弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人森川栄の上告趣意は末尾添付の趣意書の通りである。
 上告趣意第一点について、
 原審は被告会社の勤労課に厚生係長として勤務するA、厚生係として勤務する
B、C、D等が「住宅被服その他実物給与に関する事項」及「生活物資の斡旋配給
に関する事項」等の業務に従事しておりその業務に関して判示の通り和製巻煙草、
代用醤油、生甘藷、馬鈴薯、未検査チリメンイリコ及煮干、未検査味噌、布製ゴム
底靴、代用味噌等を物価統制令に反する不法価格で買受けた事実を認定し右従業員
の違反行為は物価統制令第三十三条第三十四条に該るものとして同令第四十条に基
き被告会社に対し罰金刑を科したものであることは判文上明かである。従つて右認
定に反し本件は会社員が各自任意に自己の生活のため共同買入をしたものであつて
被告会社としての犯罪行為ではない旨の主張は原審の事実認定を非難するものであ
つて適法な上告理由とはならないから此の点の論旨は採用できない。
 上告趣意第二点について、
 本件取引は被告会社が営利の目的を以て行つたものでない旨の主張については原
判決は前項説明の通り本件取引が行為者である従業員A外三名に於て被告会社の業
務に関し自己の業務に属する行為として為されたものである事実を認定したもので
あり、右論旨を是認しているのであるからこの点の論旨は理由がない。
 次に本件違反行為は被告会社の本来の業務の範囲に属するものでないから被告会
社を処罰するのは失当であるとの主張について検討すると被告会社が電気の供給等
の事業を営む株式会社であることは所論の通り原判決<要旨>の認定するところであ
る。然しながら物価統制令第四十条に謂う法人の業務とは当該法人の目的である事
業そのものに関する業務を指称する許りでなくその事業に関連し若しくはそ
の事業の遂行上に必要な業務をも包含するものと解するのが相当である。原判決挙
示の証拠内容を精査すると被告会社E支店には勤労課が設けられその課内に厚生係
があり厚生係は事務分掌規程により会社従業員の「住宅衣服その他実物給与に関す
る事項」及「生活物資の斡旋配給に関する事項」等の事務を処理するものと定めら
れ本件取引当時は右支店には八百余名の会社従業員が勤務し十一名の厚生係を置い
て右所管事務の処理に当らせていたものでA外前記三名は右厚生係として勤務中そ
の所管事務として判示の通り会社従業員に配給する生活物資を買受けたものである
ことを確認することができる。即ち右厚生係の管掌する業務は被告会社の目的であ
る配電事業又は之と直接関連する業務とは云い得ないけれどもその事業遂行の為必
要なればこそ課、係を常設して之が処理に当らせたものであるから物価統制令第四
十条に謂う法人の業務に該るのであつてその業務に従事する者が同条所定の違反行
為に出たものである以上被告会社に於て処罰を免がれることはできない。右論旨も
理由がない。
 仍て刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四百四十六条により主文の通り判決
する。
 (裁判長判事 満田清四郎 判事 石丸友二郎 判事 太田元)

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