弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人加藤礼敏の上告趣意は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、事案を異
にし、本件に適切でない。論旨のその余の部分は、違憲をいう点もあるが、実質は
単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人本人は、上告趣意書と題する書面を提出したが、その内容は中国語で記載
されており、日本語を用いていないから、裁判所法七四条に違反し不適法である。
従てこれに対し説明を与える限りでない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官小谷勝重の次の補足意見(中
国語で記載された被告本人提出の上告趣意書に関する点)を除き、裁判官全員一致
の意見で主文のとおり決定する。
 裁判官小谷勝重の上記の点に関する補足意見は次のとおりである。
 多数意見の判示によれば、「被告人本人は、上告趣意書と題する書面を提出した
が、その内容は中国語で記載されており、日本語を用いていないから、裁判所法七
四条に違反し不適法である。従てこれに対し説明を与える限りでない」とされてお
る。
 裁判所法七四条に関する限り右判示は正当であろう。しかし日本語で記載されて
いない上告趣意書でも、それに日本語による翻訳文が添付されて提出された場合は
勿論、外国語のままで記載提出された場合でも、刑訴一七七条、一七八条により上
告裁判所が翻訳を実施し、その翻訳文が付された場合には適法な上告趣意書となる
ことは勿論というべきである。ただ右刑訴一七七条の規定は裁判所に翻訳の義務を
課したものでないことだけは明らかである。
 ところで、本件被告人Aは曾て四年間神戸市のBにおいて、日本語と英語を習得
したものであること(記録一〇二丁昭和三三年二月二四日麻薬取締官に対する被告
人の供述調書の記載)、昭和三五年二月二八日検察官に対する被告人の供述調書中
「私は日本語はよく判ります」と供述していること、及び第一審公判において終始
通訳なくして日本語により審理を受け応答しておることが明らかであるし、当審に
至つてからも昭和三四年一二月三日附で提出した「上告趣意書の追加訂正」書は、
被告人自身の作成に係ると認められる日本語で作成されており、なお弁護人からも
適法な上告趣意書が提出されておるところである。
 上示のとおり上告趣意書に対しては裁判所に翻訳義務が課せられていないこと並
びに本件被告人に関する前示諸般の事情を勘案すれば、本件に関する限りにおいて
は、当裁判所が翻訳手続を実施しないとしても、それは相当であり、また多数意見
の如き判示を見たことも正当といわなければならない。
 ただ、わたくしが特にここに補足意見を付するのは、被告人が全く日本語を解し
ない者で、また弁護人が附されず、若しくは弁護人が附されても弁護人から上告趣
意書は提出されず、被告人本人だけから外国語による上告趣意書が提出された場合、
就中事件が重大な事案の場合に、上告趣意書が日本語で記載されていないだけで、
裁判所が刑訴一七七条の規定に従い適式に翻訳を実施し与えもせず、且つ何らの説
示も与えずして、いきなり本件多数意見の如く「日本語で記載されていないから、
不適法であり従つて判断を与える限りでない」として一しゆうすることが裁判所法
七四条及び刑訴一七七条の規定に照して、それはあまりにも切捨御免的であり、時
には違法の処置と解すべき場合をも生ずることがあり得ると思料される点を強調し
たいのである。もしそれ「上告申立書」が外国語で記載されておる如き場合、本件
多数意見のように「……本件上告申立は不適法である」として上告棄却の決定(刑
訴四一四条、三八五条)を為される如き場合を考えると殊に右の感を深くするもの
である。
 世界の交通事情や経済交流の実情、就中憲法二二条等の規定に鑑みるとき、現代
国家としての法体制殊に人権擁護の立場に立つて、公判手続外における訴訟行為に
つき、刑訴一七七条(なお旧刑訴二三五条参照)の規定に関連して更に翻訳に関す
る適切なる実施規定を、刑訴または刑訴規則に新たに補足改正をする必要のあるこ
とを痛感するものである。
  昭和三五年三月二三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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