弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人CことDの上告趣意、被告人E、同Fの弁護人中村登音夫の上告趣意、被
告人Gの弁護人中村登音夫の上告趣意、被告人HことIの弁護人関田政雄の上告趣
意は末尾に添えた各書面記載のとおりである。
 被告人E同Fの弁護人中村登音夫の上告趣意第一点について。
 原判決は、被告人らが共謀の上「先に賭博に負けた金銭を取返へす為相手を脅迫
して之を喝取しやうと考へ」原判示のようにABらに暴行脅迫を加えて同人らを畏
怖させて金員を喝取した事実を認定したのであつて、所論のように被告人らが権利
実行の手段として脅迫行為を行つたことを認定したものでないこと判文上明らかで
ある。そして論旨引用の大審院判決は権利実行に仮托して恐喝を行つた場合の判決
であつて原判決は所論のように右判例と相反する判断をしたものではないので論旨
は理由がない。
 同第二点について。
 論旨引用の当裁判所第一小法廷判決は、事実の認識について全く反対の趣旨の供
述を引いてその認識があつたような認定をしたのを違法であるとしたものであつて、
本件のように所論の証拠が被告人らが恐喝の現場に居つたことの証明になる場合に
適切な判決ではない。そして判決の証拠説明としては証拠の標目を示せば足りるの
であるから、本件のような証拠については判示にそわない部分はこれを採用しなか
つたものと判断すべきである。論旨引用の東京高等裁判所判決もまた本件の場合に
適切でない。それゆえ、原判決には所論のように判例と相反する判断はない。
 被告人Gの弁護人中村登音夫の上告趣意第一点について。
 論旨は、原判決が所論(一)の超過買受行為と所論(二)の所持とが手段結果の
関係にあるものとして刑法五四条一項後段を適用したことを非難し、価格等統制令
に違反して買受けた物資を同令に違反して売渡した場合が連続犯であつて牽連犯で
はないとして大審院判例に違反するというのであるが、所論(二)の所持が所論(
一)の超過買受行為の際に取得した所持の継続に過ぎないとの論旨は、原審の認定
した事実と異なる事実を主張するものであるから採用することができない。また、
右(一)と(二)の各所為を手段結果の関係にあるものとして刑法五四条一項後段
を適用した原判決が論旨引用の大審院判決に違反するとの主張は、連続犯の規定が
廃止されてその適用が排除された以後の本件については不利益な主張であるばかり
でなく、判例違反として適切な主張ではない。
 同第二点について。
 論旨引用の当裁判所判決は、傷害罪につき共同して暴行を加えたという判示だけ
では、共同正犯なのか、同時犯なのか、刑法二〇七条の場合なのか不明であるとい
う趣旨であつて、本件のように原判示によつて明らかに共同正犯と解せられる場合
に適切な判例ではない。されば論旨は理由がない。
 同第三点について。
 所論Gの原審公廷における供述には、論旨にも認めているように原判示事実に符
合するものもあり、従つてこれを他の証拠と綜合すれば証拠となり得るものである。
それゆえ、右供述は所論のように証拠価値がないわけではない。されば、論旨引用
の判決はいずれも本件に適切でない。
 同第四点について。
 所論被告人Iに対する検察事務官の聴取書は、記録第二冊一七五丁以下に存在す
る。原判決が記録第二冊一二五丁以下として引用したのは記録丁数の誤記と認めら
れる。されば、所論判例違反の主張は前提たる事実を欠き理由がない。
 被告人HことIの弁護人関田政雄の上告趣意第二点について。
 論旨中には憲法違反の語があるけれども、その実質は原審の証拠の取捨判断を非
難するものであるから採用できない(原判決挙示の証拠から原判示事実は認定し得
られるから虚無の証拠による事実の認定ではない)。
 以上の外の各弁護人及び各被告人の主張する上告趣意は、いずれも刑訴四〇五条
の定める事由には当らないので採用できない。また本件については刑訴四一一条を
適用すべき場合とも認められない。なお、被告人E、同Fの弁護人押川定秋同信正
義雄、被告人Dの弁護人服部光文は、いずれも法定の期間内に上告趣意書を提出し
ない。
 よつて、本件各上告を理由ないものと認め、刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条に
従い裁判官全員の一致した意見によつて主文のとおり判決する。
  昭和二六年一二月二五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三

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