弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一1 原判決のうち、原判決別紙物件目録記載一の土地に係る請求を認容した部分
(主文第一項及び第三項)を取り消す。
2 右部分につき、被控訴人の請求を棄却する。
二 その余の本件控訴を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人の、その余を
被控訴人の各負担とする。
       事   実
第一 控訴の趣旨
一 原判決を次のとおり変更する。
1 本案前の申立て
 被控訴人の原判決別紙物件目録記載一の土地についての抹消登記手続請求及び明
渡請求に係る訴えをいずれも却下する。
2 本案の申立て
 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
 当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のうち本案に関す
る部分のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決一二頁一〇行目の
「五五〇〇万円」を「五六〇〇万円」に改める。控訴人は、当審において、原審に
おいて主張した本案前の主張を撤回した。)。
一 控訴人
1 本案前の主張
 本件売払契約一については、住民訴訟の要件がない。
 財務会計行為による「財産的損害の発生」は住民訴訟の訴訟要件であるところ、
本件売払契約一については、適正な土地代金が支払われており、川崎市に対して財
務上の具体的な損害はもたらされていないのであるから、何らかの必要な措置を求
める前提を欠き不適法であるから、却下すべきである。
2 本案の主張
(一) 本件各売払契約と本件賄賂との間には因果関係がない。
(1) Aが本件各売払契約の成立について尽力した動機は、当時の川崎市土木局
用地部長すなわち代替地の取得処分の最高責任者として、東京湾横断道路の開通
(平成九年一二月一八日に開通)を控え、川崎市縦貫道路事業の推進のためには、
公団と控訴人との移転補償契約及びそのための代替地の払下契約の早期成立が不可
欠だったためである。このように川崎縦貫道路の整備が急がれていたという状況
は、平成七年よりも平成八年の方がより一層強まっていたのである。
(2) AとBの初対面の時期は、平成七年一〇月ころであるが、それ以前に、既
に本件売払契約一の対象土地を代替地としていたし、初対面の際に、その旨をAが
Bに告げたのである。Bの贈賄行為は、その翌年の三月二八日以降のことであるか
ら、本件賄賂とαの土地を川崎市が確保した
こと及びその旨をAがBに告げたことと関係がないことは明白である。
(3) 本件贈収賄行為は、平成八年三月二八日以降のことであるところ、代替地
取得処分委員会の幹事会(幹事会)の払下げの決定に有力な事情となったとされる
協力依頼書や覚書は、いずれも贈収賄事件の発生前に作成されており、同年一月一
八日の幹事会で、αの土地を払い下げる方針が決まったが、払下予定期日は、同年
三月であり、本件賄賂とは無関係に決められたのである。
(4) 控訴人は、退去補償交渉や代替地払下交渉については、組織的に取り組ん
だが、贈収賄事件そのものは、刑事事件として発覚するまで全く知らなかったし、
賄賂資金も贈賄者の個人的なものである。
(二) 本件売払契約一は異例の契約ではない。
(1) αの土地は、既に平成五年九月一四日、川崎市の低・未利用地の指定に関
する事務取扱基準により、低・未利用地に指定され、材料置場として使用されてい
たが、β資材置場と総合化が予定され、いったんは代替地として利用計画が立てら
れたが、その後、財政難の折から、平成六年九月、一般公募の売却の候補地とされ
た。したがって、行政財産として有効に使われていたり、将来有効に利用される見
込みのなかった土地である。そのため、控訴人が代替地として希望したため、平成
七年九月ころ、一般公募売却の対象から除外されたのである。
(2) 原判決の指摘する時期的な関連から本件売払契約一を検討してみても、
「賄賂が契約成立を背後から決定的に基礎付けた。」とは到底いえない。
(三) 川崎市には損害がない。
(1)① αの土地は、右(二)(1)に記載したような土地であり、簿価がかな
り低い行政財産を転用したものである。
② γの土地は、川崎市が平成八年一一月五日、控訴人やいすず自動車に対する代
替地として新規に日本金属工業株式会社から買い上げ、直ちに代替地として売り払
った物件であり、簿価と時価が問題にならない物件である。
(2) 川崎市長は、右両土地は行政財産として使用する目的はないとしている。
したがって、原判決が「土地は使用目的によっては金銭に換えがたい面もあるか
ら、金銭的な価額の多寡だけによって損害の有無を判断されるべきではない。」と
するのは、一般論としてはそのとおりであるとしても、右両土地についてはそのよ
うなことはない。
(3) 川崎市は、厳しい財政事情から、特にαの土地については、売却す
ることを選択しているのである。また、贈収賄事件が発覚した直後にも、前記両土
地について、取り戻さないとの立場からの見解を表明しているのである。
(4) 川崎市は、事後的に、γの土地について、「土地価格比準表」により比準
したが、その結果は、ほぼ鑑定結果(乙二)と同じであり、右鑑定の過程には問題
があるものの、結果そのものは標準的なものであった。原判決は右の結果につき何
ら判断していない。
(四) 原判決の立場は、取引の安全を考慮していない。
 αの土地及びγの土地には、本件各売払契約を前提に抵当権や根抵当権が設定さ
れている。また、右各土地上には、建築中の建物又は完成した建物が存在し、γの
土地上の建物には、抵当権等が設定されている。
 したがって、仮に本件各売払契約が違法だとしても、その効力を判断するに当た
っては、右取引の安全を保護する必要性も考慮に入れて総合的に判断すべきであ
る。
二 被控訴人
1 本案前の主張について
 住民訴訟制度の目的は、あくまでも「地方財務行政の適正な運営の確保」(最高
裁昭和五三年三月三〇日判決・民集三二巻二号四八五頁)であって、「損害の填
補」に矮小化されるものではない。
2 本案の主張について
(一)(1) 地方自治法が随意契約を例外的にのみ許容した本旨は、「契約の締
結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じる」ことを防止することにある
(最高裁昭和六二年三月二〇日判決・民集四一巻二号一八九頁)のであるから、賄
賂を使うことによってようやく締結することができた随意契約は、公正と価格の有
利性確保の観点から一般競争入札によるべきことを原則とした地方自治法二三四条
二項という公の秩序に最も典型的な形で抵触する契約であり、民法九〇条に違反し
て私法上の効力を主張し得ないものである。
(2) 本件におけるような借家権補償の方法として、控訴人が、誠に例外的な、
しかも、過大な面積の土地の払下げという「便宜並びに計らい」を受けたのは、A
との間の巨額な賄賂の授受なしには実現し得なかったことであり、このことは、公
序良俗違反として当該契約の無効事由となる。
(二) AとBの初対面の時期は、平成六年七月以前であり、原判決の認定は誤っ
ている。
       理  由
 原判決は、被控訴人の請求を一部認容し、その余を棄却したところ、控訴人だけ
が控訴し、被控訴人は不服申立てをしていないので、当審において審判
の対象となるのは、原判決のうち被控訴人の請求を認容した部分だけである。
第一 控訴人の本案前の主張について
 控訴人は、財務会計行為による「財産的損害の発生」は住民訴訟の訴訟要件であ
り、αの土地の売買契約については、適正な土地代金が支払われ、川崎市に対して
財務上の具体的な損害はもたらされていないから、必要な措置を求める前提を欠き
不適法であって、却下すべきである旨主張する。
 しかし、財産的損害の発生は、住民訴訟の訴訟要件ではないと解するのが相当で
あるから、控訴人の主張は、その前提において失当であり、採用することができな
い。
第二 本件各売払契約の効力について
一 基礎となる事実
 請求原因1(当事者)、同2(本件各売払契約)及び同3(一)(1)ないし
(4)(本件各売払契約の成立に前後して賄賂が授受されたこと)は当事者間に争
いがない。
二 争点と判断基準
 本件各売払契約が公序良俗に反して無効であるかについて判断する。
 贈収賄行為は、刑法上の犯罪行為であり、国家社会法秩序に違反する著しく違法
性の強い行為であることはいうまでもないところであるが、本件で問題となってい
る市有地の私人に対する売払契約は、私法上の契約であるから、右の契約に当たり
贈収賄行為がされた場合においても、その一事をもって当然に右売払契約が公序良
俗に反するものになると解することはできないが、当該贈収賄行為と右売払契約の
成立との間に、手段とその結果という因果関係が認められ、かつ、当該贈収賄行為
によって右売払契約の内容、手続等が著しく歪められたというような事情が存する
ときには、公正に運用されるべき随意契約制度の信頼を著しく損なう事態が惹起さ
れたものであって、このような事態を是認することは社会正義に反するものという
べきであり、かかる行為によってもたらされた利益を贈賄者に保持させることを阻
止するためにも、右売払契約は公序良俗に反する場合に準ずるものとして、民法九
〇条の類推適用により、当事者間においては無効になると解するのが相当である。
三 本件売払契約一の効力
1 本件売払契約一の成立に至る経緯
 次のとおり付加するほか、原判決理由説示第二の三1のとおりであるから、これ
を引用する。
(一) 原判決三三頁一〇行目「Aは、」の次に「市土木局用地部長として、川崎
縦貫道路事業を遂行するため控訴人の立退交渉を何とか早期にまとめたいと思って
いたので
あるが、控訴人が希望するαの土地について調べたところ、川崎土木事務所が資材
置き場として使用しているが行政財産としては必要がなくなっており、市の一般公
募により売り払う土地の候補地になっていたので、控訴人に代替地として払い下げ
れば控訴人と公団の交渉もうまく行くのではないかと考えたこと、また」を加え
る。
(二) 同三六頁三行目「その旨の連絡を受けたAは」を「しかし、Aは、控訴人
は借家人に過ぎないが大規模な営業所若しくは事業所を有する者であるから、市代
替地対策要領に代替地提供対象者として規定された『その他代替地を提供する必要
があると認められる者』に当たるものと解釈していたので」に改める。
(三) 同四〇頁三行目冒頭から四行目末尾までを削る。
2 本件売払契約一の公序良俗違反性
 前記一及び三1の事実によれば、本件売払契約一は、借家人に代替地を提供する
というものであること、そのために事業主体である公団から協力依頼書を渋々提出
させたこと、代替地をαの土地にするという具体的な決定は控訴人の希望によるも
のであり、それを実現するために、既に公募対象地リストにあったαの土地をそこ
から除外し、また、行政財産として管理されていたαの土地を普通財産に管理替え
したこと、控訴人と公団との補償契約の成立が長引くので、公募対象リストから除
外させたこととのつじつま合わせに、市から控訴人に売り払う旨の覚書を作成した
ことなどの点において、極めて異例の契約であるということができる。しかし、市
代替地対策要領に定める幹事会、代替地委員会の審議を経て決定され、売払価格は
不動産鑑定士による鑑定価格の範囲内で決定されたものであるから、賄賂の点を除
けば、その内容及び内部手続において明白な違法があるものとはいえない。そし
て、Bが最初にAに対して贈賄したのは、平成八年三月二八日であるところ、本件
売払契約一は右贈賄行為の後に締結されたものではあるが、αの土地の売払につい
ては、同年一月一八日の代替地委員会の幹事会において了承を得、次いで同年二月
一三日の代替地委員会の決裁を得、同日、市は、控訴人との間で、近くαの土地を
控訴人に売り渡すための売買契約を締結する旨の本件覚書(甲一〇の資料6の三枚
目)を締結したことにより、実質的にはαの土地の払下げが決定されたものであ
り、それ以前に、BとAの間で、賄賂の授受についての申込みや要求などのやり取

があったことを認めるに足りる証拠はないし、また、本件売払契約一が後記の本件
売払契約二と関連があるとしても、両者が不可分一体の関係にあるものとまでは認
められず、形式的にはもとより、実質的にも両者を別個の契約と評価することがで
きるのであるから、本件贈収賄行為と本件売払契約一との間に、因果関係があるも
のとは認められない。
 証拠(甲二二、二三)によれば、Aは、知人から控訴人への代替地の提供を頼ま
れた際、代替地を提供してやれば、Bからそれなりの見返りがあるのではないかと
期待しており、このような期待のもとに、αの土地を代替地として提供する手続を
したこと、及びBも、Aに代替地の払下げを申し入れた際、その後の交渉において
代替地の払下げを受けるために、Aに飲食等の接待や金銭を提供しようと考えたこ
とが認められるが、これらはいずれも、各人が内心で考えたにとどまるのであるか
ら、右の事実は前記の認定判断を左右するものではない。なお、被控訴人は、Aと
Bの初対面の時期は、平成六年七月以前である旨主張するが、仮にそのとおりであ
るとしても、前記の認定判断に影響を及ぼすものではない。
四 本件売払契約二の効力
1 本件売払契約二の成立に至る経緯
 原判決理由説示第二の四1のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判
決五二頁九行目の「一二一万円」を「一二〇万三〇〇〇円」に、一一行目の「と
し、」を「として計算してみても約七億二二〇〇万円になる。」にそれぞれ改め
る。)。
2 本件売払契約二の公序良俗違反性
 右1に認定した事実によれば、本件売払契約二は、αの土地に加えてγの土地を
も払い下げるという点、及びγの土地の面積だけでもδの土地に比べて極めて過大
である点において、代替地の提供は従前の生活状況を復元する程度であることを原
則としている市代替地対策要領(乙一の添付資料7)一二条の規定に違反してお
り、払下価格については、坪当たり約一二一万円であったものが、Aが不動産鑑定
士のCに対し働き掛けて、坪当たり七六万円にまで減額されたという点でも、極め
て異例なことであるというべきである。また、借家人である控訴人に対して代替地
を払い下げることは、禁止されているものではないとしても、公団の反対解釈を押
し切ってされた点において、異例の取扱いであるということができる。そして、こ
のような取扱いがされたのはAの尽力によるものであり、かつ
、Aがそのような尽力をしたことの主な原因は、BのAに対する賄賂の交付である
ものと認められる。
 したがって、本件売払契約二は、賄賂がなければ実現しなかったものであり、本
件贈収賄行為との因果関係が認められ、賄賂の交付によってその手続及び内容が著
しく歪められたのであるから、公序良俗に反する場合に準じて無効と評価されるべ
きものである。
3 控訴人の主張について
(一) 控訴人は、退去補償交渉や代替地払下交渉については、組織的に取り組ん
だが、贈収賄事件そのものは、刑事事件として発覚するまで全く知らなかったし、
賄賂資金も贈賄者の個人的なものである旨主張する。
 しかし、仮に、賄賂の交付が控訴人の主張するような事情の下でされたものであ
るとしても、既に認定した事実によれば、Bは、当時、控訴人の代表取締役を務め
ていた者であり、本件賄賂の交付は、その職務の一環としてされたものであるとい
うことができるのであるから、前記の認定判断を左右するものではないというべき
である。
(二) 控訴人は、住民訴訟は自治体に損害が発生していることを要件とする旨主
張する。
(1) 地方自治法二四二条住民監査請求の制度は、普通地方公共団体の財政の腐
敗防止を図り、住民全体の利益を確保する見地から、当該地方公共団体の長その他
の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について、そ
の監査と予防、是正等の措置とを監査委員に請求する機能を住民に与えたものであ
り、住民訴訟の前置手続として、まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請
求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は怠る事実の違
法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させる
ことを目的とする(最高二小昭和六二年二月二〇日判決・民集四一巻一号一二二
頁)。
 そして、これを受けた同法二四二条の二の住民訴訟の制度は、普通地方公共団体
の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠
る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するもの
であるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環
として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方
財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである(最高一小昭和五三
年三月三〇日判決・民集三二
巻二号四八五頁)。
 右のような住民監査請求及び住民訴訟の目的に鑑みると、地方自治法は、普通地
方公共団体に所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実がある場合に、当該普通
地方公共団体の住民に対して、当該違法な行為又は怠る事実により当該普通地方公
共団体が被った損害を補填するためのみならず、当該違法な行為を防止若しくは是
正し又は当該怠る事実を改めるためにも、必要な措置を講ずべき旨の監査請求及び
これを前提とする住民訴訟を提起する権能を与えていると解される。
(2) ところで、同法二四二条の二第一項の対象となる財務会計行為は、その対
象が、行政処分である場合と私法上の契約等である場合とがあるが、このうち四号
の請求は、住民が当該地方公共団体に「代位して」行うものであるから、代位され
る請求権が私法上の契約等である場合には、その権利根拠規定も民法等に求められ
るものである。この観点から、同号後段をみると、損害賠償請求若しくは不当利得
返還請求は、損害ないし損失の発生を要件とするものであることは当然であるが、
法律関係不存在確認請求と原状回復請求については、民法上も損害ないし損失の発
生は要件とされていないから、住民訴訟においても同様に損害ないし損失の発生は
要しないものと考えられる。そして、同法二四二条の二の文言上も、当該行為によ
り損害の発生を要件とする旨の限定もない。そうすると、四号後段は、損害補填を
ねらいとする損害賠償請求若しくは不当利得返還請求と、損害発生の事前予防ない
し金銭補填的解決にはなじまない法律関係不存在確認請求と現状回復請求という性
格ないし目的を異にする二つの訴訟類型に分けられるということができる。
(3) 右のような住民訴訟の制度の趣旨・目的・規定の構造・文言などに照らす
と、住民訴訟のすべてが普通地方公共団体に損害が生じていることを制度的な前提
としているものはなく、これを要件としていないものもあるというべきであり、本
件で問題となる四号後段の現状回復請求については、地方公共団体において現実に
損害が発生したことを要件としない、地方公共団体の財務会計活動の適正確保を直
接の目的とする制度であると解するのが相当である。
(三) 控訴人は、原状回復請求について、損害賠償請求等の経済的価値の保全措
置を超えて求めることはできない旨主張するが、このように限定的に解釈すべき根
拠はなく、四号所定のいずれの
訴訟に因るかは住民の選択に委ねられているものというべきである。
(四)(1) なお、仮に、本件の原状回復請求について損害の発生を要件とする
との見解を前提としても、土地の評価額は時々で変化するものであり、使用目的に
よって金銭に代え難い面がある。したがって、損害の有無の判断には、金銭的な多
寡だけによって判定されるべきではなく、仮にγの土地の現時点での価格が本件売
払契約二の時点の価格よりも低額であったものとしても、直ちに損害がないとはい
えない。
(2) 更に、現時点において、市としてはその用途がないことや、実際に価格が
下落していることから、土地の返還を受ける必要性が低いと考えたものとしても、
本判決により被控訴人の請求が認容されても、控訴人に対し市からの代金相当額の
金銭給付と引換に所有権移転登記をすることを命ずるだけで、市には代金提供の義
務はないのであるから、取得した代金額を提供してγの土地を取り戻すか、また、
いかなる時期にその権利を行使するかは、市の判断に委ねられるのであり、市に金
銭的な面で損害が及ぶものではなく、特段不当な結果になるものともいえない。
(五) 控訴人は、取引の安全について主張するが、本件売払契約二が無効となる
のは、前示のとおり、当事者間の問題に止まるものと解するのが相当であるし、ま
た、その後取引関係に入った者については、取引の際の状況に応じて、その保護が
図られるか否かが決せられるべきものであるから、前記のように解することが直ち
に取引の安全を害する結果となり相当でないということはできない。
第三 結論
 以上によれば、被控訴人の本訴請求は、γの土地につき、市から本件売払契約二
の売買代金額の返還を受けるのと引換えに所有権移転登記の抹消登記手続を求める
限度で理由があるので認容すべきであるが、その余は理由がないので棄却すべきで
ある。
 よって、原判決の請求認容部分のうち、原判決別紙物件目録記載一の土地に係る
部分は相当でないから、これを取り消した上、被控訴人の請求を棄却し、その余の
部分は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文の
とおり判決する。
東京高等裁判所第一一民事部
裁判長裁判官 瀬戸正義
裁判官 井上稔
裁判官 河野泰義

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