要件を具備していたものであるところ、特許庁は、右訂正審判の申
立について審決をしないで、本件登録実用新案について、前記のように、無効審判
をしたのである。
(三) 特許庁としては、右訂正審判の申立が、同法第三十九条第一項第一号およ
び第三号に規定する要件を具備する以上、まず右訂正審判の申立について審決を
し、しかるのち、無効審判の申立について審決をすべきであるのにかかわらず、た
だちに、無効審判の申立について、本件各審決をしたのは違法であり、このような
違法な手続に基づく本件各審決は、取り消さるべきものである。
第三 被告らの答弁
被告久保木工を除く被告らの答弁
 被告内田車輛および同フランスベツド訴訟代理人ならびに被告飛騨産業訴訟代理
人は、答弁として、次のとおり述べた。
 原告主張の請求原因事実中、本件に関する特許庁における手続の経緯、本件登録
実用新案の要旨および本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであること
および本件登録実用新案につき原告主張の訂正審判の申立がされ、この申立に審決
がされていないことは認めるが、その余は争う。
 原告主張の訂正審判による訂正は許さるべきものではないが、仮にそれが実用新
案法第三十九条に規定する要件を具備している場合においても、特許庁は、必ず無
効審判の申立に対する審決に先立つて訂正審判の審決をしなければならないとすべ
き理由はなく、いずれにつき先に審決しても違法ではない。
 なお、被告久保木工は適式の呼出を受けながら、本件準備手続期日および口頭弁
期論日にいずれも出頭せず、かつ、答弁書その他の準備書面をも提出しない。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
一 被告飛騨産業、同内田車輛および同フランスベツド関係
(一) 特許庁における手続の経緯、本件登録実用新案の要旨および本件審決理由
の要点が原告主張のとおりであることおよび原告主張のように、本件につき訂正審
判の申立がされたが、いまだ審決がされていないことは関係当事者間に争いがな
い。
(二) 本件各審決の取消事由の有無について
 原告は、登録実用新案の登録無効審判事件の係属中にその登録実用新案について
訂正の審判が請求された場合において、その訂正審判の申立が実用新案法第三十九
条に規定する要件を具備しているときは、特許庁は、まず、訂正審判事件につき審
決をしたのち、
登録無効審判の審決をすべきものである旨主張するが、審判事件としての両者の関
係を原告主張のように見なければならない法律上の根拠は全く存しないから、原告
の右主張は、本件訂正審判において訂正が許されるべきものであるか、許されるべ
きものであるとして、これを考慮しないでした審決そのものが違法といえるかどう
か等につき審案するまでもなく、理由がないものといわざるをえない。
二 被告久保木工関係
 原告が本訴請求の原因として主張する事実は、民事訴訟法第百四十条第三項、第
一項の規定により、被告久保木工において、これを自白したものとみなさるべきも
のであるが、本件審決を取り消すべき事由に関する原告の主張は、主張自体理由の
ないものであること前説示のとおりである。
三 むすび
 叙上のとおりであるから、本件各審決がその主張の点において違法であるとして
その取消を求める原告の本訴請求は、いずれも失当というほかはない。よつて、こ
れを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法
第八十九条を適用して、主文のとおり、判決する。
(裁判官 三宅正雄 石澤健 奈良次郎)
別紙第一
<10114―001>
別紙第二
<10114―002>

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