弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人竹田直平の上告趣意について。
 原判決の確定した事実によると、所論京都地方検察庁検事Aは、昭和二四年一月
二三日に施行された衆議院議員総選挙に候補者として立候補するため、昭和二三年
一二月一四日直属の上司たる同庁検事正に対し公務員を辞する旨の申出をしたので
あるが、その後病気のため立候補を断念し、それを理由として辞表の撤回方を同検
事正に申出た。ところがこの辞表撤回の意思表示は同月二三日大阪高等検察庁検事
長を通じて法務総裁官房人事課長宛に進達されたにもかかわらず、僅少の時間的行
違のため、辞表撤回の意思表示が所轄機関に到達する直前に、同月二四日附で免官
の発令を見たというのである。
 当時施行されていた衆議院議員選挙法六七条六項は、衆議院議員との兼職を禁じ
られている公務員にして「議員候表者タラントスル者公務員タルコトヲ辞スル旨ノ
申出ヲ為シタル場合ニ於テ其ノ申出ノ日ヨリ十日以内ニ公務員タルコトヲ辞スルコ
トヲ得ザルトキハ……其ノ申出ノ日後十日ニ相当スル日ニ公務員タルコトヲ辞シタ
ルモノト看做ス」と規定している。そこで本件の場合にこの規定の適用があるか否
かを考えてみると、この条項は元来、衆議院議員との兼職を禁じられている公務員
が立候補するために辞職の申出をしても、手続の遅延その他の理由により短時日の
内に退職することができず、そのため立候補届出の機を逸したり、選挙運動に支障
を来たしたりするというような場合のあることを慮つて、このような障碍を予め除
去するために設けられたところの、立候補希望者の保護を主たる目的とする規定で
ある。それ故に当人みずから立候補を断念して辞表の撤回方を申出で、しかもその
意思表示が所定の一〇日の期間内且つ退職の発令前に本属長官の手許まで進達され
ていた本件のような場合には、右の条項は適用なきものと解するを相当とする。
 論旨は、議員との兼職を禁じられている公務員が在職の儘立候補するときは公益
上有害な結果を生ずる惧れがあるので、右の条項はかゝる有害な結果を可及的に速
かに除去するために設けられた規定であるということを根拠として、退職の申出の
日後一〇日に相当する日に退職が確定的に発効し、その出願者が立候補断念の意思
を有したか否かによつて退職確定の効力は影響を受けない、と主張する。なるほど
その公務員が立候補の意思を有する場合には、所論のように一般選挙人や競争相手
たる候補者に不当な威力を及ぼし又は自己の当選を得るために所管公務を不当に処
理する惧れもあろうけれども、本件のように一〇日の期間満了前に既に立候補を断
念して辞表の撤回方を公に申し出た者については、かような惧れを生ずる原因はな
くなつているのであるから、このような場合に右の条項が適用されなければならな
いとする所論は理由がない。
 論旨はまた、右の条項は、立候補のため退職を願出た後一〇日以内に退職の発令
があつたときは、当然にその発令の日に発効することを前提とする規定であるから、
A検事は免官の発令のあつた一二月二四日にその職を失つたものと見るべきである
と主張する。しかし後に説明するとおり、公務員の任免の発令はその意思表示が相
手方に到達したときにその効果を発生するというのが原則である。右の条項の場合
にこの原則の例外を認めなければならない程の理由はない。(右の条項は、辞職の
「申出ノ日ヨリ十日以内ニ公務員タルコトヲ辞スルコトヲ得ザルトキハ……」と言
つておるだけである。一〇日以内に「辞スルコトヲ得タトキ」その職を失うことは
この条項を俟つまでもなく同義語の繰り返えしに過ぎない程自明の理であるが、「
辞スルコトヲ得タトキ」というのは必ずしも「発令のあつた日」を意味しない。)
しかるに本件においては免官の意思表示は一二月二四日にはまだA検事に到達しな
かつたものと認められるから、この日に同検事が職を失つたものと主張する論旨は
採用し難い。のみならず辞表の撤回のなされた本件の場合には、右の条項の適用な
きものと解すべきこと前に述べたとおりであるから、右の条項を根拠とする所論の
主張は、なおさら理由がない。これを要するに、本件A検事の退職については、前
示選挙法の関係においては辞表の撤回が有効になされた結果、同法六七条六項によ
る退職の効果は発生しなかつたものと解するのが相当であり、従つて同検事の退職
は通常の依願免官手続による退職と見なければならない(同検事は免官の発令前に
辞表の撤回を申出で、その意思表示は同月二三日に身分上の本属長官の手許まで進
達されていたことは前記のとおりであるが、しかし僅少の時間的行違のため、右意
思表示が所轄機関(任免権者)に到達する直前に、同月二四日附で免官の発令を見
たものであることも、原判決の確定するところであるから、右免官の発令には、何
ら手続上の違法はないものといわなければならない)。そこで右依願免官による退
職の効果の発生時期について考えてみると、特定の公務員の任免の如き行政庁の処
分については、特別の規定のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表
示が相手方に到達した時と解するのが相当である。即ち、辞令書の交付その他公の
通知によつて、相手方が現実にこれを了知し、または相手方の了知し得べき状態に
おかれた時と解すべきである(原判決がこの点について、退職令書の交付時に限つ
たことは妥当でない)。論旨は免官の発令が官報に掲載された日に退職の効果を生
ずるものと主張するけれども、公務員の任免は法令の公布とは自らその性質を異に
するばかりでなく、官報による公示は特定の相手方に対する意思表示とは到底認め
ることができないのであつて、所論は独自の見解にすぎない。
 ところで、原判決の確定したところによると、本件免官の発令は昭和二三年一二
月二四日附でなされ、同月二九日附官報にその旨を公.示されたのであるけれども、
A検事が免官の発令のあつたことを上司たる京都地方検察庁検事正から公に通知さ
れ、これを了知したのは昭和二三年一二月三一日であり、更らに免官の辞令書の交
付を受けたのは、それ以後のことであるというのであつて、それ以前に免官の発令
が同検事に到達したという事実は何ら認められていない。して見ると、本件につき
公訴の提起のあつた同月三〇日には、同検事に対しては免官発令による退職の効果
も未だ生じていなかつたものと認めざるを得ない。従つて同月三〇日A検事によつ
てなされた本件公訴の提起は適法であつて、これを無効とすべき理由はない。それ
故所論旧刑訴四一〇条六号違反並びに憲法三一条違反の主張はその前提を欠き採用
することができない。
 被告人の上告趣意について。
 論旨前段は本件傷害の点につき正当防衛を主張し、詐欺の点につき信用借りであ
ると主張するけれども、いずれも原判決の認定していない事実を前提とするもので
あるから事実誤認の主張に帰し、適法な上告理由とならない。また、論旨後段起訴
無効の主張の理由なきことは、前記竹田弁護人の上告趣意について説明したとおり
である。
 よつて、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 裁判官長谷川太一郎は退官のため合議に関与しない。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二九年八月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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