弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士金子新一、同的場悠紀の上告理由第一点について。
 原判決の認定した事情、推移の下において本件土地の賃貸借が借地法第九条にい
わゆる一時使用のため借地権を設定したこと明らかな場合に該当するものとした判
断は、当裁判所もこれを正当として是認する。所論判例は、必ずしも本件に適切の
ものではない。所論はひつきようするに、原判決の事実認定と抵触する事実を主張
して、原審がその裁量の範囲内で適法になした事実認定を非難するか、或は本事案
に対する独自の見方でしかなく、採るを得ない。
 同第二点について。
 原判決は、その主文において、上告人A1に対し判示地番の宅地につき公簿上の
地積と多少異るが、その実測に基づき八二坪六合八勺の明渡を命じているのであり、
右地番及び地積の点は本件証拠関係に照し首肯でき、右程度の表示で以て地番及び
地積の特定ができていないものということはできない。所論は、ひつきよう原判決
を正解しないものというの外はなく、採るを得ない。
 同第三点について。
 所論は原判決末尾添付の図面上に(イ)(ロ)(ハ)の記号を以て図示されてい
る部分やその他(便所、(ヘ))と見られる図示の部分を本件收去請求の建物(建
坪八坪八合二勺)の表示と誤解したことによるものである。添付図に図示されてあ
る(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ヘ)などは、いずれも焼失前に本件土地に存在した
旧建物の位置を示すものであることは判文上明らかである。所論は、原判決を正解
しないことに由来するもので、採用できない。
 同第四点について。
 原判決の認定によれば、上告人A2、訴外D、被上告人らの被承継人の三名は、
共同出資により本件土地の表通りに面する部分に(イ)(ロ)のトタン葺バラツク
を建築し、これを事務所等に使用して、あられかき餅等の製造販売業を開始したが、
右共同事業は予期に反して收益を挙げることができなくなつたので、昭和二五年三
月頃これを解散し、右三名は右(イ)(ロ)の建物及び営業上の器具設備一切を上
告人A2の内縁の夫である上告人A1に代金一五万円で譲渡し、上告人A1は同所
にコンクリート造り冷蔵庫建坪二坪半を設備して同一営業を継続していたところ、
昭和二七年一一月三〇日右営業所が火災にかかり前記(イ)(ロ)の表側部分とコ
ンクリート造りの冷蔵庫を残すのみとなつた。そしてその後上告人A1は右(イ)
(ロ)の建物を補修して店舗兼居宅の建坪八坪八合二勺の一棟となし、右コンクリ
ート造りの冷蔵庫と共に営業のため使用しているというのである。しからば、右建
物及び冷蔵庫(即ち本件で收去を命じられている物件)は、すべて上告人A1の所
有に属すること明らかであるから、原判決にはこの点に所論の違法ありと言うを得
ない。故に所論も採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    高   木   常   七

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