弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二 事案の概要
一 本件は、福井県民である被控訴人が福井県公文書公開条例(以下「本件条例」
という。)に基づいて、その実施機関である控訴人に対し、福井県の知事部局総務
部各所属において旅費の事務処理上不適切な支出により購入したとされる備品を記
帳した管理簿(備品台帳。以下「本件文書」という。)の公開を請求したところ、
公開の可否が決定できない旨の通知を受けたことから、右通知は公文書公開請求に
対する控訴人の非公開処分であり、この処分は違法であるとして、その取消しを求
めた事案である。
二 原判決は、右通知は公文書公開請求に対する非公開処分に当たり、かつ、本件
文書は本件条例による公開の対象となる「公文書」に該当するとして、控訴人のし
た通知は本件の公文書公開請求に対する非公開処分として違法であると判断し、被
控訴人の請求を認容した。そこで、これを不服とする控訴人(原審被告)が本件控
訴に及んだ。
三 判断の前提となる事実は、原判決「第二 事案の概要」の一に記載のとおりで
あるから、これを引用する。ただし、原判決六頁二行目の「右備品台帳」から同頁
五行目末尾までを「正規に作成される右備品台帳は、その作成自体が決裁の対象と
なるものではないが、支出命令決議書等の文書の決裁を経て購入された備品につい
て実施機関の職員が右支出命令決議書等に基づき所定事項を記載して作成したもの
であり、決裁の対象となる文書に準じるものとして、条例二条一項の「公文書」に
該当する(弁論の全趣旨)。」と改める。
四 争点及び争点に関する当事者双方の主張は、原判決「第二 事案の概要」の二
に記載のとおりであるから、これらを引用する。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人のした通知は本件の公文書公開請求に対する非公開処分と
して違法であり、被控訴人の請求は理由があるから、これを認容すべきであると判
断するが、その理由は、次のとおり改めるほか、原判決「第三 争点に対する判
断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二五頁一行目の「右備品台帳は、」の後に「それ自体は決裁の対
象となるものではないが、その作成の経緯に照らし」と加える。
2 原判決二七頁三行目の「備品台帳」から二九頁五行目末尾までを、次のとおり
改める。
 「正規に作成される備品台帳が決裁の対象となる文書に準じるものとして、条例
により公開の対象となる公文書である以上、本件文書もまた決裁の対象となる文書
に準じるものと解するのが相当である。
 そして、正規の備品台帳は、その作成の前提として、支出負担行為伺、支出命令
決議書等の決裁手続を経ることを必要とするが、作成それ自体には決裁を要するも
のではないから、条例二条一項に定める「決裁の手続終了後」との要件は 備品台
帳に関しては不要というべきである。そうすると、本件文書は、前記のとおり正規
の備品台帳に準じるものであるから、本件文書についても「決裁の手続終了後」と
の要件は不要であり、作成後各所属の責任者において保管、保存する状態に置かれ
た段階で、条例二条一項の要件を充足するものと解すべきである。
 証拠(甲3、弁論の全趣旨)によれば、「不適切な事務処理により取得した備
品」は、平成六年度から平成九年度の予算で購入されたものであり、本件文書も遅
くとも平成九年度には作成され、各所属の責任者は、これを保管、保存していたと
認められ、県が現にこれを管理していることは、当事者間に争いがない。」
二 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却するこ
ととして、主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第一部
裁判長裁判官 川崎和夫
裁判官 本多俊雄
裁判官 榊原信次

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