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判決言渡平成20年7月23日
平成19年(行ケ)第10349号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年7月14日
判決
原告三星エスディアイ株式会社
訴訟代理人弁理士志賀正武
同佐伯義文
同渡辺隆
同村山靖彦
被告特許庁長官
鈴木隆史
指定代理人佐藤昭喜
同安田明央
同岩崎伸二
同内山進
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2006−5207号事件について平成19年6月5日にした
審決を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,原告が名称を「平板表示装置」とする発明につき特許出願(本願)
をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,
特許庁が請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
2争点は,特開平11−167354号公報(発明の名称「携帯用表示装
置」,出願人三星電管株式会社,公開日平成11年6月22日。以下「引用
刊行物1」といい,この発明を「引用発明1」という。甲1)との関係で進歩
性を有するか(特許法29条2項),である。
第3当事者の主張
1請求原因
(1)特許庁における手続の経緯
原告は,平成13年(2001年)2月27日の優先権(大韓民国)を主
張して,平成14年2月20日,名称を「平板表示装置」とする発明につい
て特許出願をしたところ(特願2002−43776号。公開公報は特開2
002−311853号〔甲4〕),拒絶理由通知を受けた。
そこで,平成17年5月23日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする
補正(以下「本件補正」という。請求項の数12。甲5)をしたが,同17
年12月12日付けで拒絶査定を受けたため,不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2006−5207号事件として審理した上,平
成19年6月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(出訴
期間として90日附加)をし,その謄本は同年6月19日原告に送達され
た。
(2)発明の内容
本件補正後の特許請求の範囲は,上記のとおり請求項1∼12から成る
が,このうち請求項6に係る発明(以下「本願発明6」という。)の内容は
以下のとおりである。
「【請求項6】相互対向配置された第1及び第2基板と,前記第1及び第
2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数
個備えた平板表示装置であって,
前記の隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し,前記第
1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシール
して,前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし,
前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成
されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する平板表示装置。」
(3)審決の内容
ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,本願発明6は引用発明1及び下記各文献に記載の周
知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法2
9条2項により特許を受けることができない,というものである。

・特開平5−19270号公報(発明の名称「液晶表示装置」,出
願人松下電器産業株式会社,公開日平成5年1月29日。甲
2。以下「甲2文献」という。)
・特開平4−20929号公報(発明の名称「液晶表示パネル」,
出願人日本電気株式会社,公開日平成4年1月24日。甲3。
以下「甲3文献」という。)
イなお,審決は,上記判断をするに当たり,引用発明1の内容を以下のと
おり認定した上,本願発明6と引用発明1との一致点及び相違点を,次の
とおりとした。
<引用発明1の内容>
「本体101側の液晶表示装置107が,上下両基板の間に注入され
た液晶を有し,相互に対向配置される上方基板及び下方基板と,前記上
下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121と
を備えたディスプレイ平板表示装置から構成され,また,蓋103側の
液晶表示装置109も,上下両基板の間に注入された液晶を有し,相互
に対向配置される上方基板及び下方基板と,前記上下両基板同士をシー
ルするシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレ
イ平板表示装置から構成されており,前記液晶表示装置107と前記液
晶表示装置109とは相互に隣接して,両者の継ぎ目部位において互い
に密着されてなる,2つの液晶表示装置107,109を配置して互い
に密着させることにより,画面の大きさを拡大させるようにした携帯用
表示装置」
<一致点>
いずれも,
「相互対向配置された第1及び第2基板と,前記第1及び第2基板を
シールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備
えた平板表示装置であって,前記の隣接した2個のディスプレーパネル
は連結部で相互接触し,前記第1シーラントは前記連結部に対応する前
記第1及び第2基板の部分をシールして,前記第2シーラントは前記第
1及び第2基板の残り部分をシールした平板表示装置」である点。
<相違点>
本願発明6では「第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内
面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有す
る」のに対して,引用発明1は前記構成を有していない点。
(4)審決の取消事由
しかしながら,審決には,以下に述べるとおり誤りがあるので,違法とし
て取り消されるべきである。
ア取消事由1(本願発明6の認定の誤り)
本願発明6は,前記(2)の請求項6記載のとおりに認定されるべきであ
るところ,審決は,「1手続の経緯及び本願発明」においては上記のと
おり正しく認定(2頁2行∼9行)しながら,「3当審の判断」におい
て,「さすれば,本願発明6は,『第1及び第2基板の少なくとも一方の
基板の連結部に対応する前記第1及び/又は第2基板の内面の一部分上に
突出部が形成されていて,前記連結部に対応する前記第1及び/又は第2
基板の部分を前記突出部に付着する第1シーラントでシールし,第2シー
ラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールして,個々のディスプ
レーパネルが構成され,前記構成のディスプレーパネルを隣接させて,2
個又は複数個のディスプレーパネルを前記連結部で相互接触させた平板表
示装置』というものとなる」(15頁30行∼37行)と認定し直してい
る。
すなわち,審決は,請求不成立の結論を導くために,都合のいいように
本願発明6の認定を改変したものであり,このような認定は誤りである。
イ取消事由2(引用発明1の認定の誤り,一致点の認定の誤り,相違点の
看過)
審決は,引用発明1の内容,引用発明1と本願発明6との一致点及び相
違点について前記(3)イ記載のとおり認定したが,以下のとおり誤りであ
る。
(ア)審決は,引用発明1の認定をするに当たり,引用刊行物1の記載につ
いて,「液晶表示装置107(109)の側断面図である図8(c),
前記液晶表示装置107,109が密着した場合の継ぎ目が眼に見えな
いようにするために,前記液晶表示装置107,109の少なくとも継
ぎ目部位に多数のマイクロ凸レンズ127aが組合わされて形成される
光学フィルムシート127を付着する技術について説明した断面図であ
る図9及び図10の各図面の記載からみて,引用刊行物1の図面には,
『本体101側の液晶表示装置107が,上下両基板の間に注入された
液晶を有し,相互に対向配置される上方基板及び下方基板と,前記上下
両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを
備えたディスプレイ平板表示装置から構成され,また,蓋103側の液
晶表示装置109も,上下両基板の間に注入された液晶を有し,相互に
対向配置される上方基板及び下方基板と,前記上下両基板同士をシール
するシーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ
平板表示装置から構成されており,前記液晶表示装置107と前記液晶
表示装置109とは相互に隣接して,両者の継ぎ目部位において互いに
密着されてなる,2つの液晶表示装置を配置して互いに密着させること
により,画面の大きさを拡大させるようにした携帯用表示装置』の記載
が認められる」(7頁3行∼19行)と認定したが,誤りである。
引用刊行物1の図8cには側壁121,樹脂フィルム123及び補強
部材が記載されているものの,図9及び10に関しては,どの部分が図
8cの側壁121に対応しているのか,明確に図示されていない。
また,本願明細書(公開公報〔甲4〕参照。以下同じ)の発明の詳細
な説明の記載を参照しても,図9及び10の側壁等については何ら説明
がなく,両図における液晶表示装置107,109に側壁121が設け
られているのか不明であり,仮に側壁121が設けられているとして
も,側壁121がシーラントによって形成されているのか不明である。
それにもかかわらず,審決は,引用刊行物1の図面に「前記上下両基
板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備え
た」構成が記載されていると認定したものであって,かかる認定は単な
る憶測に基づくものにすぎない。
(イ)また審決は,本願発明6と引用発明1との一致点を認定するに当た
り,「引用発明1の『上下両基板同士をシールするシーラントによって
形成された側壁121』は,引用刊行物1の図8,図9及び図10の記
載から,上下両基板同士をシールし側壁121を形成するシーラント
が,上下両基板の間に注入された液晶が外部に流出しないようにするた
めに,本体101側の液晶表示装置107と蓋103側の液晶表示装置
109とのそれぞれの相互に対向配置される上方基板及び下方基板の四
周をぐるりとシールしていることは,明らかである。しかして,…引用
発明1においても,継ぎ目部位において互いに密着されてなる2つの液
晶表示装置107,109の継ぎ目部位に対応する上下両基板同士は,
前記シーラントでシールされており,また同時に互いに密着されてなる
2つの液晶表示装置107,109の継ぎ目部位を除く上下両基板同士
の他の周囲も,同じく前記シーラントでシールされていることになるか
ら,引用発明1の前記『上下両基板同士をシールするシーラントによっ
て形成された側壁121』が,本願発明6の『前記第1及び第2基板を
シールする第1及び第2シーラント』に対応するものであるといえる。
そして,引用発明1のシーラントに求められる機能についての前記考察
から,引用発明1の前記『上下両基板同士をシールするシーラントによ
って形成された側壁121』が,本願発明6の『前記第1シーラントは
前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして』及び
『前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし』
と同様の役割を担っていることは明らかである」(13頁7行∼30
行)と認定したが,誤りである。
前記(ア)に述べたとおり,引用刊行物1の図9及び10には側壁12
1が設けられているのか不明であり,ましてや,シーラントによって形
成された側壁が「本体101側の液晶表示装置107と蓋103側の液
晶表示装置109とのそれぞれの相互に対向配置される上方基板及び下
方基板の四周をぐるりとシールしていること」は,何ら開示されていな
いばかりか,示唆もされていない。
さらに,本願発明6における第2シーラントに対応する構成について
も,引用刊行物1には開示も示唆もされていない。
したがって,本願発明6と引用発明1との一致点に関する審決の認定
は誤りである。
(ウ)また審決は,本願発明6と引用発明1との相違点を認定するに際し,
以下の相違点を看過した。
すなわち,本願発明6の主要部である「第1シーラントは前記連結部
に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして,第2シーラント
は前記第1及び第2基板の残り部分をシールしている点」については,
前記(ア)及び(イ)に述べたように,引用刊行物1には全く記載されていな
いばかりか示唆もされていないのであるから,この点が相違点として認
定されるべきであった。
したがって,審決がこの点を相違点として認定しなかったのは,相違
点を看過したものである。
ウ取消事由3(相違点についての判断の誤り)
審決は,相違点についての容易想到性の有無を判断するに当たり,前記
アに述べたとおり本願発明6について誤った認定をした上で,「3個のデ
ィスプレーパネルを連結部で相互接触させた平板表示装置にあっては,前
記連結部も2個存在することになるから,ディスプレイを3個備えた平板
表示装置の中央に位置するディスプレーパネルでは,その左右両側端辺の
2個所に連結部を有することになり,また,9個のディスプレーパネルを
連結部で相互接触させた平板表示装置にあっては,その中央部に位置する
ディスプレーパネルでは,その四辺全周の4個所に連結部を有することに
なるのであり,そうすると,本願発明6において,…『第1シーラント』
と『第2シーラント』とに敢えて区分する理由はないことになる。すなわ
ち,第1及び第2基板をシールするシーラントのすべてが,『第1及び第
2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成された突出部
に付着して,連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールする
第1シーラント』から構成されるものであるとしたとしても,本願発明6
の範囲内のものと考えてもよいことになる」(15頁下2行∼16頁14
行)としているが,誤りである。
(ア)本願発明6は,第1シーラントは連結部に対応する第1及び第2基板
の部分をシールし,第2シーラントは第1及び第2基板の残り部分をシ
ールする点を主要部の一つとしている。審決がいうところのディスプレ
ーパネルが9個ある場合であっても,中央部に位置するものだけに注目
するのではなく,複数のディスプレーパネルからなる全体に注目して,
連結部と連結部でない部分とを有するディスプレーパネルがある場合に
は,連結部に対応する部分は第1シーラントで,その他の部分は第2シ
ーラントでシールするというものである。
すなわち,表示部(ディスプレイ領域)をできるだけ広くするために
はシーラントの幅を狭くしたい反面,シーラントの幅が狭くなると接着
力が低下するという問題があり,接着力の低下を防ぐため基板の内面に
シーラントに付着する突出部を形成すると,コストと手間がかかる。そ
こで本願発明6では,ディスプレーパネル同士の連結部に関してのみシ
ーラント(第1シーラント)の幅を狭くして突出部を備えることとし,
連結部でない部分に関しては接着力の維持及びコスト高の回避を優先し
て,シーラント(第2シーラント)の幅を狭くしない構成としたもので
ある。
(イ)これに対して被告は,シーラントの幅に関しては本願請求項6に記載
されていないと主張するが,同請求項に「第1シーラントが付着する突
出部」と記載されているように,第1シーラントが付着する部位に突出
部が設けられていることは明らかであり,本願明細書の発明の詳細な説
明においても「前記第1シーラントは,前記第2シーラントより狭い」
(段落【0018】)と記載されているのであるから,本願請求項6の
記載を解釈するに当たってかかる記載を参酌することには何の問題もな
く,被告の上記主張は失当である。
(ウ)以上のとおり,本願発明6は引用発明1とは課題を全く異にし,か
つ,単純に引用発明1と周知技術を組み合わせるだけでは得られない構
成を有するものであって,当業者が引用発明1及び周知技術から容易に
想到し得るものではない。
エ取消事由4(顕著な作用効果の看過)
審決は,「本願発明6の奏する作用効果は,引用発明1及び周知技術か
ら予測できる範囲内のものであって,格別のものということができない」
(16頁下1行∼17頁1行)としているが,誤りである。
前記ウ(ア)において述べたとおり,本願発明6の課題はディスプレーパ
ネル間の連結部におけるシーラントの幅をできるだけ狭くしようとするも
のであり,この課題を解決するために,連結部を第1シーラントと突出部
から成るものとし,連結部でない部分は第2シーラントだけで構成するも
のとした。その結果,「シーラントの幅が複数個の突出部によって減少さ
れるために,シーラントの信頼性を低下させなくても広いディスプレー領
域を有した平板表示装置を成就できる。前記二ディスプレーパネルの連結
部の幅が高い信頼性を有したシーラントによって減少されるために,ディ
スプレー画面が一つのように見える効果が大きなマルチパネルディスプレ
ー装置を得ることができる」(段落【0041】)という作用効果を奏す
るものである。
これに対して,引用刊行物1,甲2文献及び甲3文献には,上記のよう
な課題は一切記載されていないばかりか,連結部のシーラントの幅を狭く
する構成については開示も示唆もされていないから,これらの文献の記載
から本願発明6の作用効果を導き出すことはできない。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)∼(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。
3被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1)取消事由1に対し
原告は,本願発明6の認定に関する審決の誤りを主張するが,以下のとお
り審決の認定は正当である。
ア審決が,本願発明6について本願請求項6記載のとおり(すなわち,前
記1(2)記載のとおり)に認定していることは,審決における「当審が審
理すべき本願発明は,平成17年5月23日付の前記手続補正書を以て補
正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載され
た事項により特定されるとおりのものであるところ,特にその請求項6に
係る発明は,次のとおりのもの(以下,「本願発明6」という。)であ
る」(1頁36行∼2頁1行)との記載から明らかである。
イこれに対し原告は,審決が本願発明6を認定し直していると主張する
が,原告の指摘する審決の箇所(15頁30行∼37行)は,審判請求人
(原告)の主張に対して述べられた部分の一部であるにすぎない。
すなわち,原告が,拒絶査定不服審判において「本願請求項6に記載の
発明の主な特徴は,『隣接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互
接触し,前記第1シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基
板の部分をシールして,前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残
り部分をシールし,前記第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその
内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有す
る』点にある。そして,本願発明は,上記の特徴に基づき,2個のディス
プレーパネルの連結部の幅が高い信頼性を有したシーラントによって減少
されるために,ディスプレー画面が一つのように見える効果が大きなマル
チパネルディスプレー装置を得ることができるという顕著な効果を奏する
ものとなっている。」と主張したのに対して,審決は,同主張が採用でき
ない理由を,14頁27行∼16頁32行のひと続きの文章によって詳細
に説示したものである。
審決においてこのような説示をした趣旨は,次のとおりである。すなわ
ち,原告は,審判請求において「ディスプレイを2個のみ備えた平板表示
装置」の実施例に拘泥する主張をしたので,本願請求項6に記載された
「ディスプレイを複数個備えた平板表示装置」の文言から容易に想定でき
る具体例(ディスプレイを3個ないし9個備えた平板表示装置)をもって
説示したものである。ディスプレイの個数によっては,複数個のディスプ
レイが相互接触する連結部の位置も数も変わるから,第1シーラントと第
2シーラントの位置も変わることは明らかである。
第2シーラントについては,本願請求項6に「前記第2シーラントは前
記第1及び第2基板の残り部分をシールし,」と規定されているだけであ
り,例えばディスプレイを9個備える平板表示装置の場合は,中央部に位
置するディスプレイについては第1シーラントがその四辺全周をシールす
ることとなり,この場合にはディスプレイに「残り部分」は存在しないか
ら,残り部分をシールすべき第2シーラントは不要となることが容易に想
定できる。このように,当該ディスプレイの位置によっては,連結部をシ
ールする第1シーラントと,残り部分をシールすべき第2シーラントとの
区分が不明となることについて説示しているだけのことにすぎない。
ウそして,審決においては,本願請求項6に記載されているとおりである
と認定した本願発明6と引用発明1とを対比しているのであって,決し
て,これ以外の別異の発明と引用発明1とを対比しているのではないこと
は,審決の記載(12頁34行∼14頁3行)から明らかである。
(2)取消事由2に対し
ア原告は,引用発明1に関する審決の認定は誤りであると主張するが,審
決の認定は正当である。
(ア)すなわち,引用刊行物1(甲1)には「…これら液晶表示装置10
7,109の両基板(substrate)の間に注入された液晶が外部に流出
しないように前記両基板を接合する側壁121の幅は0.3mm以下にし
なければならない。このように2つの液晶表示装置107,109の接
合面を形成すると,継ぎ目が最小化して1つの映像のように見える」
(段落【0016】),「前記側壁121は,液晶表示装置に通常使用
されているシーラント(sealant)によって形成されるのが普通であ
る」(段落【0017】)と記載されている。
このような引用刊行物1の記載から,引用発明1の側壁121はシー
ラントによって形成されることが明らかである。そして,シーラントに
よって形成される側壁121が,液晶表示装置107,109の両基板
の間に注入された液晶が外部に流出しないように前記両基板を接合する
ことも明らかである。
(イ)ところで,液晶表示装置の両基板の間に注入された液晶が外部に流出
しないように,シーラント等のシール材で両基板の四辺の全周囲をぐる
りと接合することは,甲2文献(段落【0002】,【0003】)及
び甲3文献(1頁右欄7行∼17行)の記載からも明らかなように,本
願の優先権主張時(平成13年2月27日)に広く採用されている周知
慣用の技術にすぎないものである。
このような従来周知の慣用技術ないし当業者の技術常識について,引
用刊行物1(甲1)には「前記側壁121は,液晶表示装置に通常使用
されているシーラント(sealant)によって形成されるのが普通であ
る」(段落【0017】)と記載されているのであるから,引用刊行物
1には,液晶表示装置の両基板の間に注入された液晶が外部に流出しな
いように,シーラント等のシール材で両基板の四辺の全周囲を接合する
技術が,実質的に記載されているに等しい。
(ウ)このことを審決では,「引用発明1の『上下両基板同士をシールする
シーラントによって形成された側壁121』は,引用刊行物1の図8,
図9及び図10の記載から,上下両基板同士をシールし側壁121を形
成するシーラントが,上下両基板の間に注入された液晶が外部に流出し
ないようにするために,本体101側の液晶表示装置107と蓋103
側の液晶表示装置109とのそれぞれの相互に対向配置される上方基板
及び下方基板の四周をぐるりとシールしていることは,明らかであ
る。」(13頁7行∼13行)としたものであって,審決の認定に誤り
はない。
イまた原告は,本願発明6と引用発明1との一致点に関する審決の認定は
誤りであると主張するが,審決の認定は正当である。
(ア)まず,引用刊行物1(甲1)に「液晶表示装置の両基板の間に注入さ
れた液晶が外部に流出しないように,シーラントによって形成された側
壁で,両基板の四辺の全周囲を接合する技術」が実質的に記載されてい
ることについては,前記アにおいて述べたとおりである。
(イ)次に,引用刊行物1において本願発明6の第2シーラントに対応する
構成が開示されているかという点については,なるほど,原告主張のと
おり,引用刊行物1では「シーラントによって形成される側壁121」
を,2つの液晶表示装置間の継ぎ目部位に使用する「シーラントによっ
て形成される第1側壁」と継ぎ目部位を除く部分に使用する「シーラン
トによって形成される第2側壁」とに区分はしていない。
しかしながら,引用発明1の携帯用表示装置は,その上下両基板の四
辺の全周囲がシーラントによって形成される側壁121によりシールさ
れているのであり,しかも,前記携帯用表示装置は2つの液晶表示装置
107,109が継ぎ目部位において互いに密着しているのであるか
ら,引用発明1においても本願発明6の連結部と同様の継ぎ目部位が存
在している。そして,引用発明1の継ぎ目部位(本願発明6の「連結
部」に相当する。)は,シーラントによって形成される側壁121によ
ってシールされているのであるから,引用発明1の2つの液晶表示装置
107,109の継ぎ目部位のシールは,「シーラントによって形成さ
れる側壁121」によるものであることが明らかである。
同様に,引用発明1の継ぎ目部位以外の三辺(本願発明6の「残り部
分」に相当する。)も,同じく「シーラントによって形成される側壁1
21」によってシールされているのであるから,引用発明1の継ぎ目部
位以外の三辺のシールも「シーラントによって形成される側壁121」
によるものであることが明らかである。
このような引用発明1の上下両基板の四辺の全周囲をシールする「シ
ーラントによって形成される側壁121」を,本願発明6の第1シーラ
ント及び第2シーラントと同じように,両者を区分するためにあえて序
数詞を冠して命名するとすれば,本願発明6の第1シーラントに対応す
るのが引用発明1の「継ぎ目部位をシールする,シーラントによって形
成される第1の側壁121」であり,本願発明6の第2シーラントに対
応するのが引用発明1の「継ぎ目部位以外の三辺をシールする,シーラ
ントによって形成される第2の側壁121」となるだけのことである。
(ウ)そうすると,結局のところ,引用発明1の前記「シーラントによって
形成される側壁121」が,本願発明6の「連結部をシールする第1シ
ーラント」と「残り部分をシールする第2シーラント」との双方に対応
していることになるのであるから,審決が,「引用発明1の前記『上下
両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121』
が,本願発明6の『前記第1及び第2基板をシールする第1及び第2シ
ーラント』に対応するものであるといえる。そして,…引用発明1の前
記『上下両基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁1
21』が,本願発明6の『前記第1シーラントは前記連結部に対応する
前記第1及び第2基板の部分をシールして』及び『前記第2シーラント
は前記第1及び第2基板の残り部分をシールし』と同様の役割を担って
いることは明らかである」(13頁22行∼30行)と認定したこと
に,誤りはない。
ウ原告は,本願発明6と引用発明1との相違点の認定に関して,審決には
相違点の看過があると主張するが,審決には相違点の看過はない。
前記イにおいて述べたとおり,引用発明1の「上下両基板同士をシール
するシーラントによって形成される側壁121」が,本願発明6の「前記
第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラント」に対応している
ことは明らかである。
そして,本願発明6の第1シーラント及び第2シーラントと同様に,引
用発明1においても,継ぎ目部位をシールするのが「シーラントによって
形成される第1の側壁121」であり,継ぎ目部位以外の三辺をシールす
るのが「シーラントによって形成される第2の側壁121」であるから,
本願発明6の「第1シーラントと第2シーラント」と引用発明1の「シー
ラントによって形成される側壁121」との間に,原告が主張するような
相違点を認めることはできない。
そうすると,本願発明6と引用発明1とは,「本願発明6では『第1及
び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前
記第1シーラントが付着する突出部を有する』のに対して,引用発明1は
前記構成を有していない点」のみにおいて,構成上の相違点を有するもの
である。
(3)取消事由3に対し
原告は,審決は相違点についての容易想到性の有無の判断を誤ったもので
あると主張するが,以下のとおり審決の判断は正当である。
ア原告は,審決が本願発明6の認定を誤ったことから,容易想到性の有無
についても誤った判断がされたものであると主張する。
しかし,本願発明6の認定に関して審決に誤りがないことは,前記(1)
において述べたとおりである。
イまた原告は,本願発明6は連結部に対応する部分を第1シーラントで,
その他の部分を第2シーラントでシールする点を技術思想とし,第1シー
ラントについては第2シーラントよりもシーラントの幅を狭くして突出部
を備える構成としたものであるから,本願発明6は単純に引用発明1と周
知技術を組み合わせるだけでは得られないものであると主張する。
しかし,本願請求項6には「前記第1シーラントは,前記第2シーラン
トより狭いこと」は記載されておらず,本願発明6が「前記第1シーラン
トは,前記第2シーラントより狭いこと」を発明特定事項としていないこ
とは明らかである。
前記(2)イに述べたように,本願発明6における「第1シーラント」と
「第2シーラント」とを識別する唯一の手がかりは,連結部をシールする
のが第1シーラントで,残り部分をシールするのが第2シーラントである
ということのみであり,本願発明6は,連結部にシーラントが付着する突
出部を設けておくというだけのものであることから,連結部にシーラント
が付着する突出部を設けた周知技術を引用発明1に適用することにより,
当業者が本願発明6の構成を容易に想到できたものである。
(4)取消事由4に対し
原告は,審決には顕著な作用効果の看過があると主張するが,審決には作
用効果の看過はない。
前記(3)イにおいて述べたとおり,本願発明6における第1シーラントと
第2シーラントの幅は何ら限定されていないのであるから,両シーラントは
同等の幅でもよいと解釈することができ,両シーラントを幅の相違によって
区分する理由はない。
そうであれば,本願発明6は,原告が主張する「連結部のシーラントの幅
をできるだけ狭くすることにより,ディスプレー画面が一つのように見える
効果を大きくしようとする」という課題を,未だ解決していないということ
になる。
あるいは,本願発明6が上記課題を解決する作用効果を有するとしても,
このような作用効果は,引用発明1及び周知技術から当然に導かれるもので
ある。
したがって,審決が,「本願発明6の奏する作用効果は,引用発明1及び
周知技術から予測できる範囲内のものであって,格別のものということがで
きない」(16頁下1行∼17頁1行)としたことに誤りはない。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審
決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2取消事由1(本願発明6の認定の誤り)について
(1)本願発明6の認定に関して,審決は,「当審が審理すべき本願発明は,平
成17年5月23日付の前記手続補正書を以て補正された明細書の特許請求
の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定されるとお
りのものであるところ,特にその請求項6に係る発明は,次のとおりのもの
(以下,「本願発明6」という。)である」(1頁36行∼2頁1行)とし
て,下記のとおり認定した。

「【請求項6】相互対向配置された第1及び第2基板と,前記第1及び第
2基板をシールする第1及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複
数個備えた平板表示装置であって,前記の隣接した2個のディスプレーパ
ネルは連結部で相互接触し,前記第1シーラントは前記連結部に対応する
前記第1及び第2基板の部分をシールして,前記第2シーラントは前記第
1及び第2基板の残り部分をシールし,前記第1及び第2基板のうちの少
なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記第1シーラントが付
着する突出部を有する平板表示装置。」
(2)上記認定については原告もこれを争わず,原告が取消事由1として誤りを
主張するのは,審決が「3当審の判断」中の「(2)相違点についての検
討」において,「さすれば,本願発明6は,『第1及び第2基板の少なくと
も一方の基板の連結部に対応する前記第1及び/又は第2基板の内面の一部
分上に突出部が形成されていて,前記連結部に対応する前記第1及び/又は
第2基板の部分を前記突出部に付着する第1シーラントでシールし,第2シ
ーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールして,個々のディスプ
レーパネルが構成され,前記構成のディスプレーパネルを隣接させて,2個
又は複数個のディスプレーパネルを前記連結部で相互接触させた平板表示装
置』というものとなる」(15頁30行∼38行)とした部分である。
審決の上記部分は,審判請求人(原告)の「本願発明は,…2個のディス
プレーパネルの連結部の幅が高い信頼性を有したシーラントによって減少さ
れるために,ディスプレー画面が一つのように見える効果が大きなマルチパ
ネルディスプレー装置を得ることができるという顕著な効果を奏するものと
なっている」(審決14頁36行∼15頁1行)との主張に対して,本願発
明6が引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明することができたもの
であるという結論を導くに至る説明過程の一部分であって,要するに,相違
点についての容易想到性の判断の前提となる本願発明6の解釈に関するもの
である。
(3)以上を前提として,本願発明6に関する審決の上記解釈が誤りであるか否
かについて検討する。
ア審決の上記解釈のうち,「第1及び第2基板の少なくとも一方の基板の
連結部に対応する前記第1及び/又は第2基板の内面の一部分上に突出部
が形成されていて,」との部分は,本願請求項6における「前記第1及び
第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて前記
第1シーラントが付着する突出部を有する」に対応し,また,「前記連結
部に対応する前記第1及び/又は第2基板の部分を前記突出部に付着する
第1シーラントでシールし,第2シーラントは前記第1及び第2基板の残
り部分をシールして,」との部分は,本願請求項6における「前記第1シ
ーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールし
て,前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシール
し,」に対応する。
したがって,本願発明6について審決の解釈が示された部分は,「個々
のディスプレーパネルが構成され,前記構成のディスプレーパネルを隣接
させて,2個又は複数個のディスプレーパネルを前記連結部で相互接触さ
せた」との部分である。
イところで,本願請求項6には,「ディスプレイを複数個備え…前記の隣
接した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し,」との記載があ
り,他方,前記複数個のディスプレイがそれぞれどのような形で連結され
るのかについては記載がないのであるから,隣接した2個のディスプレー
パネルをそれぞれ連結部で相互接触させた結果,複数個のディスプレーパ
ネルが相互に接触する可能性も考えられ,これを審決が「2個又は複数個
のディスプレーパネルを前記連結部で相互接触させた」という解釈として
示したとしてもそれが誤りであるということはできない。
また,審決が「…連結部に対応する…部分上に突出部が形成されてい
て,前記連結部に対応する…部分を前記突出部に付着する第1シーラント
でシールし,第2シーラントは…残り部分をシールして,個々のディスプ
レーパネルが構成され,」とした点についても,本願請求項6に「…第1
及び第2シーラントとを備えたディスプレイを複数個備え…,前記の隣接
した2個のディスプレーパネルは連結部で相互接触し,前記第1シーラン
トは前記連結部に対応する…部分をシールして,前記第2シーラントは…
残り部分をシールし,…第1シーラントが付着する突出部を有する」と記
載されていることに照らせば,審決の上記解釈部分は,本願請求項6の記
載を個々のディスプレーパネルの構成として言い換えたものにすぎない。
ウ以上によれば,審決の上記解釈は,本願請求項6の記載から当然に読み
とれる内容を示したものにすぎないから,同解釈が誤りであるということ
はできない。
(4)したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
2取消事由2(引用発明1の認定の誤り,一致点の認定の誤り,相違点の看
過)について
(1)原告は,引用発明1の認定に関して,審決が引用刊行物1の「図8(c),
…図9及び図10の各図面の記載からみて,引用刊行物1の図面には,『本
体101側の液晶表示装置107が,…前記上下両基板同士をシールするシ
ーラントによって形成された側壁121とを備えたディスプレイ平板表示装
置から構成され,また,蓋103側の液晶表示装置109も,…前記上下両
基板同士をシールするシーラントによって形成された側壁121とを備えた
ディスプレイ平板表示装置から構成され…るようにした携帯用表示装置』の
記載が認められる」(7頁3行∼19行)としたのは誤りであると主張する
ので,まずこの点について検討する。
ア引用刊行物1(甲1)の発明の詳細な説明及び図面には,次の記載があ
る。
・「【発明の属する技術分野】本発明は携帯用表示装置に関する。より詳しく
は,携帯性に比例して相対的に低下した画面の大きさを改善した携帯用表示装
置に関する。」(段落【0001】)
・「…本発明の目的は,携帯性を維持しつつ表示内容の良好な認識及び表示容量
を向上させ得るように画面の面積を大きくした携帯用表示装置を提供すること
にある。」(段落【0004】)
・「【発明の実施の形態】…本発明の第1実施例によって新たに具現される携帯
用表示装置は,本体101と,…前記本体101に折り曲げられたり広げられ
る蓋103と,前記本体101及び蓋103にそれぞれ備えられた液晶表示装
置107,109を含む。」(段落【0007】)
・「…本体101及び蓋103に提供された液晶表示装置107,109は互い
に異なる映像を具現し得るが,液晶パネルが小型であることを考慮すると,そ
れぞれの液晶表示装置107,109で表示し得る映像は限定されているた
め,2つの液晶表示装置107,109は相互連結された1つの映像を表示す
るのが好ましい。この時,2つの液晶表示装置107,109が離れている
と,具現された映像は相互連結されていないため,まるで1つの絵を2つに分
けたように見えるという問題をもたらす。これを解決するためには,本体10
1及び蓋103が広げられた後に,本体101及び蓋103に提供された2つ
の液晶表示装置107,109を互いに密着させなければならない。」(段落
【0011】)
・「一方,前記スライド構造を用いて2つの液晶表示装置107,109を密着
させても,継ぎ目によって2つの液晶表示装置107,109で具現された映
像は両分されたように見える。」(段落【0015】)
・「図8aないし図8cは継ぎ目の厚さを最少化するための技術を示す図面であ
って,図8aは液晶表示装置の接合面の一部分を拡大した図面であり,図8b
は液晶表示装置の一側の接合面を示す図面であり,図8cは液晶表示装置の接
合面部分の断面を示す図面である。図8aないし図8cを参照すると,先ず2
つの液晶表示装置107,109が互いに密着する面には,これら液晶表示装
置107,109を駆動する透明電極119が外部に現れないようにコーティ
ングがされなければならず,これら液晶表示装置107,109の両基板
()の間に注入された液晶が外部に流出しないように前記両基板を接合substrate
する側壁121の幅は0.3mm以下にしなければならない。このように2つ
の液晶表示装置107,109の接合面を形成すると,継ぎ目が最少化して1
つの映像のように見える。」(段落【0016】)
・「一方,前記側壁121は,液晶表示装置に通常使用されているシーラント
()によって形成されるのが普通である…」(段落【0017】)sealant
・「…2つの液晶表示装置107,109が互いに密着する面には破損防止手段
が設けられる。この破損防止手段は,2つの液晶表示装置107,109の摩
耗を最少化するだけではなく,絶縁作用及び接合面の画像が良好に具現される
ように光の散乱を最少化させる作用をする。このような作用をする破損防止手
段は,絶縁性を有するのは勿論,光の散乱を最少化するように黒色を有する樹
脂フィルム123を含む。…」(段落【0018】)
・「また,液晶表示装置107,109の接合面をより強化するために,樹脂フ
ィルム123の上にはまた一つの破損防止手段として金属で形成された別途の
補強部材125をさらに提供し得る。…」(段落【0019】)
・「図9は,本発明によって前記液晶表示装置107,109が密着した場合
に,光学フィルムを用いてその継ぎ目が使用者の眼に見えないようにする技術
を説明するために図示した図面である。図示されているように,携帯用表示装
置が前述したように構成された状態において,前記2つの液晶表示装置10
7,109の表面には,前記蓋103が前記本体101から水平状態に開かれ
た場合に,平坦な状態を成すようになる光学フィルムシート127が付着され
ている。」(段落【0021】)
・「このような光学フィルムシート127は,前記液晶表示装置107,109
の全面にかけて設けられてもよく,或いは図10に示されているように前記継
ぎ目部位の付近に該当する前記液晶表示装置107,109の部位に形成され
てもよい。…」(段落【0023】)
・【図8(b)】
【図8(c)】
【図9】
イ以上に基づき検討するに,まず,引用刊行物1の図8(b)及び(c)には,
液晶表示装置間の継ぎ目部位に,液晶表示装置を構成する上下の基板に挟
まれるようにして側壁121が設けられ,また,破損防止手段である樹脂
フィルム123,補強部材125が前記上下基板及び側壁121を覆うよ
うに設けられていることが認められる。
一方,引用刊行物1の図9及び図10(二つの液晶表示装置を接合した
全体の断面図)には,側壁121が明確に示されていない。すなわち,こ
れらの図はいずれも液晶表示装置間の継ぎ目がみえないようにするため液
晶表示装置の表面に付着された光学フィルムシートについて説明するため
の図であって,側壁や補強部材等に関しては必ずしも詳細に記載されてい
ないところ,前記図8(b)及び(c)によれば側壁121は液晶表示装置を構
成する上下の基板に挟まれているのに対して,図9及び図10における液
晶表示装置間の継ぎ目部位には上下の基板に挟まれた部材は記載されてい
ないことから,側壁等の記載は簡略化されているものと考えられる。
したがって,液晶表示装置間の継ぎ目部位については図8(b)及び(c)に
側壁121が記載されているものの,側壁121が上下両基板の四辺の全
周囲に沿って設けられていることは,図面上では,明確に示されていると
はいえない。
ウもっとも,引用刊行物1(甲1)の発明の詳細な説明の記載によれば,
側壁121は「液晶表示装置107,109を駆動する透明電極119が
外部に現れないようにコーティング」し,「これら液晶表示装置107,
109の両基板()の間に注入された液晶が外部に流出しないようsubstrate
に前記両基板を接合する」(段落【0016】)ものであり,透明電極が
外部に現れず,液晶が外部に流出しないように上下の基板を接合するため
には,液晶表示装置間の継ぎ目部位に側壁121を設けるだけでは足り
ず,それぞれの液晶表示装置の四辺の全周囲に沿って側壁121を設ける
ことが必要である。
したがって,引用刊行物1に記載されている側壁121は,液晶表示装
置間の継ぎ目部位だけでなく,それぞれの液晶表示装置の四辺の全周囲に
沿って設けられることを当然の前提としているものである。
エそして,側壁121が何によって形成されるかについては,引用刊行物
1に「側壁121は,液晶表示装置に通常使用されているシーラント
()によって形成されるのが普通である」(段落【0017】)と記sealant
載されていることから,側壁121はシーラントによって形成されること
が示されている。
オ以上から,引用刊行物1には,シーラントによって形成される側壁12
1が上下両基板の四辺の全周囲に沿って設けられていることが実質的に記
載されているものであって,審決がなした引用発明1の認定に誤りはな
い。
(2)また原告は,本願発明6と引用発明1との一致点及び相違点の認定に関し
て,審決が「引用発明1の前記『上下両基板同士をシールするシーラントに
よって形成された側壁121』が,本願発明6の『前記第1及び第2基板を
シールする第1及び第2シーラント』に対応するものであるといえる。そし
て,…引用発明1の前記『上下両基板同士をシールするシーラントによって
形成された側壁121』が,本願発明6の『前記第1シーラントは前記連結
部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして』及び『前記第2シ
ーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし』と同様の役割を担
っていることは明らかである」(13頁22行∼30行)としたのは誤りで
あると主張するので,更にこの点について検討する。
ア本願発明6は「第1及び第2基板をシールする第1及び第2シーラン
ト」を備えたものであり,「前記第1シーラントは前記連結部に対応する
前記第1及び第2基板の部分をシールして,前記第2シーラントは前記第
1及び第2基板の残り部分をシール」するものであるところ,引用刊行物
1には,前記(1)に検討したとおり,シーラントによって形成される側壁
121が上下両基板の四辺の全周囲に沿って設けられていることが記載さ
れているものの,「シーラントによって形成される側壁121」を本願発
明6における「第1シーラント」及び「第2シーラント」のように区分す
ることは,明示的には記載されていない。
イもっとも,本願請求項6には,「第1シーラント」及び「第2シーラン
ト」の意義に関して,両シーラントが相互対向配置された第1及び第2基
板をシールするものであること,第1シーラントは隣接した2個のディス
プレーパネルが相互接触する連結部に対応する第1及び第2基板の部分を
シールするものであり,第2シーラントは第1及び第2基板の残り部分を
シールするものであることが記載されているにすぎず,そのほかに「第1
シーラント」及び「第2シーラント」が有する技術的意義についての記載
はない。
ウそこで更に,本願明細書(甲4)の記載をみるに,発明の詳細な説明に
は次の記載がある。
・「【従来の技術】一般に,平板表示装置(FPD)として液晶表示装置(LC
D),有機EL装置などがある。…以下,平板表示装置を液晶表示装置(LC
D)を中心にして説明する。」(段落【0002】)
・「図1は,液晶表示装置で用いる従来の液晶パネルを示す断面図である。図1
に図示されたように,前記液晶パネルは上,下部基板12,14とその間に介
在された液晶層16で構成される。…前記上,下部基板12,14は液晶の漏
れを防止するようにシーラント18によりシール(seal)されている。」
(段落【0003】)
・「前記したようなマルチパネルディスプレー装置は,2個以上のディスプレー
パネル間の連結部をなるべく小さくするほど一つのディスプレー画面を見るの
と同等な効果を得ることができる。」(段落【0010】)
・「このために,連結部でのシール材18の幅が外郭部分でのシール材19の幅
より小さくあるべきだが,シール材18の幅を狭くすれば一つのディスプレー
画面を見るのと同等な効果は向上させることができるが,シール材の信頼性が
低下される問題点があった。」(段落【0011】)
・「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,前記したような従来技術
の問題点を解決するためのことであって,広いディスプレー領域を有した平板
表示装置を提供することにある。」(段落【0012】)
・【課題を解決するための手段】
「本発明はまた複数個のディスプレーパネルを含んでおり,隣接した2個のデ
ィスプレーパネルは連結部で相互接触しており,前記複数個のディスプレーパ
ネル各々は相互対向する第1及び第2基板と,前記第1及び第2基板をシール
することに十分な幅を有した第1及び第2シーラントを含んでおり,前記第1
シーラントは前記連結部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールし
て,前記第2シーラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシールし,前記
第1及び第2基板中少なくとも一つはその内面の一部分上に形成されて前記第
1シーラントに付着された突出部を有した平板表示装置を提供している。」
(段落【0017】)
・「前記第1シーラントは,前記第2シーラントより狭い。…」(段落【001
8】)
・「【発明の実施の形態】以下,添付した図面を参照して,本発明の一実施例を
通して本発明をさらに詳細に説明する。」(段落【0019】)
・「…複数の突出部115,125が前記上,下部基板110,120の内面の
非ディスプレー領域160に配設されている。…」(段落【0022】)
・「前記突出部115,125は前記シーラントSに対する接触面積を増やす役
割をし,したがって前記シーラントSと二基板110,120間の接着力を増
やす。前記シーラントSの幅Wが狭くなっても,前記シーラントSの信頼性は
低下しないし,その結果複数のディスプレーパネルが一つのディスプレー画面
に見える効果が増加される。」(段落【0023】)
・「図8は,本発明の望ましい実施例による少なくとも2個のディスプレーパネ
ルを有した平板表示装置(すなわち,マルチパネル表示装置)を示す平面図で
ある。…」(段落【0033】)
・「前記第1ディスプレーパネル200は,上,下部基板210,220を備え
ている。2個の電極211,221が前記上,下部基板210,220の内面
に各々配設される。前記上,下部基板210,220は第1及び第2シーラン
トS1,S2によってシールされている。前記第1シーラントS1は前記連結
部400に対応する前記上,下部基板210,220のエッジ部分をシールし
て,前記第2シーラントS2は前記上,下部基板210,220の残り他のエ
ッジ部分をシールしている。」(段落【0035】)
・「図8及び9に図示されたように,図6の突出部は,前記連結部400に対応
する非ディスプレー領域260,360の一部分,すなわち前記第1及び第3
シーラントS1,S3に対応する二基板の内面の一部分に形成されている。こ
の場合,連結部400の幅は小さく形成され,その結果一つのディスプレー画
面に見える効果は増加するようになる。」(段落【0038】)
・「しかし,前記突出部は,前記非ディスプレー領域260,360の全領域,
すなわち前記第1及び第3シーラントに対応する領域のみならず,第2及び第
4シーラントに対応する二基板の内面の領域上に形成される場合もある。その
結果,一つのディスプレー画面のように見える効果は増加されて,マルチパネ
ルディスプレー装置の総ディスプレー領域も増加するようになる。」(段落【
0039】)
・「図6の突出部が前記連結部400に対応する前記非ディスプレー領域26
0,360に形成される場合に,前記第1ディスプレーパネル200の前記第
1及び第2シーラントS1,S2は相異なる幅を有するようになる。…言い換
えれば,前記連結部400に形成された前記第1及び第3シーラントS1,S
3は前記第2,及び第4シーラントS2,S4より狭い幅を有するようにな
る。」(段落【0040】)
エ(ア)以上によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,従来技術のマル
チパネルディスプレー装置において,隣接した2個のディスプレーパネ
ル間の連結部の幅を小さくして一つのディスプレー画面を見るのと同等
の効果を得るためにシール材の幅を狭くすると,シール材の信頼性が低
下してしまうという問題点があったこと,この問題点を解決するために
本願発明6は上下の基板の内面に突出部を設け,この突出部がシーラン
トに対する接触面積を増やす役割をすることによりシーラントと上下の
基板との接着力が増し,その効果として,シーラントの幅が狭くなって
もシーラントの信頼性は低下しないことが記載されている。
本願請求項6において「第1シーラントは前記連結部に対応する前記
第1及び第2基板の部分をシールして,前記第2シーラントは前記第1
及び第2基板の残り部分をシール」するものであること,及び,「第1
及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成され
て前記第1シーラントが付着する突出部を有する」ことが発明特定事項
として記載されているのは,上記のような技術的意義を有するものと解
される。
(イ)ところで,本願明細書の発明の詳細な説明には,前記ウに掲記したと
おり,「前記突出部は,前記非ディスプレー領域260,360の全領
域,すなわち前記第1及び第3シーラントに対応する領域のみならず,
第2及び第4シーラントに対応する二基板の内面の領域上に形成される
場合もある。その結果,…マルチパネルディスプレー装置の総ディスプ
レー領域も増加する」(段落【0039】)という記載があり,突出部
は第2シーラントに対応する領域上に形成されてもよいものとされてい
る。
したがって,本願発明6の第1シーラントと第2シーラントとの相違
は,第1シーラントはディスプレーパネル間の連結部をシールし,必ず
突出部が付着されるものであるのに対して,第2シーラントは連結部以
外の部分をシールし,突出部の付着が必要的でないというものである。
(ウ)そして,前記のとおり,本願請求項6は「第1シーラントは前記連結
部に対応する前記第1及び第2基板の部分をシールして,前記第2シー
ラントは前記第1及び第2基板の残り部分をシール」するものであるこ
と,及び,「第1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一
部分上に形成されて前記第1シーラントが付着する突出部を有する」こ
とを発明特定事項として記載しているのであるから,上記のような第1
シーラントと第2シーラントとの相違点は,両シーラントの備えるべき
構成として本願請求項6に記載されている事項であるにすぎない。
換言すれば,本願請求項6における第1シーラントと第2シーラント
の区別は,相互対向配置された第1及び第2基板の四辺の全周囲をシー
ルするシーラントのうち,どの部分に突出部が必要的に設けられるのか
を特定するための便宜として第1シーラントと第2シーラントに区分さ
れているものにすぎず,シーラントの構造自体が第1シーラントか第2
シーラントかによって異なるものではない。
オ以上のとおり,本願発明6における第1シーラントと第2シーラントは
シーラントの構造自体が相違するものではなく,両シーラントを合わせれ
ば,相互対向配置された第1及び第2基板の四辺の全周囲をシールするも
のとして,引用発明1の「シーラントによって形成された側壁121」と
同じ構造を有するものである。
そして,引用発明1の「シーラントによって形成された側壁121」
も,その一部は液晶表示装置間の継ぎ目部位に設けられ,そのほかの部分
は継ぎ目部位以外の部分に設けられているものであるから,前者(「その
一部」)は本願発明6の第1シーラントに相当し,後者(「そのほかの部
分」)は本願発明6の第2シーラントに相当するということができる。
カしたがって,本願発明6と引用発明1との相違点は,本願発明6は「第
1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成され
て前記第1シーラントが付着する突出部を有する」のに対し引用発明1は
このような構成を有しないという点に尽きるものであり,本願発明6と引
用発明1との一致点に関して審決の認定に誤りはなく,また,相違点の看
過もない。
(3)したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
3取消事由3(相違点についての判断の誤り)について
(1)審決は,相違点についての容易想到性を判断するに際し,甲2文献及び甲
3文献に下記記載があると認定(14頁6行∼22行)した上,「かかる技
術手段からみて,液晶パネルのような平面表示装置を構成する基板とシーラ
ントとの間の接着力を増大させるために,基板の表面にシーラントが付着す
る面積を増大させるための突出部を…設けることは,本願の優先権主張日前
の周知技術である」(14頁23行∼27行)と認定するところ,同認定自
体については原告もこれを争わない。

・甲2文献の記載についての認定
「2枚の電極基板1,2(本願発明6の『第1基板,第2基板』に相当す
る。)に防湿用凸部5(本願発明6の『突出部』に相当する。)を設けることに
より,基板とシール4(本願発明6の『シーラント』に相当する。)との接着面
積が増えることによる接着力の向上とシール用接着剤と下基板1及び上基板2と
の接着界面からの水分の侵入を防止する効果を図るために,2枚の電極基板1,
2を貼合わせるシール箇所に,シール4に沿って水分の侵入を防止する防湿用凸
部5を前記電極基板1,2の両方に複数設ける技術手段」(審決14頁5行∼1
2行)
・甲3文献の記載についての認定
「液晶セルにおける上部透明電極基板1及び下部透明電極基板2(本願発明6
の『第1基板,第2基板』に相当する。)の周縁部の表面上にストライプ状凹凸
部5(本願発明6の『突出部』に相当する。)をそれぞれ複数本枠状に形成し,
このストライプ状凹凸部5上にシール材3′(本願発明6の『シーラント』に相
当する。)を配置して,つぎにこれらの2つの透明電極基板1,2の周縁部のス
トライプ状凹凸部5を互いに対向させて重ね合せ,上下から圧接加熱焼成してシ
ール材3′を溶融せしめて,硬質ガラス基板1,2の周縁部をシール材層3で接
着する技術手段」(審決14頁13行∼21行)
(2)本願発明6と引用発明1との相違点は,前記のとおり,本願発明6が「第
1及び第2基板のうちの少なくとも一方はその内面の一部分上に形成されて
前記第1シーラントが付着する突出部を有する」のに対し引用発明1はこの
ような構成を有しないという点であるところ,引用発明1に甲2文献及び甲
3文献に記載された上記周知技術を適用すれば,引用発明1において上下の
基板に対するシーラントの接着力を増大させるために,基板の表面にシーラ
ントが付着する面積を増大させるための突出部を設けることは,当業者(そ
の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易になし得
るところである。
(3)これに対して原告は,本願発明6は引用発明1とは課題を異にし,単純に
引用発明1と周知技術を組み合わせるだけでは得られない構成を有するもの
であると主張し,その根拠として,本願発明6は連結部に関してはシーラン
ト(第1シーラント)の幅を狭くして突出部を備えることとし,連結部以外
の部分については接着力の維持及びコスト高の回避を優先してシーラント
(第2シーラント)の幅を狭くしない構成としたものであると主張する。
アしかし,前記2(2)ウで述べたとおり,本願明細書(甲4)の発明の詳
細な説明において,突出部は第2シーラントに対応する領域上に形成され
てもよいものとされており(段落【0039】),また,「突出部が前記
連結部400に対応する前記非ディスプレー領域260,360に形成さ
れる場合に,…前記第1及び第2シーラントS1,S2は相異なる幅を有
するようになる。…言い換えれば,前記連結部400に形成された前記第
1及び第3シーラントS1,S3は前記第2,及び第4シーラントS2,
S4より狭い幅を有するようになる」(段落【0040】)と記載されて
いる。
これらの記載によれば,第1シーラントの幅が第2シーラントよりも狭
くなるのは,突出部が第1シーラントに対応する領域上のみに形成された
場合であり,他方,突出部が第1シーラント及び第2シーラントの双方に
対応する領域上に形成された場合には,第1シーラントと第2シーラント
のいずれについても基板の表面に付着する面積が増大し第1基板及び第2
基板との接着力が増大する結果,ともにシーラントの幅を狭くすることが
できるものである。
したがって,第1シーラントと第2シーラントでは幅が異なるとする原
告の前記主張は採用することができない。
イまた,本願発明6と引用発明1とは技術的課題が異なるという主張につ
いても,前記2(1)アのとおり,引用刊行物1においても液晶表示装置間
の継ぎ目において映像が両分されたように見えるのを避けるため,継ぎ目
の厚さを最小化することが課題とされている(段落【0015】,【00
16】)のであって,むしろ本願発明6とは技術的課題を共通にするもの
である。
(4)したがって,原告主張の取消事由3は理由がない。
4取消事由4(顕著な作用効果の看過)について
原告は,本願発明6によればシーラントの信頼性(接着力)を低下させずに
シーラントの幅を狭くすることによって広いディスプレー領域を実現し,ディ
スプレー画面が一つのように見えるという効果を得ることができるのに,審決
は本願発明6の顕著な作用効果を看過したものであると主張する。
しかし,原告の主張する上記作用効果は,第1基板及び第2基板の少なくと
も一方の内面上に第1シーラントが付着する突出部を設けることによって,シ
ーラントの基板表面に付着する面積が増大し,第1基板及び第2基板との接着
力が増大する結果,シーラントの幅を狭くすることができるというものであ
り,本願発明6の構成を採用するときに容易に推考することのできる作用効果
である。
そして,本願発明6の構成が当業者において容易に想到し得るものであるこ
とは,前記3において検討したとおりである。
したがって,本願発明6の作用効果に関する審決の判断に誤りはなく,原告
の主張する取消事由4は理由がない。
5結語
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官今井弘晃
裁判官清水知恵子

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