弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決中破上告人ら(原告ら)勝訴の部分を取り
消す。
     上告人は被上告人らに対し別紙目録記載の建物につき、東京法務局墨田
出張所昭和三〇年三月一日受付第三九五三号をもつてなした所有権保存登記を、右
建物につき被上告人らが各自六分の一、上告人が六分の二の持分を有する共有保存
登記に更正登記手続をせよ。
     被上告人らのその余の請求を棄却する。
     訴訟の総費用は、これを三分し、その二を上告人、その余を被上告人ら
の負担とする。
         理    由
 上告代理人江見盛秀の上告理由第二点について。
 本件記録に徴するに、上告人(控訴人)は原審において「原判決(一審判決)中
控訴人敗訴の部分の取り消し及び被控訴人(被上告人)らの請求の棄却並びに一、
二審の訴訟費用は被控訴人らの負担とする」との判決のみを求め、被上告人らは「
控訴を棄却し、控訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求め、附帯控訴等はな
かつたことが明らかであるから、一審判決において棄却された共有持分権存在確認
の請求につき、上告人主張の部分は原審において審理の対象とならず、従つて原判
決もこれについては何ら判断を加えていないのである。かかる一審判決に対する非
難は、上告適法の理由とならず、採るを得ない。
 同第一、第三、第四点について。
 本件記録に徴すれば、被上告人らは上告人に対し、本件建物は被上告人らの被相
続人Dの所有であつたところ、同人の昭和二九年一月一日の死亡により、上告人は
同人の妻として三分の一、被上告人らは同人の実子として夫々六分の一の割合によ
つて相続財産としてその共有となつたものであるが、上告人は遺産分割の調停手続
中擅に昭和三〇年三月一日東京法務局墨田出張所受付第三九五三号を以つて、同人
の単独所有として保存登記を経由したので、右保存登記の抹消登記並びに共有持分
の保存登記手続をなす旨の判決を求め、原判決は右主張事実をすべて認めて、請求
を全部認容したものであることが明らかである。しかし原審の右認定事実から明ら
かなように上告人も被相続人Dの妻として本件建物につき三分の一の共有持分権を
有するものであり、かかる場合には、右単独所有権保存登記の全部抹消を命ずべき
ではなく、被上告人らが上告人に対して請求できるのは、被上告人らの持分につい
てのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない。けだし右単独所有権保存
登記も上告人の持分に関する限り実体関係に符合しており、また被上告人らは自己
の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである(最高裁判所
昭和三五年(オ)第一一九七号、同三八年二月二二日第二小法廷判決、民集一七巻
一号二三五頁、同昭和三三年(オ)第一〇四二号、同三七年五月二四日第一小法廷
判決、裁判集六〇巻七六七頁参照)。
 そして更正登記は実質において一部抹消登記であるから、被上告人らの前記所有
権保存登記の抹消登記手続を求める申立には、更正登記手続を求める申立を含むも
のと解するのを相当とするところ(前掲第二小法廷判決参照)、原審の確定した事
実によれば、被上告人らの上告人に対する所有権保存登記抹消登記手続請求は、被
上告人ら四名の共有持分に関する所有権保存登記の抹消を求める範囲において正当
としてこれを是認すべきであるが、それ以上に進んで上告人の共有持分をも含めた
本件建物についての所有権保存登記全部の抹消を求めるのは失当である。また本件
建物は上告人は三分の一、被上告人らは夫々六分の一の割合によつて共有するもの
であること前叙のとおりであるから、上告人に対し、前記所有権保存登記のうち被
上告人らの共有持分に関する部分を抹消し、本件建物につき上告人は三分の一、被
上告人らは夫々六分の一の割合による共有保存登記とする更正登記手続を命ずるの
を相当と認め、被上告人らの前記請求を右の限度において認容し、その余の請求を
失当として棄却すべきものとする。
 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条により原判決を破棄して第一
審判決を取り消したうえ自判し、訴訟費用の負担につき、同法九六条、八九条、九
二条、九三条一項を適用し、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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