弁護士法人ITJ法律事務所

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平成八年(ワ)第一二一四一号不正競争行為差止等請求事件
判決
原告          株式会社八木研
右代表者代表取締役      【A】
右訴訟代理人弁護士      福   原   哲   晃
同              中   島   清   治
同              松   村   信   夫
右松村信夫訴訟復代理人弁護士 和   田   宏   徳
被告             株式会社三善堂
右代表者代表取締役      【B】
被告             株式会社カリタ
右代表者代表取締役      【B】
右被告両名訴訟代理人弁護士  竹   田   章   治
同              小   川   憲   久
同              池   田   眞 一 郎
 主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告らは、別紙イ号目録、ロ号目録及びハ号目録記載の仏壇を譲渡し、引き渡
し、譲渡若しくは引渡しのために展示し又は輸出してはならない。
二 被告らは、前項記載の各仏壇を廃棄せよ。
三 被告株式会社カリタは、原告に対して、金二〇四〇万円及びこれに対する平成
八年一二月八日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による
金員を支払え。
四 被告株式会社三善堂は、原告に対して、金六二五六万円及びこれに対する平成
八年一二月六日(本件訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による
金員を支払え。
第二 事案の概要
一 基礎となる事実(争いがないか弁論の全趣旨より認められる。なお、書証番号
は甲1などと略称し、枝番のすべてを示すときは枝番の記載を省略する。)
1 当事者
(一) 原告は、仏壇仏具の製造、販売を業とする株式会社である。
(二) 被告株式会社カリタ(以下「被告カリタ」という。)は、仏壇仏具、神仏葬
祭用具一式の製造及び卸販売を業とする株式会社である。
 被告株式会社三善堂(以下「被告三善堂」という。)は、仏壇仏具等の販売を業
とする株式会社である。
2 本件原告商品の販売
 原告は、別紙目録(一)の仏壇を「ハバネラ」の商品名で平成三年一一月ころか
ら、同目録(二)の仏壇を「ソナチネ」の商品名で同年一二月ころから、同目録
(三)の仏壇を「ワルツ」の商品名で平成五年六月ころからそれぞれ製造、販売し
ている(以下、別紙目録(一)ないし(三)の各仏壇を「本件原告商品1」ないし
「本件原告商品3」といい、それらを総称して「本件原告商品」という。)。
3 本件被告商品の販売
 被告カリタは、平成七年九月ころから、別紙イ号ないしハ号目録の記載の各仏壇
を製造して被告三善堂に販売し、被告三善堂は右仏壇をそれぞれ「りんどう50」、
「りんどう40」及び「あじさい」の商品名で顧客に販売している(以下、別紙イ号
ないしハ号目録記載の各仏壇を「本件被告商品1」ないし「本件被告商品3」とい
い、それらを総称して「本件被告商品」という。)。
二 原告の請求
 本件で、原告は、本件原告商品の各形態は原告の商品であることを示す商品表示
として周知性を有するところ、本件被告商品1ないし3の形態は、それぞれ本件原
告商品1ないし3の形態と類似するから、被告らが本件被告商品を販売する行為
は、不正競争防止法二条一項一号に定める不正競争行為に該当するとして、被告ら
に対し、同法三条に基づき被告商品の販売等の差止め及びその廃棄を請求するとと
もに、同法四条に基づき損害賠償を請求した。
 三 争点
1 本件原告商品の形態には、原告の商品であることを示す商品表示として周知性
があるか。
2 本件被告商品の形態は本件原告商品の形態と類似し、本件原告商品と混同を生
じさせるおそれがあるか。
3 損害額。
第三 争点に関する当事者の主張
一 争点1(本件原告商品形態の商品表示としての周知性)について
【原告の主張】
1 原告製仏壇の特徴
(一) 本件原告商品を含む原告製仏壇は、原告が昭和五三年ないし五四年ころに、
洋間にも置くことができ、扉を閉めておけば外観は家具であり、扉を開ければ仏壇
となるというコンセプトの下に、従来型仏壇とは全く異なる新しいスタイルの仏壇
を創造することを目的として、社内で又は社外デザイナーに委託して創造したもの
であり、以後、「現代仏壇」シリーズとして、従来の仏壇にはない斬新なデザイン
等の仏壇を次々と開発し、世間の注目を浴びてきた。
 原告の現代仏壇シリーズは、従来の仏壇にない現代風の洗練された外観を有する
仏壇の商品群として、仏壇仏具を扱う取引業者だけでなく、一般消費者の間におい
ても周知となっている。
(二) 本件原告商品は、高級インテリア商品として通用するようなデザイン・品
質・機能を追求する商品のうち、四枚扉を現代風に表現した高級な造りの「匠シリ
ーズ」に属するものである。
2 本件原告商品の形態的特徴
(一) 本件原告商品の形態は、別紙目録1ないし3のとおりであり、いずれも従来
の仏壇とは異なる形態的特徴を有しているが、主な点としては次のとおりである。
(1) 仏壇前面の扉及び引出の前板は、すべてウォールナット材のムク板で構成され
ている。
(2) 仏壇上部の扉は、中央部は二枚の幅の広い扉、両端は二枚の幅の狭い扉で構成
されており、それぞれの扉は接続部を一定の角度で角切りに接合(これを「流れト
メ」という。)するようになっている。
(3) (1)に記載した中央扉及び引出の中央部に半円状にくり抜いた把手部分が存在
する。
(二) 被告らは、家具調仏壇の類例として乙1ないし6を挙示するが、それらの大
部分は本件原告商品の販売を開始した後に販売されたものであって、仮に本件原告
商品と類似する形態のものがあるとしても、周知の本件原告商品の形態を模倣した
ものにすぎない。
3 広告宣伝等
(一) 原告は、本件原告商品を含む現代仏壇シリーズについて広告宣伝を行うた
め、商品カタログやパンフレットを多数作成し、配布している。
(二) 原告は、本件原告商品を含む現代仏壇シリーズについて、各種新聞及び雑誌
を通じて広く広告宣伝をしている。
(三) 本件原告商品を含む現代仏壇シリーズについては、新聞や雑誌において記事
として掲載され、広く世間の注目を集めている。
(四) 本件原告商品1を始めとする現代仏壇シリーズは、通産省や財団法人大阪デ
ザインセンターにおいてグッドデザイン商品に選定された。
4 販売実績
 本件原告商品は、いずれも販売直後から現在まで継続的に相当数が販売され、特
に本件原告商品1は多い年には年間三〇〇本以上が販売されるなど、現代仏壇シリ
ーズの中でも人気商品となっている。
5 まとめ
 以上の諸点から、本件原告商品の形態は、遅くとも平成七年一二月ころまでに
は、原告の商品であることを示す商品表示として取引業者及び一般消費者の間で周
知性を獲得するに至ったというべきである。
 仮にそうでないとしても、前記のとおり原告の現代仏壇シリーズは現代風の洗練
されたデザインの商品群として周知性を獲得しているところ、本件原告商品の形態
は、他の現代仏壇シリーズとの形態的類似性から、原告の現代仏壇に属するシリー
ズ商品であるとの識別力を有するに至ったというべきである。
【被告らの主張】
1 原告が本件原告商品の形態的特徴として挙げる点は、家屋内に設置する収納庫
の一種として必然的に帰結する機能的形態にすぎず、従来から数多く見られる陳腐
な形態にすぎない(乙1ないし6)。
2 原告は、宣伝広告の実績を指摘するが、なされたとされる宣伝は、すべて原告
の現代仏壇シリーズについての一般的宣伝広告にすぎず、本件原告商品は他の多く
の原告製仏壇の中に埋没している。
3 したがって、本件原告商品の形態には、何らの出所識別機能がない。
二 争点2(類似性、混同のおそれ)について
【原告の主張】
1 本件原告商品1ないし3と本件被告商品1ないし3の形態は、別紙目録1ない
し3及び別紙イ号ないしハ号目録記載のとおりであり、極めて類似している。
2 本件原告商品も本件被告商品もともに店頭に陳列されて販売されるものであ
り、商品の形態を重視して仏壇を購入する顧客も多いから、両者が誤認混同される
おそれがある。
3 また、被告らは原告の現代仏壇シリーズの形態を模倣した商品を順次販売して
きており、少なくともこれらの一連の行為によって、現代仏壇シリーズ商品と同一
又は類似の形態の仏壇を製造、販売するライセンスが被告らに付与されているので
はないかとの広義の混同を生じるおそれがある。
【被告らの主張】
1 本件被告商品はナラ材を使用しているなど、本件原告商品の形態とは類似して
いない。
2 消費者が仏壇を購入するに当たっての基準とするのは、優先度の順に、予算、
大きさ、色合い、材質、デザイン等であり、しかも店頭で販売員の説明を受けて購
入するものであるから、本件原告商品と本件被告商品とを誤認混同するおそれはな
い。
三 争点3(損害額)について
【原告の主張】
1 被告らは、平成五年一一月二八日から同八年一一月二七日までの間(本件訴訟
提起前三年間)に少なくとも本件被告商品1を一二〇本、本件被告商品2を三〇
本、本件被告商品3を一二〇本販売し、これによって、被告カリタは一七四〇万
円、被告三善堂は五八五六万円の利益を受けており、不正競争防止法五条一項によ
り、右額が原告の受けた損害額と推定される。
2 また、本件における原告が請求し得る弁護士費用としては、被告カリタに対し
ては三〇〇万円、被告三善堂に対しては四〇〇万円が相当である。
3 したがって、原告は、被告カリタに対しては二〇四〇万円、被告三善堂に対し
ては六二五六万円の損害賠償を請求し得る。
【被告らの主張】
 原告の主張は争う。
第四 争点に対する当裁判所の判断
一 争点1(本件原告商品形態の商品表示としての周知性)について
1 後掲各証拠、原告代表者本人及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ
る。
(一) 原告の現代仏壇シリーズの発売経緯及び種類
 原告は、狭い住宅や洋間にも自由に置けることを目的とした仏壇(現代仏壇)
を、昭和五九年に「自由仏壇」シリーズの名称で発売し、翌昭和六〇年には「アー
バンメモリー」シリーズ、同六一年には「メモリアル21」シリーズ、同六二年には
「マイメモリー」シリーズ、同六三年には「はなかまど」シリーズ、平成元年には
「自然」シリーズといった種々のシリーズを発売してきた(甲28)。
 また、原告は、平成三年には「光」シリーズ及び「匠」シリーズ(本件原告商品
は匠シリーズ中の商品である。)、平成五年には「コスモス」シリーズ、平成七年
には「花」シリーズを発売し、本件被告商品が発売された平成七年の時点では、五
シリーズ、三〇種類の仏壇を「現代仏壇」の名称の下に販売していた(甲
4、28)。平成七年時点で販売されていたこれら現代仏壇シリーズのうち、原告主
張の三点の形態的特徴を備えるものは、本件原告商品1ないし3の三種類のみであ
り、同じ匠シリーズとされるものでも右特徴を備えないものが五種類あった(甲
4)。
 また、原告は、平成一〇年には、「アール・ヌーボー」シリーズ、「クラフトメ
モリー」シリーズ、「イタリア」シリーズを追加した(甲30)。
 これらの現代仏壇シリーズのうち、ハバネラ(本件原告商品1)、ジュピター
(コスモスシリーズ)及びニューファンタジア(光シリーズ)については、平成八
年一〇月に財団法人大阪デザインセンターからグッドデザイン商品に選定され(甲
13、33の1)、シクラメン(花シリーズ)及びテノン(クラフトメモリーシリー
ズ)については、平成九年一〇月に通商産業大臣からグッドデザイン商品に選定さ
れた(甲33の2及び3)。
(二) 現代仏壇シリーズに関する記事の掲載
 原告の現代仏壇は、最初に自由仏壇シリーズが発売された昭和五九年以降、伝統
的な仏壇とは異なるユニークな家具調のデザインを採用したものとして、新聞及び
雑誌上で取り上げられることも多い(本件原告商品が発売される以前のものとし
て、甲15の1ないし31及び甲16の1ないし11、発売以後のものとして、甲9ないし
12、甲15の32ないし34、甲16の12ないし20)。しかし、本件原告商品の発売前の記
事においては当然ながら本件原告商品の形態を掲載したものはなく、また、発売後
の記事においても、多種類の原告製仏壇を一括して紹介するものがほとんどであ
り、本件原告商品を特に取り上げた記事は甲12(「通販生活」平成七年二月号)の
みである。
(三) 現代仏壇シリーズに関する宣伝広告
(1) カタログ・パンフレット等
 原告は、現代仏壇シリーズに関するカタログやパンフレットを別紙宣伝広告実績
表のとおり多数作成し、小売店等に配布した(具体的に証拠として提出されている
ものとしては、甲4ないし8、20、22、29及び30、乙7がある。)。これらのカタ
ログやパンフレットでは、ほぼすべてにおいて多種類の原告製仏壇が掲載されてお
り、本件原告商品に重点を置いたものとして証拠上認め得るものは甲6(光シリー
ズ及び匠シリーズ専用のカタログ)のみである。
(2) 雑誌等への広告の掲載
 原告の現代仏壇シリーズについては、別紙宣伝広告実績表のとおり、数多くの新
聞・雑誌広告がされている(具体的に証拠として提出されているものとしては、甲
16の12〔甲17に同じ〕ないし20、甲17ないし19がある。)。しかし、そのほとんど
は、本件原告商品の写真を掲載していないもの又は本件原告商品とともに他の複数
の原告製仏壇の写真を掲載したものであり、本件原告商品に特に重点を置いた広告
として証拠上認め得るものは甲16の12(平成四年七月一五日の宗教工芸新聞)のみ
である。また、本件原告商品ではないが、原告が指摘する三点の形態的特徴を備え
る原告製仏壇に重点を置いた広告としては、甲18の6(「クロワッサン」平成四年
六月二五日号で、メヌエット及びロンドという商品名の原告製仏壇の写真が掲載さ
れている。)がある。
(3) 地下鉄における広告
 原告製仏壇は、平成八年三月以降、「現代仏壇」として、東京、大阪及び神戸の
各地下鉄の車内広告等においても宣伝がなされた(甲27。平成八年三月から平成九
年八月までが甲24のポスター、平成九年九月から平成一〇年二月までが甲25のポス
ター、平成一〇年三月以降が甲26のポスターである。)。もっとも、それらのポス
ターのうち甲25及び26においては本件原告商品の写真は掲載されておらず、甲24に
おいては他の3種類の原告製仏壇とともに掲載されているにとどまる。
(4) テレビCMの放映
 原告製仏壇については、昭和六一年にアーバンメモリーシリーズについてテレビ
CMが放映されたことがある(別紙宣伝広告実績表参照)ほか、平成九年度以降
も、現代仏壇として、検甲1のテレビCMが各社で放映された(平成一〇年一一月
二六日付け原告証拠説明書添付表)。もっとも、検甲1のテレビCMに写っている
原告製仏壇は、光シリーズに属するファンタジアという商品名の仏壇である。
(四) 販売量
 原告製仏壇は主として仏壇店(ほかに生協等)で販売されているが、平成四年八
月以降の原告製仏壇全体及び本件原告商品の各販売量は、次のとおりである(甲
31、32)。
   (期間)         (原告製仏壇全体)(本件原告商品)
 平成四年八月から平成五年七月   一三六八     二六五
 平成五年八月から平成六年七月   二二八二     六一〇
 平成六年八月から平成七年七月   二九五七     七二三
 平成七年八月から平成八年七月   三三四七     八二〇
 平成八年八月から平成九年七月   四五九六     六五六
 平成九年八月から平成一〇年七月  五四二八     五四四
(五) 他社仏壇の形態
 家具調仏壇は、被告三善堂では昭和四七年ころから取扱いをしており(被告ら代
表者本人の供述)、昭和五八年には京都家具調仏壇株式会社から家具調仏壇が発売
され(甲15の27、甲16の3、甲17)、平成五年には静岡仏壇卸商工業株式会社が種
々の現代調仏壇を製作発売したとの記事が掲載されている(甲16の13)。また、乙
1ないし6によれば、平成九年の時点では、種々の家具調仏壇が各社から販売され
ている。
2 右に基づき検討する。
(一) 元来、商品の形態は、主としてその具備する機能を最も良く発揮させる目的
や美感を高める目的で選定されるものであって、商標のように商品の出所を識別さ
せる目的で選定されるものではない。しかし、当該商品の形態が同種の商品と識別
できるだけの個性的な特徴を示す場合には、長期間独占的に使用するとか、宣伝広
告を積極的に展開するとか、種々の媒体に取り上げられるとか、多くの販売実績を
積み重ねるとかの事情が重なることによって、需要者の間において、その形態を有
する商品は特定の事業者が製造販売している商品であるとの認識が浸透することが
あり得、その場合には、商品形態も不正競争防止法二条一項一号にいう周知の商品
表示たり得ると解される。
(二) ところで、本件原告商品の形態は別紙目録1ないし3のとおりであって、伝
統的な仏壇の形態とは異なるいわゆる家具調仏壇の範疇に属する商品であるといえ
る。いわゆる家具調仏壇といわれるものは、前記1(五)のとおり、昭和五〇年以前
から市場に存しており、その商品の性格上、洋服ダンス等の一般の家具に似たデザ
インが採用されるのが自然な傾向である。乙1ないし5及び12に示された他社の家
具調仏壇も、それぞれデザインは異なるが、家具調という基本的な傾向において共
通性を有しているものと認められる。そして、右乙号証自体の頒布時期は平成九年
ころ以降であるものの、家具調仏壇のデザインの右のような性質からすれば、右乙
号証に示されたような家具調の仏壇は、デザインの差はあれ以前からも市場に存し
たものと推認される。
 右のような家具調仏壇の中に本件原告商品を置いてその形態を考察すると、確か
に本件原告商品の形態は、原告指摘の三点において他の家具調仏壇には見られない
形態的特徴を有しており、全体としてシンプルではあるが洗練されたデザインにな
っており、だからこそ前記1(一)のとおり財団法人大阪デザインセンターからグッ
ドデザイン商品に選定されたものもあったと考えられるが、前記乙号証記載の家具
調仏壇や、そのデザインモデルとなる一般の家具の形態と照らし合わせて見れば、
家具調仏壇として他と隔絶した顕著な印象を与える形態であるとはいえないし、原
告指摘の三点の形態的特徴があることによってもこのことは左右されない。また、
甲4に示された多種の現代仏壇シリーズの仏壇の中でも、光シリーズやコスモスシ
リーズに比べれば、仏壇としての形態上の個性が弱いものといえる。
(三) また原告の現代仏壇シリーズについては、前記1(二)(三)のとおり多くの記
事や広告宣伝活動がなされてきたと認められるが、その内容としては本件原告商品
に的を絞ったものは極わずかであり、本件原告商品の形態が紹介されるときでも、
多くは他の現代仏壇シリーズの商品と並列的に紹介されるものとなっており、本件
原告商品が現代仏壇シリーズの中で特別に強力に宣伝広告がなされたとはいえな
い。そして原告の現代仏壇シリーズは多種のものがあり、年々新たなシリーズが追
加されているのであって、その中には本件原告商品よりも個性の強い形態的特徴を
有するものもあることからすれば、それらの宣伝広告に接した需要者は、現代仏壇
シリーズというモダンなデザインの一連の仏壇が原告の商品であるとの概括的認識
は得られても、特に本件原告商品の形態を採り上げた場合に、それが原告の商品で
あるとの認識を得るに至っているとまでは認め難い。
 原告は、本件原告商品は、その形態上、周知の原告の現代仏壇シリーズに属する
ものと需要者は認識すると主張するが、甲4によれば、現代仏壇シリーズにも多様
なデザインの仏壇があるから、右主張は採用できない。
(四) また、その販売実績としても、原告商品1ないし3を併せてせいぜい年間八
〇〇本超がこれまでの最高であるにすぎず、甲9及び10(平成八年七月一七日及び
二〇日の朝日新聞の記事)においても、全国的に見ると現代仏壇の占める割合はま
だわずかであるとの原告の東京営業部の言が掲載されている(ちなみに乙14によれ
ば、平成九年度における宗教用具小売業の年間販売額は合計約三六〇〇億円である
と認められるところ、仮にこの三分の一が仏壇であるとしても、乙1ないし6から
仏壇の平均的な価格が一台約五〇万円とすると、仏壇は年間約二四万本の販売量が
あることになる。)。
(五) 以上からすれば、本件原告商品の形態が、平成七年一二月以前はもちろん現
在においても、その直接の購入者である一般消費者の間で原告の商品であることを
示す商品表示として周知性を獲得しているとは認められない。
 また、一般に取引業者の場合には一般消費者と比べて商品に接する機会が多いか
ら、それだけ商品形態が商品表示として周知性を獲得する余地は大きいとはいえる
が、(二)ないし(四)の事情(特に(四))からすれば、我が国における多数の仏壇業
者(ちなみに乙14によれば平成九年度において宗教用具小売業者は全国で五四六〇
あると認められる。)の間においても、一般消費者の場合と異なる認識状況にある
とはいい難く、他に仏壇業者の間で本件原告商品の形態が原告の商品表示として周
知性を獲得したことを認めるに足りる証拠はない。
 (六) なお、本件原告商品と本件被告商品とを対比すると、外観上は、色合いや
材質感において多少の違いがあるものの、実質的に同一といってよいくらいに極め
て類似していることが明らか(検証の結果)であり、本件被告商品は、先行して市
場に出ていた本件原告商品を模倣したものである疑いが強いといわなければならな
い。また、証拠(原告代表者、被告ら代表者)によれば、原告仏壇のチラシやカタ
ログを持参して仏壇店に来る購入者もいることが認められる。
 しかし、一般に、仏壇は相当高額であるし(ちなみに、甲30によれば、平成一〇
年版の原告のカタログに登載された本件原告商品の販売価格は、本件原告商品1が
六七万円、同2が六五万円、同3が三〇万円と三三万円の二種である。)、同一人
がたびたび購入するような性質のものでもなく、証拠(被告ら代表者)によれば、
消費者が仏壇店で仏壇を購入する場合には、予算や設置場所を重視した上で、十分
商品を吟味して購入することが一般的であることが認められる。また、原告仏壇の
チラシやカタログを持参して仏壇店を訪れる購入者がいる事実はあるにしても、実
際に本件原告商品と本件被告商品について具体的に混同が生じたケースがあったよ
うな事実を認めるに足りる証拠はない。
 右のような販売形態の実情と、前記(五)までで認定した事実とを併せ考えると、
本件原告商品と本件被告商品の形態が極めて類似していることをもって、本件原告
商品の形態が商品表示として識別性を有し、かつ周知性を獲得したこと推認する根
拠とすることも相当でないというべきである。
二 したがって、その余について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。
 よって、主文のとおり判決する。
 (平成一一年五月二五日口頭弁論終結)
    大阪地方裁判所第二一民事部
  
      裁判長裁判官   小   松   一   雄
   裁判官   高   松   宏   之
   裁判官   安   永   武   央

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