弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aの控訴及び同被告人に対する検察官の控訴を棄却する。
     被告人Bに対し原判決を破棄する。
     被告人Bを懲役参月及び罰金五千円に処する。
     右罰金を完納しないときは被告人Bを壹日貳百円の割合による期間労役
場に留置する。
     被告人Bに対しこの判決確定の日から壹年間右懲役刑の執行を猶豫す
る。
     当審における訴訟費用は被告人Aの負担とする。
     原審における訴訟費用中国選弁護人Cに支給した分は被告人Bの負担、
証人Dに支給した分は被告人両名の連帯負担とする。
         理    由
 被告人Aの弁護人森川栄の控訴趣意及び検察官検事福田隆恒の控訴趣意はそれぞ
れ別紙に記載の通りである。
 一、 弁護人の控訴趣意について
 本件記録を精査し総べての証拠を検討するに
 第一点について
 被告人Aは、医師Eの補助者として、原判示のように疾病の診察治療の医行為を
なしたのではなく、同医師及び相被告人Bと共同して同医師と対等に業として医行
為をしたことが認められるから、論旨は理由がない。
 第二点について
 被告人Aが医師でないのに医業をしたのは、昭和二十三年五月下旬頃から同年六
月下旬頃迄の間であつて、昭和二十三年七月三十日法律第二百一号医師法施行(同
年十月二十七日)前で、同所為は同医師法第四十条によつて、国民医療法(昭和十
七年二月二十五日法律第七十号)第八条第一項第七十四条第一項によつて処罰せら
れるのであるから、旧医師法(前示国民医療法第八十三条によつて廃止せられた明
治三十九年法律第四十七号)の処罰条文などを判決文に摘録する必要はない。論旨
は理由がない。
 第三点について
 本件記録に現れている諸般の情状を考慮するに、原審が被告人Aを懲役拾月に処
したのを量刑が過重であるとは認められないから、論旨は理由がない。
 一、 検察官の控訴趣意について
 本件記録を精査し原判決を検討するに
 第一点について
 各被告人の本件麻薬取締規則違反及び国民医療法違反の犯行は数個の麻薬取締規
則違反行為で、全体として国民医療法違反の一罪に該当する非医師の医業行為であ
るが、国民医療法違反の一罪に該当しているからとて右各個の麻薬施用者でも麻薬
取扱者でもないのに麻薬を使用した麻薬取締規則違反行為が刑法第四十五条前段の
併合罪の関係を保ちつゝ国民医療法違反の一罪に該当している事実を無視して、両
罪が一対一で刑法第五十四条第一項前段のいわゆる想像的競合の関係に立つ場合と
同一視することはできない。本件においては併合罪<要旨>をなす数個の麻薬取締規
則違反行為が同時に一個の国民医療法違反罪に触れる場合であるから、麻薬取締規
違反罪の併合罪の関係につき刑法第四十七条第十条及び第四十八条第二項
を適用し、これらと国民医療法違反罪との関係につき刑法第五十四条第一項前段第
十条を適用すべきものである。仮に本件の場合数個の麻薬取締規則違反の間に刑法
の併合罪の規定を適用すべきでないものとすれば、麻薬施用者でも麻薬取扱者でも
ない者が併合罪にかゝる麻薬使用罪を数個犯した場合は併合罪として刑の加重があ
るに拘らず、それらが医業の内容をなし同時に非医師の医業行為としても処罰せら
れる場合には、麻薬使用罪の点については反つて軽い刑罰を以つて臨むと言ふ不合
理な結果ともなるのである。論旨は理由がない。
 第二点について
 本件記録に現れている控趣旨に援用の事実その他諸般の情状を考慮するに、原審
が被告人Aを懲役拾月に処したのは量刑相当であり軽きに失するものではない。被
告人Bについては原審が同被告人を罰金壱万円に処したのは、その量刑が軽過ぎる
と認められる。論旨は被告人Aに対しては理由がないが被告人Bに対しては理由が
ある。
 よつて被告人Aに対しては刑事訴訟法第三百九十二条による職権調査をした上同
法第三百九十六条により同被告人及び検察官の各控訴を棄却し、同法第百八十一条
第一項により当審における訴訟費用を同被告人に負担させる。
 被告人Bに対しては刑事訴訟法第三百八十一条第三百九十七条により原判決を破
棄し、同法第四百条但し書きにより更に判決する。
 原判決の認定した被告人Bの事実を法令に照らすと(一)各麻薬の不法使用の点
は昭和二十三年七月十日法律第百二十三条麻薬取締法第七十四条、同法第六十五条
による廃止前の麻薬取締規則(昭和二十一年六月十九日厚生省令第二十五号)第二
条第三条第二十三条第五十六条第一項第一号第二項(罰金等臨時措置法第二条第一
項刑法第六条第十条第十五条)に該当するところ、刑法第四十五条前段の併合罪で
あるから同法第四十七条第十条第四十八条第二項を適用し、(二)非医師の医業行
為の点は医師法(昭和二十三年七月三十日法律第二百一号)第四十条、同法第三十
五条による廃止前の国民医療法(昭和十七年二月二十五日法律第七十号)第八条第
一項第七十四条第一項に該当するところ、以上(一)(二)は刑法第五十四条第一
項前段の関係にあるから、同法第十条により前示(一)の併合罪加重の刑に従い、
懲役罰金を併科しその懲役の刑期罰金額の範囲内で被告人Bを懲役参月及び罰金五
千円に処し、刑法第十八条第一、四項により主文第四項の通り労役場留置の言渡し
をなし、同法第二十五条により主文第五項の通り懲役刑の執行を猶予し、刑事訴訟
法第百八十一条第百八十二条に則り主文第七項の通り被告人Bに訴訟費用を負担さ
せる。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)

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